ホラー漫画はお好きですか?一口に言っても、さまざまな種類の恐怖が存在します。今回は、怪奇からゾンビ、はたまたサイコまで隠れた名作も含めて、おすすめの怖い漫画を厳選して紹介いたします。
物語のキーとなるのが、リアルアカウントという国民的人気を誇るSNS。これが、突然プレイヤーの命を賭けたデス・ゲームに変化してしまうのです。
物語は2部構成の作品となっており、主人公がそれぞれ異なります。1部の主人公柏木アタルが突如としてスマホの中に吸い込まれて、理由も目的もわからない理不尽なデス・ゲームに巻き込まれていきます。
- 著者
- 渡辺 静
- 出版日
- 2014-05-09
これでもかというぐらい人が死んでいくシーンが多く、残酷きわまりない描写が続きます。しかし、キャラクターや絵は、とてもキャッチーで読みやすいもの。そんな軽快な雰囲気のなか、ゲームを頭脳と駆け引きで切り抜けていく主人公は、見ていて胸が踊ります。
予選では、「フォロワーがゼロになったら、そのプレイヤーは死ぬ」、「フォロワーはそのプレイヤーが本選で死んだら、巻き添えで死ぬ」というルールで最初のゲームがスタート。巻き添えを食らいたくない友人たちは、次々とフォローを解除しますが、主人公は「プレイヤー同士の相互フォロー」という形で切り抜けます。
キャッチーかつホラーな要素を持つゲーム中、主人公の機知が光ります。ホラーですが爽快感があり、軽く読み進められるので、まったく飽きることなく最後まで引き込まれてしまうでしょう。
田舎の一軒家に引っ越してきたゆずと清の若夫婦、そして清の父であり、事故の後遺症をかかえている巡一。彼らが古い家を掃除していると、なんと屋根裏に住み着いている子どもを発見します。子ども嫌いの清を振り切り、ゆずはほたると名乗る少年を引き受けることになりました。
そうして始まった一見穏やかにみえる家族生活。しかしその裏に謎や闇が見え隠れします。
- 著者
- 黒澤R
- 出版日
- 2017-02-21
明るく笑顔が素敵なゆず、旦那の清、事故の後遺症で記憶が混乱する清の父である巡一。一見穏やかで幸せな家庭に見えるのですが、読み進めていくうちにこの家族が抱えるかなりダークな闇が見えてきます。
絵柄は女性も読みやすい美しいタッチで、はっきりと恐怖を引き立てています。徐々に明かされる家族3人と、彼らが引っ越してきた古民家に住み着いていた少年ほたるの謎、そして幸せそうな様子から雲行きが怪しくなってくる展開は目が離せません。
穏やかな生活の中に見え隠れして付きまとう不穏な空気、彼らの抱える心の闇。ぜひご自身の目でその展開をご覧になってみてください。
時代は幕末末期の天保年間。人々の間の晴らせぬ恨みや困難な状況を金で請負い、妖怪になぞらえて解決する主人公達の活躍が描かれます。
- 著者
- ["日高 建男", "京極 夏彦"]
- 出版日
江戸時代が背景ということもあり、科学的な検証というよりは人の心の綾、いわばちょっとした隙間を利用し、妖怪の仕業に仕立てていく構成が見事です。続編の中で時代が進み、妖怪が世の中に受け入れられなくなっていく様を見るのは面白くも一抹の寂しさを覚えます。
特徴的なのは実際に妖怪が出てくるのではなく、すべて人間の仕掛けによるものというところでしょう。妖怪が怖いのではなく、作品の中で表現される人間の業に怖さを覚える。そんな作品です。
主人公たちを見ていて個人的には「ルパン三世」の三人組を思い出しました。単純な勧善懲悪というわけではなく、主人公達も脛に傷を持つ悪党、いわば詐欺師のような人間たちです。
私も昔から善人が活躍するというよりはちょい悪で一癖も二癖もある主人公が巨悪を倒す話が好きでしたから、同じような嗜好を持つ方であれば、きっと読んでいて楽しめるのではないかと思います。
続編というか関連作品である「続巷説百物語」、「前巷説百物語」「後巷説百物語」もありますし、アニメ化もされていますから、そちらから入るのもありかもしれませんね。
普段どおりの街なのに今はいつもと違う何かが起きている・・・。まるであらゆるうずまき模様に取り憑かれたかのような父。次々とカタツムリに姿を変えていくクラスメイト。台風に惚れられ、ストーカーされる主人公……。等など、うずまきに関する膨大なエピソードが紹介され、やがて登場人物全てが「うずまき」に捉えられ、誰もが抜け出せなくなっていきます。
- 著者
- 伊藤 潤二
- 出版日
- 2010-08-30
ここまで読んで「何それ?」と思われた方。当然の印象でしょう。しかしこれはそういうお話です。なぜうずまきなのか?なんでこんな事態がおきていくのか?わかりません。読み進めていくうちに、最初は違和感だらけだったのにいつの間にかそういうものだと納得してしまっている自分がいました。
そしてここまでありえないほど奇想天外でも、「面白いか?」と聞かれれば「面白い」としか答えられない。作者の技量は、もはや人外のレベルです。絵は少しグロテスクなので好みが分かれるところですが、まさに「怪作」という言葉がふさわしい作品でした。
野咲春花は半年前に東京から大津馬中学校に転校してきたのですが、クラスメイトから凄まじいイジメを受けていました。唯一の味方は写真が趣味の相場晄だけ。彼や家族と過ごすことが、春花の限られた心休まる時間だったのです。
家族のことが好きな春花は、イジメのことを隠して卒業までの2ヶ月間を何とかやり過ごそうとするのですが、イジメはエスカレートしていき、ついに両親が知ることとなります。
父親は学校にかけ合いましたが、担任の先生はまともに対応してくれません。それどころか、春花のクラスメイトから、画鋲を仕込んだ靴でとび蹴りを食らわされたのです。その日から父親の勧めもあり、春花は不登校になります。しかし、それでもイジメグループの追撃は止まらず、ついには春花の家に火をつけられ……その惨事に巻き込まれて両親は亡くなり、妹は大ヤケドを負ってしまいました。
やがて、事件の真相を知った春花は復讐の鬼と化していったのです。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
この作品は、キャラクターの表情の使い分けが非常に上手いので、感情移入しやすいです。それだけに妖怪やお化けがでてくる類のホラーと違って、「怖かった。」だけではなく、どうしてそこまでする必要があるんだ?と言わんばかりの憤りや、幸せになってほしいと願う願望も入り混じって読み進めてしまいます。
ミスミソウの花言葉は「はにかみや」と言い、晄はそれを春花にあてがいますが、そんな2人の未来は明るくなるのでしょうか?結果はぜひご自身で見届けてください。
『ミスミソウ』については、以下の記事で詳しく解説しています。
『ミスミソウ』の見所を最終回までネタバレ紹介!傑作ホラー漫画の鬱展開…
心優しかった少女は、家族を全員殺され、殺人鬼と化す……! 2018年に映画化された押切蓮介の名作サイコホラー漫画『ミスミソウ』。いじめによって変わり果てた少女の復讐劇です。読み進めるほどに辛いのに、なぜか止められない、名作鬱漫画としても名高い本作。 今回はその魅力を壮絶な欝シーン、名シーンから最終回までご紹介!ネタバレと過激なシーンの描写がありますのでご注意ください。
警視庁捜査一課の巡査部長である沢村久志は、仕事中心で生きていて、家庭を顧みないタイプの人間でした。その結果、妻や子供に出て行かれてしまいます。後悔の念を抱えながらも、なお仕事に打ち込んでいました。
そんな時に、ある惨殺死体の現場に到着します。なんと、被害者は生きたまま犬に食い殺されていたのです。「凶器」となった犬が吐き出した紙には、「ドッグフードの刑」という文字が書かれていました。
この事件の犯人は、ほかにも私刑を用意しています。「母の痛みを知りましょうの刑」や、「均等の愛の刑」、「いつまでも美しくの刑」、さらに「針千本飲ーますの刑」まで。これらが、被害者それぞれに合わされた刑になっているのです。
- 著者
- 巴 亮介
- 出版日
- 2013-11-06
被害者の共通点は、ある裁判の裁判員だったこと。偶然なのか、沢村の妻もその裁判員のひとりであったことに気づきました。沢村は、子供を連れて出て行った妻に連絡が取れず、必死に妻を探します。しかし、犯人は巧妙に次のターゲットへと近づいていきます。はたして沢村は自分の家族を守りきれるのでしょうか?
この作品の怖い存在は、妖怪や怪異ではありません。人間はそこまで残酷になれるのか?という意味での猟奇的なホラーです。上記の私刑もあえて詳細は書いていません。ですが、おそらくどんな殺され方かは想像できにくいと思います。すべてのコマに意味があり、初期の伏線が徐々に解かれていくので、かなりグロテスクな場面もありますが、展開が気になって一気に読み進められる作品です。
『ミュージアム』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『ミュージアム』エグすぎる全3巻をネタバレ考察!気になる結末は?
