近年ファンを増やしつつある百合漫画。女の子同士だからこそ、難しい問題や純粋で美しく昇華した作品に出会うことができるジャンルです。今回は、優しい気持ちになれる感動作から、涙なくしては語れない悲恋の物語まで、おすすめの百合漫画を厳選し、10作ご紹介していきます。
女子高生の鳴瀬ウタは兄の怜一とその妻・薫瑠の家に同居しています。
昔からずっと慕っていた、幼馴染みのお姉さんでもある薫瑠。ウタは1年前の結婚式の日、彼女へ恋心を抱いていることを自覚してしまったのです。
もっとも愛しい人とこんなにも近い場所で暮らせるのに、その事実が少女の心を切なく締め付けます。
- 著者
- tMnR
- 出版日
- 2017-05-18
本作は2016年から「コミック百合姫」で連載されているtMnRの作品。好きな人を失うことになって初めて気づいた恋の物語です。
物語の開始早々にこれが悲恋であることが決定づけられ、幸福な結末が来ないであろうことが暗示されてしまいます。とりわけ残酷なのは、女性が最大級に輝く瞬間であるウェディングドレス姿を見て、気持ちを自覚したというところでしょう。
ウタは、兄嫁に片想いをしていること以外はごく普通の女の子です。一般的な常識をわきまえていて、これが禁断の恋であることも、1歩踏み出せば幸せな生活を壊してしまうこともわかっています。
そして彼女にとって何より辛いのは、兄夫婦との同居生活が楽しいということではないでしょうか。幸福と不幸の板挟みで、心中穏やかではいられません。
そんななか彼女は、友人のクロエに恋をしているみや美という少女と出会います。実らぬ恋に身を焦がす少女たちの物語は、どのような結末を迎えるのでしょうか。
主人公の栗原歩は中学2年生のスポーツ少女です。お年頃にありがちな浮かれた話や片想いの相手もなく、恋愛とは無縁の日々を過ごしてきました。
そんな彼女と新しいクラスで隣の席になったのが、学校1の美少女といわれる月島美鈴です。歩が思い切って話しかけたところから2人の関係は始まるのですが、美鈴は懐に入ってこようとする歩を拒みます。
- 著者
- えばん ふみ
- 出版日
- 2010-09-15
本作は2010年から「りぼん」で連載されていたえばんふみの作品。第1話から歩と美鈴のキスシーンがあり、それが「りぼん」に掲載されたということで話題になりました。
明るく活発な歩に対して、美玲は人を寄せ付けない謎めいた美少女です。当初美鈴は歩との接触を避けようとしますが、実はそれは過去の男性関係からくるトラウマが原因でした。
男勝りな少女と男嫌いの少女、という百合漫画の定番の組み合わせ。ですが普通の作品と違うのは、等身大の思春期の女の子の姿が徹底されており、女子特有のドロドロとしたした独占欲が赤裸々に描かれているところでしょう。
全3巻ですが、1・2巻と3巻は別のお話。後者は一転して明るい物語です。
2学期になり、高校生活にも慣れてきたころ、熊倉真理子はこれまで話したことがなかった大橋亜紀子から突然話しかけられます。真理子は優等生で、亜紀子は勉強のできないギャル。まるで接点のない2人でしたが、社交的な亜紀子との交流は新鮮で、彼女たちはじきに友人となりました。
正反対なのに妙に気が合う彼女たち。今時の女子高生らしいイベントを経て、2人はどんどん親密になっていきます。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2007-12-12
本作は2006年から「コミックハイ!」で連載されていた森永みるくの作品。
友情から愛情へ変化していく関係は、これぞ百合漫画の王道といえるでしょう。ただの友人から親友になっていく過程も丁寧に描写されているので、青春学園モノとしても成立しています。
そもそも2人が話すようになったきっかけは、亜紀子の勘違いでした。勉強の苦手な彼女は、試験期間開けで浮かない顔をしていた真理子を見て、自分と同じ状況だと早とちりして一方的に親近感を持ったのです。
人付き合いが苦手で、これまで友人と遊んだ経験などほとんどなかった真理子にとって、亜紀子の手ほどきによる「女子高生らしい」日々は驚きの連続。彼女たちの日常や内縁が絶妙に描かれているので、2人の存在がやけにリアルに感じられます。
そして2人はしだいに、「仲がいい」という言葉では足りない感情を抱いていきます。ごく自然に、異性に恋をするのと同じレベルで友人を好きになってしまったことに戸惑うのですが、その感情が実にストレートで甘酸っぱいのです。
まるで宝石のようにピュアで美しい女の子同士の恋愛は、正統派百合漫画として、誰にでもおすすめできる名作だといえるでしょう。
いかがでしたか?百合漫画とひと括りにしても、ここまでバラエティに富んだラインナップになるのです。これまで知らなかった百合漫画の世界、1度覗いてみませんか?
