優れたストーリーと魅力的なキャラクター作りが特徴の作者。代表作『彼氏彼女の事情』は言うまでもありませんが、面白い作品は他にもあります。今回はおすすめしたい津田作品をランキング形式でご紹介していきます。
1970年生まれの女性漫画家、津田雅美。1992年に『会えてよかった』が「白泉社アテナ新人大賞」で大賞を受賞し、翌年同作が「増刊LaLa ミステリースペシャル」に掲載されてデビューしました。それ以降「LaLa」を中心に活動を続けています。
人気漫画家としては珍しく、中学時代まではあまり漫画に親しんでいなかったそうです。インタビューによれば、高校進学前になってようやく漫画を読む作法のようなものがわかったとか。友人が購読していたことで「LaLa」を知り、デビュー後は活動の中心になっているということで、何か運命めいたものを感じます。
海外ドラマや日本の歴史などに明るいため、その嗜好が作品にフィードバックされているのも特徴です。
この記事ではそんな彼女のおすすめ作品を、ランキング形式でご紹介していきましょう。
主人公の3人の女性は、かつて同じ高校に通い、同じ時間を過ごしていました。
卒業してからちょうど10年目に、懐かしい再会をします。
菫は恋愛に発展しなかった彼と、樫原は背伸びしていたあの人と、すばるは疎遠になっていた幼馴染みと……それぞれの10年を過ごした男女の、決して甘くない大人に向けのラブストーリーです。
- 著者
- 津田雅美
- 出版日
- 2015-09-04
2013年から「AneLaLa」で連載されていた作品です。同誌は2017年に惜しまれつつも休刊された少女漫画誌で、少女漫画で育った大人の女性を対象とした「お姉さん向け少女漫画」がコンセプト。本作はそんな雑誌の創刊号に収録されました。
高校時代をともに過ごした3組のカップル、その10年後の行く末を描いたオムニバス短編集です。少女漫画のときめきを感じさせつつも、大人の苦みやロマンスでギュッと引き締められた物語になっています。
大人向けをうたうだけあって、ご都合主義ではありません。良い面も悪い面も、強さにも弱さにもしっかりと向き合い、自身で解決していきます。人を愛するということに、あらためて感動させられるでしょう。
都へ通じる街道「竜の谷」で、シンという浮浪の少年が盗賊行為を働いていました。ある日商人の一行を襲うと、彼らが運んでいた積み荷は厳重に縛られた女だったのです。
その女、マユラは不思議な能力を持っていました。「文字」の力自らの傷を癒やし、追っ手の役人や商人たちを束縛してみせたのです。
「巫女」と呼ばれる希少な能力者の彼女が痩せて枯れた土地を復活させる姿を目の当たりにしたシンは、彼女に同行することを決意。2人の旅が始まりました。
- 著者
- 津田 雅美
- 出版日
- 2012-10-05
2012年から「LaLa」、2015年からは「AneLaLa」で連載されていた作品です。舞台となっているのは、どこか平安時代の日本に似た国です。
マユラのような「巫女」たちは、紙に文字を書くと、その言葉の意味どおりの効果を発揮することができる能力者。口に出した言葉が実現する「言霊」の概念に近いものがあります。歴史文化に強い作者らしく、実際の漢字の成り立ちをうまく取り込んでストーリーに盛り込まれていくのです。
マユラとシンは諸国を巡り、力を使ってさまざまな問題を解決していきます。朝廷の「巫女狩り」に追われながらのその旅路は、2人の絆を徐々に深めていきました。
その過程で、マユラや「巫女」についての謎も明かされていきます。文字への造詣も深まるロマンティックな和風ファンタジーです。
江戸幕府が興ってから400と5年。奉行に就く桜井貴晄(さくらいきおう)は、死に際の父親から、13年前につくった隠し子の存在を聞きました。その子の名は「そうび」といい、箱根の村で逞しく育っていたのです。
