「先祖返り」という、妖怪の血を濃く受け継いでいる人間たちが暮らす妖館に暮らす主人公。それまで人との触れ合いを避けていましたが、住人たちと関わり、恋を知ることで成長していきます。そんな『妖狐×僕SS』を、スマホの漫画アプリで無料で読むことができるので、ぜひチェックしてみてください。
先祖に妖怪と交わった者がいる家系では、妖怪の血を濃く受け継ぎ、同じ日時・同じ容姿・同じ性質を持って生まれてくる「先祖返り」という人物が存在します。
彼らは純血の妖怪から狙われやすいため、実家を出ると「妖館」と呼ばれるマンションに集まって暮らしていました。一世帯につきひとりの「SS(シークレットサービス)」と呼ばれる人が付き、住人たちを守ります。
本作は、新しく妖館に入居することになった少女と、そのSSを中心に描かれる物語。彼らの恋愛はもちろん、人間から妖怪に変身する場面や、バトルも魅力的です。
また登場人物たちも、個性的なキャラクターばかり。キレイごとだけでなく、人間が持っている汚い部分やみっともない部分も描いていきます。
この記事では、そんな本作の見どころを、各巻ごとに紹介してきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2010-04-22
1983年4月28日、福岡県北九州市出身の女性漫画家。14歳の時に、『Beauty and the Beast』で第7回21世紀マンガ大賞の佳作を受賞します。そして翌年、中学3年の時には『CALLING -コーリング-』でデビューを果たすのです。
そんな彼女は『dear』などの連載を経て、本作の連載を開始。この漫画はアニメ化され、彼女の代表作にもなりました。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2016-07-22
そんな彼女ですが、2015年3月に突然逝去したことが発表されます。死因は脳梗塞など重大な病気であったという説や、うつ病が原因で自殺したという説など、現在にいたるまでさまざまな説が囁かれています。しかし公式では病死としか発表されておらず、実際はわからないままです。
4コマ漫画『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』が、最後の連載となってしまいました。
作者が死去した後も彼女の作品の人気は根強く、死後1年以上経った2016年7月には『藤原ここあ画集』が発売。今まで発表してきた作品の装画が360点以上も収められ、ファンを喜ばせました。
藤原ここあについては<藤原ここあに関する3の事実!キャラデザイン、作詞も手がける天才ぶり!>の記事でも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
通称「妖館」と呼ばれているマンションに、高校入学を控えた主人公の白鬼院凜々蝶(しらきいんりりちよ)が引っ越してくる場面からはじまる1巻。
ここは「SS付きのセレブマンション」「変人ばかりの館」「おばけ屋敷」「化物屋敷」などさまざまな噂をされているマンションですが、どれもあながち間違いではありません。
古くから続く名家に生まれた彼女は、その名前の珍しさやお金持ちであることのへのやっかみから、散々いじめられてきました。人付き合いが苦手になり、口を開けばすぐに悪態をついてしまいます。
SSも不要だとしていましたが、入居するとすぐに彼女のSSだと名乗る御狐神双熾(みけつかみそうし)と出会い、極度の忠誠を誓う姿を見てそばに置くことになりました。
SSとは、シークレットサービスの略。要人警護をおこなう人たちのことです。より戦闘に向いた「先祖返り」が、戦いに向かない「先祖返り」たちを純血の妖怪から守るためにつくられたシステムで、契約者の身に危険が迫れば、対人間であってもその力を発揮します。
ここから、できるだけひとりになりたい凜々蝶と、できるだけ近くにいたい双熾の生活がはじまりました。
凜々蝶が強盗に襲われそうになったところを、双熾が守ったころをきっかけに、2人は距離を縮めていきますが、彼女が高校に入学してすぐ、あることがきっかけで関係にヒビが入り、契約を解消することになってしまいます。