映画化され話題になった漫画『ミュージアム』。ヒット作品でありながら、全3巻という短さで完結した本作に詰まった魅力を、今回は余すところなくご紹介していきます。最終回で示された3つ目のエンディングについても考察を交えながら徹底解説します。
登場人物の少年少女たちは、5年前に人を殺して埋めた共犯者でした。秘密を遵守することと、互いを決して裏切らないという誓いを立てています。
死体を埋めた場所に、ゴルフ場が建設されるという話が出てきて、急いで死体を掘り起こす計画を立てましたが……なんと埋めた場所に、死体はありませんでした。
その後、ある人物から脅迫電話がかかってきます。罪を犯した彼らに、死体解剖を命じる謎の犯人……。ミステリーとサスペンスが織り交ざったホラー漫画です。
- 著者
- 内海 八重
- 出版日
- 2016-10-07
展開は一貫としてミステリーの要素が強いものになっています。殺人を犯した学生というのは、ホラー的な要素が含まれていますが、話の端々でさまざまな伏線が登場。主人公の卒アルに、メンバーの一人に気をつけろという警告の血文字、幼馴染の思わせぶりな態度、犯人の言動などで、ストーリーの謎を深めていく要素が散りばめられています。
読めば読むほど、謎が深まり、徐々に紐解かれていく感覚は、物語の展開が生きているような呼吸を感じ、その波に心地よく酔うことができます。青春と犯罪、そしてミステリーが同居する奥深い世界をぜひ見ていただきたいです。
『骨が腐るまで』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『骨が腐るまで』に潜む謎を7巻までネタバレ考察!
クライムサスペンス漫画『骨が腐るまで』。先の読めない展開が続くなか、その伏線と今後の展開をまとめました。骨を盗んだ犯人は一体誰なのか。そして幼馴染たちの関係はどうなるのか。波乱の展開で読者を引き込んでくる本作の見所を、最終回までご紹介します。
主人公の名越進は車上生活をしているホームレスでした。ある日、伊藤学と名乗る医大生から、トレパネーションという第6感が芽生える手術を受けてほしいと声をかけられます。さらに、条件として、70万の報酬を提示されるのです。
最初は拒否したものの、大切な車がガス欠の上レッカーされてしまったことでお金が必要となり、名越は手術を受けることに。それ以来、彼には不思議なものが見えはじめ……。
- 著者
- 山本 英夫
- 出版日
- 2003-07-30
頭蓋骨に穴をあけるトレパネーションという手術を受けた名越は、左目で人間を見ると、奇怪なまるで人間とは思えない姿に見えるようになってしまいます。驚く名越に、手術を持ちかけてきた伊藤は興味を抱き、それは人間の深層心理が具現化された姿なのではないかと言い、それをホムンクルスと呼びました。本作のタイトルはこれに由来しています。
ホームレスばかりの公園付近で生活していた名越。かつては外資系金融会社のエリートとして働いていた彼は過去に整形をしていたらしく、それ以前の記憶は失っていました。事情があってホームレスとなったようですが、結局ホームレスにもなり切れず、自分を完全に見失っているように見受けられます。そんな折に、名越は人の心の根底に潜む闇をホムンクルスとして見えるようになり、徐々にその世界に魅了され、とり憑かれていくのです。
そんな彼が今後どう変化していくのか……注目したいサスペンスホラー漫画です。
本作については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
漫画『ホムンクルス』の結末が怖すぎる!あらすじ、面白さをネタバレ解説!【映画化】
前頭部に穴を開ける手術「トレパネーション」を受けた主人公は、他人の深層心理が「異形の姿」で見えるように……。その能力を使って、自分や他人の精神に潜むコンプレックスや、忘れられないトラウマと向き合っていくサスペンス・ホラー漫画となっています。 2021年4月には、映画化も決定している本作。この記事では、『ホムンクルス』のあらすじから、面白さや魅力まで解説していきます。
野球少年である斑鳩射馬(イカルガイルマ)。彼は高校生で、部活に汗を流し、かわいい先輩に恋をするような、普通の少年でした。
ある夏、突然発生した奇妙な虫と空から落ちてきた着ぐるみ「ドリィ」の存在によって射馬の周囲は一気に殺伐とした世界に変化します。目の前で親友を殺され、先輩を失い、今まで彼が持っていた自信を大きく失ってしまい……。
- 著者
- ["ノ村 優介", "蔵人 幸明"]
- 出版日
絶望の中で力強く、歯を食いしばって闘う少年たちの姿が印象に強い作品です。
刺した人間を溶かす虫。かわいらしい見た目だけど、人間を筒状のもので吸い込み赤い霧にするドリィ。豪快な破壊と殺戮という悪夢のような現象が次々と行われる作品ですが、目つきが特徴的な人物の細かい表情の書き込みや背景などから、地に足の着いた、しっかりとした恐怖が伝わってきます。
破壊されつくされた世界で、主人公は以前持っていた自尊心とは違う、強い執念を持ちドリィに対抗してきます。その執念にのみ突き動かされた夜叉のような主人公の戦闘シーンは見もの。鬼気迫る姿で一見可愛らしいドリィをどう攻略するか頭を働かせながら戦います。
そんな彼の心にあるのは殺されてしまった仲間たち。根拠のない自信と楽しかった日々を心に封じ込め、つき進む姿に心を動かされること間違いなしです。
『ドリィキルキル』については以下の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
『ドリィキルキル』結末までの見所を全巻ネタバレ紹介!
怒涛の展開に目が離せない『ドリィキルキル』の魅力をお伝えしていきます。ある日突然、昆虫型兵器と巨大な人形たちによって地獄と化した世界。容赦なく殺しにくる人形を相手に、主人公は希望を捨てずに生き抜くことができるのでしょうか。
日々を退屈だと感じる普通の男子高校生・児上貴衣。授業中にふと窓の外の校門を見ると、ドレス姿の人形のような「魔法少女」が、校門にいた教師を爆発させ学校に乱入します。
魔法少女から発せられる「まじかるー」という音。その瞬間から、貴衣の学校、日常は徹底的に破壊されはじめます。
- 著者
- 佐藤 健太郎
- 出版日
魔法少女の魔法が引き起こす現象の連続によって、嵐に巻き込まれたような感覚を覚える作品です。
その怒涛の展開は序盤から止まりません。空から大量に降りてくる魔法少女たち。それぞれが持つ魔法は、多数の人間があっさり死亡、消滅するような、圧倒的な力でした。爆発、寄生、切断、斥力と恐ろしい力ばかりで、「まじかるー」という音を発しながら次々と殺していくのです。
映画のパニックホラー然とした絶望的な状況で、貴衣たちが逃亡しながらも魔法少女に抵抗していく展開が、大胆な構図と力強い表情、動きで描かれています。物語も魔法少女の根源の謎に向かっていくのですが、ある魔法少女の魔法によって、予想できない方向に向かっていきます。
怒涛の展開とまさかの設定に目が離せなくなる作品です。
『東京喰種』の舞台は喰種(グール)と呼ばれる怪人が多数存在するという架空の東京。そこで生きる半喰種となってしまった主人公が、人の尊厳を守ることと、生きるための本能「食欲」との狭間で葛藤していく物語です。物語の大きなテーマとして、人と喰種の種族間の戦いが描かれています。
読書好きの大学生、金木研はお互いの共通の趣味をきっかけに、想いを寄せていた少女リゼとデートすることになります。しかし彼女は人肉を貪り生きる、喰種と呼ばれる怪人であり、カネキは彼女に捕食されそうになってしまうのです。なんとか捕食されることを免れた彼ですが、瀕死となってしまい、搬送先でリゼの臓器を移植されます。
喰種であるリゼの臓器を移植されたことで人間の食べ物を受け付けなくなってしまったカネキは、人肉に食欲をそそられるように。彼は、人としての尊厳と喰種としての食欲の狭間で葛藤に苦しみます。しかしそんな苦しみのなかでも運命は容赦なく、彼は人と喰種との種族の違いによって起こる、必然的な戦いに巻き込まれていくのです。
- 著者
- 石田 スイ
- 出版日
石田スイのデビューとなった本作は、読み切り作品だったものを連載用に構成し直し発表されました。ダークファンタジーのような世界観と練り込まれた設定が好まれ、多くのファンに支持される作品です。
喰種という特異な存在の謎と、彼らと人間との戦いが描かれる作中には、細部まで細かい設定がなされており、これがファン心理をつく大きな要因となっています。少しだけご紹介していきましょう。
まずは「赫眼(かくがん)」。喰種が特殊能力を使う時に眼を赤く変化させた状態をいいます。喰種という怪人を描写する際の一番わかりやすい異様性です。
次に「赫子(かぐね)」。喰種の捕食器官の名称です。硬化と軟化をくり返し自在に動かせる、彼らの武器とも呼べる代物です。喰種同士の戦闘の場合には、赫子によって受けた傷は治癒が遅くなり、場合によっては致命傷になります。
最後に「マスク」。喰種が捕食する際に身元を隠すために着用する仮面のことです。それぞれに個性的なマスクを身に着けている場合が多く、作中では各喰種のトレードマークともなっています。
このように、喰種の特徴を示すごく一部分だけでもこれだけの細かい設定がなされています。他にも喰種を形成する細胞や、食欲、体質などでも、とにかく細部にわたって世界観が確立されているのです。それによって読者がどれだけ議論してもキリがないほど、奥深い作品に仕上がっています。
人食いの化物と人間の戦いを描く作品はほかにも数多く存在します。そして半分ずつ特性を備えた主役がその狭間で苦悩するという作品も同様に多いでしょう。
本作品では、そういった伝統的な物語を現代に合わせ、さらにバトルものとして仕上げています。バトルアクションホラー漫画といったジャンルに分けることができるでしょうか。ありきたりなホラー漫画に飽きてしまった方に、特におすすめです。
2014年には、テレビアニメ第1期、翌年に「東京喰種トーキョーグール√A」として第2期、2018年には「東京喰種トーキョーグール:re」として第3期が放送されました。2期は、原作者である石田スイがストーリーを手がけています。気になった方はぜひご覧ください。
『東京喰種』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『東京喰種:re』最終回まであらすじを全巻ネタバレ紹介!
