今や世界的なブランドとなっている日本の漫画。そこには「面白い」だけでなく、国境を越えて受け入れられる「絵」があります。年齢、性別、人種も問わずに感動を与えられる芸術的な作品を5つご紹介します。
世界のどこかに散らばっているという秘宝、ドラゴンボール。全部で7個あるそれを集めることができれば、神龍(シェンロン)が現れ、どんな願いでもひとつ叶えてくれるといいます。
尻尾の生えた主人公・孫悟空は、発明家のブルマと出会ったことで、ドラゴンボールをめぐる戦いの道を歩むことに。ピラフ一味との争奪戦、レッドリボン軍との暗闘、ピッコロ大魔王との宿命……悟空の冒険はやがて、地球では収まらず、宇宙規模と展開していきます。
世代を超えて愛される超絶冒険活劇です!
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
あまりにも有名すぎる本作。1984年から10年以上にわたって「週刊少年ジャンプ」で連載されていた鳥山明の作品です。言わずもがな日本を代表するビッグタイトルで、世界中で愛読されています。
度を超えた知名度と人気ゆえ、1995年の連載終了にあたっては、集英社をはじめメディアミックス関連企業のトップクラスによる会議が開かれたとか。
本作の魅力は、なんといってもキャラクターのすばらしさ。人物像はもちろんですが、シルエットだけで判別できる造形の彼らが、ページ狭しと縦横無尽にアクションするさまは圧巻です。
どのページのどのコマを切り取っても、躍動感の感じられる絵作りは唯一無二だといえるでしょう。
次から次へと悟空の前に現れるのは、強敵ばかり。ストーリーもアクションに引っ張られて小気味良く進むため、時間を忘れて読みふけってしまうこと請け合いです。これぞ王道の少年漫画だといえるでしょう。
舞台は19世紀の中央アジア。とある街に定住しているエイホン家に遊牧の民であるハルガル家から娘が嫁いできます。
夫カルルク12歳、妻アミル20歳。
年の差夫婦、幼馴染みカップル、恋愛、親愛……さまざまな男女の愛のカタチが描かれるお嫁さん物語です。
- 著者
- 森 薫
- 出版日
- 2009-10-15
2008年から「ハルタ(旧Fellows!)」で連載されている森薫の作品。2014年にはマンガ大賞を受賞しているだけでなく、2014年にはフランスの「アングレーム国際漫画祭」で受賞、アメリカの図書館協会からもティーンズ向け部門で高い評価を獲得しています。
物語は、中央アジアのカスピ海周辺地域で暮らす夫婦が中心。主にウェイトを占めているのはカルルクとアミルのカップルですが、このほかにも語り手となるイギリス人研究者の目をとおして何組ものオリエンタルな夫妻が登場します。
大半は惚気半分の微笑ましいエピソードばかりですが、時には悲劇や、激動の模様も描かれます。
人生の悲喜交々が集約される結婚にフォーカスしたお話が面白くないわけはありませんが、注目すべきは作者の丁寧な筆致。
森薫は描き込みに定評のある漫画家で、劇中に登場する動物や服装、装飾品はすべて彼女の手書きだそうです。スクリーントーンやCGを使用していない美麗な描写は、日本にいながら遠く離れた異国の息吹を感じさせてくれます。
第三次世界大戦を経験し、東京を失った2019年の日本。東京湾上には新首都「ネオ東京」が建設され、表向きには再び繁栄していました。
しかしその直下ではデモ隊と警察の衝突が起き、反政府ゲリラが暗躍していたのです。
ある日、不良少年の金田正太郎がバイク暴走をしていたところ、仲間の島鉄雄が奇妙な人物と事故を起こしてしまいました。鉄雄は入院し、金田は翌日に、政府軍とゲリラの抗争に巻き込まれてしまいます。
バイク事故の当事者である奇妙な男・タカシをきっかけに、金田と鉄雄の運命は大きく動きだしました。
- 著者
- 大友 克洋
- 出版日
- 1984-09-14
1982年から「週刊ヤングマガジン」で連載されていた大友克洋の作品。「金田ァ!」「さんをつけろよデコ助野郎!」のやり取りでも有名な、劇場アニメの原作です。
意図せずネオ東京の暗部に触れてしまった2人の少年、金田と鉄雄。金田はゲリラのメンバーと行動し、鉄雄は政府軍へと関わっていくことになります。
