私が常日頃、好きな小説に挙げている作品は、フィリップ・K・ディック『高い城の男』である。小学校6年生の秋、父から手渡されたそれで、すっかり、フィリップ・K・ディックの作品に嵌ってしまった。
第二次世界大戦で、枢軸国側が勝利した世界。アメリカは東西に分断された。西は日本、東はドイツが支配している。所謂、歴史改変SFと言われるジャンルである。その世界では、連合国側が勝利した『イナゴ身重く横たわる』という小説が、発禁書とされながら流行している。それぞれ異なる立場にいる人々を描いた群像劇だ。本物と偽物、リアリティとリアル、ディックの作品に共通するテーマをどのようなアイテムで表現しているか、ここがとてもニクイところで……と、語り始めると止まらないので、この私にとっての「殿堂入り」の紹介はこのへんにしておきたい。
- 著者
- フィリップ・K・ディック
- 出版日
- 1984-07-31
- 著者
- ピーター トライアス
- 出版日
- 2016-10-21
戦後日本の日本語政策をテーマにした日記形式の小説で、その文章はすべて旧字体で旧仮名遣いである。戦後の日本社会の変化が、日本人男性のアイデンティティ喪失と結び付けられている。タイトルである「東京セブンローズ」の元ネタは「東京ローズ」。日本が連合国向けに行なったプロパガンダ放送の名である。女性DJたちは、美しい声で連合国側に語りかけた。
- 著者
- 井上 ひさし
- 出版日
- 2002-04-10
先述の「アメリカひじき」が収録されている、短編集だ。アニメ映画で有名な表題作を含め、戦中戦後の日本人の揺れ動きを独特な戯作的文体で表現している。そのテンポ感に私はやみつきになった。戦争の記憶は、急激な豊かさで忘れることのできるようなものではない。
- 著者
- 野坂 昭如
- 出版日
- 1968-02-01
本とアイドル
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