人間を食料とする喰種(グール)と人間との戦いや葛藤、さまざまな謎を描いてきた『東京喰種』。新編である『東京喰種:re』にまで物語が続き、喰種に潜む巨大な謎が明かされました。アニメは4期まで放映され、実写映画化も2度された人気作品です。 ここでは喰種を巡るさまざまな謎を解説や考察したあとに、最終回までの見所についてご紹介します。ネタバレを含みますので、気になる方はスマホアプリもあるので、そちらからご覧ください。
作品のカテゴリーとしては「超能力バトル物」ということになるのでしょう。ただ少年誌で掲載されているような「友情・努力・根性」といったような明るいキーワードとは無縁で、じつに陰惨で暗いお話です。
- 著者
- 惣本 蒼
- 出版日
発症したが最後、自分の意思によらず周囲に呪いをまき散らし、殺してしまう「呪い」の力。そういった者達は政府の方針で存在しない街、「呪街」へと集められます。自らも同様の力に目覚めた主人公は、かつて懇意にしていた「いとこ」の足取りを追ううち、いつの間にかこの「呪街」に入り込み、呪力者どうしの戦いに巻き込まれてしまいます。
まず印象に残ったのは能力者どうしの戦いの描写についてです。「呪い」というとどろどろとしたものを想像しますが、呪いをぶつけ合う呪力者同士の戦いは傍から見ていると何がおきたかわからないほど一瞬で終わります。知らないうちに攻撃を受けて気が付いたら発狂していた……というような感じです。
一番引き込まれたのは「表情」です。強力な力を持つがゆえに野望を持ち、野望を持つがゆえに孤独な「いとこ」。でもこの人じつはとっても優しい人で、それがちょっとした表情からわかります。
そんな「いとこ」と主人公がどこに向かうのかを想像しながら読むのがとても面白かった作品です。ハッピーエンドとは言えないかもしれないですが、興味があればぜひ手に取ってください。
かっこいい先輩にほのかな憧れを抱く少女・姫川若葉。彼女は、暖かい家族や友人に囲まれ平穏な毎日を過ごしていました。そんなある日、突然サイレンの音が鳴り響きます。特殊な子供達を処分するという「つぼみ法」施行のアナウンスが流れた時、うさぎの着ぐるみを来た集団に目の前で少年少女が次々と惨殺されていき、若葉は恐怖することしかできません。
そして現れる、少女・つぼみという呼ばれる女。驚異的な身体能力で若葉を助け出しますが、彼女との接触が「体から無数の針が飛び出す」という若葉の特殊な能力を目覚めさせます。
- 著者
- 茂木清香
- 出版日
- 2014-08-20
繊細でやわらかな線で描かれる少女、それに対して登場人物たちの能力による硬質で残酷な攻撃表現。そのやさしい絵柄と凄惨な展開の対比が引き立ちます。漫画『スイッチウィッチ』は、さまざまな対照的なモチーフで読む者の心を揺さぶります。
若葉のような特殊な能力を持った子供たち「W世代」とその親であり特殊能力者であった「第1世代」の力の種類は多岐に渡っていて、能力同士の戦闘もスピーディーです。そのスピード感と、若葉の今までよく知っていたはずの親、友人がいた平和な日常のギャップによって、若葉の人間性を軸とした生き残るための戦いもより力強く感じられます。
若葉は、周囲で起きるさまざまな出来事に対して、あまりにかけ離れた環境に別の世界に迷い込んでしまったのではないかという強い戸惑いを感じます。しかしますます悪化していく状況にどうしようもないほどに追い込まれ、戦うのです。
絶望的な状況と魅力的な美しく、儚い少女の姿と人間性が魅力的な作品です。
中学2年生の主人公早坂流花は、瀬戸内海の離島で暮らしていました。流花には好きな男の子がいましたが、その子は、高校はアニメイトがある大阪に行くと言うのです。高校も一緒に通えると思っていた流花はショックを受けます。
そんなある日、流花は岩場で奇妙な置物を見つけます。置物を洗い、近所の祠に入れた流花は、ダメもとで「でっかいアニメイトが建ちますように」と祈ります。すると、手のひらサイズだった置物が、流花の腰くらいまでの大きさの異形になって動き出し……。
- 著者
- 堀尾 省太
- 出版日
- 2016-06-23
福の神伝説がある離島で繰り広げられる奇譚です。福の神伝説がなんなのかについて多くは語られないものの、冒頭から伝説について暗示はされています。
おそらく江戸時代、刀を持った武士と思われる男が海岸で、腹部から出血した男を見下ろすシーンから本作は始まっています。海岸にいくつも死体が並んでいるのですが、死体の顔はすべて同じです。
そのまま舞台は現代に移り、読み進めていくと、流花が祠に入れた置物が変化した異形「フクノカミ」が死体と同じ顔をしていることに気がつきます。そして、どうやらこのフクノカミは、取り憑いた人の欲望をあぶり出し、お金を引き寄せる存在であるらしいこともわかってきます。流花はフクノカミに取り憑かれませんが、流花の祖母は取り憑かれてしまうのです。
めちゃくちゃ不穏なのが、フクノカミに憑かれ、欲望をあぶり出された祖母の顔がフクノカミと同じ顔になってしまうこと。
冒頭のシーンが福の神伝説の最後であると仮定すると、海岸に何人もフクノカミと同じ顔をした死体があったということは、島の多くの人がフクノカミによって欲望をあぶり出され、争いの果てに死んでしまったのではないかと推測されます。
江戸時代の伝説としてであれば、野蛮な時代もあったんだなぁで片付けられますが、その伝説が『ゴールデンゴールド』では現代で展開されつつあるのです。怖すぎます!
このまま伝説をトレースしていくのか、それとも主人公が何らかの役割を果たし、争いを食い止めるのかはわかりませんが、先が気になる作品であることは間違いありません。少しずつ開示される情報、伏線を読み解きながら、新刊が出るのを待ちたいですね。
『ゴールデンゴールド』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『ゴールデンゴールド』が怖いのに面白い!魅力をネタバレ紹介!