もともと人間不信だった凜々蝶は、双熾がとった行動にかつて自分の周りにいた打算的な人間たちの姿を重ねてしまい、裏切られたように感じてしまったのです。
双熾は契約解消を受け入れますが、代わりの者がつくまではそばにいさせてほしいと言いました。彼が凜々蝶を思う気持ちに嘘はなく、そこには揺らぐことのない愛情があったのです。
やがて凜々蝶も、彼が自分に向けてくれている情が上辺だけのものではないことに気づきます。これまで人と関わることを避けてきた凜々蝶が「愛情」というものに気づく、大事な場面です。
その後は双熾のことを受け入れられるようになることから、彼女も本来は優しい気持ちをもっていることがわかりますね。
凜々蝶は、同じ妖館に暮らし、同じ高校に通っている髏々宮カルタ(ろろみやかるた)や渡狸卍里(わたぬきばんり)と、平凡ながらも幸せな日々を送っていました。
しかしそこへ、許嫁である青鬼院蜻蛉(しょうきいんかげろう)がやってきます。彼は双熾の元主人で、双熾は何かを気にするような素ぶりを見せました。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2010-04-22
蜻蛉は、物事をすべて「S」か「M」で推し量り、口にする言葉は「家畜」や「奴隷」というなかなかぶっ飛んだ性格の持ち主。久しぶりに会った凜々蝶をなかば強引に連れ回します。
そのせいで双熾との約束をすっぽかしてしまった凜々蝶。2人の間にちょっとしたすれ違いが起きるのですが、これをきっかけに彼女は、自分の中に芽生えていた双熾への想いに気付くのです。
一方、双熾と蜻蛉の間には、凜々蝶にずっと黙っていたある秘密がありました。彼女にその秘密がばれてしまった時、双熾は絶望されてしまうことを覚悟しましたが、反対に彼女が自分のことを想ってくれていたことを知るのです。
蜻蛉からすべての秘密を聞いた凜々蝶は、双熾が自分に向けてくれる想いの理由と、自分が彼に抱く想いの理由に気付きます。何も知らないながらも、2人はずっと繋がっていたのです。
これまで自分の気持ちを素直に人に伝えることができなかった凜々蝶。双熾への告白という形で、初めて想いを吐露しました。
このほか、カルタと卍里の恋や、卍里とそのSSである夏目残夏(なつめざんげ)の話など、見どころの多い3巻です。
その一方で、不穏な動きも……。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2010-07-22
凜々蝶と双熾の交際が始まって3ヶ月、妖館の住人たちはそれぞれに幸せな時間を過ごしていました。
そんなある日、高校を卒業した後の進路のことが話題にあがります。
あらゆるものを視る能力を持つ残夏が、凜々蝶の未来と、彼女の幼馴染で2年先輩の反ノ塚連勝(そりのづかれんしょう)の未来を視た時、彼はとぼけたふりをしてその場を後にしてしまったのです。何かよくないものでも視えたのでしょうか……。
凜々蝶たちのような「先祖返り」は、亡くなった後も数年経てば彼女たちにそっくりな人間が生まれます。その家の血が通っていれば、両親がどんな人物であれ、似た見た目、似た性格を持ち、似た人生を歩むのです。
いったい過去の凜々蝶は、どんな人生を歩んでいたのでしょうか?
年の瀬に向けて、思い思いの時間を過ごしていた妖館の住人たち。双熾が凜々蝶の実家を訪れるというイベントもありましたありました。
そんなある日、カルタが何者かに襲撃され、意識不明の重体になってしまいます。卍里はもちろん、みなが心配しているなか、カルタが病室からいなくなってしまうのです。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2011-02-22
あわててカルタを探す妖館のメンバーたち。ようやく居場所を探しあてたとき、彼女は妖怪の姿から人間に戻れない状態になっていました。しかし卍里は、再び出会えたことに喜びます。
彼がカルタに真正面から想いを伝え、これまであまり感情を表に出さなかったカルタの気持ちがあふれる場面は、本巻の1番の見どころでしょう。2人が想いあっていることはわかっていましたが、より強い絆を感じることができます。
その後、カルタを元の姿に戻すために、おのおのが犯人捜しに動くことになりました。彼女が襲われた時の記憶を読み取った残夏は、犯人が再びカルタの元にやってくることを知ります。
