子どもだった大人たちにぜひ読んでほしい!懐かしい田舎の風景と、みんなで食べるあったかくておいしいごはん。少女とおじさんと妖怪が囲む、不思議で優しい食卓。ノスタルジックな魅力に癒されてみませんか。
数多くの人気作品を輩出しているコミック誌『ヤングアニマル嵐』で絶大な支持を得ているのが『えびがわ町の妖怪カフェ』です。作者である上田信舟の故郷・岐阜県を舞台に、少女と、おじさんと、妖怪たちがおいしいごはんを食べる―なんだか不思議であたたかかな、ひと夏の物語です。
- 著者
- 上田信舟
- 出版日
- 2017-02-28
細部まで丁寧に描かれた風景や、妖怪たちのかわいらしい魅力も女性作家ならでは。
なによりおじさんの作る料理がとにかくおいしそう!ささっと作れる素朴な家庭料理だけれど、手づくりのあったかごはん、そういえばしばらく食べてないな……なんて人には、これ以上の飯テロはありません。
夏、田舎、川のせせらぎ、蝉の声……そして、おいしいごはんを囲む食卓。誰もが経験したあのころの夏に、ひょっこりと妖怪たちが登場する日常系ファンタジー。
2017年8月に第2巻が刊行され、2018年初春現在も好評連載中の大注目作です。
東京から新幹線と列車を乗り継ぎ、ひとりでえびがわ町を訪ねてきた9歳の少女、高梨まな。地図を片手にどうにかたどり着いたのは、伯父である佐吉が営むカフェ「ようけ」でした。
「人ならざるもの」を呼び寄せるまなの能力により、店には妖怪たちが次々と訪れるように。そんな妖怪たちを大歓迎する佐吉にも、なんだか秘密がありそうな予感。
いつもいい子であろうとするまなが、佐吉や妖怪たちとのふれあいのなかで、次第に9歳の子どもらしい、あどけない表情を見せるようになります。
- 著者
- 上田信舟
- 出版日
- 2017-08-29
えびがわ町に住む佐吉のもとに、たったひとりでやってきた9歳の少女、まな。佐吉は、急なできごとにとまどいながらも、まなを自宅に招き入れます。
開封もせずほったらかしにしていた、まなの父親からの手紙には、「母親が扱いかねている」といった内容が書かれていました。
佐吉がいろいろと思いめぐらせていると、おとなしくテレビを見ていたまなのおなかがぐぅーっと……。
佐吉は台所に立ち、ごはんを作りはじめました。まなも、興味津津にのぞきこみ、嬉しそうにお手伝いをします。
お店じゅうに広がる、焼きたての油揚げの香ばしい匂い。その匂いに誘われて、少女に化けたキツネがお店にやってきます。
- 著者
- 上田信舟
- 出版日
- 2017-02-28
「お店の前に来てみたら 灯りが……
いつもと違ってお店の灯りが とても優しく見えて……」(『えびがわ町の妖怪カフェ』1巻より引用)
いつもはお店には入らないように我慢していたのに、今日はついつい、そのまま中に入ってしまったというキツネ。
佐吉は、まながキツネを呼び寄せたのだとすぐに分かりました。
まなの両親が、自分のところにまなをよこした理由がなんとなくわかった佐吉。はじめから少女の正体がキツネだと分かっていたのかと佐吉にたずねられ、思わずまなは謝ります。
そんなまなに佐吉は、これからも変な客が来たらどんどん呼んでくれと、意外なことを言うのです。
ずっとここにいたらいいと言う佐吉の温かい言葉に、思わず涙がこぼれます。
「ここにいます ありがとうございます……」(『えびがわ町の妖怪カフェ』1巻より引用)
頭を下げるまなに、それは違うという佐吉。
「お前が客を呼んでくれたんじゃ だから俺はお前を歓迎する お前が嫌でなきゃ居りゃあいい 堂々と 胸を張って 好きなだけここに居ってええよ」(『えびがわ町の妖怪カフェ』1巻より引用)
少女と伯父、ふたりの生活が始まりました。
手もかからず、おとなしくてとてもいい子のまなですが、肩に触れようとした佐吉の手に思わずびくっとするなど、これまでどのような扱いを受けてきたのかと想像してしまいます。その元凶とも言えるまなの能力、それを肯定するだけでなく心から歓迎し、自分の存在を受け入れてくれた佐吉の言葉が、まなにはどれほど嬉しかったでしょうか。
座敷童子や河童、次々と妖怪たちが佐吉の店を訪れますが、佐吉がお金を受け取らないことをまなは不思議に思います。
なにか理由がありそうなのですが……
「もしかしてこういうのが どうらくしょうばいって奴……!?」(『えびがわ町の妖怪カフェ』1巻より引用)
そんなまなの心の声に、くしゃみをする佐吉。
ユーモアもたっぷり交えながら、ゆったり物語は進んでいきます。
毎回新しく登場する妖怪たちだけでなく、「ようけ」にはこれまで訪れた妖怪たちも姿を見せ、にぎやかな雰囲気が増してくる2巻。
まなと佐吉の距離も少しずつ近づき、まなの表情も豊かになってきたような気がします。
ある日、まなの叔母である古川佳奈が、えびがわ町を訪れます。佐吉との暮らしを心配してのこと。そして、佳奈はまなの能力を信じてはいないようでした。
一緒に東京に帰らないかという佳奈に、まなは……。
まなのことを気にかけ、こうして訪ねてくれる人がいることにホッとします。そしてえびがわ町にも、まなの存在を大切に思う仲間が出来たのです。
佐吉の謎も少しずつ気になる展開です。
どうやら誰かを探している様子。そして、いつも胸元にしまっている櫛。
妖怪たちがどんな姿に化けていようとも、この櫛をかざすとその真の姿が見えるのです。なぜそのような櫛を佐吉が持っているのでしょうか?
そして商店街には、佐吉についてなにやら不思議なことを言う人もいて……。
- 著者
- 上田信舟
- 出版日
- 2017-08-29
そもそも、人ならざるものが見え、それを呼び寄せる能力を持つまなを、両親が佐吉のもとによこした理由もはっきりと明かされてはいません。
まなの心の傷、ときに妖怪たちに見え隠れする物悲しい過去、そして佐吉の謎……。
さまざまな要素を含んでいながら、シリアスになることなく、あたたかに物語はすすんでいきます。
それもこれも、おいしい料理があるからでしょうか。おいしいものをみんなで食べるって、あらためて幸せな時間なのだなあと感じずにはいられません。
2巻では、肉じゃがや餃子、オムライスなどおなじみの料理が登場しますが、不思議とどれもたまらなくおいしそうなのです。
出来上がりを待つまなや妖怪たちの表情、ぐーっとなるおなかの音、ジュウッと焼きあげるフライパンの音、立ちのぼる湯気……。
ところで、まなは年齢の割には好きな食べ物が渋好み。
えびがわ町に来るまでは、誰とどんな食卓を囲んでいたのか……それも今後、明かされていくのでしょうか。
- 著者
- 上田信舟
- 出版日
- 2017-02-28
誰もが経験したことのあるような、遠い昔の夏の風景。素朴で懐かしい田舎のごはん。
えびがわ町で過ごす夏、妖怪たちと囲む優しくにぎやかな食卓に、少女の心は癒されていきます。
切なくなるほど優しくノスタルジックな本作は、2018年現在もヤングアニマル嵐にて好評連載中です。まだまだ物語はここから!さらに面白さを増すこと間違いありません。スマホのアプリで無料で読めますので、ぜひ一度、不思議な世界へ足を踏み入れてみませんか。