長野で農家の嫁をやりつつ、息子を育てつつ、俳優をしている山本裕子(やまゆう)のなまぬるい子育て連載第9回。毎週水曜更新です。今回のお悩み相談は幼児の一大イベント「トイレトレーニング」について。山本裕子はどう答える?
子育て中の皆様ならびにそうでない皆様、アンドおとっつあんおっかさん、おつかれさまです、やまゆうです。
さっそくですが、今週のお悩みをば。
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娘のトイレトレーニングの終わりが見えません…。
トイレでできたらごほうびのシール!作戦で、最初のうちはよろこんでトイレへ行き、わりとすんなり小ができるようになったのですが、そこからは一歩も前へ進みません。
子の様子を見て何度もトイレへ声がけするも、そのたびに全力拒否。そして目を離した瞬間におもらしします。
なのに「もうオムツは嫌!」と履いてくれないので、布のパンツを手洗いする日々。
なんだか疲れてきました・・・(P.N.にんじんしりしり)
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はいよ、幼児の一大イベント、トイトレきた~~~。
お気持ち、とってもよくわかります。ほんとに。こころの底から。
なぜならわたしもいま、ぱんつを手洗いしているから。
毎日おつかれさまです、にんじんしりしりさん。しり、だけに。だれがうまいこと言えと。
ここからわたしやたらトイレおしりぱんつトイレおしりぱんつ言いますので、そういうのが苦手な方およびお食事中の方は、そっと画面を閉じるがよろしかろう。
念のためにご説明しておきますが、トイレトレーニングというのは、これまでずっとオムツで過ごしてきたお子が、トイレで用を足せるようになること、そして布のパンツで過ごせるようになる訓練、を指します。略してトイトレ。
お子や家庭環境にもよりますが、早い人で1才後半、遅くても3才半ばには始める感じですかね。
しりしりさんのように、ごほうびシールで気を引いたり、好きなキャラクターのついた布パンツで気分をアゲたり、トイレをかわいく飾り付けたり。
「ヘイヘーイ!トイレって、ごきげんにハッピーなとこだゼ!」
「ユー!まだあかちゃんオムツなんて履いてんのかーい?」
「この『おにいさんぱんつ』(あるいは『おねえさんぱんつ』)試してみなYO!最ッ高にかっこいいアイテムだろ、イエ~~!」
たかがパンツひとつにパリピなみの盛り上げ。徐々にトイレでの排泄へとお子の気持ちを洗脳して誘導していくわけです。
まずは、うまれて数年間ずっと満喫していた、どこで・どんな体勢で・なにを出そうが・おしりちょー快適高性能オムツをぐいっと脱がせ、
「・・・え、なにコレ、出したらびちゃびちゃ冷たくて、ちょー不快!」
と、お子に気づかせるとこからトレーニング開始。プレイボーーール!
ハイこちら、むかえるトレーナー側です。大量の替えのぱんつと、バケツと雑巾とおしり拭き、防臭ビニール袋にビニール手袋などなど、用具一式すぐ手に届くところに常備。
いつでもどこでもおもらし上等、おまえのしりはおれにまかせろ。
ばっちこーい!と、どんと守備の構えにはいったものの、いざ試合が始まってみれば、こちらを拭いてる間にあちら、次々と水たまり作られて、その上お子はぬれたぱんつをとくに気にした風もなく、平気な様子でそのへん走り回る日々が続けばやっぱ多少メンタルにくるわよね。
しかもさ。
なにされても、トレーナーは選手を褒めにゃあならんのよ。トイレットにネガティブなイメージをもたせるのはダメ、ぜったい。お子、出せなくなっちゃう。
だからトレーナー、ほめるほめる。松岡修造ばりに全力でほめる。おめでとう!たとえそれが、事後報告でも。
「出たって教えてくれてありがとうね-!ちゃんと言えてえらいねえー!おめでとう!よしっ、ぱんつ脱いで!」
→抱きかかえて風呂場へ直行ぱんつ脱がせてお子洗って新しいぱんつはかせて放牧したのち現場拭いてぱんつ手洗いしてバケツに漬けて。
「(大)出たの?よかったねえー!すっきりしたねえー!おめでとう!よしっ、ぱんつ脱がないで!」
→抱きかかえてペットシーツの上に立たせてそうっとぱんつ脱がせておしりふいて風呂場でお子洗って新しいぱんつはかせて放牧したのち現場拭いてトイレへぱんつごと現物運んでなんやかんやしてさらにぱんつ手洗いしてバケツに漬けて。
ゼェゼェゼェ。
これが1日に何度あるとお思いか。修造、つかれてきました。ぱんつの手洗い、もういや~~ん。
物干し竿にひるがえる、大量のぱんつ。
それは、選手とトレーナーの努力の証。もし、よそのお庭やベランダでそんな光景を見かけたら、両者に惜しみない拍手を送ろう。
おめでとう!今日もおつかれっしたっ!