そしてそこに現れたのは、犬神命(いぬがみみこと)という、「先祖返り」の少年でした。
「先祖返り」は、ほとんどの人物が悟ヶ原思紋(さとりがはらしもん)という人の管轄のもと生活しているのですが、なかにはそれに属さない人物もいます。命がコミュニティ外の「先祖返り」なのか、なぜ同胞を襲うようなことをするのかはわかりませんが、明確な目的が見てとれました。
「百鬼夜行をしようぜぇ」(『妖狐×僕SS』4巻より引用)
その言葉どおり、彼の後ろには妖怪の姿となった「先祖返り」たちが多数います。百鬼夜行をするとどうなるのかはわかりませんが、どうやら彼に襲われた人物は自我を失ってしまうようで、カルタも妖館のメンバーを襲ってきました。
多勢に無勢、しかも同じ「先祖返り」だとわかっている相手を本気で攻撃することもできず、妖館の面々はどんどん劣勢になっていきます。そして力及ばず、凜々蝶も双熾も亡くなります。
しかし、「先祖返り」に終わりはありません。彼らは再び物語を紡ぐこととなります。
「白鬼院凜々蝶」は、高校入学を前に妖館に引っ越してきました。彼女と彼女のSSである「御狐神双熾」の歓迎会を、同じ妖館に住むSSの「夏目残夏」と小人村ちの(ことむらちの)が開いてくれることに。
するとそこへ、老け込んだ中年男性が現れます。それは、歳をとった連勝でした。
あの「百鬼夜行」から23年の月日が経っていたのです。連勝に接触した凜々蝶は、前世の記憶がフラッシュバックし、倒れてしまいました。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2011-07-22
目が覚めた凜々蝶は、目の前にいる双熾に戸惑います。凜々蝶の脳裏には死にゆく前の姿がこびりついていました。
しかし前世の記憶を完全に取り戻しているわけではない凜々蝶は、この記憶が夢なのか何なのかわかりません。
そんな凜々蝶を、双熾はそっと抱きしめます。
「僕が貴女の御狐神双熾です」(『妖狐×僕SS』5巻より引用)
双熾に前世の記憶があれば、彼女を不安定な状態で放置せずにもっと気の利いた言葉が出るようにも思えるので、この時の双熾は記憶がないと考えられます。しかし言葉の端々からは、前世の自分を知っているような雰囲気も感じられるのです。
双熾は、自分を傍に置かせるためなのか、言葉巧みに凜々蝶を誘導します。
この彼の行動は、前世を視ることができ記憶がある残夏や、唯一の生き残りである連勝も不審に思っているようです。
双熾が何を考えているのか、気になるところ。ただ「先祖返り」が同じような人生を歩むというならば、少なくとも凜々蝶のことを好いていることだけは間違いないと考えられますね。
凜々蝶と双熾、青鬼院蜻蛉とSSの残夏、中学2年の渡狸卍里とSSの髏々宮カルタ、ちのとSSの蛙江(かわずえ)は、夏休みを利用して1週間の旅行に出かけることにしました。
懇親会を兼ねていて、花火やバーベキューなどさまざまなレジャーを楽しみます。
最終日の夜、ひとりで歩いていた凜々蝶に、蜻蛉が近づいてきました。そして、蓋をされている前世の双熾のことを思い出すよう働きかけたのです。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2011-12-22
連勝と凜々蝶が接触したときのように、前世の記憶を呼び起こそうとするのは彼女にとって大きな負担になることは間違いありません。それでも蜻蛉は、双熾のために思い出させようとするのです。
案の定凜々蝶は、フラッシュバックのショックで倒れてしまいますが、眠っているあいだに幸せだったころの夢をみます。百鬼夜行の前の、まだみんなが生きていたころの夢です。
凜々蝶の見舞いに来た連勝も、彼女の幸せな夢に引きづられていきました。
愛する人を目の前で失った凜々蝶と、みんなの死をひとりで見届けた連勝。彼女たちは夢の中で、これが現実ではないと理解しながらも、懐かしさを噛みしめていました。
来世の自分は本当に自分なのか、今世の自分は前世の自分と同じなのか、愛する人は前世と同じ人間なのか……気持ちの整理をつけられない凜々蝶でしたが、「昔」と「今」のどちらも受け入れようと決心するのです。
こうして前世の記憶を取り戻した凜々蝶は、今世の双熾ともきちんと向き合おうと動きはじめました。
