イベリア半島で約800年にわたってくり広げられた「レコンキスタ(国土回復運動)」。突如として侵入してきたイスラム勢力を駆逐するために、壮絶な国盗り合戦がおこなわれました。スペイン史を知るうえで絶対に欠かせないこの運動について、この記事では原因、概要、結末をわかりやすく解説し、さらにおすすめの関連本もご紹介していきます。
レコンキスタはスペイン語で「再征服」という意味。日本語では「国土回復運動」といいます。
711年、イベリア半島にあったキリスト教国の西ゴート王国が、イスラム勢力に侵略されていきます。ウマイヤ朝が創設され、半島はイスラム教徒に支配されるようになりました。
平和に共存を維持していましたが、1031年に後ウマイヤ朝が滅びると、キリスト教徒によるレコンキスタが活発になっていきます。1492年にグラナダが陥落してナスル朝が滅びるまで、幾度も戦争がくり広げられました。
ちなみに、この運動のなかでスペインとポルトガルが国家を成立しています。
この運動は後に大航海時代へと繋がっていくことになります。
時は507年にまでさかのぼります。宮廷をイベリア半島に移したキリスト教国の西ゴート王国は、およそ100年をかけて半島全土を支配化におきました。
一方、このころ急激に勢力をのばしていたイスラム教のウマイヤ朝は、北アフリカをも侵略。そして710年にイベリア半島へも上陸するのです。
翌711年に、あっという間に西ゴート王国を制圧。「グアダレーテ河畔の戦い」で西ゴート国王の首をとります。その後コルドバや首都トレドを陥落し、西ゴート王国は718年に完全に滅亡しました。
732年に、今度はフランク王国がイベリア半島へ攻めてきます。ウマイヤ朝とフランク王国の戦いである「トゥール・ポワティエの戦い」が起こり、カール・マルテル率いるフランク王国軍が勝利したため、これ以降キリスト教勢力に対する攻勢はひと段落します。
ただ領土拡大は続いていき、地中海はイスラム教が支配するように。756年には後ウマイヤ朝が誕生し、繁栄していきました。
実は、西ゴート王国の王族や貴族、聖職者たちは、国が滅びた際に逃げ延びていました。なかでも王族の血をひくペラヨは、新たにキリスト教徒を奮起して、イベリア半島の北西部にアストゥリアス王国を建国します。
722年頃に起きた「コバドンガの戦い」では初めてイスラム勢との戦いに勝利し、以降アストゥリアスはレコンキスタの拠点となりました。さらに914年のレオン王国、1035年のカスティリャ王国とアラゴン王国と、次々と国家を建設していきます。
このころイスラム勢は、1031年に後ウマイヤ朝が滅亡して分裂。しだいに衰えていきました。レコンキスタはさらに活発になります。
1085年にトレドを陥落、後ウマイヤ朝最盛期に繁栄し宮殿都市が造設されたゴルドバとセビーリャも回復しました。
さらにアラゴン王国はサラゴサを入手すると、13世紀にシチリア島、14世紀にはサルディーニャ島、15世紀にはナポリ王国までも手中に収めています。
1469年には、アラゴン王子フェルナンド2世とカスティリャ女王イサベル1世が結婚。1479年に両国が統一されることになり、新たにスペイン王国が誕生しています。
そして1492年1月2日、唯一残っていたグラナダのナスル朝が降伏し、アルハンブラ宮殿が開城。スペイン王国が勝利して、長きにわたったレコンキスタが終焉を迎えるのです。
レコンキスタの降伏協定では、ナスル朝のムハンマド11世に領地と年金が与えられました。また信仰と自治権を認められ、農村あるいは一部都市に残留を認められた「ムデハル」というムスリムも存在しています。彼らの文化を尊重し、急な改宗は強要しなかったのです。
しかししばらく経つと、キリスト教入植者とムデハル農民たちの間で農地を巡る争いが起き、1499年にはグラナダ各地で暴動が起きるようになりました。その後1502年にムデハル追放令が出されています。
1492年、スペイン王国のイサベル1世が、コロンブスとサンタ・フェ協定を締結。彼は大西洋横断に成功し、ここから大航海時代に突入していきます。
カスティリャが大航海時代の要となり、アメリカ大陸をはじめフィリピンなども領地としました。
- 著者
- フィリップ コンラ
- 出版日
イスラム教勢力による征服から、レコンキスタの完成まで、スペインでの事件や戦いがわかりやすく書かれています。史実にもとづき、なるべく余計なことは排除して、スペイン史に欠かせない事実を克明に知ることができる一冊です。
図や写真も豊富。また詳細な解説が加えられているので、あらためて伝説や史実を確認しながら読み進めることができます。
起因と結果の配列もよく、ややこしい当時の歴史を簡単に学ぶことができるでしょう。
- 著者
- 西川 和子
- 出版日
- 2016-12-19
時代ごとの領地の地図と王家の系図が載せてあり、初心者でも読みやすくなっています。
「深く煎ったコーヒーなどを楽しみながらお読みいただければ、幸いです。」と著者が記しているとおり、気楽に触れるのに最適な本。問いかけから結果を、話しかけられるようにどんどん読み進めていくことができます。
世界史を難しく捉えてしまっている方におすすめの一冊です。
- 著者
- D.W. ローマックス
- 出版日
スペイン史にくわしい人におすすめの一冊。内容が充実している分、初心者が読むには少し難易度が高い構成になっています。
レコンキスタを小説調で淡白に書いているのが印象に残るでしょう。キリスト教徒がイスラム教勢力によって奪われた国土を、地道に取り返していくさまが淡々と描かれているのです。
なかでも注目したいのは、聖ヤコブが祀られているサンティアゴ教会に、戦前に祈りを捧げ、戦後に戦利品を差し出した十字軍の様子。
彼らはこの時、レコンキスタを聖戦とみなして、保護聖人が付いてくれていると信じて戦ったとの記述が残っており、「宗教戦争の意味」をあらためて考えさせられるでしょう。