世の中には引き込まれる百合漫画がたくさんあります。優れた作品であればあるほど、出来ればその世界に長く浸っていたいものです。そこで今回は面白くて感動出来ることは当然として、読み応えたっぷりのおすすめ百合漫画をランキング形式をお送り致します。
主人公の阿久町(あくまち)ぱむは、不器用で勉強は苦手ですが優しい女の子です。幼い頃、祖母から「優しい悪魔」の召喚法を教わった彼女は、中学生になって試してみるのですが……結果、魔方陣が暴走し、気が付くと彼女は「天魔界」に飛ばされていました。
元の世界に戻るには、修行を積んで立派な悪魔になる以外ありません。こうしてぱむは悪魔研修生見習いとなったのですが、同じく天魔界に飛ばされていた友人、天使側に流れ着いた凛花とは敵同士になってしまいます。果たして彼女達の運命は!?
- 著者
- 森 小太郎
- 出版日
- 2005-01-27
本作は2004年から「月刊電撃コミックガオ!」で連載されていた森小太郎の作品。不慮の事故で異世界に転移してしまった少女達の物語です。
少し古い作品ですが設定が丁寧に作られているので、ファンタジーとしてよく出来ています。
主人公のぱむは悪魔の研修生、さらにその見習いという下っ端からのスタートという不遇に見舞われます。持ち前の明るさと人の良さがあり、悪魔という言葉のイメージとはほど遠い存在です。
もう1人の主人公と言えるリンファ。本名は凛花という少女なのですが、人間界の記憶を失っており、当初は友人であるはずのぱむに刃を向けてきます。
この2人の関係、そして天使と悪魔の関係が絶妙。2つの種族は互いに不可侵の敵。しかし、元々2人は仲良し。敵対関係にあっても邂逅を重ねるうち、徐々にリンファの態度が軟化していくのですが、ルールが邪魔をして一歩踏み込むことが出来ない。そのもどかしさがたまりません。
本格ファンタジー並みにアクションもしっかりしていて、日常生活の描写も豊富です。ラストにはあっと驚く展開もあって、単なる友情百合漫画を越えた一級品。埋もれさせておくには惜しい佳作です。
平安時代の中流貴族に清少納言という娘がいました。中流とはいえ貴族の身、生活には何1つ困ることなく、身の回りは全て他人任せ。やることと言えば、思い付いたことを書き連ねるだけの毎日でした。
見かねた友人の弁官に勧められて、清少納言は中宮定子の家庭教師をすることになります。可憐な定子に理想像を見出した彼女は、生涯を賭けて仕える決意をするのでした。
- 著者
- くずしろ
- 出版日
- 2011-05-07
本作は2010年からWebコミックサイト「まんがライフWIN」で連載されているくずしろの作品。
清少納言と言えば、歴史に詳しくない人でも名前だけは知っている、文学史に残る偉人です。それが百合かつギャグ4コマ漫画になっているというのですから、どこからつっこんでいいやらわかりません。『枕草子』の中宮定子に言及した箇所から着想し、清少納言は定子萌えという設定に行き着いたようです。
つまりまったくの創作なわけですが、何しろ1000年前のことなので、本当に百合だった可能性もなくはありません。
それはともかく、本作における清少納言はかなり極端なキャラとなっています。随筆を書くほど学があり、貴族だから滅多に出歩かないという史実を曲解して、現代風の引きこもりニートのブロガー扱いをされています。ある意味間違いではないのかも知れませんが。
定子に熱烈に入れあげる清少納言の、笑いと暴走の日々。こんな日本史なら楽しく覚えられる……かも?