まあね、大、に関しては、トイレでできるようになるまでほとんどのお子が時間かかるとか聞きますし、こっちは腹くくるしかないんですけど、それでもやはり
「小いけるならぜひ大も!」
「ねえ、そこ!そこ(トイレ)で出してくれるだけでいいんだ!ちょっと座ってみましょうよ、ねえ!」
と懇願にも似た気持ちにもなるわさ。
うちも、3か月近くしりしりさん(あえて「にんじん」つけず。)と同じような状況が続いて、ああ、このままわたしの一生はお子のぱんつを手洗いして終わっていくのかと、なんか、諦観?諸行無常?もはや高僧みたいな気持ちになりかけましたが、ある日ふとお子になぜトイレでやらないのか聞いてみたところ、
「大でトイレ行く、と言うのがはずかしい」
みたいなことをいっちょまえに言いましたのでね。おっけー、それなら親、率先してその恥ずかしさをとっぱらってみよう。
「ヘーイ!母ちゃんいまから、トイレで●●●してくるYO~!」
「イエ~イ、●・●・●!●・●・●!よぉーし、出ーすぞーォ!!」
と、もう読んでて伏せ字だらけでよくわかんないと思いますが、とにかく事前申告は恥ではない、むしろ喜び、毎回お子に告げてから親はトイレ行く、というのをしばらく続けてみたところ、なんかふとした加減でお子も事前申告するようになりました。ゼェゼェゼェ。
まあなー、確かに恥ずかしいよな、人に言うのって。いつの間にか、情緒発達してきたことよ、どんどん人間化してんだなあと、感慨もしきり。
お子よ!ぜんぶ自分でできるようになったなら、もうそんな事前申告させられるなんて辱めを受けずにすむのだぞ!
「お花摘みに行ってきます」
「自然が呼んでいます Nature calls me!」
「ちょっとこぼしてきます」
そんな小洒落た言い回しすらできるのだぞ。それまでがんばれ、がんばってくれ頼むから!
ちなみにこの「ちょっとこぼしてきます」は、夢路いとし喜味こいし師匠のネタです。いとし師匠扮する新婚の妻が、中座するとき夫に「トイレ行く」なんて恥ずかしくて言えなくて、こう言うのですよ。いとこいさんの漫才はなんかほのぼの情緒があって大好きだったなあ。
なんの話だったか。そうか、お子のしりの話か。
日本には、こんな美しい言葉があります。
てめえのケツは、てめえで拭け。
トイレでお子のおしりを拭きながら、毎回脳裏に浮かぶこの言葉。
ひとって、いつから自分で拭けるようになるんでしょうね。ほんとはもう、己で拭く練習させたほうがいいのもしらん、しかし、成功するまでの惨劇を恐れ、その一歩がどうしても踏み出せないのアタイ…!ああいっそ、春の入園まで待とうかな…アタイのいくじなし!!
明けない夜はない。拭けないしりはない。
終わらないトイレトレーニングはないと信じ、その日までともにぱんつ手洗いしましょう、にんじんしりしりさん!
ピョンチャン2018には間に合わなかったけれど、東京2020には終わっている、はず。
がんばれニッポン。明日に向かって走り出せ。しり、だけに。
おあとがよろしいようで。ではまた来週。
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