「フクノカミ」と呼ばれる奇妙な生き物によって、とある島の生活が変わっていくさまを描いたSFホラー漫画『ゴールデンゴールド』。不気味な恐ろしさと謎を追求していく面白さをあわせもった作品です。
幽霊の女の子、黄泉が恐怖の世界を案内してくれるという形式で展開される、オムニバス怪奇ホラー漫画『絶交学級』。
2008年から2015年まで少女向け漫画雑誌、りぼんに連載されていた作品です。
- 著者
- いしかわ えみ
- 出版日
- 2009-01-15
少女向け漫画雑誌に連載されていたこともあり、ホラーは気になるけどグロテスクや残忍さ、怖すぎるものはちょっと……という方でも比較的読みやすいホラー漫画です。それでいて不意打ちでやってくる、ゾッとする描写がホラーらしさを十分楽しめるため、読んで恐怖を味わうことができます。
小学生くらいの年頃の日常に潜む恐怖を描いており、登場人物と年齢の近い学生の方なら、なおさらリアルな恐怖を感じられるでしょう。ゲーム、インターネットといった現代社会ならではの恐怖、そして人間関係がもたらす問題も登場し、大人でさえヒヤッとしてしまいそうな恐怖が待ち受けていますので、ぜひ本作を読んでみてくださいね。
呪術師クレイシハラと大学の非常勤講師で瓦屋千蔭のお話です。2人は雨の中偶然出会うわけですが、千蔭は呪いを専門に研究しており、自分を呪術師と名乗るクレイシハラに、出会った瞬間から興味津々になります。
千蔭とクレイシハラによるホラー×ラブコメ漫画です。
- 著者
- 江野 スミ
- 出版日
とにかくシュールな世界観は、読めば読むほど謎が深まります。さらにホラー、オカルト、ラブコメなど、いろいろな要素を盛り込んでいるため、やや難解に感じられる場面もあるでしょう。
本作の最大の魅力は、緻密に描かれたイラスト。クレイシハラが地獄の怪物に食べられ続けるというシーンがありますが、劇画調に描かれているので、インパクトがあり、一度見ると忘れられないような絵になっています。人物や怪物が細部の皺まで描かれているので、作画の雰囲気が他の作品ではなかなか見られないほど、優しさとあたたかみを感じることができるでしょう。
独特な背景や人物の絵が、ミステリアスでダークな世界観をより一層妖しく演出しています。一度読んだら忘れられないシーンが多い本作、その独特な世界感を味わってください。
「遊ぼうおじさんって知ってる?夕方の6時過ぎまで残っていたら、変なおじさんが玄関まで迎えに来るんだって。そのおじさんは絶対に中には入れないんだって。だから、遊ぼうって誘うんだって。」
遅い時間まで残っていた少女はその噂を頭の中で思い出しながら、玄関に向かいます。なんと、そこには噂で聞いたとおりの変なおじさんが立っていて、「あーそーぼぉぉぉ!あそぼぉぉぉ!」と恐ろしい叫びをあげていました。
1話完結型のオムニバス作品です。登場人物が、次々と幽霊とも妖怪ともつかない怪異に出会ってしまうシーンが描かれていきます。
短編漫画であるため、毎回現われる不気味な存在の怪異は、一度見てしまうと忘れられないようなビジュアルとなっており、その強烈さはただただ恐怖でしかありません。
- 著者
- 中山 昌亮
- 出版日
この怪異たちの多くは、名前や明らかな正体の説明もありません。また、日常を舞台にし、実在の街が作品内に登場することによって、漫画の続きが現実で起こるんじゃないか、という2次的な恐怖を生み出されます。
振り返ったら「あれ」がいるんじゃないか?向こうから歩いてくる人は「やつ」じゃないか?ドアを開けたら「そいつ」がいるんじゃないか?……そんな不安の種を読者に植えつけていくのです。
ところで、あなたの隣でこの記事を読んでいるのは……誰ですか?
1話完結のオムニバス形式で、さまざまな種類の不気味なストーリーが描かれる怪奇漫画『恐之本』。
1話完結なので、怖さを感じながらもサクサクと読むことができ、テンポよく進むのが魅力です。それでいて幽霊や怪奇現象的な恐怖はもちろんのこと、生きている人間自体が恐ろしくなる類のものも描かれており、読後はかなり満足感があるでしょう。
- 著者
- 高港 基資
- 出版日
- 2017-01-23
ホラーらしいどこか暗く不気味な雰囲気を醸し出しながらも、絵自体はシンプルで癖のないとっつきやすい印象。怖い漫画が好きなら、どんな年代の方でも楽しむことができるでしょう。
体験談のようなリアリティのある雰囲気の話も多く、本格的なホラー漫画といえる作品ですが、意外と知名度が高くない、まさに隠れた名作です。
『恐之本』については、以下の記事でも解説しています。
『恐之本』おすすめエピソードをネタバレ解説!無料で読める怖すぎホラー漫画
本作は、作者・高港基資が断続的に発表していた作品をまとめた、短編集です。おのおののエピソードには繋がりも関連性もなく、気味の悪い、じめっとしたホラーという共通点しかありません。それでいて、人間心理を暴く空恐ろしさがあります。 この『恐之本』は、スマホの漫画アプリで無料で読むことも出来るので、まずはそちらで、どれだけ怖いかお試しいただくのもおすすめです。
物部書店の店主を務める正太郎と書店のお手伝いをしているシロの物語を描いた、オカルトホラー作品です。本を読みながら自堕落に店を開いている正太郎ですが、彼には呪われた忌まわしき古書を回収するという裏稼業がありました。
その古書は、鬼が書いたとされる「鬼書」というもの。それを読んだものは鬼になるという言い伝えがあります。
本作は、正太郎とシロが、鬼と化して殺人をおこなう人を退治していく話です。
- 著者
- 紺吉
- 出版日
- 2015-06-13
悪霊や化物を退治していく話は多々ありますが、本作品は和のテイストが濃いです。神隠しや鬼など、日本古来の伝承をもとにしているため、独特な世界感になっています。全体的にダークな雰囲気で、事件も猟奇的なモノが多く、読者は戦々恐々とさせられるでしょう。
特に注目してほしい部分は、作品の世界観。時代については明記されていませんが、登場人物の服装や風景などから大正時代を彷彿とさせるレトロなものになっています。大正時代の雰囲気が、妖怪がでてくる物語と非常にマッチし、ふと気がつくと物語の世界に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥るほど作り込まれています。
和のダークファンタジーとも呼べる雰囲気を醸し出しており、そのテイストが人物・背景・題材のなかで、前面に押し出してくるのです。ホラーと和の共演をお楽しみください。
『黄昏乙女×アムネジア』の舞台は創立60年の伝統ある学校、私立誠教学園。この学園には、たび重なる増築で迷路のようになった校舎があり、長い年月の間に怪談や都市伝説が語り継がれていました。
ある日、1年生の新谷貞一は旧校舎で不思議な女子生徒に出会います。彼女の名は庚夕子。学校の怪談に出てくる旧校舎の幽霊であると語り、自分の死の真相を一緒に調べてほしいと言うのです。こうして貞一は、彼女の死因を調べるため、そして学校内のさまざまな怪奇現象を調査するため、怪奇調査部を設立します。
美少女の幽霊と少年のコンビが、さまざまな怪奇現象を調査していく作品です。
- 著者
- めいびい
- 出版日
- 2009-08-22
怪奇調査部に持ち込まれる怪談話でスリルを味わいながら、貞一に特別な感情を抱く夕子とのラブコメも楽しめる本作品。怖いだけでなく、ちょっぴりエッチなシーンもあり、男心をくすぐってくれる演出も多く、読者の心を強く惹きつけてくれます。
心を惹き付ける大きな要因のひとつ、それはメインヒロインである夕子の姿でしょう。魅力的な美少女であるというだけでなく、長い黒髪、大人びた見た目と性格、過去の謎など、妖艶な雰囲気をかもしだす要素は、ホラー作品を彩るにはぴったりです。後に判明する夕子の負の部分、影夕子の恐ろしい姿とあわせて考えても、怪奇に満ちたこの作品に相応しいキャラクターといえます。
アニメ化もされているこのホラー漫画は、アニメ版とは違う点として登場キャラクターの多さがあげられます。メインヒロインである夕子以外にもさまざまな人物が登場し、作品を盛り上げてくれるのです。そして主役級の登場人物よりもサブキャラクターたちのキャラが立っており、それぞれに個性ある人物像を描き出しています。
怖いシーンに加え、ギャグ、エロ、ラブコメなどがバランスよく内在しているこの物語は、他のホラー漫画よりは万人受けする内容になっています。ほどよく恐怖を味わって、背筋を冷やしたいという方にはぴったりではないでしょうか。
2012年にはテレビアニメ化もされています。
『黄昏乙女×アムネジア』については、以下の記事で詳しく解説しています。
『黄昏乙女×アムネジア』が無料!ホラー恋愛漫画の魅力をネタバレ紹介!
