女の子同士や大人の女性同士の恋愛が描かれた百合漫画。同性ならではの葛藤や、女性ならではのキレイな雰囲気を楽しむことができます。今回は、数ある百合漫画のなかでも大人の読者が夢中になれる作品をランキング形式で紹介していきます。
翻訳家を生業にしている麻耶の元に、かつての恋人だったみちるが5歳の息子をつれて戻ってきました。昔は「同棲」していましたが、今回は「同居」をすることになります。
麻耶、みちる、息子のゆうた、そして同じマンションに住むニコという青年の4人が織りなす、穏やかで優しい毎日の物語です。
- 著者
- 鳥野しの
- 出版日
- 2010-01-07
ひとつ屋根の下で寝食をともにし、家族のようなのに家族ではない、どこか不安定な4人の日常を豊かな感情表現で描いた作品。
シングルマザーになったみちると再び一緒に暮らしはじめた麻耶。今回の同居生活では、息子がいることもあってお互いに恋愛関係はなしと決めていました。それでも想いあっていて、時々友情の証としてキスを交わしたり、風邪で弱った時にハグをしたりすることがあります。
ただいやらしい感じはまったくなく、あたたかくて優しいものに見えるのは、物語全体を包み込んでいる柔らかな空気感のおかげかもしれません。
一方で、同じマンションに住み彼女たちの部屋に入り浸っているニコは、男性が好きな同性愛者で、実はみちるの息子の父親と元恋人という複雑な関係。穏やかな雰囲気の向こうには、少しヒリヒリする事情があるのです。
彼女たちは、家族という枠に捉われていないからこそ自分たちらしく、そして不安定に生きていきます。等身大で切ない大人の恋愛を、じっくりと楽しんでみてください。
『オハナホロホロ』について紹介した<『オハナホロホロ』の魅力を全巻ネタバレ紹介!無料で読める優しい百合漫画>もおすすめです。
コンビニの店員が見てしまったのは、女性同士でキスをするお客さん。その時、店員の心が揺らいで……?
ビターなガールズラブ作品を集めた、短編集です。
- 著者
- 竹宮 ジン
- 出版日
- 2016-10-18
もともと同人作家として活躍していた竹宮ジン。本作は、同人作品として描いた5編を単行本化したもので、新たに書き下ろした1編を加えた6つの短編が収録されています。
かつて想いを寄せていた相手が結婚をするという話を聞き、自分の気持ちを抑えきれずに無理やり押し倒してしまった女性や、昔の恋人と再会した女性など、登場人物はみなさまざまな想いを抱えています。
ほとんどが社会人同士のカップル。年の差が開いているものもあるので、そんなキーワードに惹かれるかたはチェックしてみるとよいのではないでしょうか。
表紙からは暗めの印象を受けますが、どちらかというとダークというよりはビターという表現がぴったりくる感じ。シリアスだけど、どこか甘い雰囲気が漂っています。
女性ならではの細やかさや、それゆえに傷つけあい、悩みながらも最後は小さく1歩前進できる、ガールズラブの宝石箱のような一冊。短編集なので気軽に読むことができるのもポイントです。
結婚と出産を経た千歳は、周りから見たら「奥さん」であり「お母さん」。いつの間にか、名前を呼ばれなくなっていたことに気がつきました。
そんなある日、娘の雪子の同級生・小百合から、ずっと好きだったと告白されるのです。
我が子の友人と、女性同士の禁断の恋……その行方は。
- 著者
- 片倉 アコ
- 出版日
- 2014-09-18
本作は、さまざまなシチュエーションで想いを寄せ合う百合カップルのストーリーが収録された短編集。なかでもページ数が割かれているのが、「リリー・マルガリーテとかすみ草」。奥さん、お母さん、という役割を果たしながら家庭を守ってきた主婦の千歳と、彼女の娘の同級生・小百合の禁断の恋を描いた作品です。
人妻と子供の友人というだけで背徳感のあるシチュエーション。関係を持つのが男子であればよくありますが、百合ものになると途端に珍しく感じられますね。
小百合の若さゆえの真っすぐな気持ちが、最近名前を呼ばれなくなったと感じている千歳の心を揺り動かしていくのです。
本作にはほかにも、千歳の娘の雪子視点で描かれた物語や、厳しい上司と新人OL、優等生の女の子と冴えない喪女など、一風変わった関係性の百合作品が収録されています。
いずれの物語も、同性カップルゆえの切なさもありますが、それ以上に幸せな気持ちになれるものばかり。彼女たちの恋がどのような結末を迎えるのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
本が好きで、部屋中本だらけになっている仁藤忍と、洋服が好きでクローゼットがパンパンの岡崎貴子。2人は社会人の同性カップルです。
趣味も性格も正反対の彼女たちは、喧嘩が絶えません。それでもうまくいっているのは、なんだかんだで似た者同士なのでしょう。
- 著者
- 西 UKO
- 出版日
- 2012-11-30
社会人×社会人のガールズラブを描いた作品で、何よりの特徴は、2人の日常が描かれた4コマ漫画なところ。彼女たちの存在は自然で、周りの人たちからも受け入れられています。
そのためか、葛藤やシリアスなシーンはほとんどなく、2人のリアルな視点での恋心が描かれています。
ただ忍と貴子は、お互いにくだらないことは言い合えるのに、肝心なところで1歩踏み込めない部分があるのです。相手に1番伝えたいことを伝えることができないもどかしさがモノローグで描かれ、読者も一緒にもだえてしまいます。
4コマ漫画の積み重ねが、まるで彼女たちの日常を積み重ねていくように繋がっていく構成は心地よく、百合作品初心者の方もすんなりと読むことができるでしょう。
カリフォルニア州ロサンゼルスに住む、日本人の早紀とアメリカ人のアンナは、互いに両想いの同性カップルです。
同性婚が正式に認められたことをきっかけに、早紀はアンナからプロポーズを受けました。幸せを感じると同時に、家族や友人との関係が気がかりになってしまい……。
- 著者
- 熊鹿るり
- 出版日
- 2016-04-07
早紀が住んでいるロサンゼルスでは正式に同性婚が認められ、それを機に彼女たちも結婚をしようと考えます。しかし、法律で認められたからといって、すべての人が同性カップルをすんなり受け入れてくれるかというとそうではありません。
翻訳の仕事をしている早紀も、ようやく仕事が波に乗り始めた矢先に同性婚のことを知られ、周囲の無理解に悩むのです。また彼女たちの隣人で、パートナーと死別してひとりで養子を育てているゲイのショーンも物語への深みを与えるキーパーソン。
早紀、アンナ、そしてショーンをとおして、同性婚のリアルを垣間見ることのできる社会派な一冊です。
いかがでしたか?百合ものとひと口に言っても、ストーリーはもちろんシチュエーションや描き方、テーマ、切り口も実にさまざまです。マニアックなジャンルのイメージを持つ方も多いかもしれませんが、これを機会に1度読んでみてはいかがでしょうか。価値観が変わるかもしれませんよ。