2015年、第60回小学館漫画賞少女向け部門受賞作品『女王の花』。累計発行部数は100万部を超えている人気作品です。 千年に1度だけ咲き、どんな願いも叶えるという幻の花……むかしむかしの戦乱の世を王として強く生き抜いた亜姫の、たったひとつの願いとは。切なくも美しい壮大な歴史ロマンスの結末に、きっと涙がとまらなくなる。
『メンズ校』『そんなんじゃねえよ』などで知られる人気作家、和泉かねよしによる壮大な歴史ロマンス作品『女王の花』。
亜国の王女・亜姫(あき)が、悲運な星のもとに生まれながらも逆境に立ち向かい、戦乱の世を強く生き抜くさまが描かれています。
国を背負い、民を背負い、迷いながらも勇猛果敢に立ちふるまう亜姫と、そんな彼女を幼いころからそばで守り、一途に想い続ける薄星(はくせい)。ふたりの恋の結末に待ち受けるのは幸せなのか、それとも……。
そして、亜姫が願ったあるべき国家の姿とは?古代の国々を舞台に、ひとりの女の切なくも美しい物語が紡がれます。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
- 2008-08-26
薄星が亜姫に教えたおまじない、「せんねんのはな」。
ずっとずっと遠くの山に、千年に1度だけ咲く、どんな望みも叶えてくれるという花があるといいます。でも、だれもその存在を見たことはありません。
「だからこれはことばのおまじない “いつかあなたの望みがかないますように”」(『女王の花』より引用)
この言葉は、死ぬも生きるも共にと誓ったふたりの合言葉のように、幾度となく作中に登場します。彼らが千年の花に願ったこととは?
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亜国の王女・亜姫と、その母であり亜国正妃の黄妃(こうひ)は、亜国の第二妃であり王子を生んだ土妃(どひ)によりその存在を疎まれ、宮中内で冷遇されていました。
黄妃は病に伏せているにも関わらず、日の当たらない部屋に追いやられ、ろくな食事も与えてもらえない暮らしぶりです。
それでも亜姫は、明るく清い心を持ち、金髪碧眼の胡人として気味悪がられている薄星に対しても偏見を持たず、彼を奇異の目から守ります。
奴隷としてこれまで酷い扱いを受けてきた薄星は、まだ幼いながらもそんな彼女を主と決め、その日からふたりはどんなときも一緒でした。
しかし、最愛の母が土妃によって毒殺されます。そればかりか亜姫と薄星は、亜姫の父である亜王の命令によって黄国に人質として送られることとなり、国を追われることに。いつか亜国へ帰ること、そして母の仇を討つことを誓った亜姫の波乱の人生が幕を開けます……。
幼い亜姫が黄国へ送られた裏には、亜王の思惑がありました。彼は「継承者の証」を亜姫に遺し、いずれ土妃が滅ぼしてしまうであろう亜国の未来を、亜姫の手に委ねていたのです。
そして亜姫が黄国にわたってから数年後、土妃の反乱によって、亜王は死をむかえました。
母の仇と、祖国の存続と平和をめぐり、亜姫と土妃、そして亜・黄・土・曾の四国は、戦乱の世へとすすんでいきます。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
- 2011-01-26
「明日は今日よりいい日だ!!そう信じたい者は私とともに今日を戦え!!」(『女王の花』14巻より引用)
いつしか王族としての血が、国と民を思わせ、亜妃を奮い立たせていくのです。自身も父母を亡くしている彼女の言葉は、兵士たちの心を強く動かしました。
弓をとり、馬に乗り、何千何万もの兵士の指揮をとりながら、自ら最前線で戦う亜姫。国の長として生きるその凛とした姿に、ただただ圧倒されてしまいます。
幼い日に出会ってから、まるできょうだいのように育った亜姫と薄星。いつからか、薄星は亜姫を女の子として意識するようになりました。
たとえ彼女がひとりの女性として生きることを捨て、国を守る宿命を背負った姫だとしても、薄星にとってはただひとりの女の子です。
ふたりの想いが通じたのは、ある事件がきっかけでした。
刃に仕込まれた毒で、今にも死にそうな薄星を、亜姫がとっさの機転で救ったのです。しかしその方法は、自らも死の危険にさらすやり方でした。
咎める薄星に、亜姫はこう本音をこぼします。
「ほんのちょっとだけよ?思ったの 薄星が助からないならここで駄目でもいいかな…って」
「背負わなければならない国のことも復讐も 力及ばずここで駄目になっちゃって 私はもうなんの価値もないただのおんなのこに戻って 二人で死ねたら それはそれで幸せかなぁ…って」(『女王の花』7巻より引用)
ずっと蓋をしてきたであろう、ひとりの女の子としての亜姫の本音。強くても、彼女はまだ10代の少女です。涙をこぼしながら、馬鹿なことを言ったと自分を責めるその姿が切なく、幸せを祈らずにはいられません。
そしてこの時交わした約束が、本作のラストシーンへとつながっていくのです。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
- 2016-08-26
