漫画のジャンルが細分化されていくなかで、ひときわ異彩を放っているのが「ヤンデレ」ではないでしょうか。純粋ゆえにその愛情は重くなり、ときには行き過ぎた行動に……。今回は、ヤンデレ男子を楽しめるおすすめの作品をご紹介していきます。
主人公の水谷雫は、成績優秀なものの何事にも執着することのない冷淡な女子高生。ある日、担任教師から不登校気味の吉田春にプリントを届けるよう頼まれ、2人は知り合うことになりました。
春は、イケメンなうえに雫を上回る頭脳の持ち主。しかしやや常識に欠けていて、内心では友人がほしいと思いつつも周囲から孤立していました。雫と知り合ってから、妙に彼女に懐くようになります。
タイプの違う不器用な2人は、徐々に距離を近づけながら、友人を増やしていきます。
- 著者
- ろびこ
- 出版日
2008年から「デザート」で連載されていたろびこの作品。2012年にはテレビアニメ化もされました。
タイトルにもなっている「隣の怪物くん」は、春のこと。彼は黙っていれば頭脳明晰なイケメンなのに、奇行ともいえる言動がたたり、友人がいない残念な少年でした。極度の人間不信なのに友情に飢えているあたり、こじらせ男子が好きな読者にはたまらないのではないでしょうか。
一方の雫は、友人は不要だと考えて自ら孤立しているタイプです。どこか似たもの同士の2人が、徐々に心を通わせあい、支えあっていくさまは思わず応援したくなってしまうでしょう。
デレ成分が多めなのでヤンデレ初級者の方におすすめしたいですが、春が時折見せる言動にはやや危険な匂いも感じられます。独占するために手足を切り落としたい、というのはさすがに……。
『となりの怪物くん』の作品に関しては<漫画『となりの怪物くん』のキャラ、最終回までの見所を全巻ネタバレ紹介!>で詳しく説明しています。
原田実沙緒(はらだみさお)は高校生。幼少の頃から妖怪が見える特殊な体質でした。彼女には烏水匡(うすいきょう)という幼馴染がいて、16歳になる前日に再会します。
そして、実は実沙緒は「仙果の娘」と呼ばれる妖怪に狙われる運命の人間で、匡は妖怪の天狗だったことを知らされるのです。
さらに匡は実沙緒との結婚を宣言。最初は拒否するものの、少しずつ2人の仲は深まっていくのでした。
- 著者
- 桜小路 かのこ
- 出版日
- 2007-01-26
2006年から「ベツコミ」で連載されていた桜小路かのこの作品。妖怪を惹き付けてしまう特異体質の少女と、彼女一筋の天狗が織りなすファンタジーとなっています。
実沙緒にとって匡は初恋の相手だったのですが、当時の記憶を奪われており、再会した彼のことを認識できずに拒絶してしまうのです。「仙果の娘」は妖怪に狙われる運命なので、この事情も相まって当初は心を許すことができません。
一方の匡にとっても実沙緒は初恋の相手。彼は誠実な青年で、種族を越えて彼女を守りぬく覚悟を決めています。実沙緒は実の兄の許嫁だったはずが、自分が結婚相手となるために兄を蹴落としました。
初恋同士の2人が、過酷な運命を乗り越えて結ばれていく様子は感動的。無事に付き合うことができてからの束縛具合も見どころです。
主人公の白鬼院凜々蝶(しらきいんりりちよ)は、ある特殊な事情を抱えた少女。財閥の家柄や常に誰かに守られている自分にうんざりし、ひとり暮らしをしようと最高級セキュリティを誇る「メゾン・ド・章樫(あやかし)」へ入居します。
そこには、彼女と同じ事情をもつ住人たちが集まっていました。
章樫は表向きは高級マンションですが、実は「先祖返り」と呼ばれる妖怪の血を濃く受け継いだ者専用の住居だったのです。
凜々蝶はそこで、妖狐の青年・御狐神双熾(みけつかみそうし)に無理やりボディーガードになられ、他の住人たちと交流をしながら暮らしていくことになります。
