1994年刊行から連載され、全世界累計発行部数は2億3000万部の名作『名探偵コナン』のキャラクター。謎に包まれた黒ずくめの組織の№2、「ラム」。未だにコードネームや不確定な要素しか明らかになっていないこの人物の正体について考察してみました!
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2014-12-18
単行本85巻で、キールから赤井に届いた「RUM」というメール。黒ずくめのボスの側近である人物がとうとう動き出したという緊張感のもと始まった「ラム編」では、バーボン編と同じく3人の新しいキャラクターが登場しています。果たして誰がラムなのでしょうか?考察していきます。
黒ずくめの組織のボスの側近であり、ジン以上の大物と言われている「RUM(ラム)」。灰原が組織にいた頃耳にしたラムの特徴は様々です。屈強な大男、女のような男、年老いた老人など……しかし、左右どちらかの目が義眼という情報だけは確かなようです。
98巻現在、ラムだと思わしき人物は4人います。
浅香
浅香は、アメリカの資産家・アマンダ・ヒューズのボディガードであり、17年前にアマンダと羽田浩司を殺害した犯人として追われるも、未だに身元も特定されていないという怪しい人物です。唯一わかっているのは、女性であるということのみです。
ふたりの死因が原因不明であること、羽田浩司の名前がAPTX4869を飲まされた人物のリストに載っていたことから、アマンダと浩司は組織の人間によってAPTX4869を飲まされ死亡したと推察されます。
単行本90巻File.2「切り取られた文字」で、コナンと赤井は羽田浩司が残した「ASACA RUM」というダイイングメッセージに気づきます。
また、黒ずくめの組織の幹部であるジンやウォッカも羽田浩司殺害事件のことを口にしており、ラムが関わっていたことは間違いないようです。
「フン…17年前にラムが抜かった仕事なんざ…知った事か…」(『名探偵コナン』第90巻より引用)
これにより、浅香とラムは同一人物であり、羽田浩司殺害事件の犯人であるとの推測が成り立ちます。しかし、羽田浩司が殺害された理由や組織のやり方に反して荒らされた羽田浩司の部屋など、まだまだ謎が残っており、浅香=ラムだとはっきり断言できない状態です。
黒田兵衛
黒田は大事故に遭い、10年近く意識不明で警察病院に入院していた人物で、最近目覚めて警察庁から長野県警に出向した先でコナンと初対面を果たしました。その数日後には警視正に昇格した松本に代わって警視庁刑事部捜査一課管理官に着任しています。事故のストレスで黒髪が白髪へと変わり、事故で顔に火傷を負い右目が義眼となっているラム候補のひとりです。
その巨躯と恐ろしい顔つきから、一番ラムのイメージに近いかもしれません。灰原が言っていたラムの特徴のひとつ、屈強な大男にまさしくぴったり当てはまる人物です。彼がラムだとすると、警察組織に属しながら組織の一員であるということから、安室や水無怜奈のように潜入捜査という線もありますが、ラムは組織の№2なのでその可能性は薄いでしょう。むしろ、10年近く意識不明だったということから、「ラム」が本物の黒田兵衛とすり替わったと見た方がいいですね。
黒田について特に気になるのは、コナンについて詳しく知っていたということです。
「意外な着眼点で事件解決の糸口を見つけ推理をバックアップする…眠りの小五郎の知恵袋…」
「警察庁ではそう噂されていたよ…江戸川コナン君…」(『名探偵コナン』第87巻より引用)
警察庁というと思い出すのは、警備企画課の「ゼロ」から黒の組織に潜入捜査をしている安室透です。安室は数々の事件や来葉峠での一件で、コナンがただの小学生ではないことに気がついているので、黒田は安室からコナンについて聞いていたという可能性があります。そうすると、黒田は安室の上司ではないかという推測が成り立ちます。もしかすると、10年近く前に黒田が遭った事故というのも、組織絡みのものなのかもしれません。その場合、黒田はラムではなく、むしろ組織を追う立場にあるということになります。
しかし、本物黒田にすり替わったラムに安室が「バーボン」として情報を提供した可能性も考えられますから、黒田=ラム説も捨てきれません。
若狭留美
珍しい時期にコナンたちのクラスの副担任としてやってきた小学校の先生です。37歳なのですが、お辞儀の際に教壇に頭をぶつけたり、転んでしまったりと、かなりのドジっ子である様子を見せています。
しかし、コナンを始めとした子どもたちや周囲の人間には誤魔化しているものの、強盗や殺人犯と相対すると恐ろしげな表情とかなりの戦闘力を見せています。この異様な雰囲気は組織の№2と言われてもおかしくないほどのものですね。
単行本第93巻では右目が義眼だということが明らかになっており、コナンは先述のドジっ子っぷりは義眼によって遠近感が狂っていたからではないかと推理しています。
