多面的な魅力を持つ本田真吾作の漫画『ハカイジュウ』を最終21巻までネタバレ紹介! 「月刊少年チャンピオン」にて連載されていたパニックホラー漫画『ハカイジュウ』。いつのまにかギャグやバトルも網羅した作品になっていました。
突如現れた強大な力を持つ特殊生物との戦いを描いた、パニックホラー漫画『ハカイジュウ』。一気に日常が崩壊していくさま、そして絶望的な状況でも生きることを諦めない人々の心の強さが描かれています。
物語が進むごとに、特殊生物や日本の状況などの謎が徐々に明かされていき、極限状態で人はどのような選択をしていくのかが見どころです。
さらに、シリアスな場面でありながらギャグ要素をぶっこんできたりと魅力は満載。そしてツッコみどころも満載で、多面的に楽しめる作品になっています。
この記事ではそんな本作の魅力を、物語に隠された謎とともに紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
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- 著者
- 本田 真吾
- 出版日
- 2010-08-06
東京の立川にある学校に通っている男子高校生の鷹代陽(たかしろあきら)は、突然起こった巨大な地震で、倒れてきた物の下敷きになり気を失ってしまいました。
気がつくと、周りには大量の死体と、見たこともない奇妙な生物がいます。わけがわからないまま、謎の生物から逃げ惑う陽。死体に紛れて生き残っていた女子生徒の白崎直央(しらさきなお)を含む数人と、命からがら学校を脱出しました。
しかし街も校内同様に、謎の生物と大量の死体で埋め尽くされているのです。
急いでニュースを確認するも、なぜか立川の惨状はまったく触れられていません。明らかにおかしなこの状況を理解しきれない一行でしたが、陽は修学旅行で東京を訪れている幼馴染の藍沢未来に会うべく、危険な街を奔走します。
- 著者
- 本田 真吾
- 出版日
- 2010-11-08
本作は、特殊生物と陽たち人間の戦いを描いた第1部、そして彼らの戦いの後の世界が描かれた第2部の2部構成になっています。
第1部のメインはバトル。さまざまな人物が登場し、なかには主人公の陽を上回る存在感の者まで現れます。
第2部では、本作に隠された謎が一気に明かされる展開に。陽とある人物の子どもが主人公にとなり、その後の世界が描かれていきます。
謎の生物は、作中で「特殊生物」と呼ばれており、タイトルのとおりすべてを破壊する獣です。
地震とともに現れた未知なる生命体で、その大きさは形状はさまざま。人間サイズの小型のものもいれば、ビルの高さを優に超す巨大サイズのものまでいます。
なかでももっとも強大かつ巨大な特殊生物は「ギガトール型」あるいは「帝王型」と呼ばれ、その全長はなんと100キロメートル。通過するだけで日本が沈むといわれていました。
彼らに仲間意識はなく、種類が違えば互いに争うこともあります。縄張りのようなものが定められており、そこを侵せば特殊生物同士でも容赦はしません。
第1部では謎に包まれていた特殊生物でしたが、第2部ではなんと食用に研究と生産がされていました。グロテスクな外見からは想像がつかないほどの美味しさなのだそうです。
そして、彼らが出現した理由も発覚。人間を害とみなしたある存在が、浄化のために生み出した生物だったのです……。
- 著者
- 本田 真吾
- 出版日
- 2011-11-08
1メートルから10メートルほどの小型種の幼体は人間に寄生することができ、その場合は「フューズ」と呼ばれる存在になります。フューズは人間を超越した高い戦闘力を有し、特殊生物の討伐が可能になりますが、理性を保てず暴走した状態になってしまうのです。
その強さは数100メートル規模の「トール型」と呼ばれる特殊生物を倒せるほど。人類の切り札として研究されており、無理やり寄生させられて死に至った人物もいました。
また、人間と特殊生物のハイブリットによって生まれたのが、「エボル」と呼ばれる存在。フューズ同様に優れた戦闘能力がありますが、最大の違いは理性を保っていられるという点です。
そのため、自らの意志と自らの判断で戦うことができます。
さらに、特殊生物を食べすぎたことで姿が変異してしまった「ヴァリアント」と呼ばれる存在も登場。彼らは特殊生物でも人間でも見境なく食らいますが、特に人間を好んでいるようです。
フューズとエボルに比べると戦闘能力はやや劣ります。その代わり特殊生物を食べることで、傷の再生をすることができます。
『ハカイジュウ』は当初、特殊生物から生き延びるサバイバルを描いたミステリーホラーのような作風でした。しかし途中から「特殊生物災害対策部」という特殊生物の研究およびフューズの開発をおこなっている組織が現れ、そこからバトル漫画へとシフトしていきます。
第1部では人類と特殊生物の戦いを描き、ホラーテイストに合わない熱いバトルがくり広げられます。そのノリがなんとも戦隊物チックで、ツッコミどころが増えていくのです。
読者によってはこの展開がギャグのようにも捉えられるので、ホラーとバトルなのになぜか笑えるというカオスな状況を生み出しているのです。