家臣の神谷正成(かみやまさなり)は、彼女を幼い頃の貴晄の姿に重ね、江戸へ引き取って育てることに。旗本の子女として迎え入れられたそうびは中学へ通いはじめるのですが……その性格はクールで男勝り。男の子のような少女でした。
- 著者
- 津田 雅美
- 出版日
- 2009-01-05
歴史好きな作者が描く、歴史漫画。2008年から「LaLa」で連載されていた作品です。世界観は江戸ですが、厳密には江戸時代ではないのが面白いポイント。ご存知のとおり、江戸幕府は1603年に開かれ1867年に幕を閉じます。本作は幕末を経験していないパラレルワールドで、400年以上も続いている設定なのです。
ちなみに1603年から405年後というのは、連載が始まった2008年と同年。このあたりに作者の遊び心が感じられますね。西暦換算では現代に等しい、江戸時代をモチーフにした時代劇です。
文化的な考証もされていますが、物語はわかりやすさや面白さが優先されているので、歴史が苦手な方もご安心ください。もちろん少女漫画らしい恋愛要素も含まれています。
女子高生の五月七花(さつきなのは)は平凡な少女です。幼馴染みの竜崎のばら、御堂蓮花(みどうれんげ)といつも一緒にいますが、地味な七花は容姿端麗な彼女たちの影に埋もれがちでした。
普段はとても温厚な性格の七花。しかし女子から「王子」と呼ばれ、ナルシストな常盤葉月(ときわはづき)に対してだけはなぜか我慢ができず、ある日心の中の「モンスター」が命じるまま彼に罵詈雑言を浴びせてしまうのです。
するとなぜか葉月は、初めて真実を指摘してくれたとして、「友達になってほしい」と言ってきたのです。
- 著者
- 津田 雅美
- 出版日
- 2007-07-05
2006年から「LaLa」で連載されていた作品です。ストレートに正統派の学園ラブコメディといえるでしょう。津田作品特有の癖のあるキャラクターも登場し、心地よいドタバタが展開されます。
タイトルの「eensy-weensy」は「とても小さい」という意味。主人公の七花が心の中に抱えている負の感情を、「小さなモンスター」といっています。結果的にはこの「モンスター」の存在が、七花と葉月の距離を近づけていくのですが……。
作者自身が「のんきな話」として始めた本作。全2巻と短くまとまっていて、テンポ良く読めるでしょう。
宮沢雪野(みやざわゆきの)は品行方正で成績優秀。完璧な女子高生です。しかしその実態は、優等生の仮面を被ったただの見栄っ張りでした。同じく美形で賢く人当たりもいい有馬総一郎(ありまそういちろう)は、ライバル的存在。雪野にとっては目の上のたんこぶでした。
ある日、ひょんなことから総一郎に本性を知られてしまうのです。しかし実のところ、彼も裏の顔を持っていて……仮面優等生の2人は、共通の秘密を持った奇妙な関係を築いていくことになります。
- 著者
- 津田 雅美
- 出版日
1996年から「LaLa」で連載されていた作品です。1998年にはテレビアニメ化もされ、話題になりました。
略称「カレカノ」でお馴染みの、名実ともに津田の代表作で、学園コメディであり恋愛漫画であり、そしてヒューマンドラマとしても見ごたえのある不朽の名作といえるでしょう。
物語の中心になるのは2人の主人公、雪野と総一郎です。文武両道と品行方正を絵に描いたような美男美女ですが、ひと皮むけば双方とも本性を押し隠した仮面優等生でした。
似た者同士の2人は当初は衝突するものの、徐々に友情から転じた愛情を育んでいきます。
しかし、いくつもの障害が彼らを阻みます。複雑な家庭事情、振り解けない人間関係……そこから描かれるのは、一筋縄ではいかない骨太の人間ドラマです。
情感いっぱいで綴られる、1位に相応しい作品でしょう。
『彼氏彼女の事情』については<漫画『彼氏彼女の事情』はやっぱ名作!名言、感動のその後までネタバレ紹介>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
いかがでしたか?この機会にぜひ津田雅美作品を手に取っていただければ幸いです。