『黄昏乙女×アムネジア』は男性2人組の漫画家コンビである、めいびいの作品です。アニメ化もしているこの人気作を、今回は紹介していきたいと思います。無料漫画アプリ「マンガUP!」で読むことができますので、ぜひ試してみてくださいね。
沖縄旅行にやってきた男女が、魚の体に機械の足がくっついたような異様な生物に襲われます。潔癖症だった女性は犠牲となり、その生物同様に、自らが腐臭を放つ奇怪な生物と化してしまうという、なんとも不気味なお話です。
- 著者
- 伊藤 潤二
- 出版日
伊藤潤二の特筆すべき点はグロテスクな絵。どの作品にも緻密な線で描かれた不気味な物体が描かれています。本作でも魚の鱗などの質感や人体のふきで物のような部分を細かく描写してあり、テーマのひとつにもなっている「臭い」が、本当に漂ってきそうなほどの気持ち悪さです。
パニックホラー作品と呼べる内容の物語は、実に作者らしい世界観を表していて、怪奇に満ちたもの。登場する魚型の奇怪な生物は、機械の足が魚の死体を操っている設定となっています。
最初に犠牲となってしまった女性も、彼女の死体に機械の足がとりつき動かすことで奇怪な生物となってしまいます。美女の顔がぶくぶくと醜く膨れあがり、グロテスクな見た目となって彷徨う姿は恐怖そのものです。肌の質感などが緻密に描かれていますから恐怖はさらに倍増します。
メインの登場人物は、犠牲となってしまう潔癖症の女性、華織。そしてその恋人、忠です。他にもマッドサイエンティスト小柳教授や、その助手、芳山、さらに都内に唐突にあらわれる謎のサーカス団の団長などが登場します。団長は奇怪な生物と化した華織を見世物にしてしまうような非常識っぷりで、混沌とした作品の様相をさらに過激に演出しています。
とにかく最後まで気持ち悪さ満載で恐ろしい描写の続くホラー漫画です。数々の伏線が未回収のまま物語が集結します。見事に放りっぱなしなのです。しかし立て続けに見せられたグロ描写の最後に迎えるラストは、なんとも言えない読後感があります。
そもそも主役の2人は、彼女の潔癖症が原因でケンカをしてしまいます。それなのに、潔癖症だった彼女が自分で悪臭を放つ存在になるという皮肉な結果となってしまってからは、彼は彼女から遠ざかるどころか彼女を想い追い求めるようになるのです。そこが妙にシュールな世界観をかもしだし、作品の色を出しています。このような皮肉たっぷりの物語は、作者が捻りのあるシュールなギャク漫画家と称されるゆえんなのでしょう。
個性でいえば抜群の評価を得ているホラー漫画です。全2巻とすぐに読み切れる内容ですし、この機会に伊藤潤二の怪奇な世界を味わってみませんか?
ある冬の日、突然商店街に現れた謎の全裸男。しかもその男は右目が白濁し、全身は泥だらけで、明らかに尋常ではない様子でした。
偶然その場に居合わせた大学生の青年は、男が吐血する姿を目の前にしてパニックに陥り、咄嗟に男を突き飛ばしてしまいます。倒れた拍子に頭を打った男は、そのまま死亡。検死に回された遺体から発見されたのは、あまりにも予想外のもので……!?
- 著者
- 筒井 哲也
- 出版日
- 2015-04-17
唐突に衝撃的なシーンからはじまる本作。寄生虫に侵される恐怖と、寄生虫を巡る謎を追いかけるバイオホラー作品です。寄生虫やそれに侵された人間の描写は、なかなかグロテスク。苦手な方は注意してください。
全裸男は、謎の寄生虫に侵されていました。しかもその後、男を死なせてしまった大学生までもが寄生虫によって亡くなってしまいます。
いったい何がどうなっているのか分からないままどんどんストーリーは進んでいき、事態が深刻化していくため、読者の不安を搔き立てるのです。
主人公となるのは、全裸男の事件が起きた地域の刑事課に所属する、若い女刑事です。相棒とともに全裸男の謎、寄生虫の謎、その裏にある恐るべき事実へと近付いていくことになります。最後の最後まで展開が読めず、思わずページをめくってしまう作品です。
御茶漬海苔による短編スプラッタ―ホラー漫画集『惨劇館』。舞台は荒廃した無法地帯でも、猟奇的な殺人鬼が潜む絶海の孤島でも、あるいは、殺し合いを余儀なくされた非常事態でもありません。どの作品も舞台は、ありふれた日常。不気味な静寂の漂う日常の中に潜む闇を皮切りにして、唐突に血みどろの残酷劇が幕を開けていきます。
つい先程までは普通に会話していた男が血の海の中でバラバラ死体になっていたり、少女の腹部を突き破り蜘蛛の化け物が飛び出してきたり、幼女が急に腐乱死体化し襲い掛かってきたりします。ハラハラドキドキに弱い方にはおすすめできないかもしれません。
- 著者
- 御茶漬海苔
- 出版日
グロテスクなスプラッタ―描写は凄惨さを極めています。それは日常の静けさとの対比によって、より鮮明に描き出されるのです。夢に出てきそうなほど気持ち悪いのに、ページをめくる手が止まらない中毒性がこの作品にはあります。
ホラー漫画の鬼才と名高い作者とだけあって、姿の見えない恐怖の描写と背筋の凍るような演出は見事です。日常の1コマを切り取ったかのような短時間でサクッと読める短編だからこそ、じわじわと怖さが効いてくるのです。
どこに何が潜んでいるか分からない、肉体だけでなく日常をも破壊していく、平穏な日々が恐ろしくなる戦慄短編集である本作。日常もしくは己の中の闇との対峙を余儀なくされる、そんなスプラッタ―ホラー漫画の傑作揃いです。
幼くして両親を事故で失った兄弟、霊能力を持つ妹とその兄が様々な怪異に遭遇するホラー漫画で、どちらかというと心霊というよりは悪魔や呪いといったどろどろしたものがメインです。
- 著者
- うぐいす祥子
- 出版日
絵もかなりグロテスクで、血も内臓も飛びまくるのでこの点は人を選ぶかもしれません。兄弟がお互いに無い部分を補いながら生還を勝ち取っていく(解決するわけではないのがポイントでしょう)、そんなお話です。
面白いなと思うのは兄弟の役割分担というか立ち位置がしっかりしていること。頭脳明晰だが特殊能力を持たない兄、超常の力を持つが肉体的には弱い妹。
一見妹が霊能力を使って大活躍しているように見えますが、兄の冷静な観察眼、行動力が無いと妹の能力が生かしきれず、結局生き残れないようになっている点は秀逸で、うまく表現されているなと感じました。
当時掲載されていた雑誌が休刊した為未回収の伏線も多く、因縁ある登場人物たちのその後も気になります。『死人の声をきくがよい』と作者が同じで、そちらの話にはこの妹と同じ名前の女性が登場することから、実はつながりがあるかも!と想像するのも楽しい作品です。
失業中の主人公、佑河樹里28歳。家ではおじいさん、父、兄のダメな男たちが暇を持て余し、シングルマザーの妹は息子の真のために働き詰めでした。そんなある日、兄と真が突然何者かに誘拐されてしまいます。犯人の身代金要求にも間に合わない……と家族みんな困憊しているとき、おじいさんが佑河家に代々伝わる「止界術」で世界の時間を止めるのです。
兄と真を救うべく「止界」と呼ばれる時間が止まった世界にのり込んだ樹里たち。そこで、なぜか動ける人間たちが次々と現れ襲撃してきます。はたして樹里たちは愛する家族を助け、元の世界へ帰ることができるのでしょうか。
- 著者
- 堀尾 省太
- 出版日
- 2009-08-21
止界と呼ばれる時が止まった世界で物語は展開していきます。兄と甥っ子を誘拐した謎の宗教団体と戦うことになる樹里たち佑河家。両者ともに把握しきれていない止界に存在するルールのようなものに対して試行錯誤しながら攻防をくり広げていく様子は、単純なバトルものとは違う面白さがあります。
また伏線がかなり緻密に計算されて、物語の随所に張られています。そのため、読者は主人公たちとともに謎を追い、時には前の巻を読み返してみたり、考えたりしながら進んでいける楽しさが魅力です。
最初は謎だらけの展開を見せるので、そこはその不思議さを楽しみながら次へ進んでください。だんだん世界観を把握できるようになり、そうなればうまく張られた伏線とストーリー展開で飽きることなく読めてしまうはずですよ。
2018年には、テレビアニメ化もされています。
『刻刻』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『刻刻』全8巻の伏線をネタバレ解説!【アニメ化】
『刻刻』は、時間を止めた世界に入り込むことができる力を持った家族と、それを狙う謎の宗教団体との戦いを描く、現実と非現実の狭間の物語。SFやアクション的な要素だけではなく、家族への思いや人間の本質を描写しているリアルなドラマが展開されていきます。
主人公はヤンチャな少年・高松翔。母とケンカをして家を飛び出したある日、荒れはてた未来の世界へ学校の校舎ごと送られてしまいます。大人たちは死に、子どもたちは自分たちで生き抜かなければいけない状況に。
飢餓や未知の生命体の出現や自然現象、未来の人類たちの来訪と、次々と子ども達に襲い来る恐怖と難局……。翔を含めた子どもたちは一体どうなってしまうのでしょうか。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
2002年にドラマ化されていたことでご存知の方も多いでしょう。禍々しく描かれた荒れはてた未来、未知の現象や生命体、大人たちどころか子どもたちまでもが争いに走ってしまう狂気……まさにパニックホラー漫画です。
しかし、単なる怖いストーリーというだけではなく、子供たちこそが未来であり、希望であることを強く訴える力のある作品でもあるのです。未来に対する警鐘ともとれる世界観に、SFやパニックホラー要素を織り交ぜた作品は、時を経ても高い評価を得続けています。
一度見たら忘れられない恐怖と強烈な印象、子供たちの辿る展開、そして衝撃的な結末。最後まで目が離せないホラー漫画です。
ZQNと呼ばれる感染者と人々が戦うことになってゆくこの作品。謎の感染症により人々が食人鬼と化し、平和な日常が崩壊してしまった世界が描かれます。
2016年に実写映画化されたことでも有名な作品です。
- 著者
- 花沢 健吾
- 出版日
- 2009-08-28
主人公は鈴木英雄、35歳の冴えない漫画家です。この作品の始めでは、主人公の何の変哲もない地味目な日常が描かれています。その後、平和で当たり前と思われていた世界の崩壊する様子を描き、その落差のせいもあってシーンが鮮烈に目に焼きつきます。
主人公がいたって平凡で地味というのも、作品としては大きなポイントです。漫画の主人公といえば、特殊な力を持っていたり、選ばれた人間だったり、なにかしらの主役らしさを持っているもの。しかし、本作の主人公・英雄には、どこにでもいそうな普通の人間らしさを感じるのです。それが現実離れした世界観に読者を一気に惹きつけ、身近に感じさせてしまう要因ではないでしょうか。
崩壊した世界を舞台に、自分の人生すら主役になれない脇役であると感じている英雄が一体どのように戦い生きていくのか……このホラー漫画で見届けてみませんか?