また、コナンが推理に行き詰まっているのを意味ありげに見つめ、その後若狭の「ドジ」がコナンのひらめきに繋がっていることもあり、推理力も高いのではないかと推察されます。
しかし、若狭=ラムであるとは断言しにくい状況です。その理由は、若狭に対する灰原の態度にあります。
「言っとくけど私、好きだから若狭先生… だから悪く言わないでくれる?」(『名探偵コナン』第93巻より引用)
灰原は組織に近い人間に対して過度に怯えます。ジンやベルモットはもちろん、過去に所属していた赤井(沖矢)や潜入捜査で組織に潜り込む安室に対しても敏感にその「組織の気配」を感じ取っています。そんな彼女が、珍しい時期にコナンや灰原の所属するクラスの副担任としてやってきて、なおかつ右目が義眼である怪しさ満載の若狭を擁護しているのです。
灰原は若狭の右目が義眼であると気づいてからしばらく若狭を警戒していたのですが、コナンが推理に夢中になっている間にはすっかりその警戒を解いています。若狭を警戒するコナンと対照的に、若狭への好意を見せる灰原……コナンと灰原で新登場キャラクターへの態度が違うということで、登場初期の沖矢昴が思い出されます。
沖矢の正体がFBI捜査官・赤井だと知っていたコナンは、過去組織に所属していた赤井(沖矢)に怯える灰原に対してしきりに「大丈夫」と言っていましたが……今回、若狭に対してそれと逆のことが起こっているようですね。
つまり、灰原の態度から考えると、若狭=ラムの可能性はかなり低いのです。もしかすると、コナンが信頼を見せていた沖矢(赤井)がFBI所属であることを考えれば、若狭も黒ずくめの組織を追う立場にあるのかもしれません。しかし、ラム候補として登場した3人の中で唯一の女性キャラクターということから、若狭=浅香である可能性はあります。そうすると、浅香はラムではないということになります。
脇田兼則
毛利探偵事務所の横にあるいろは寿司の板前です。本人曰く「ひどいできものができた」とのことで左目に眼帯をしています。ラム候補として登場した3人のキャラクターのうち2人が右目を患っているのに対し、1人だけ左目を隠しているキャラクターです。
なかなかの観察力・洞察力を持っており、初登場時には小五郎に推理勝負を挑むも、「眠りの小五郎」に完敗し小五郎に弟子入りすることになりました。
バーボンである安室も同じく小五郎に弟子入りしており、毛利探偵事務所の階下にある喫茶店ポアロでバイトを始めるという経緯を辿っています。順番は逆ですが、仕事場が毛利探偵事務所の隣、小五郎に弟子入りといった点は安室と類似していることから、ラムではないかという疑いが濃くなっています。
最近になっていろは寿司に来たらしく、前の店員は交通事故で大怪我をして入院しているとのこと。彼がラムだとすれば、小五郎に近づくために前の店員を事故に遭わせ自分が潜り込んだとも考えられますね。
黒田と脇田はそれぞれ新聞に載った若狭の名前について反応を示しています。おそらく両者とも、「若狭留美」をアルファベットにすると、羽田浩司が残したダイイングメッセージ「ASACA RUM」が含まれることに気づいての反応だと思われます。珍しい名前でもないのに注目したということは、両者とも若狭の顔を知っているということになるのでしょうか。
もしも若狭がラム本人であるならばこんな大胆なアナグラムを偽名にすることはないでしょうから、やはり若狭がラムである可能性は低いですね。反対に、この名前に反応を示したふたりのうちどちらかがラムである可能性が高いです。若狭の名前に反応したということは、どちらも赤井とコナンがひとつの事件からヒントを得てようやくたどり着いたダイイングメッセージに気づいているということであり、どちらがラムにせよ両者ともかなりのキレ者であるということが分かります。
黒田と若狭は単行本第93巻で邂逅を果たしています。そのときに若狭は黒田を鋭く睨みつけており、とても初対面とは思えません。浅からぬ因縁があるように見えますね。今までの考察に則って考えれば、若狭が罪をなすりつけられた浅香であり、黒田が罪をなすりつけたラムということになりますが……若狭については先述しましたが、黒田に対しても灰原が「組織の気配」を感じ取っていないことには注目したいです。
ラム候補のうち、灰原と未だに顔を合わせていないのは脇田のみ。脇田に対して灰原が過度に怯えるようであれば、脇田=ラム説が濃厚になるでしょう。
黒の組織については<漫画『名探偵コナン』を本気でネタバレ考察!【黒の組織編】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
以上、ラムについての考察をまとめました。現段階では若狭=ラム説の可能性は低い、ということしか言えませんね。今後の展開に注目したいところです。