- 著者
- 藤原 ここあ
- 出版日
- 2010-04-22
2009年から「月刊ガンガンJOKER」で連載されていた藤原ここあの作品。主な舞台となるマンションが「先祖返り」専用の施設であるため、登場キャラクターはほぼ全員が妖怪です。
凜々蝶は鬼、双熾は妖狐で、ほかにも一反木綿や雪女など多彩な妖怪が登場します。彼らはその出自を除いても個性的なキャラクターばかりなので、読んでいて飽きることはないでしょう。
凜々蝶と双熾の2人は、双熾の方から強引に迫った主従関係なため、マスターたる凜々蝶の方が尻込みしてしまうこともしばしば。双熾は彼女の言いつけであれば命を懸けることも辞さない反面、言質を取ったことは必ず実行させるという、MなのにSの気質を持っているのです。
物語が進んでいくと、徐々に「先祖返り」や凜々蝶の過去が明かされていき、ストーリーも十分に楽しめる内容になっています。
『妖狐×僕SS』の作品に関しては<無料で読める漫画『妖狐×僕SS』の魅力を全巻ネタバレ紹介!>で詳しく説明しています。
須藤凪子(すどうなぎこ)は地味な女子高生。ある日道端で、突然鳶田(とびた)という男から言い寄られます。
鳶田は初対面にも関わらず「不っ細工だね」と凪子をこき下ろし、そうかと思えば強引に交際を迫ってくる始末。
さらに彼は、いつどうやって手に入れたのか、凪子のプライベートをも把握していて……完全に捉えられてしまった彼女は、鳶田の言動に巻き込まれていくのでした……。
- 著者
- 理央
- 出版日
- 2016-09-08
2014年からWebコミックサイト「Championタップ!」で連載されている理央の作品。鳶田は、凪子の名前はもちろん、住所、電話番号にアドレス、果ては行動範囲までつぶさに調べあげていました。
さらに自宅に盗聴器を仕掛けるなど、凪子がおとなしいのをいいことにやりたい放題です。これがヤンデレの愛なのでしょうか……?
また彼は真性サディストの一面も持っていて、言葉や行動で巧みに凪子を縛っていきます。
若干道を踏み外し気味の危険なカップルから目が離せません。普通のヤンデレにマンネリを感じている方におすすめです。
主人公の一条生花(いちじょうせいか)は、白磁のように白くて滑らかな肌の女子高生。そんな彼女を見初めた画家の真部明春(まなべあきはる)は、画商の友人を経由して、生花に専属モデルになってくれるよう頼み込みました。
しかしいざ絵を描こうとすると、自分の欲望が生花を汚してしまうのではないかと思い、なかなか筆をとれません。そうこうするうちに生花が重い病気にかかってしまい……思わぬ方向に2人の関係は進展していくのでした。
- 著者
- モリエ サトシ
- 出版日
- 2009-06-19
2008年から「花とゆめ」「ザ花とゆめ」などで不定期連載されていたモリエサトシの作品。新進気鋭の画家が少女の美しさを見出し、絵のモデルを依頼する……ここまでなら美しいアート作品ですが、本作の初出は「花とゆめ」の「フェティッシュStories」という付録に掲載されたこともあり、その名のとおりフェチズムにあふれた展開が描かれるのです。
明春は対象に触れないと描くもののイメージが浮かんでこないという、ある種の変人。そんな男が美しい肌をもつ女子高生に触れるのは、禁忌を破るようなものです。そしてそれを受け入れる生花の背徳感も含め、ヤンデレを置いておいてもエロスを感じるでしょう。
物語が進んでいくと、生花は病気のため視力を失ってしまいます。悲しいはずですが、明春はそこに食らい喜びを覚えるのです。失明した彼女を閉じ込めておくことができる……このあたりのやり取りはちょっとしたホラーにも思えるでしょう。
お手本のようなヤンデレを味わえる作品です。