俳優・橋本淳が選ぶ「気づけば手の中に収まっていた」おすすめの本

更新:2021.12.3

はじめまして、橋本淳と申します。今月より此方で書籍のご紹介をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願い致します。何も自己紹介なしに始めるというのも、どうかとも思うので、少々。俳優をやっています。もっぱら舞台が中心。職業柄、活字とは切っても切れない関係です。台本を読み解き、解釈し、立ち上げる。簡単に言うと、いや雑に言うと、そんな仕事です。

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昔は「読書」というものに興味がなく、いや寧ろ抵抗があったのですが、この仕事をするにあたって本と向き合う時間を創るようになったお陰か、徐々に寄り添える間柄になったように感じます。そんな「読書家」と、呼べるにはほど遠い私ですが、最近読んだ本などを紹介していきたいなと思います。よろしくお願いします。

なにかテーマを決めて、と思ったのですが、フラッと本屋に入り、パラパラとページをめくり、気づけば手の中に収まっていた本をざっくりさくっと、紹介していきます。

香り立つキャラクターの歪さ

著者
村上 春樹
出版日
2015-12-04

ハルキストの皆さま、すいません。恥ずかしながら初の村上春樹さん。大抵、表紙の感じで手に取り、数ページ読んでから決めるのが常なのですが。この作品には数ページもいらず、一文目からまず掴まれました。「死」という文字の強さはあるにしろ、この多崎つくるというキャラクターの歪さが1ページから香りたってくる。

“過去と正面から向き合わなくてはいけない。自分が見たいものを見るのではなく、見なくてはならないものを見るのよ。そうしないとあなたはその重い荷物を抱えたまま、これから先の人生を送ることになる”

この言葉を目にした時、自分の中の何か、琴線に触れた。 是非とも一読していただきたい小説です。

身も心も、熱くさせてくれる

著者
満田 拓也
出版日

言わずと知れた野球漫画です。今、舞台「キネマと恋人」の稽古中というもあり、台本以外の本を読み難い期間には、世界観がまったく違う漫画作品を選びます。

https://setagaya-pt.jp/performances/201611kinema.html

今回は、青春野球漫画の『MAJOR』。父を野球選手にもつ、主人公「本田吾郎」。彼の半生を描いた作品。僕自身は青春時代は、サッカー小僧だったので、野球は詳しくないのですが、この作品を読んで、なんだか学生時代に一瞬にして帰ったような錯覚にさせられました。友情、努力、今ではなかなか青臭くて大きい声でそんなこと、言えない年になってきましたが……。

仕事や人間関係に疲れた心身にリフレッシュとして、是非身も心も、熱くさせてくれる作品を。

世の中の縮図が描かれた舞台戯曲

著者
山内 ケンジ
出版日
2015-04-28

第59回岸田國士戯曲賞を受賞した、舞台戯曲。約2年前に僕も出演させていただいた舞台、城山羊の会「トロワグロ」の戯曲。元々、山内ケンジさんの作品がとても好きで、念願叶って参加出来た思い入れの強い作品。

なかなか戯曲というものは、多くの方には馴染みなく、台詞だけで構成されているので読みづらいことが多い印象を持たれているかとは思いますが、 今作は、その先入観を見事に無くしてくれる一品です。何気ない会話、罵り合いのなかに隠されているグロテスクな部分、様々なメタファーの中に、いまの世の中の縮図が描かれています。言葉の流れ、チョイスがいちいち面白い。

11月には、同作が映画化された「At the terrace テラスにて」が公開されます。ニヤニヤできるコメディです。是非、ご覧ください。最後は宣伝で失礼致します。では、来月。

http://attheterrace.com/

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