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大人向けの切ないおすすめ百合漫画ランキングベスト5!
女の子同士や大人の女性同士の恋愛が描かれた百合漫画。同性ならではの葛藤や、女性ならではのキレイな雰囲気を楽しむことができます。今回は、数ある百合漫画のなかでも大人の読者が夢中になれる作品をランキング形式で紹介していきます。
「ヒロちゃん」と「チカちゃん」はごく普通の女子高生。10年前、チカが4歳の時に、雨に困っている女子高生のヒロに声をかけたのがきっかけでした。
そう、ヒロはある研究機関に所属していて、人知れず人間性と社会性を学習しているロボットだったのです。少しずつ人間になっていくロボットと、少しずつ大人になっていく少女の心の交流が描かれています。
- 著者
- 西 UKO
- 出版日
- 2014-11-14
本作のカップルは人間の女の子と、女の子のように見えるロボット。
ヒロは機体名プラハというロボットですが、一見すると普通の女の子にしか見えません。名前や身分を変えながら実地で学習を続けてきたおかげでしょう。
チカは普通の人間の女の子。ヒロと違って年々成長し、本編の時間軸でようやくヒロと対等の年齢になりました。同性愛だけでもハードルがあるのに、人間とロボットという種族の差が2人を阻みます。
悩みぬいたすえに気持ちを打ち明けるチカと、ロボットの自分なりに懸命に受け入れようとするヒロの姿が切ないです。
また脇役として登場するヒロの研究所の職員たちも、人間味があって魅力的。物語にグッと奥行きを与えます。
本作はピュアな百合漫画というだけに留まらず、SF作品としても珠玉の一冊になっています。
風祭まつりは元気が取り柄の女子高生。彼女が通う高校の向かいには、古い小さな書店「ひまわり書房」がありました。店長は「ひまわりさん」と呼ばれている女性で、まつりをはじめ多くの人から好かれています。
そんなひまわりさんと、彼女のことが大好きなまつりを中心に、ひまわり書房に訪れるさまざまな人たちを描いた物語です。
- 著者
- 菅野 マナミ
- 出版日
本作は2009年から「月刊コミックアライブ」で連載されている菅野マナミの作品。
物語の舞台となるのは主にひまわり書房とその周辺です。ひまわり書房はどこにでもありそうな小さな本屋さんですが、ひまわりさんはお客さんにぴったりの本を提供します。そのため彼女もこの店も、多くの人から愛されているのです。
まつりはなんの躊躇もせず、挨拶代わりに「好きだ!」と言うなど、感情表現が豊かな少女。ひまわりさんはそんな彼女に対してクールかつドライな対応をするのですが、時おり見せる素の表情が愛らしいです。
店を訪れる客たちもそれぞれの事情を抱えていて、彼らと繋がりを築いていく様子が見どころ。メインが人情話なため百合要素はやや控えめですが、全体的に癒し成分が多く、百合作品初心者の方にもおすすめだといえるでしょう。
遠い未来、人類は地球を出て太陽系に進出していました。火星はいまや水を湛えた惑星に変わり、「アクア」と呼ばれるようになっています。
主人公の水無灯里(みずなしあかり)は、アクアの観光都市ネオ・ヴェネツィアで水先案内人(ウンディーネ)となるため、はるばる地球からやって来ました。
「ARIAカンパニー」に入社し、藍華やアリスといった仲間たちと出会い成長していきます。
- 著者
- 天野 こずえ
- 出版日
本作は2002年から「月刊コミックブレイド」で連載されていた天野こずえの作品。何度もアニメ化されているので、タイトルをご存知の方も多いでしょう。