そんな本作の最大のツッコミどころが、第1部の最終話でしょう。なんと「俺達の戦いは○○○○だ!」エンドを採用。これには思わず「マジかよ!」とツッコミをいれてしまうはず……。
- 著者
- 本田 真吾
- 出版日
- 2012-07-06
第2部も謎に包まれたミステリーホラーの作風で始まりましたが、エボル集団の「ルシリア」や「対特殊生物機構」といった組織の出現で、組織同士の抗争といった展開になります。
この戦いのなかで物語の謎が明かされていき、読みごたえのある内容になっているのです。
このように、ホラー作風のなかに、バトルやギャグ、そして謎解きを散りばめ、多角的に楽しめる作品になっています。
本作の主人公は鷹代陽という高校生ですが、彼の存在感を圧倒的に上回っているのが、武重満(たけしげみちる)という男です。陽と白崎の2人が立川の映画館に避難した際に出会いました。
武重は体育教師をしているからか非常にガタイがよく、特殊生物であっても人間ほどの小型のものであれば倒すことができるほどの力があります。また職業柄、学生である陽と白崎を放っておくことができずに手を貸すのですが、心の内にはある思惑を秘めていました。
真面目な善人を装っているものの、実はセクハラで学校をクビになり、パチンコ三昧の生活をしていた武重。まさに自分の理想の女性像である白崎と出会ったことで、もはや狂気といえる執着をみせるようになります。
- 著者
- 本田 真吾
- 出版日
- 2013-03-08
狂っていった彼の妄想は、自分が王、白崎を妃とする国を創るところまで達しました。そしてその目的を邪魔する存在はすべて叩き潰そうとするのです。
異常ですが、白崎に対する想いだけは本物で、最終的には彼女を救うために自身の命を捨て去る決断をしました。
しかし実は奇跡的に生き残っており、後にフューズとして再登場。通常はフューズになると理性を失ってしまうのですが、白崎を前にすると驚異の精神力で理性を保ち、彼女のために戦います。
さらに、「トール型」とフューズできる「ファイナルフューズ」の適合者で、人類のなかでもっとも力を持った存在へと進化していくのです。
ここからの彼は、主人公の陽を差し置いて大活躍。まさに救世主ともいえる存在になりました。
ただもともとの性格からか、自身が最強だという証明をするためにスカイツリーの下に眠っていた「帝王型」をわざわざ出現させ、日本を絶望の淵へと叩き込みます。
本作のツッコミどころの化身ともいえる武重が現れるだけで、ギャグ展開へと早変わり。彼にもぜひ注目してみてください。
武重から多大な愛情を寄せられるヒロインの白崎奈央。陽と同じ立川学園高校に通っており、生徒会長を務めています。クールでやや冷たい印象を受けますが、非常に整った顔立ちで、男子生徒から人気がありました。
特殊生物に襲われた際に陽に助けられたことで、彼に強い恩義を感じ、幼馴染の未来を探すことを手伝います。彼の未来に対する想いを感じ取っており、自身の気持ちには蓋をしながら行動をともにしました。
そんな健気で美人な正統派ヒロインともいえる彼女ですが、実は一部ではゲスヒロインと呼ばれているのです……。
- 著者
- 本田真吾
- 出版日
- 2017-03-08
白崎は、武重が自身に執着していることを理解しており、陽を生き残らせるために武重を利用していました。心にもない応援だって平気でします。
しかしこの行為は、陽を想うがゆえのこと。ひとりの男性への純愛を貫いているとも捉えることができます。実際に白崎は、彼のためならば自ら特殊生物にも立ち向かっていくのです。
しかも自分の気持ちは押し殺して陽と未来の仲を応援するという、非常に健気で心の強い人物だといえるのではないでしょうか。
彼女が王道ヒロインなのかゲスヒロインなのか、実際に読んで判断してみてくださいね。
かつて「帝王型」と戦い眠りについていた武重が、復活を果たします。しかし彼は記憶を失っており、「人間を破壊したい」という衝動の赴くままに殺戮をはじめたのです。
圧倒的な力を前に、精鋭のエボルたちもまったく歯が立ちません。鷹代の娘の魅央(みお)もエボル化して立ち向かいますが、軽く捻られてしまいました。
しかし、そのまま手にかけようとした武重の手が、エボル化の解けた魅央の姿を見て止まります。「白崎くん」……かつて異常なまでに執着していた白崎とほとんど同じ姿の魅央を見て、彼は記憶を取り戻したのでした。
魅央のことを白崎だと勘違いした武重は、かつて夢みていた2人だけの王国を創ろうと全人類の殺戮を決行しようとし、さらにこのタイミングで「帝王型」まで目を覚まして……。
- 著者
- 本田真吾
- 出版日
- 2017-07-07
第1部に続き、第2部のクライマックスでもまるで主人公のような存在感を示している武重。しかも以前より変態度が増していて、パワーも最強クラスになっています。21巻の見どころは間違いなく彼でしょう。
しかし今回の武重は敵として登場。倒さなければなりません。魅央が倒すのか、それとも他の誰かが倒すのか……。シリアスな雰囲気だったにも関わらず、武重というだけで笑えるのが不思議です。
21巻で本作は完結します。その終わり方は実にすっきりとできる綺麗なもの。ぜひ実際に読んで確認してみてくださいね。
ホラー、バトル、ギャグとさまざまな角度から楽しめる『ハカイジュウ』。多くの謎が散りばめられているので、ぜひ実際に読んで確認してみてください。