『アイアムアヒーロー』については、以下の記事で詳しく紹介しています。
漫画『アイアムアヒーロー』が無料で読める!多くの謎をネタバレ考察!
『アイアムアヒーロー』とは、謎の感染症によって日常が崩落していくさまを描いたSFホラー漫画。さまざまな考察ができる作品になっています。スマホの漫画アプリで無料で読めますよ。
研究軍医であるハリス・ホーミは、実験室にてひとりの少女と出会いました。少女の名はアマリリス、通常マリィ。人間兵器として育てられた子供たちのうちの一人です。ハリスは、人間を兵器として扱う軍に疑問を感じ、マリィをつれて軍を脱走します。
- 著者
- 久遠 社
- 出版日
追われる身になったハリスとマリィを、軍と実験によって生み出された兵器としての力を持つ子供が狙ってきます。
血みどろの戦いのなか、幼い子供たちが自身を削りながら守るべき者のために戦う姿が描かれている本作。少々重めのテーマが魅力のホラー漫画となっています。
実験によって、多くの子供たち、それも少女を兵器として作り出している猟奇的な軍の話であり、ストーリーや描写はかなり凄惨なものになります。しかし物語や設定が、軍人とひとりの少女の逃避行を描いており、ハードボイルドでかっこいい作風が見どころです。
軍を脱走して、追手に狙われ苦戦を強いられますが、マリィと強さとハリスの知識で切り抜けていきます。残酷な世界感ですが、スピード感ある展開と逃避行によってどこか爽快感があります。少女とおっさんという組み合わせですが、どちらもたくましく、そんな2人のコンビがかっこよく見える作品です。
『ハーレムエンド』は駕籠真太郎による作品で、2012年6月に単行本特別描き下ろし作品として発表され、コアマガジンより刊行されました。
都市伝説として語られる復讐代行サイト「ハーレムエンド」は、ツンデレ、お嬢様、眼鏡っ娘、ヤンデレそしてロリという、それぞれが定番の萌え属性を持つ5人の美少女たちによって運営されています。厳重な審査の上、女性からの依頼のみ受け、復讐対象は男性に限定されます。
彼女たちは依頼を受けると各自の属性に合わせたキャラクターを設定し、ターゲットに近づきハーレムをしかけ、タイプの違う5人の美少女が自分を取り合うという漫画やアニメさながらのハーレム状態に戸惑いつつも浮かれるターゲットを、頃合いを見て殺害するのです。
ちなみにハーレムエンドとは、恋愛シミュレーションゲーム等において主人公が複数のヒロインと結ばれるエンディングを指します。本作の復讐代行屋ハーレムエンドは、ターゲットにハーレムという天国を見せた後、地獄に突き落とすのです。まさに、その名の通りの恐怖のハーレムエンドを遂行します。
しかしある時、復讐依頼によってアニメ制作会社フリッカーズの社員河森を殺害したことから、ハーレムエンドのメンバー達は命を狙われることになるのです。河森が所属していたフリッカーズは、本物の人間の死体を使い、ストップモーションアニメ「シタイアニメ」を制作する狂気のクリエイター集団。ハーレムエンドとフリッカーズ、果たして生き残るのはどちらなのでしょうか。血で血を洗う、両者の存亡をかけた戦いが幕を開けます。
- 著者
- 駕籠真太郎
- 出版日
奇想漫画家として名高い駕籠真太郎ならではの、淡々としたテンポで描かれるスプラッタ―描写は、独特ながらもリアリティにあふれ、他の追随を許さぬ静かな狂気を孕んでいます。ハーレムエンドのメンバー達による手慣れた死体処理の様子も、内臓を取り出し死体を切り刻み、証拠隠滅に至るまで、これでもかというほどに丁寧に事細かく描写されているのです。派手な演出がない分、吐き気を催すほどにグロテスクな仕上がりとなっています。
そして本作の最大の見どころは、何といってもフリッカーズによるシタイアニメの作り方でしょう。作中ではシタイアニメのことを「肢体アニメ」とも表現していますが、人間の肢体を素材にした表現の限界に挑んだ、奇想の博覧会ともいえるシュールで衝撃的な内容を楽しめます。
基本は素材となる死体に外骨格を取り付け、カメラに映りこまないよう動かし撮影していくのですが、その解説は驚くほどに丁寧。また、切り取ったりすげ替えたり、ありとあらゆる手段をもって、本物の人体によるアニメ特有のデフォルメや、誇張表現を再現する方法も多数収録されています。これまでのスプラッタ―の域を超えた、並大抵の想像力では到達できないスプラッタ―の新境地に踏み込んだ傑作といえるでしょう。
また、アニメをテーマにした作品なだけあり、声優やアニメ作品、制作現場のパロディも盛りだくさんで、思わずクスッと笑ってしまいます。ただのスプラッタ―漫画には飽きたという方には特に、おすすめしたい作品です。
生まれつき醜い顔を持ち、周囲の人間から酷い扱いを受けてた、淵累。彼女の母親は女優として活躍していましたが、すでに亡くなっています。累には、形見に口紅を残していました。
小学校の学芸会の演劇をからめていじめを受けていた累。主犯格の美少女にたまたま口が触れて、その後累と美少女の顔が入れ替わってしまいました。なんと、母の形見である口紅には、口づけで人間同士の顔を交換させる能力があったのです。
成長した累は、母に心酔し、協力者だった男・羽生田釿互、眠り姫病の美しい女優・丹沢ニナと出会い、二者の協力と口紅の力を使って、演劇の世界に入り込んでいきます。
- 著者
- 松浦 だるま
- 出版日
- 2013-10-23
自発的に演劇の道を力強く進んでいく累のダークヒロインの姿が妖しく、儚く美しい作品です。
主人公の累は、小学生の頃から女優として存在感、演技力が周囲と比べて秀でていました。見た目の要素を一時的に解決することができる口紅の存在が、大きく彼女の世界を変える力となります。当初は封印していた口紅の力に魅了された彼女は、その力に進むべき道を左右されていくのです。
演劇の道に進むにつれて累の周囲には、舞台役者、演出家など多数の人間が現れます。その人々の多くは、演じる、脚光を浴びるということに対する執着心がとても強い人たちです。
雰囲気のある画力が、演劇に魅了されている人の目つきを恐ろしく、また何か深いものを感じさせるように描かれていて、作品を魅力的にしています。ことあるごとに付きまとう大女優である母親の影を感じながら、徐々に暗い道へと進んでいく累に魅了されることでしょう。
『累』については、以下の記事で詳しく解説しています。
漫画『累』の魅力を最終14巻までネタバレ考察!女って本当に怖い……
2018年に実写映画化が決定したサイコホラー漫画。女、そして人間というものの恐ろしさを感じさせられる作品です。今回は本作の恐ろしさを詳しくフォーカスしていきます。13巻までのネタバレを含むのでご注意ください。
黒髪のロングヘア、妖艶な目つき、セクシーな泣きぼくろを持つ絶世の美女である富江は、わがままで自分勝手な性格ですが、近寄ってくる男たちをことごとく魅了して虜にしてしまう魔性の女。富江に近づく男たちは、皆そろって彼女に異常なまでの殺意が芽生えてしまうのです。
- 著者
- 伊藤潤二
- 出版日
- 2011-01-20
本作は、実写映画化もされています。原作はホラー漫画界の奇才と評される伊藤潤二のデビュー作であり、代表作。不気味さが後を引く読了感や、トラウマ級の恐怖シーンで有名な伊藤潤二ですが、この『富江』でもその作風はすでに感じられます。
富江はどう殺されようが何度でも蘇り、また違う場所で違う男を虜にして人生を狂わせていきます。細胞ひとつからでも増殖して再生してしまうという突飛な設定。ギャグと紙一重でありながらも、思わずゾッとする、恐怖のストーリーはさすが奇才の描くホラー漫画、圧巻です。
また、伊藤潤二の描く女性は美しいことで有名なのですが、本作の富江もやはりかなりの美女。ホラー漫画らしい禍々しい絵でありながら、どこか妖艶な富江の美しさに読者ですら心惹かれてしまう、そんな人を惹きつけてしまう魅力があるようです。
富江が狂わせていく人々とその人間模様、あまりの悲惨さに恐怖で背筋が凍ってしまうホラー漫画。怖いもの好きなら、本作ははずせません。
『富江』について気になった方は、魅力やおすすめエピソードなどを紹介した以下の記事をご覧ください。
伊藤潤二『富江』の魅力とは。何度も殺される美少女の結末は【ネタバレ注意】