水の星アクアを舞台にした若きウンディーネの青春が、美しいヴェネツィアの街並みのなかで描かれます。作中に登場するキャラクターは女性が多く、その誰もが魅力的です。
「いいこと」を探すことが得意な灯里は好感が持てる少女で、彼女を導く先輩アリシアは愛情深くて母性的。負けず嫌いで勝ち気な藍華と灯里のやりとりは常に面白く、見ていて飽きません。そして無口なアリスのことはつい見守りたくなってしまいます。
百合要素は薄めですが、彼女たちの友情や強い心の繋がりは、読んでいて心地のよいもの。百合漫画初心者にもおすすめです。
2005年~8年の間に、テレビアニメの3作品と劇場版が放送されています。
母子家庭で育った白築慕(しらつきしの)は、家族で麻雀を囲むのが大好きな小学4年生です。ところがある日、母親のナナが突如行方不明になってしまいました。
親しい叔父の耕介に引き取られ、5年生になった慕は、麻雀で有名になれば母親と再会できるかも知れないと考えはじまめました。そうして彼女は子供麻雀大会に飛び込んで行きます。
人気作『咲-Saki-』の時代の十数年前の物語です。
- 著者
- ["小林 立", "五十嵐 あぐり"]
- 出版日
- 2013-12-25
本作は2013年から「月刊ビッグガンガン」で連載されている小林立原作、五十嵐あぐり作画の作品。タイトルの「シノハユ」とは漢字で「偲はゆ」と書き、昔の出来事に思いを馳せるという意味です。
美少女麻雀漫画として一世を風靡した『咲-Saki-』のスピンオフで、本編に登場するプロ雀士や、彼らが影響を受けたレジェンドをメインに据えたお話。慕と石飛閑無(いしとびかんな)の2人が主人公です。
当初、楽しみながら麻雀をやりたかった慕は、閑無と対立。後に大会で死力を決したことで認め合い、ともに全国大会を目指すようになりました。
価値観の相違から対決し、その結果戦友になるところは、まさに本編の咲と和のようですね。ただ慕も閑無も小学生なので、新鮮に感じます。
麻雀シーンよりも日常風景に重点が置かれていて、ライバルにしろ仲間にしろ、女の子同士の絡みが多く描かれています。
2009年~12年の間に、テレビアニメ第3作品が放送されました。
『シノハユ』については、以下の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
『シノハユ』の魅力を8巻まで徹底紹介!『咲-Saki-』と一緒に読みたい
美少女麻雀漫画『咲-Saki-』のスピンオフ作品である『シノハユ』。麻雀の描写とともに、日常も濃く描かれており、特に主人公・シノの心理が細かに描かれます。麻雀漫画としても、日常漫画としても楽しめる本作。ぜひとも読んでみてください。
主人公のカギリとみなもは、たった2人で生活しています。外見的にはカギリは妹、みなもは姉のように見受けられますが、実は逆。カギリは不老不死で、みなもは通常より早く成長してしまう体質の持ち主だったのです。
みなもの成長を止めるため、カギリは表向きで学生生活を送りながら、裏では血で手を染める生活を送っています。「時間商人」と呼ばれる少女と契約して、殺人をくり返しながらみなもに命を与えていたのです。
- 著者
- 高崎 ゆうき
- 出版日
- 2010-10-18
本作は2010年から「コミック百合姫S」などで連載されていた高崎ゆうきの作品。百合とダークファンタジーという、非常に挑戦的な取り合わせです。
不老不死の少女が、死に行く少女のために殺人を犯す……同性愛などを軽々と飛び越えるような凄まじい設定です。
2人の関係自体もかなり親密で危なっかしいもの。純粋で重い愛が描かれます。
