5分で分かる治安維持法!おすすめ本も合わせてご紹介!

更新:2018.1.23 作成:2018.1.23

戦前・戦後の20年間に渡り、大きな影響を与えた治安維持法。戦後教育によって「悪法」とのレッテルを貼られたその本当の姿は?ここでは、治安維持法が成立するまでの経緯や、運用の実情を分かりやすく解説し、併せて関連書籍もご紹介します。

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治安維持法とは

治安維持法は、1925年に公布・施行された、天皇制や私有財産制を否定する者たちを取り締まる法律です。

主な特徴としては、「国体変革」を目的として結社したり、指導者の役割をしたりした者への罰則を厳しくしており、最高刑を死刑としています。

この法律により、主に共産主義者や社会主義者・無政府主義者が逮捕・収監されました。

1921年に司法省が中心となって法案が作成され、翌年に、「過激社会運動取締法案」として帝国議会に提出、いくつかの問題点が指摘され、最終的に廃案となりました。

しかし、1925年1月にソビエト連邦との国交が樹立したことにより、日本国内でも過激な共産主義運動が広まることが心配されたため、当時の加藤高明内閣を中心に内容が少し修正され、「治安維持法」として成立したのです。似たような法律は、当時のアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスにも存在していました。

 

治安維持法が作られた背景

1917年、ロシアで共産主義革命がおこり、ソビエト連邦が成立します。この流れを受けて、全世界で暴力的に社会を変革しようとする人々が動きを活発化させます。

日本社会では、明治時代の後期から、社会主義者・共産主義者などが急速に増えていきました。彼らの一部は過激化し、テロによる社会変革を目指します。 

1910年には、幸徳秋水らが明治天皇を殺害しようとした罪で逮捕され(大逆事件)、1921年には、国際共産主義グループから資金を受け取った男が逮捕されました。1941年には、ソ連のスパイが日本政府内部にも影響を与えていたことが発覚し、検挙されています(ゾルゲ事件)。 

 

また、大正デモクラシーによる大衆運動の広がりにより、一般市民による労働運動、政治運動も活発になってしまいました。 

この流れを抑えるため、政府はより強い政策を打ち出す必要があったのです。

 

 

治安維持法の問題点

治安維持法は、社会秩序を乱したり、暴力による変革を肯定したりする者たちを検挙することで、治安の改善にかなりの効果を発揮しました。

しかし、一部のケースでは、行き過ぎとも受け取れる事態が起きています。 

特に目立つのは、特別高等警察による被疑者への拷問・自白の強要です。小説家の小林多喜二ら多くの人々が、激しい拷問によって死亡しています。 

また、この法令で行われたのは、過激な思想を持つ人々を見つけしだい検挙することのみだったため、その背景にある社会格差や貧困などの根本的な問題は解決しませんでした。 

 

治安維持法の廃止について

治安維持法は、1945年10月に廃止されました。

当時は日本が太平洋戦争に敗戦した直後でした。共産革命運動の再燃を防ぐため、政府は治安維持法を続けるつもりでしたが、GHQによる人権指令が出され、政治運動への制限を除去するよう命令されたため、幣原内閣はやむを得ず治安維持法を廃止しました。同時に、特別高等警察も廃止を命じられました。 

しかし、GHQからの指摘を免れた治安法規がたくさん残っていたため、日本政府はこれらを活用して戦後の治安を維持することになります。 
 

研究者による治安維持法の解説書。

この本は、治安維持法が「悪法」との視点から描かれています。

著者は憲法学者で、護憲派の憲法学者として表現の自由に関わる運動を続けています。

著者
奥平 康弘
出版日
2006-06-16

1925年の治安維持法制定から、廃止までの20年間をたどり、この法律がどのように機能したかを詳細に説明しています。

「国体」とは何なのか、法律の適用範囲の拡張や意図的な運用、改正の内容などを細かく分析しています。

治安維持法は、なぜイメージが悪いのか?

こちらも、治安維持法を否定的な立場で論じる一冊です。治安維持法の歴史をたどり、社会をめぐる難解なテーマに挑んでいます。

言論の自由を制限し、戦前の反体制派を検挙した悪法。これが、現代人の多くが持っている治安維持法のイメージでしょう。しかし、その詳細を理解している人は、ほとんどいないと言っても過言ではありません。

著者
中澤 俊輔
出版日
2012-06-22

治安維持法は「結社取り締まり」の法律として始まりました。 1925年に同法を成立させたのは、憲政会・立憲政友会・革新倶楽部の三党連立政権です。

その一番の目的は、「自由主義」「民主主義」を力により「潰そうとする勢力」にどう対抗するか、ということでした。 しかし、時代が下ると自分たちの仕事を作りたい検察などの影響で改正が繰り返され、適用範囲がどんどん広がっていきます。 

この本では、治安維持法が成立した際の政党の役割に着目。作成されてから戦後社会への影響までを丁寧に見直していきます。

現代にも通じる、治安維持の必要性。

ボリュームが少なく、平易な表現が多いため、初学者にも分かりやすいかも知れません。法案の実際の成立過程や、それが変質していった理由知るための参考となる一冊です。
 

著者
["江口 圭一", "木坂 順一郎"]
出版日
1986-06-20

この本では、治安維持法と、それが運用された時期と重なる太平洋戦争との関連性を示し、法律の役割をわかりやすく説明しています。

治安維持法は、関東大震災での混乱や、普通選挙法の成立による政治の大衆化をきっかけに立法化されたようです。過激派による活動を抑制する目的がありました。 

治安維持法が過激な活動家の抑制に大きく貢献した一方、過剰な取り調べにより、法令に則った手続きに基づかず死者を出したことも事実です。 

国体の護持のために出来た治安維持法が昭和期の改正で厳罰化され、検挙の対象が宗教団体や学術組織にも広がっていく経緯。また同時期に起きた、政党政治の破たんと軍部の強権化のなかで、この法律がどのように運用されていたかが、独特の視点で描かれています。 

何となく「悪い」イメージがついてしまっている治安維持法。しかしよく調べてみると、当時の政府がこれを作成せざるを得なかった理由が分かります。 
何事も漠然とした印象だけで決めつけず、きちんと調べてその実態を見つめるべきという、基本的な事を教えられる一例です。