軽妙な語り口に、脱力系の下手うまイラストで絶大な支持を集めるブロガー、カータン。日々の疲れやストレスを、一気に笑いと涙に変えて吹き飛ばしてくれるのが魅力です。今回はそんなカータンが出版した4作品をご紹介したいと思います。
カータンは1967年4月生まれの専業主婦兼ブロガーです。児童期の一時期、台湾は台北で過ごしていたそうです。妄想しがちな性格で、物心ついた頃からエッセイストを志望していたとか。
大学卒業後はバブル全盛期の後押しもあって、華の職業である飛行機の客室乗務員になりました。この時の体験は通称「おしんスッチー」としてたびたび話題に上ります。1997年に7年間従事した仕事を退職し、専業主婦へ。
1998年には長女に恵まれ、家事に育児に大忙し。2005年、ようやくその長女が小学校に上がり、一息つくかと思いきや、次女懐妊。それも平穏には行かず、安定期に入ったはずの妊娠17週目にして緊急入院することになってしまいます。4ヶ月間を病院で過ごして出産に望むも、体重1590gの低体重児でした。
その時カータン39歳。次女を出産したことを機に、高齢出産と低体重児出産の経験を啓蒙すべくブログを開始。現在に至ります。
代表作は『あたし・主婦の頭の中』、『いろいろあるのよ、主婦だって! 』等。
奥様の名前はカータン。客室乗務員時代に出会った夫と普通に結婚し、しばらくしてから専業主婦になったどこにでもいる普通の主婦です。長女、次女をもうけたカータンが他の主婦と違っていたのは、これまでの経験を笑い飛ばす文才を持ったブロガーだったということです。
高齢出産、次女の低体重症をきっかけに綴られるようになった、普通の主婦の普通じゃない日々!
- 著者
- カータン
- 出版日
- 2008-07-10
本作は2008年にアメーバブックス新社から発売されました。2007年から続けられてきたイラスト日記に、書き下ろしを加えた書籍となっています。
作者をご紹介する際にも触れましたが、まず経歴がなかなか凄い。飛行機の客室乗務員というと、各航空会社の企業努力の賜物か、清楚で優しげなお姉さんというイメージがあるものです。ところがカータンはそんなイメージを一撃で吹き飛ばす、豪快な元客室乗務員。
元来人を笑わせることが得意だったこと、執筆業に意欲があったこと(再就職でライターを希望するほど)、そして何よりも各エピソードに添えられる下手うまイラストが笑いを誘います。イラストでもない、4コマでもない、笑いのツボを刺激するその独特の作風が、多くの育児中の母親やアラフォー世代に直撃したのです。
カータンの人となりから、客室乗務員時代、家族の日常、そして育児武勇伝まで。笑って泣ける、傑作ブログ集!
主婦生活10数年。愛する夫と2人の娘に恵まれて、気付けば40代になったカータン。若かりし頃を思い返すと、当時考えてもいなかった日々の連続です。カータンの人格を形成した懐かしき昭和の追想から、おしんスッチー(客室乗務員)時代のトンデモ話、他愛ない身の回りのことまで。
人気アラフォーブロガーの爆笑本、第2弾!