時間商人とのやりとりにも百合的な要素はありますが、そこに感情はこもっていません。これによって、カギリとみなもの関係がさらに鮮明になるのです。
ハッピーエンドが想像できないシリアスでダークな一冊、ぜひお試しください。
表題作を含む6篇の短編集です。
「卒業終了」では、卒業が目前に迫ったある日、ルイとレイカという2人の少女が髪を染めて登校します。なるべく問題を起こしたくないと考えていたクラスメイトは凍り付きましたが、2人は、お互いだけが世界で特別な存在になりたかったのです。
「ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ」では、中高生に人気の生放送サイトに現れる「まどれーぬ」という人物に憧れた主人公が、ヤギの被り物をして黒魔術の実況をします。
そこそこ人気が出てきたところで、実は2人が同じ学校に通っている生徒だったことがわかり……。
- 著者
- 大沢 やよい
- 出版日
- 2012-05-18
本作は2011年から「コミック百合姫」で断続的に掲載されていた大沢やよいの作品です。
特徴的なのは、すべての物語の登場人物が瑞々しく、生き生きとしていること。それもそのはず、作者は本作にも収録されている「夕暮れ、オレンジ、咲く花は」で商業デビューを果たした時まだ10代でした。
つまり、作中で描かれる少女と限りなく近い年代なのです。だからこそ、キャラクターたちの言動がよりリアルに感じられます。
短編の種類はコメディタッチからシリアスまで多種多様。百合作品としても上質で、カップルの両者の内面をしっかりと描いているので、個々の展開がスムーズでわかりやすいです。
表題作の「ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ」は『ストレンジベイビーズ』という続編も出ているので、気になった方はそちらもチェックしてみてくださいね。
まほろばの村に住む来栖川姫子(くるすがわひめこ)と姫宮千歌音(ひめみやちかね)は、乙橘学園に通う女子高生。彼女たちの16歳の誕生日に起きた「黒い日食」で、邪神オロチが復活してしまいました。
姫子と千歌音はかつてオロチを封印した巫女の生まれ変わりであることがわかり、命を狙われることになります。
彼女たちと幼馴染みの少年、大神ソウマは、オロチの眷属として覚醒するも2人を守るために離反し、こうして3人の地球を守る戦いが始まるのです。
- 著者
- 介錯
- 出版日
- 2004-10-01
本作は2004年から「月刊少年エース」で連載されていた介錯の作品。テレビアニメ化もされました。
悪の力で目覚めたソウマは、「武夜御鳴神(タケノヤミカヅチ)」という日本神話の神の名を冠されたロボットに乗って戦います。ヒーロー1人に、ヒロインが2人。一見するとハーレム状態の典型的なヒロイックロボットアクションですが……メインは2人のヒロインの関係で、ソウマは脇役なのです。
物語の出だしこそ、姫子とソウマの「よい仲」が描かれるものの、そんな彼らを1歩引いて見ている千歌音は密かに姫子に想いを寄せており、表立ってイチャイチャするソウマに嫉妬していました。
中盤から終盤にかけては衝撃的な展開が続き、思いも寄らぬ結末を迎えます。これが一部で「伝説的な百合作品」といわれるゆえんなので、ご注目。作者が掲げる本作のテーマ「ヒーローを押しのけてまで求め合う禁断の愛」というところからもその一端がうかがえるでしょう。
漫画とアニメは、ストーリーの大筋は変わらないものの結末が異なるので、未見の方はもちろん、アニメを知っている方でも楽しむことができますよ。