BURNOUT SYNDROMES熊谷です。皆さん海外旅行って行きますか? 僕は中学生のときアメリカでホームステイした以来でしたが、なんと最近フランスへ行って参りました。海外気分をお裾分けしたく、そのときのエピソードも交え「フランス」をテーマにセレクトした3冊ご紹介。Bon Voyage(よき旅を)!
昨年末、フランスに行って参りました。日本のアニメ好きの集まるフェスに、ライブ・アーティストとしてお呼ばれしたためです。
一言で表すなら“ザ・ヨーロッパ”。美しき国でした。凱旋門、エッフェル塔などのランドマークは言わずもがな、単なる図書館や駅前広場ですら一見神殿のような佇まい。こっちの方がよっぽどアニメっぽいと感動し、大変楽しめました。
今回はせっかくなので、美しき「フランス」に行った気分になれる3冊をご紹介。
- 著者
- サン=テグジュペリ
- 出版日
- 1956-02-22
部下のものを愛したまえ。ただ彼らにそれと知らさずに愛したまえ。
飛行士ファビアンの操縦する郵便機がブエノスアイレスへの帰還途中、暴風雨に遭遇した。現在位置さえ掴めない劣悪な電波状況。ファビアンにとって「燃料は残り30分しか持たない」という絶望的な電報を送信するのが精一杯だった。
一方、着陸場でファビアン機を待つ厳格な支配人、リヴィエールは自問自答する。夜間飛行の事業に、飛行士の命を犠牲にする程の価値があるのかと。そうこうしている間にも燃料の限界時間が迫る……。
飛行機が安全ではなかった黎明期における、夜間飛行という大冒険と、それに携わる人々の真の勇気を描いた小説。
作者は「星の王子さま」のサン=テグジュペリ。フランス軍や民間航空機の飛行士としての経歴を活かした彼の作品は、そのリアリティから歴史的資料としての価値も高いとされています。しかしこの『夜間飛行』は我々にとって、想像力を必要とする作品です。なぜならLED照明が当たり前になった現代の「闇」と、1930年における「闇」はまったく別物だと推測されるからです。
自分の掌がどこにあるかも不確かな闇の中、淡く光る計器板を頼りに何千キロを翔破する。
当作で描かれるその恐怖を想像できたとき、闇と戦う飛行士や、酷な使命を彼らに課さねばならぬ支配人の葛藤に胸を打たれることでしょう。
テグジュペリが体験した噓偽り無い歴史、人間と空との戦いがここにあります。
- 著者
- 藤田 和日郎
- 出版日
- 2017-05-12
何の糸にも縛られずに自分で立って
ちゃんと生きてちゃんと死ぬのが、僕たちの役目だ!
遺産相続絡みで命を狙われる少年・勝と、他人を笑わせないと死んでしまう病にかかった男・鳴海。からくり人形を操り、勝を助けるためにフランスからやってきた女・しろがね。三人が交錯する時運命の歯車は回り、戦いと愛の物語が幕を開ける。
何を隠そう、僕の中の「少年漫画ランキング」におけるブッチ切りでNo.1の作品です。それ故に紹介するのがとても難しい。一言で表すなら「最も漫画力のある漫画」。
一話ごとの盛り上げ方、見せ場の作り方、心を打つセリフ、絵の表現力……読者を引き込むのが抜群に巧い。特に、数々の主要キャラクターが死をもって退場していく終盤の畳み掛けが圧巻。その全てが涙無しには読めず、「最も美しくキャラを死なせる漫画家」と評される藤田先生の真髄を味わうことになる。
その独特な絵柄は好みが分かれがちですが、読むに従い、その漫画力の前では絵柄など瑣末な問題だと気付かされます。
さらに特筆すべきは緻密なストーリーと複雑に絡み合った伏線。これは連載当初の不人気を挽回すべく、予定していたプロットを全て破棄し「兎に角胸躍る方へ」と話を広げていった結果そうなったそうです。結果、ストーリーには先の読めぬハラハラ感があり、それでいてそんなウラ事情を感じさせぬ程完璧なフィニッシュを見せます。
ライブ感、完成度。両方を兼ね備えた大傑作です。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2011-05-27
ねえ この世で「最も黒い絵」って知ってる?
『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターで、漫画家・岸辺露伴がかつての記憶を辿り、ルーヴル美術館に眠っているとされる「最も黒い絵」の謎に迫る。
荒木飛呂彦氏初めてのフルカラー作品。その絵の美しさ、引き込まれるストーリーや「ルーヴル美術館」の不気味さが素晴らしい一作。ただし「ジョジョ」の派生作品でありますので、もちろん本編を先に読むのが正しい楽しみ方かもしれない。
今回はストーリーよりも、この作品が持つ特殊な背景を紹介したい。
それは、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、ルーヴル美術館の展開するBD(バンド・デシネ)プロジェクトのための描き下ろしだという点です。BDとは、フランス語で「デッサンの書かれた帯」の意。このプロジェクトは、フランス国内外の作家にルーヴルを題材としたBD作品の執筆を依頼し、単行本の形で出版する、というもの。
第5回目にして、日本の漫画家の参加を希望したルーヴル美術館が荒木先生にオファー。期間限定で生原稿がルーヴルに展示されていたそう。これは日本の漫画が世界中で評価されている証左であり、何が言いたいかというと「日本の漫画はスゲーぞ」ということです。
荒木先生の他に『孤独のグルメ』の谷口ジロー、『ピンポン』の松本大洋、『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリ(敬称略)などもこのプロジェクトに参加していらっしゃいます。気になる名前があれば調べてみて。
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。