『富江』は、伊藤潤二によるホラー漫画。今回は、そんな本作のあらすじと魅力を、名言なども交えてご紹介します。絶世の美しさをもつ少女と、その虜になった男達が狂っていく様を描き、高い人気を得た本作。アニメや映画で何度も映像化され、大人気のシリーズとなっています。ネタバレも含まれますので、ご注意ください。
どこにでもいるような大学生の森ヒロシは、真夜中に目が覚めると、何者かが隣の部屋をノックしている音に気がつきます。ドアを開けて隣を見てみると、身長が180cmほどありそうな、ロングコートを着た長い髪の大女が立っていました。その日は何もなく、ただただうるさいノックの音に悩まされながらも眠ります。
翌日の夜、またノックの音がします。今度はヒロシの部屋に大女が訪れました。突然、電話を貸してくれという大女からの催促で電話を手渡したヒロシ。その日から「サチコ」と名乗る大女に執拗に付きまとわれます。
一体、サチコとは何者なのでしょうか?彼女の行動はエスカレートしていき、やがてヒロシの周囲を巻き込んでいくことになります。
- 著者
- 望月 峯太郎
- 出版日
- 1993-07-02
サチコの行動のひとつひとつは恐怖でしかありません。ヒロシの部屋の電話番号を勝手に入手し、夜中に電話をしてきたり、大学の事務局にヒロシ宛の電話をしつこくしたり、ストーカーそのもの。しまいには、合鍵を勝手に作ってしまうほどです。物語が後半になればなるほど、行動は異常になっていきます。
ストーカーという言葉が日本で使われ始めたのが1990年代の後半頃。この作品はそれよりも前に発表されています。まるで、望月先生が付きまとわれる恐怖というのを、予見していたかのようです。はたして、サチコという謎の大女の存在は、都市伝説的なものなのか、実在していたのか……。女の正体は一体なんだったのか、その答えは物語の中に。
生まれたときから不幸を呼び寄せる霊感体質で、既にこの世にいない死んだ人間が「見える」少年が主人公です。そしてその主人公を助ける幼馴染の少女の霊、この二人を軸として話が進んでいきます。
- 著者
- ひよどり祥子
- 出版日
- 2012-08-20
ヒロインをはじめきれいな女の人たちはたくさん出てくる作品ですが、出てくる死体の数も半端ではありませんので注意してください。
面白いのは、主人公は霊を見ることはできても会話をすることができない点でまさにコミュニケーション不全と言えます。
少女の霊の描き方も秀逸で、冒頭のあまりにも悲惨に歪んだ亡骸と現在の楚々とした佇まい、そして何より生前はどのような人物だったのかが随所で表現され、そのあまりのギャップが「なぜこんなことになったのか?」「彼女は何を伝えようとしているのか?」と、読者の想像を掻き立てます。
不幸を呼び寄せる体質からか主人公はかなり無気力なので、そういったネガティブな主人公が嫌いな人は向いていないかもしれません。タイトルの「死人」が誰を指しているのかその意味を改めて考えたとき、本当に死んでしまったヒロインではなく、「死んだように生きている」主人公のことなのかもしれないとも思いました。
主人公は、幽霊やお化けといった類のものをまったく信じていない鬼形礼。ある日の真夜中、彼の部屋に「恐怖新聞」が届きます。新聞の中には、学校の先生が車ではねられて死亡、そしてその発見者は鬼形礼であると書かれていました。
「信じられるものかっ!」と憤る鬼形でしたが、翌朝記事にあった通り、先生の死の瞬間を目撃してしまいます。その後クラスメイトから、恐怖新聞を読むたびに寿命が100日縮むという驚愕の事実を聞かされるのです。
何があっても新聞を見たくないと、窓を閉めカーテンをかける鬼形。しかし、恐怖新聞は窓ガラスを突き破り、彼の眼前に運ばれてきてしまいます。実は新聞にはポルターガイストが憑いており、どこにいようと必ず運ばれて来てしまうのでした。
このままの生活が続くと寿命が尽き、命を落としてしまう危機に。はたして彼は恐怖新聞から逃れることができるのでしょうか…… 。
- 著者
- つのだ じろう
- 出版日
『空手バカ一代』で有名な、つのだじろう作のホラー漫画です。
新聞が窓ガラスを割って部屋に入ってきたり、読むだけで寿命が100日縮んだりといった突飛な設定が魅力。劇画調のリアルな絵でゾッとする恐怖を感じながらも、少しにやけてしまうこの感じは『彼岸島』に似たようなものがあるかもしれません。
鬼形礼が主人公として進む本編に加え、彼が語り部となって進む短編もあります。『恐怖新聞』に負けず劣らずのクオリティですので、ぜひあわせてご覧ください。
美男子、美女のカップル、ゆかりと優作。ゆかりは、死者の姿を見ることができ、優作は、死者や動物の心の声を聞く力をもっています。優作たちが死者側から寄ってこられたり、自らから死者に関わったりすることで、死者とその人生を少しずつ理解していく物語です。
死者と生者の間の話ではありますが、その趣は他の作品とは少し異なります。単におどろおどろしい物語なのではなく、人間の心を描いた作品です。
- 著者
- 川口 まどか
- 出版日
特殊な力を持った優作とゆかりですが、エキセントリックな性格設定ではなくかなり穏やかで優しい印象を受けます。不幸な死に方をした死者、自分が死んだことを認識できていない死者、理由が分からないまま苦しんでいる死者に対して、見て見ぬふりをしたくないという2人。彼らの思いによって物語は展開されていきます。
静かな死者、口悪く乱暴な死者、トカゲのような形をした死者も現れたとき、この2人は基本的にどんな死者に対しても普通に接します。強気にでるでも、変に敬うでもなく、前から知っている隣人のような接し方をするのです。
この物語の死者への対処は、特殊な力で成仏させたり、不思議な力で消滅させたりするような方法ではありません。ゆかりと優作が、死者とゆっくりと話し合い、ときには一緒に暮らしながら長い時間をかけてなんとか解決しようする流れになっています。
バイオレンスな描写が目立つ作品が多い昨今で、今でも名作として読まれる『死と彼女とぼく』は人間ドラマが描かれるものとして楽しめます。このような作品で少し癒されるのもいかがでしょうか。
玉置勉強による『東京赤ずきん』は、当初読み切り作品として始まりました。その後「エース特濃」に2003年から掲載され、後に「月刊コミックバーズ」に2004年~2006年まで連載されました。
舞台は、暴力や犯罪によって惨憺たる状況になった近未来の東京。ヒロインの赤ずきんは、狼さんを待っています。ショットガンを持ち、狼さんを探すため人間を殺しながら東京を彷徨い、どんなに肉体を破壊されても死ぬことができません。というのは、狼さんに「食べられるため」に生きているからです。
赤ずきんは、どうして狼さんに食べられなければならないのか、そして赤ずきんは狼さんを見つけることができるのか……。物語が展開していくにつれ、赤ずきんの正体が明かされるとともに、その謎が明らかになっていきます。
- 著者
- 玉置 勉強
- 出版日
- 2004-06-24
頭部を破壊されても内臓を引きずり出しても八つ裂きにされても、死なない赤ずきん。ハードでカオスなエログロ描写は、正直なところかなりの耐性がないときついことでしょう。しかし本作の特筆すべき点は、スプラッタ―とエログロバイオレンスだけではありません。
赤ずきんをはじめ、登場人物はひとりひとりが重い背景を背負いながら、血と暴力にまみれた東京で生きています。独特な性癖や欲求を持ち独自の思考回路でもって行動する、猟奇的でクレイジーなキャラクター達とのバトルや掛け合いの面白さが本作の醍醐味なのです。変態性や狂気を孕んだ個々の心理や歪み、感情の昂ぶりが巧みに自然に描かれており、バイオレンスでクレイジーなヒロイン赤ずきんに、読者はなぜか「可愛い……」という感想を禁じ得ないことでしょう。
不死身のヒロイン赤ずきんと、かなり個性的なキャラクター達、バトルと狂気と変態性で描かれる壮大なストーリーを描く本作は、他ジャンルの漫画にはない感動体験が得られる作品。過激な描写を乗り越えてでも読んでほしい異色の暗黒童話なのです。表現の限界に挑んだ独自の美学で描かれるダークファンタジーを、どうぞご堪能ください。
両親と愛犬、愛猫と平和な日々を送っていた女子高生のゆっこは、ある日目が覚めると体が小さくなっていることに気がつきます。そこから、今までの平和が一転。自分の周囲のものが巨大化して襲ってくる、恐ろしい世界へと豹変していたのです。
愛犬ポコとともに、彼女は混乱を極めた世界を生き延びられるのでしょうか。そして自分を含む多くの人が小さくなった謎の正体とは……?