双熾とのSS契約を解消した凜々蝶は、今の双熾と距離を置き、百鬼夜行がなぜおこなわれたのか解明することにします。
一方、凜々蝶から契約を解消されて姿をくらましていた双熾は、マンション内にある桜の木の根元を掘り返していました。
そこは、かつて前世の彼らが、手紙を入れたタイムカプセルを埋めた場所です。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2012-06-22
双熾が来ることが視えていた残夏は、蜻蛉とともに彼を待ち伏せ、タイムカプセルを見つけてどうするつもりなのか、そもそも前世の記憶がないはずの双熾がなぜタイムカプセルの存在を知っているのか問い詰めます。
残夏と蜻蛉は、もしかしたら双熾が百鬼夜行に関係しているのではと疑っていたのです。さらに、彼が探し求めていた過去の手紙にも、何か秘密があるのではと考えていました。
その場で開けることになった手紙のなかには、メモリーカードが入っているのみ。確認すると、前世の凜々蝶の画像が入っていました。
前世の記憶がない双熾にとって、凜々蝶が想いを寄せる過去の「御狐神双熾」は妬むべき相手。今の凜々蝶が、過去の双熾と今の双熾を区別するように、彼自身も過去の自分は別人だと感じているのでしょう。
彼の行動は百鬼夜行とは関係なく、嫉妬心のようなものからなされたものだということが分かりました。
どうやら今の双熾は、過去の彼と比べるといくぶん不器用で純粋な様子。凜々蝶を一心に追いかける子どものような印象があります。
今後2人の関係がどうなっていくのか、気になるところですが、彼らの与り知らぬところで再び百鬼夜行がおこなわれようとしていました……。
双熾同様に前世の記憶を持たない卍里は、過去に大切なカルタを襲い、百鬼夜行を指揮していた命と友だちになっていました。
「いなくなった友だちを探してほしい」と卍里から頼まれて記憶を探った残夏が、その事実を知ってしまいます。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2012-11-22
「先祖返り」の筆頭ともいえる思紋の元に命が向かったことを知り、妖館のメンバーも急いで追いかけます。しかし彼らが到着した時ににはすでに命の姿がなく、桜の木の下に思紋が座り込んでいました。
その桜は千年桜という妖怪で、未練のある時間と場所へ帰ることができる能力を持っていました。命はその力を使って、23年前に戻っっていったのです。
過去に再び百鬼夜行がくり返されるのを阻止したい一同。千年桜を使って同様に過去に戻ってしまうと、その人の時は止まり、今後周りの人々と一緒に老いていくことはできなくなるのだそう。
誰の人生も無駄にしたくないメンバーが争うなか、打開策を出したのは卍里でした。
「人がダメなら手紙などの物を過去に送ればいいのでは」と提案したのです。いつの日か埋めたタイムカプセルのように。みなは彼の提案を受け入れ、過去の自分に向けて手紙を書くことを決めました。
過去を変えるということは、今の自分たちがいなくなるということです。ひとり生き残っている連勝や、過去の「御狐神双熾」を妬んでる双熾など、それぞれに葛藤があったはず。
前世の自分、今世の自分、来世の自分を同じとするか別とするか、それはそのときの当人がそれぞれ決めるものです。記憶のない双熾と卍里、記憶のある他の面々、すべてを見て来た連勝……彼らが「過去」と「今」に抱く思いは違うかもしれません。
それでも、たとえ「今」が無くなってしまっても、大切な人が笑って過ごせる「未来」を全員が願っていたことに違いはないのではないでしょうか。
さて、彼らが守りたかった「未来」を取り返すことができるのか、話は前世の妖館へと戻ります。
未来からの手紙を受け取った凜々蝶たち。手紙に触れ、未来のすべてを知った残夏は、彼らが歩むはずだったであろう未来と来世の話を教えることにしました。
手紙を読み返し、残夏の話を反芻した彼らは、前回百鬼夜行がおこなわれた12月31日に向けて、体制を整えていきます。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2013-05-22
来たる12月31日。百鬼夜行は実行されませんでした。命に襲撃されることなく、年を越すこととなります。