一見バラバラな事象に見えますが、2人の行く末と物語の根幹には共通するとある「研究」が存在していました。そしてこれには、東京が消滅した直接の原因や、第三次世界大戦も絡んでいたのです。
世界を震撼させたストーリーの秀逸さはもちろん、作画の凄まじさも語り草となっています。漫画界に与えた影響のあまりの大きさから、「大友以前、大友以後」といわれるほどです。
近未来ネオ東京の煌びやかなビル群、それとは対称的な都市の裏側、そしてそれらがダイナミックに崩壊する様子……絵画的とか写実的とかいうよりも、「映像的」といえばよいのでしょうか。圧倒的な迫力です。
そして忘れてはならないのが、通称「金田バイク」と呼ばれる未来的なデザイン。30年以上前に描かれた、いまよりも未来的な日本がここにはあります。
高校進学を機にひとり暮らしを始めた筒井雪隆(つついゆきたか)。ところが、新居には胡散臭い金髪の男が居着いていました。素性のわからないその男は、雪隆を煙に巻いて出て行こうとしません。
そんな時、UFOが発見されたというニュースが流れ、なんと男は自分が乗ってきたと言いはじめるのです……。
悪戯好きで人をおちょくることが趣味のドグラ星人「バカ王子」。彼が暴くのは、日常に潜む宇宙人の脅威の数々でした。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 1996-03-04
1995年から「週刊少年ジャンプ」で断続的に連載されていた冨樫義博の作品。大ヒット作『幽☆遊☆白書』に続く第3作で、長編連載の反動からかいろいろな意味で変則的な試みをおこなっています。
通常であれば週刊連載ともなると作業スピードを上げるためにアシスタントを雇うものですが、本作は冨樫がひとりで作画をしたそう。週刊誌としては異例の月に1度の掲載となりました。
そんな孤独な作業環境が功を奏したのか、連作短編である本作は、1話ごとの完成度が非常に高いものになっています。特に「バカ王子」ことバカ=キ=エル・ドグラの人を食ったキャラクターはお見事。
作画はスクリーントーンをあまり使用せず、まるで劇画を思わせるような密度の高い仕上がりになっています。特にクリーチャーデザインは秀逸。1度読めば、妖しくも可笑しい宇宙人のいる日常の虜になってしまうでしょう。
199X年、世界は核の炎に包まれ、文明は滅びました。暴力がすべてを決める弱肉強食の世紀末です。
そんななか、主人公のケンシロウは、許嫁のユリアを連れ去られてしまいます。彼女を奪った南斗聖拳のシンは、敗北の証にケンシロウの胸に北斗七星にも似た7つの傷を残しました。
ケンシロウは南斗と対を為す一子相伝の暗殺拳、北斗神拳の伝承者。ユリアを取り戻すために、力だけが正義となる過酷な戦いへ身を投じていきます。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
1983年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた武論尊原作、原哲夫作画の作品。説明不要の有名タイトルで、テレビアニメ化されたことによってさらに一世を風靡しました。決めゼリフの「お前はもう死んでいる」やアクションも人気です。
ストーリーは、主人公のケンシロウがヒロインのユリアを求めて、各地で死闘をくり広げながら旅をするという単純なもの。ただ武論尊が生み出す絶妙なキャラクターに原哲夫の熱量を持った作画が命を与え、いまだに人気の衰えない怪作となっているのです。
原は、小池一夫が主催する劇画村塾の出身。まだ「漫画」とは区別されていた「劇画」の影響が強い作家です。
本作における悲劇的な要素とケンシロウの寡黙な人物像は、劇画の作風と非常にマッチしています。わかりやすいストーリー展開と原の作画が、どんなに時を経ても愛されている一因だといえるでしょう。
いかがでしたか?単純に絵が上手ければいいというものではありませんが、「目は口ほどにものを言う」ならば、「絵は言葉よりも訴えかける」ともいえるのではないでしょうか。面白いうえに芸術的な作画ならば、それはより一層人の心を掴むはずです。