- 著者
- 石川 優吾
- 出版日
- 2015-10-30
ある日を境に小さくなってしまった体や、ワンダーランドというタイトル、表紙の女の子の絵から、まさにファンタジーの代表といえる不思議の国のアリスを連想してしまいますね。しかし、内容はかなり恐怖で溢れたダークファンタジー。不思議な力を持っているような美少女のアリスも登場し、謎が謎を呼ぶ展開を見せます。
今まで可愛い家族だった猫は恐ろしい猛獣となり、外を飛び回るカラスたちももはや怪鳥……。周囲のものがすべて巨大で、太刀打ちすることができない恐怖と人々が襲われていくグロテスクな描写が非常に怖いです。それでも結末が知りたくてページをめくる手を止められない、そんなホラー漫画です。
愛犬のポコとともに、今や危険な猛獣となった愛猫のいる家から飛び出し、混乱に陥った世界で自分以外の人間の多くも小さくなっていることに気づいたゆっこ。はたして彼女は元の身体に戻れるのでしょうか?
体が小さくなった謎の根底には一体……。ぜひ、ご自身の目でご覧になってみてください。
エルフェンリートベクターと呼ばれる特殊能力を有する女性型ミュータントと少年の切ない恋を描くホラー漫画です。作中にはバイオレンスな表現が多く、児童虐待、スプラッター、エロス、サイエンスフィクション、ギャグなどさまざまな要素が盛り込まれています。
人類を滅ぼすこともできる力を持った女性型ミュータント、ディクロニウス。コードネームはルーシーです。ある日彼女は、隔離、研究されていた施設で偶発的な事故が起こった隙に施設から脱走します。脱走の際に頭を負傷し海へ投げ出された彼女は、やがて由比ヶ浜に流れ着きます。
そこで偶然通りかかった少年に助けられるのですが、頭部の傷が元で記憶を失っていた彼女は、「にゅうにゅう」という言葉しか発することができず、少年に「にゅう」と名づけられました。ルーシーは、こうして「にゅう」という元の人格とはまったく別の少女となり、助けてくれた少年とともに一緒に暮らしはじめます。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2002-10-18
作品のテイストとしては、非常にシリアスで悲しい物語です。しかし、序盤は楓荘という、にゅうに名前を付けた少年、コウタと、いとこのユカがともに生活する場所で、まるでラブコメのような甘く、ちょっとエッチな生活が送られていきます。
とてもホラー漫画とは思えないほどのゆるゆるっぷりなのですが、話が進むにつれてさまざまな同居人が増え、しだいに作品の様相が変わっていくのです。
にゅうの正体にコウタが気づくことで不幸なストーリーが展開されはじめます。アニメ版では過激なスプラッターシーンなども話題となり、ストーリーの鬱展開などもしばしば取りざたされます。しかしそんな暗いイメージのなか、このホラー漫画にはまるで緩衝材のようにギャグやラブコメの要素が散りばめられているのです。
物語の核心に迫る後半こそ不幸の連続ですが、それに至るまでにはしっかりと心の準備ができる話の構成となっています。そうやって心の準備をしておかないと終盤の物語には耐えられないかもしれません……。
登場する女性キャラクターが非常に魅力的。それだけでなく、内容の過激さとストーリー構成、主人公の最強っぷりから、海外での人気が高いです。なんとニューヨーク・タイムズに記事としてとりあげられたことも。間違った内容で紹介されていたなど、行き違いがあった感はありますが、海外アニメファンの琴線に触れるホラー漫画であったというのは間違いないようです。
本作品はたしかに残酷で過激なシーンが多いホラーな内容といえます。しかしつまるところ、少女の人格を持ってしまったミュータントとひとりの少年の恋の物語。そんなホラーテイストのラブストーリーを体感できる本作、鬱展開もありますが、ドハマりしてしまう可能性大です。
『少女椿』はひとりの少女が孤児となり、引き取られた先で陵辱され不幸になっていく様を描く問題作です。この物語に表面上の救いなど一切ありません。しかしそんな救いのなさこそが、本作に大きな個性を与え、エログロな独特な世界観を生み出しています。
時代は昭和初期、病気がちの母と2人きりの生活を送っている少女みどりは、生活と母の世話のため花売りをしていました。ある時出先から帰ったみどりは、母がねずみに食われ無残な姿で死んでいるのを発見します。こうして孤児となったみどりは、花売りをしている時に出会った男に騙され、赤猫座という見世物小屋の主人に引き取られました。下働きとして働くことになったみどりは、小屋の芸人にいじめ抜かれ不幸な人生を送っていくことになるのです。
- 著者
- 丸尾 末広
- 出版日
浪花清雲による街頭紙芝居『少女椿』に脚色を加えたホラー漫画です。紙芝居では、少女は最終的には幸福を掴むのですが、本作ではどっぷりと不幸に浸かりきったまま最後を迎えます。しかしこの脚色こそが、作者ならではの怪奇に満ちた世界を作りあげているのです。
冒頭からして、母親が陰部から侵入したねずみに内蔵を食い破られるという衝撃的なシーンで描かれます。物語の内容はもちろん、絵柄もとてつもないエログロな世界観です。陵辱や虐待、暴力などの過激なシーンが多々あります。主役が少女であっても容赦しないといわんばかりに、まざまざとそういったシーンが描かれていきますので、一度世界観にハマってしまうと、なかなか抜け出せないでしょう。
『少女椿』のなかでも、見世物小屋のエピソードは必見です。下働きをすることになったみどりが、芸人たちに虐待され、陵辱される話で、作者が描く性的な描写と残酷な描写はこのエピソードに集約されています。好みは分かれそうですが、エロシーン、グロシーンが目白押しな点も注目される要因となっています。
もっと詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。ぜひこの独創的なエログロワールドをお楽しみください。
漫画『少女椿』の魅力をネタバレ考察!グロくて悲惨なのに、どこか美しい?
1984年に単行本化されてからカルト的人気を誇る漫画「少女椿」。エロくてグロくてナンセンスで、思わず目を背けたくなってしまうのに、何が読む人をここまで惹き付けるのか、見世物小屋「赤猫座」のちょっと(?)イカれた演者達を紹介しながら、この作品の真の魅力に迫って行きます。
死者をよみがえらせる能力を持つセーラー服の女子高生、姫園れい子がゾンビ屋として活躍する漫画『ゾンビ屋れい子』。連載スタート時は1話完結型でしたが、途中からは少年・青年漫画らしいバトル要素も含めたストーリー展開となります。
- 著者
- 三家本 礼
- 出版日
- 2005-12-05
主人公がゾンビ屋という仕事をしており、死体を復活させることができるという珍しい設定。またそれが魅力の漫画でもあります。
連載がスタートした当初は少女漫画向きの、ゾンビもの作品らしいブラックなユーモアや残虐性を兼ね備えた1話完結の連作として描かれていましたが、途中からはバトル要素も加わりました。れい子がゾンビを召喚し、事件を解決していくようなストーリー展開に変化していくと同時に、絵柄も雰囲気が変わりました。さらに、れい子のスタイルも女性らしさを強調して描かれるように。
綺麗で癖の少ない絵なので読みやすく、男女問わず楽しめるゾンビ漫画です。
『ゾンビ屋れい子』については以下の記事でも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
『ゾンビ屋れい子』が最高にひどいw 伝説のエログロホラー漫画ネタバレ紹介
実写映画化やドラマCD化もされた三家本礼の代表作『ゾンビ屋れい子』。今回は「進化する」漫画として有名な本作の魅力をご紹介します!ネタバレを含みますのでご注意ください。
いかがでしたでしょうか。ホラー漫画好きならきっと楽しめる作品ばかりですので、気になる漫画を見つけたらぜひ読んでみてくださいね。