生まれて初めて読んだ推理小説【住岡梨奈】

生まれて初めて読んだ推理小説【住岡梨奈】

更新:2021.11.12

今回、今まで自分から読むことのなかった推理小説を生まれて初めて読みました(一冊だけですが)。 “知らない世界”を覗いた気分です。物語を読んでこんなにハラハラしたのは初めてかもしれません。 もう二冊は安定の(笑)、私が大好きな作家お二人の本を紹介します。

北海道出身。1990年生まれ。2012年6月にシングル「feel you」でデビュー。翌年7月より、海辺のシェアハウスで共同生活を送る様子を放送する人気番組「テラスハウス」に出演。2019年2月公開の映画『あまのがわ』では主題歌と劇中歌を担当し、役者としても映画に初出演。6月5日にベストアルバム『住岡梨奈 2012-2019』のリリースが決定。6月8日の名古屋公演から全国7カ所をまわる、住岡梨奈 弾き語りtour 2019「笑顔のために」を開催する。また、8月にはバンド編成でのツアー、住岡梨奈 LIVE tour 2019「笑顔のために」を東京・大阪・札幌で開催。8月30日の札幌公演をもって活動休止する事を発表している。 http://www.sumiokarina.com/
泡の子

11文字の殺人

いつもホンシェルジュで自分好みの本をおすすめしていますが、これまで誰かから勧めてもらった本を読む機会はなかったので、モバイルサイトで配信している自分のラジオのコーナーを利用してファンの方からおすすめの本を教えてもらうことにしました。この作品はラジオで教えてもらった本の中から選んだ一冊です。推理小説は私にとっては難解で読みにくいのでは……と今まで躊躇していましたが、読み始めてすぐ物語に入り込むことができました。

ある日、女流推理作家の主人公は恋人から「誰かが僕の命を狙っているらしいんだ」と打ち明けられ、しばらくしてその通りに恋人は何者かに殺害されてしまいます。主人公は自らの職を利用して、推理小説を書くためと嘘をつき、事件の真相を明らかにするため、恋人と関わりのあった人物達と接触していきます。しかし、疑いをかけた人達が次々と殺されていく……。一体犯人は誰!?と、ハラハラドギマギしながら読むことができました。

窮地に立たされた人間の欲深さと愚かさ、そして深い悲しみ。「無人島より殺意を込めて」の11文字に込められた思いがひしひしと伝わってきました。これを機に推理小説を読むのが癖になりそうです。

くまとやまねこ

湯本香樹実さんの小説は、これまで2作ほど紹介させていただいていますが、今回は絵本です。

ある朝、くまは ないていました。 なかよしのことりが、しんでしまったのです。

ページを開いてすぐ胸を締め付けらました。悲しみに暮れるくまは、ことりを綺麗な箱に入れて、いつもどこに行くときも持って歩いていました。いい天気のある日、くまが外を歩いていると、バイオリン弾きのやまねこに出会います。この出会いが、ずっと落ち込んでいたくまの心を癒してくれるきっかけとなるのです。

この作品を読んで、失うこと、向き合うこと、見つめることをあらためて学んだ気がします。そして、音楽のあり方が本当の意味で、こうであればいいなと思いました。それがどういうことかはぜひこの絵本を読んで「こういうことか」とあなたなりに感じてもらえたら嬉しいです。

酒井駒子さんが描く動物たちの表情やしぐさにもはっとさせられました。絵だけでなく、この方の作品も素晴らしいので、酒井駒子さん作・絵の『よるくま』もおすすめです。

伝わるちから

毎度のことながら作者の書く文章は、ご本人から直接お話を聞いているような感覚になります。言葉から滲み出る何かがそう感じさせているのでしょうか……。

さて、この本には“人と寄り添うコツ”が分かるエピソードが散りばめられていて、背筋がピンと伸びるようなことがたくさん書かれています。人と関わる場面によってChapter(章)で分けられているのでとても読みやすかったです。

なかでも私がとても気に入ったのは【Chapter1−お礼上手になる】に書かれていた〔お弁当作り〕のエピソードです。「年老いた父親の誕生日にプレゼントをあげたいのだけれど、何をあげたらよいだろうか」と友人から相談を受け、作者は「大好きなお弁当を作ってあげたらどうか」と答えます。高齢になると身の回りで必要なものは少なく、まごころを込めた手作りのご飯が一番喜ばれるのではないか。お父さんにどんなお弁当が食べたいかを聞いて作り、それを家族みんなで一緒に食べたらもっと喜ばれるのではないか、と思ったからだそうです。一緒にお弁当を食べる家族の風景を想像しただけで、私も笑顔になってしまいました。

作者自身が学生の頃、母親に作ってもらったお弁当を「おいしかったよ」と素直に言えなかったことなど、お弁当にまつわる他のエピソードにもとてもほっこりしました。

結局、友人の父親が食べたいと言ったのは梅干しとご飯だけの日の丸弁当で、それを家族全員で食べ、父親は泣いて喜んでいたそうです。お父さんには日の丸弁当にどんな思い出があったのでしょう?

私にも忘れられないお弁当の思い出があります。お弁当のエピソードに限らず、あらゆる出来事には意図していなくても何かが“伝わるちから”が備わっていたり、何かを身につけるチャンスが転がっているのだとこの本は教えてくれます。

読み取るものは人によって違うかもしれませんが、それもまた本の面白いところではないでしょうか。“伝わるちから”を感じたら、次はそれを“伝えるちから”に変えていける! そんなやさしい勇気をくれる一冊です。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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