桜の木を使って命がどの時間に戻ったのかはわかりませんが、未来からの手紙が届いたことで、少なからず過去が変わったということではないでしょうか。
ただ、命が何かしらの動きを感じとって、百鬼夜行の決行日をずらした可能性も考えられます。また、日時が変わるということは、ターゲットになる人物が変わる可能性も否定できません。
たったひとつ、小さな行動をすることで、未来が大きく変わることがあります。その一方で、どんなに順序や方法を変えても、結局同じ結末になることも……。
12月31日を何事もなく乗り切った面々ですが、そんな彼らの元にそれぞれの実家から連絡が入りました。「早急に実家に帰れ」というもの。
さて、彼らの未来はどうなるのでしょうか。
各自の実家にいる面々ですが、それぞれが妖館の仲間のことを思っていました。自分がどうするべきなのか、どうしたいのかを考えた結果、ほとんどの者が自分の意思で妖館へ帰ることを決めるのです。
実家に監禁状態になっている双熾と、行方がわからない蜻蛉の2人をのぞいて再集結したメンバー。双熾を助けに行くチームと妖館で蜻蛉を待機するチームに分かれて行動します。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2013-10-22
凜々蝶は、歩んだかもしれないもうひとつの未来の自分と双熾が恋人同士だったことを残夏から聞き、妙に双熾と距離をとってしまっていましたが、この救出を機に彼ときちんと向き合おうと決めました。無事に妖館に戻ると、双熾から、監禁される際に聞いた百鬼夜行の理由と黒幕についての仮説が共有されます。
命の裏にいる人物の名前を聞き、戸惑うメンバーですが、独自に動いていた蜻蛉の留守電の内容もあり、みなが双熾の話に賛同してみせました。
前回の百鬼夜行以前に比べ、お互いを理解して寄り添おうとしている姿が見てとれます。彼らが歩んだかもしれないもうひとつの未来から届いた手紙は、1度大切なものを失った自分たちが書いたからこそ、絆をより強固にする効果があったのではないかと考えられます。
百鬼夜行の終焉に向けて黒幕にどう近づこうか考えるなか、妖館へ1本の電話が入りました。それは、行方不明となっていた蜻蛉の死を報せるものでした……。
蜻蛉の訃報に悲しむ一同ですが、のんびりしている暇はありません。黒幕と思われる人物の元へと潜入します。
証拠が出てこなければ蜻蛉の遺体だけでも取り戻そうと考えていた彼らの前に、命が姿を表しました。
これによって、黒幕候補とされていた人物が、本当に黒幕だったことが証明されてしまいます。予想はしていたものの、それでもやはりずっと信じていた人物に裏切られるのは、辛いものでした。
- 著者
- 藤原ここあ
- 出版日
- 2014-07-22
黒幕は、己の欲望を満たすためだけに凜々蝶たちに助言や手助けをしていたことを知り、あらためて絶望するメンバー。
さらにここでは命の想いも描かれます。妖館のメンバーが仲間のために全力を尽くすように、命もただ黒幕のためにその力を使っているだけなのです。凜々蝶たちは、あったかもしれない未来からの手紙で、前回と今回、2回の百鬼夜行の事実を知ることになりますが、命はこの時代で何千回も百鬼夜行をくり返していました。
彼にとっては、凜々蝶たちの抵抗も過去に何度もあったことなのでしょう。
今回も、くり返される一連の出来事のうちのひとつとなる予定でした。しかし、いつもと違うことがひとつだけあったのです。ひとつ前の百鬼夜行を終えた後、命はすぐに前の時代に戻っていませんでした。
そのことによって、彼は卍里と友だちになるのです。
命と卍里が友だちだった時間は、あったかもしれない未来、つまり今現在卍里が生きて命と対面している限り起き得ない未来です。
無くなった未来で命が起こした気まぐれが、今の凜々蝶たちの命運を大きく分けることなります。
百鬼夜行に終止符を打てるのか、命を呪縛から解き放つことはできるのか、最終決戦は目が離せません。
本作が好きな方におすすめなのがヤンデレ男子が登場する作品を集めた<ヤンデレ男子の特徴がよく分かるおすすめ漫画5選!彼氏にするとどうなる?>の記事。気になる方はぜひご覧ください。
人々の絆と深い愛情が話の根底にある本作。みなが救われる結果となったのか、ぜひとも実際に読んで確かめていただきたいです。