『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は、妖怪と人間の交流を描いたほのぼの系ギャグマンガです。妖怪物なのにホラー系でなく、マンガなのにコマ割りが無い……何から何まで斬新で独特なスタイルの作品となっています!
『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は、WEBマンガ家として活動する影山理一の代表作です。2010年から「マンガごっちゃ」などのWEBマンガサイトに連載されると徐々に人気を博し、2016年にはテレビアニメ化もされています。
- 著者
- 影山 理一
- 出版日
- 2011-05-26
本作は、自称「霊感美少年」の奇異太郎が、ある時から自宅に現れるようになった妖怪たちと親交を深めていくほのぼの系ギャグマンガです。登場キャラクターのほとんどが妖怪なのが珍しいですが、いわゆる「日常系」の作品と言ってよいかと思います。
本来は恐ろしい存在であるはずの妖怪と仲良くなった奇異太郎は、座敷童子に掃除婦を命じたり、垢嘗めにトイレ掃除を任せたり、泥田坊に畑仕事をさせたり…… 妖怪が登場するとはいっても決してホラー系作品ではなく、妖怪と人間が共存する毎日を描いた優しくて温かい物語となっています。
今回は、『奇異太郎少年の妖怪絵日記』の魅力について徹底的に解説していきたいと思います。テレビアニメ第1期が終わって間もない本作ですが、ますます人気急上昇中なので今のうちにチェックしておいてくださいね!
幼いころから霊感が強かった少年・奇異太郎は、ちょっとしたイタズラが原因で家を追い出され、古びた離れに住まされることになってしまいます。 離れに引っ越した奇異太郎は「座敷童」を名乗る少女・すずと出会いますが、怖がることもなく彼女を掃除婦に任命して一緒に暮らし始めました。
どうやらこの離れは妖怪の世界と人間の世界の狭間にあるらしく、その後も奇異太郎のもとには毎日のように妖怪が訪れるようになります。
しかし奇異太郎は妖怪を敵視することなく、妖怪と一緒に暮らしたり、妖怪と一緒に遊んだり、妖怪を小間使いにしたりしながら穏やかに暮らしていくのでした。
上でも少し触れましたが、『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は妖怪が出るとは言っても単なるホラー系作品ではありません。どちらかと言えばギャグマンガに近いのですが、ホラー×ギャグ×日常……様々な要素が絡み合った独特な作風のマンガなのでジャンルの断定ができません。
妖怪がテーマになっているのですが、怖さは感じないのでホラー系が苦手だという方でも問題なく読めると思います。 登場する妖怪のほとんどは見た目こそ恐ろしいものの、かなり人間っぽい性格をしている者がほとんどなので全然怖くないんです。
奇異太郎はほとんどの妖怪と友達になってしまうので、雪女の家に泊まったり、妖狐と一緒にお茶したり、貧乏神を泊めてあげたり……なんて、ほっこりしたストーリーが展開されていきます。
ストーリーの斬新さもさることながら構成も独特なのが本作の特徴。 『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は一応マンガというジャンルなのですが、1ページにつき1~2コマという珍しい構成になっているんです。 さらに吹き出しは一切使われていないので、キャラクターのセリフはそのまま絵の上にベタ書きされています。
また、初めて読んだ人が必ず驚くのが、この作品が「左開き」であるということです。 マンガは「右開き」になっているのが普通ですが、『奇異太郎少年の妖怪絵日記』はノートのように左開きで読み進めていきます。
1ページ1コマという構成と、左開きという様式が相まって、マンガというよりも「絵本」を読んでいるような感覚になってしまいます。 この不思議な感覚が、この作品が持つ独特なミステリアス感をさらに高めてくれるのです。
- 著者
- 影山 理一
- 出版日
- 2011-12-18
『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は、読み進めるほどに魅力が増していく作品です。 本作では基本的に1話1匹のペースで新しい妖怪が登場するのですが、なかには1回限りの登場ではなくレギュラーキャラクターとして居座る妖怪がいるからです。 登場回数の多い妖怪にはどんどん愛着が湧くので、話数を重ねるほど、読めば読むほどに引き込まれてしまうんです。
特に、最も登場回数の多い妖怪のすずは本作屈指の人気キャラクターとなっています。 最初の頃は奇異太郎に冷たく接していたすずですが、だんだん奇異太郎に好意を持つようになり、いつしかメインヒロインのような立ち位置のキャラクターになっていきました。 別に奇異太郎と付き合っているというわけでもないのですが、傍から見る分には奇異太郎の奥さんそのものです。
見た目が恐ろしい妖怪たちも、かなり個性的な性格をしているので見ていて飽きません。 罵詈雑言を吐いて心理的に冷たい雪女、ホームレスにしか見えない塵塚怪王、すずの入ったお風呂を舐めるのが生きがいの垢嘗め…… 現時点で100体以上の妖怪が登場しているので、個性的な妖怪を挙げ始めればキリがありません。
『奇異太郎少年の妖怪絵日記』を読んでいると、個性的な妖怪たちの日常を観察するのが楽しく思えてきます。 この作品を読破し終えるころには、アナタにもきっとお気に入りの妖怪ができているはずです。
『奇異太郎少年の妖怪絵日記』の魅力のひとつが「絵が可愛い」ということではないでしょうか。
すずを始めとした女性妖怪は特に可愛らしく描かれています。 奇異太郎の家に集まることが多い、すず・妖狐・雪娘はいずれも美少女揃いなので、ほぼハーレム状態の奇異太郎が羨ましくさえ感じます。 恋愛がメインのストーリーではありませんが、萌え系マンガとして本作を楽しんでいる読者も少なくないのではないでしょうか。
女性キャラクターだけでなく、おどろおどろしい妖怪すらも可愛く描かれているのが本作の面白いところでもあります。 獣が変化して生まれる妖怪の「経立」がハムスター姿だったり、富をもたらす妖怪の「銭神」がスーパーマリオのコインブロックの形だったりもしました。
こうした可愛らしいデザインセンスも、『奇異太郎少年の妖怪絵日記』を楽しく読むためのエッセンスになっています。
- 著者
- 影山理一
- 出版日
- 2016-12-22
この記事を執筆している2018年1月現在、『奇異太郎少年の妖怪絵日記』は9巻まで発売されています。 最新10巻の発売日は未定とのことですが、すでに単行本を出せるだけの話数は溜まっているので10巻の発売日はそう遠くないはずです。 単行本にはWEBに未掲載の内容が載ることも多いので、最新刊の発売が待ち遠しいです!