宮下雪乃は芽の出なかった元アイドル。引退して田舎に戻ったものの、周囲に馴染めず高校を中退、東京にトンボ返りしてかつての事務所でマネージャー見習いをしています。
そうして孤独な毎日を送っていた彼女は、ひょんなことから岩井節子という女性と出会いました。節子は元ミュージシャンの作曲家でした。雪乃に好意を抱いた節子は、体の関係を結びます。そして2人は徐々に深みにはまっていくのでした。
- 著者
- 秋山 はる
- 出版日
- 2008-08-22
本作は2008年から「月刊アフタヌーン」で連載されている秋山はるの作品。
百合漫画にも様々な作品がありますが、本作はかなりトーンの低い作風です。驚くほど完成度の高い、リアリティのあるお話と言っても良いでしょう。
メインの2人はどちらも社会人。ただ甘いだけの恋愛が出来る年齢ではありません。彼女達が生活する中で経験し、向けられる様々な困難がありありと描かれます。具体的には、同性愛に対する反応や、周囲の反対などです。これら問題になってくる困難に、雪乃のアイドル時代の過去や節子の仕事が物語上で関係してきます。
さらには、彼女達が男性と関係を持つ場面も出てきます。嫉妬などのネガティブな感情の描写が多く、決して明るく楽しい百合漫画ではありません。ですが、あえてそういう重い話題を扱い、現実から目を逸らさない展開を乗り越えてこそ見えてくるものもあるのです。逆境の中にあるから、より一層雪乃と節子の関係が際立ちます。
肉体関係からスタートする大人の恋愛。ヘビーでビターな百合漫画をお好みの方はぜひ。
舞台は近未来の東京。未知の異星人「超銀河霊長」が地球に襲来してから、10年の月日が経過していました。
全寮制の聖アグリッパ学園高等部へ入学した南るんなは、首席の優等生鯨岡ミカと出会います。ところが知り合って間もなく、超銀河霊長の攻撃でミカは死亡。ミカを助けたい一心のるんなの元に、魔法のブレスレット「マブ」が突如現れ、2人は合体して巨大な戦士に変身しました。
こうしてるんなとミカは一心同体のヒーロー「ミカるんX(クロス)」となって、地球の運命を背負った戦いに身を投じていくのでした。
- 著者
- 高遠 るい
- 出版日
- 2008-04-18
本作は2007年から「チャンピオンRED」で連載されていた高遠るいの作品。
セクシーな下着姿で寄り添う2人が描かれた表紙から窺えますが、本作はお色気色の強い漫画です。さらに言えば、特撮作品やSF作品のパロディにもなっています。冒頭のベースになっているのは『ウルトラマンA』ですし、知名度の高いSFアニメからマイナーなハードSFまで多種多様。特撮やSF好きにはたまらないネタが多数出てきます。
もちろん、百合漫画としても上質です。主人公るんなとミカの友達以上恋人未満な関係から、終盤への発展が見所。ミカるんへの変身時には全裸で巨大化するのですが、その状態での2人の反応の差も楽しいです。またこの2人以外にも、ある脇役カップルの印象的な話は涙なくしては読めません。
序盤はパロディ多めのコメディな展開が続きますが、徐々にシリアスな作風へとシフトしていきます。前半と後半では中身ががらりと変わってしまいますが、しっかりと伏線がちりばめられているので違和感はありません。
円谷作品を強く意識した巨大ヒーローモノ。嬉し恥ずかしの百合あり、熱血の燃えるバトルあり、かと思えば一転してグロテスクな描写や、容赦ない鬱まで。様々な属性てんこ盛りの贅沢な作品となっています。
主人公の熊倉真理子は内向的で大人しい、優等生の少女です。2学期になって高校生活も慣れてきた頃、彼女はそれまで接点のなかったクラスメイトに話しかけられます。そのクラスメイト、大橋亜希子は真理子とは反対に派手で社交的、あまり勉強の出来ない子です。
亜希子のフランクなペースに飲み込まれた真理子は、戸惑いながらも新しい友人との関係を少しずつ深めていきます。単なるクラスメイトから楽しい友人、そして友人から……。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2007-12-12
本作は2006年から「コミックハイ!」で連載されていた森永みるくの作品。
物語の主眼はずばり、女の子の友情と恋です。ただ恋愛関係を描くことに終始せず、友人関係から始まるというワンクッションを置くことで、現実的な地に足のついた作品となっています。
そういう作風なので、当初は百合漫画というよりは、優等生とギャルが友情を育んでいく青春ドラマのような展開です。亜希子の勘違いから始まった接点で対等な関係になり、連れ立って買い物に行き、食事を楽しみ、勉強をしたり遊んだり。女子高生のごくごく一般的な日常、ある種理想的な女子の友情が描かれます。
それがある時点を越えると、彼女達の中で友情ではない、特別な感情が芽生えていくのです。大事な友人に対して芽生えてしまった恋心に戸惑う心理描写が素晴らしいの一言。年頃の少女ならではの機微が的確に捉えられています。
この辺りの表現は異性愛の観点からの迷いではなく、初恋の甘酸っぱさに重点が置かれており、作品の感動を阻害しない良い配慮だと思えます。
友情から恋愛感情への自然な流れは秀逸で、百合漫画好きにはもちろん、入門としても最適な作品となっています。
いかがでしたか? 短すぎず、さりとて中だるみするほど長くもなく。美味しいところだけぎゅっと詰まった珠玉の作品を選出してみました。今回の中に未見のタイトルがあれば、ぜひ読んで見て下さい。
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