身分の違うふたりは、どれだけ想い合ったとしても交わることはありません。亜妃が女王の座に近づくほど、彼らは痛感していきます。
そして戦はついに、最終局面へ。明日の命も知れぬ戦地、亜妃はせめて生きる道を選んでほしいと薄星を自分のそばから離すことを決めるのです。
そんな彼女のことを、薄星は誰よりも理解し、愛していました。
一緒に生きたい。一緒に死ねたらそれでいい。せめてあなただけでも生きてほしい。魂魄だけになっても君を守る……。
戦局が変わるにつれ、ふたりの愛も形を変えてきます。そしていつしか、形のない「永遠」に……。
母の仇であり、王位継承争いの敵でもある土妃を、あと1歩のところまで追い詰めた亜姫。しかし不意の流れ矢で馬が負傷し、崖から転落してしまいました。
受け止めようと手を伸ばした薄星とともに流れ着いた川辺で、最後の夜を過ごします。
戦が終われば、離れ離れになります。これまで多くの犠牲を払い、自らの青春をも捨て、王になるため戦い続けてきた亜姫は、自身の本当の望みを語りました。
「あんたがあんたの言うとおりの国をつくれて すべての役割を終え 女王からただの女に戻れる時がきたら ある晴れた日に俺はあんたを迎えに行く そこから先は永遠に一緒だ」(『女王の花』14巻より引用)
何十年、何百年、何千年経っても、たとえボロボロになろうとも、薄星は亜姫のもとへ迎えに行くと誓うのです。
そして夜は明け、亜姫はついに土妃の籠もる楼閣を陥落させました。長かった戦いが、ようやく終わったのです。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
- 2017-03-24
女王に即位してからの亜姫は、寝る間も惜しんで学び、働き、人々に尽くしました。亜国は平和な国となり、国民はみな亜姫を愛しています。彼女は薄星との約束が果たされる日を待ちながら、年老いていきました。
そしてある日、亜姫のもとへと届けられた「千年の花」。薄星と何度も交わしたおまじないの花が叶えた、彼女の望みとは……。
戦乱の世に生まれ、王族という宿命を背負い、たくさん傷付きながらも強く生きた亜姫。ひとりの女性として得られる幸せは少なかったかもしれません。もしかしたら薄星とふたり、どこかへ遠くへ逃げる道もあったかもしれない。
しかし彼女は誰よりも気高く、優しく、そして生まれながらの女王でした。自分だけが幸せになることを求めなかったのです。
ラストシーンは読者によってどのようにもとらえることができます。しかし彼女が最期に見せた笑顔、それが彼女のハッピーエンドだった何よりの証拠です。
実は『女王の花』には上記で紹介した結末とは違う、もう一つのラストが存在します。それが『女王の花』特装版15巻に収録されたアナザーストーリーです。原作者である和泉かねとし先生が書き下ろしたもので、上記の内容とはまた少し違う結末となっているのです。
『女王の花』ファンとしてはもう一つの結末が気になりますよね。そこでここから先は特装版に収録された『女王の花』のもう一つの結末を紹介していきます。ネタバレとなりますので、ご注意ください。
こちらの世界軸で女王になっていたのは、亜姫ではなく土妃でした。亜姫が土妃に女王の地位を譲った形になり、その証拠に春琴がお付きのものとして働いています。
亜姫が土妃に女王の座を譲ったのは、自分の代わりに国を治めるのにふさわしいと感じたから。土妃は帰る場所や息子を奪われ、すでに欲のない状態。そんな土妃であれば自分よりも国をよくしてくれるだろうと考えたのです。
ある日、土妃は不思議な夢を見たといいます。その夢の中では自分は王ではなく、家来だった高諷が宰相になっていました。少し寂しそうに、「あの方(亜姫)はどこへ行ったのでしょう」とつぶやく春琴。
この世界での亜姫は薄星を探すために旅に出ていました。
「国も地位も捨て何も持たないただの女が、何年何年もかけ生死も定かでない男を探し出す、そんな夢物語が叶うのならば花の一輪ぐらいおくってやってもいいさ」(『女王の花』特装版15巻より引用)
そう呟く土妃。ここで登場する「花」は「千年の花」で間違いないでしょう。なんと、こちらの世界軸では土妃が亜姫に「千年の花」を贈っていたのです。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
場面は変わり、どこか遠い地にたどり着いた亜姫。顔を上げると、そこには探し求めていた薄星が…。ついに亜姫は薄星を見つけ出したのです。
2度と離れることがないよう、きつく抱きしめ合う亜姫と薄星。誰が読んでもハッピーエンドだと感じる内容で特装版のアナザーストーリーは終了となりました。
2人が生きて再会できたシーンは本当に感動しました。読者によってとらえ方が変わる通常版のラストもいいですが、完全なるハッピーエンドとなった特装版のラストも素敵ですよね。
気高く生き抜いた女王の一生を描いた『女王の花』。涙なくして読むことはできないこの作品、ぜひ読んでみてください。
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