- 著者
- カータン
- 出版日
- 2009-01-30
本作は2009年にアメーバブックス新社から発売されました。前作には収録されなかった回想に妄想、未収録エピソードのオンパレードです。
ところでカータンの話のネタにたびたび登場する「おしんスッチー」なるワード。頻出具合に反して、意味がよくわからないのではないでしょうか? これはアラフォーもしくはアラフィフ世代のあるあるネタというか、共通用語のようなものと言えるでしょう。
かつてNHK連続テレビ小説で放映され、絶大な人気を誇った『おしん』というドラマがありました。詳しくは省きますが、明治期を健気に生きる主人公おしんが、不憫にも世間の荒波に晒される、といった内容のドラマです。
そしてスッチー。今では耳慣れない言葉となっていますが、CAがスチュワーデスと呼ばれていた頃の略称です。
つまり「おしんスッチー」とは、いわゆる年上の先輩であるお局様や、我の強い横柄なお客様にいじめられ抜いた作者のスチュワーデス時代のこと。隔世の感があるネタですが、当時を知る方にはあるあるネタとして、知らない方にはある種のファンタジーのように感じられることでしょう。
いずれにしても、この特異なイラストによって紡がれる数々のエピソード、他ではちょっとお目にかかれません。
例えるなら女はクリスマスケーキ。25までが華で、後は売れ残り……。女性の社会進出の進んだ今でこそ、このようなことは言われなくなりましたが、かつて大真面目に言われていた時代がありました。
そんな時代をしぶとく生き抜いたカータンは言い切ります。まだまだ輝ける、人生に期限なんてないと。全盛期で走り続けるカータンが送る、ブログとはひと味違った書き下ろしエッセイ!
- 著者
- カータン
- 出版日
- 2010-07-22
本作は2010年にアメーバブックス新社から発売されました。
これまでご紹介してきた2作と違って、本作は完全書き下ろしです。作者紹介の項目でも触れましたが、かねてよりエッセイストを志望していた本人の念願叶ったエッセイ集となっています。カータンの代名詞とも言える下手うまイラストももちろんありますが、比重としては文章の方が大半を占めています。
当然、その内容は新ネタばかりです。ブログのノリを期待して手に取ると少し肩透かしを食ってしまうかも知れませんが、文章がメインでもカータンの筆の勢いは些かも衰えていません。カータンのファンなら、イラストがメインでないことが気にならなくなるぐらい、グイグイ引き込まれていくでしょう。
娘しかいない母親ならではの息子がいたら、という想像があったり。自分勝手な夫に悩んだり。嘘のような姑バトルがあったり。カータンの素に迫れる、これまで明かされなかった、エッセイならではの魅力があります。
カータンの元担当編集者にして、世界一周旅行本の著者でもある「のぞこ」こと小林希。彼女はカータンとは家族ぐるみの付き合いをするほど仲の良い友達です。
ある時、家族旅行を終えたカータンは台湾について、のぞこに熱く語って聞かせるのでした。ところが世界一周してきたはずなのに食いつきが悪い。人一倍台湾愛の熱いカータンは、台湾の魅力を伝えるべく2人旅行を計画します。かくして、元客室乗務員と元担当編集者の台湾珍道中が幕を開けました。
- 著者
- カータン 著/小林 希(のぞこ) 著
- 出版日
- 2015-01-30
本作は2015年にダイヤモンド社から発売されました。
ダイヤモンド社と言えば、海外旅行ガイドブックの総本山とも言える、かの有名な「地球の歩き方」シリーズを発行する出版社です。そこから出る台湾旅行本と言うことは、これはもうかなり信頼の置ける有力なガイドブックに違いない……と思うのは早計です。
本作はあくまで、カータンのカータンによるのぞこへの台湾プレゼン旅行をまとめたもの。女3人寄ればかしましい、とはよく言いますが、彼女達に限っては2人で充分賑々しい。本作では現地台湾の情報の正確さより、カータンとのぞこの妄想と暴走が著しく発揮されています。つまりいつものカータンということですね。
かつて台北に居を構えて、キャビンアテンダントをしていたカータンにとって、国外への旅行は言わば本分。行き先が台湾ともなれば庭同然で、いつにも増してパワフルなカータンの本領発揮がなされます。
カータンのいつものノリが好みで、正規のガイドブックには載らないような、面白台湾情報を知りたい方は要チェック! 旅行記として読むだけでも抱腹絶倒間違いなしです。
いかがでしたか? これまでブログでカータンをご存知だった方も、そうでない方も、一読すれば新たな魅力に取り憑かれること必至。ぜひ一度ご覧になってください。