「本当の自分」になることを誓いあった彼氏彼女の事情とは……!? 優等生の仮面を被った宮沢雪野と有馬総一郎が自分らしく生きる事を決意し、友人達とともに成長していく青春ストーリー『彼氏彼女の事情』。連載終了から長い年月が経った現在も普遍的な悩みやテーマを描いた彼らの青春が色あせることはありません。 90年代少女漫画の代表作である本作は、スマホアプリで無料で読むことができます。この機会に、ぜひ読んでみてください!
『彼氏彼女の事情』は、1996年から2005年までの約9年間少女漫画雑誌「LaLa」にて連載、1998年にはTVアニメ化された津田雅美の代表作となった漫画作品です。
『彼氏彼女の事情』の魅力といえば、登場キャラクター達の名言の数々。連載終了から長い年月が経っても、彼らの紡ぎ出した名言の数々が色あせることはありません。
今回は主人公の宮沢雪野と、有馬総一郎の名言を取り上げながらストーリーをご紹介していきましょう。ネタバレも含まれているので、未読の方はご注意ください!
「うわべばっかりとりつくろって 優等生のフリをして 本気で人とつきあってこなかった私は こんなときどうすればいいのか わからない」(『彼氏彼女の事情』1巻から引用)
優等生を演じてきた雪野は、自分が人に対してどういった態度をとればいいのか分からなかったことを自覚します。
「もしかして 今まで「自分」だと信じてたものは 努力で創りあげただけの 「ニセモノ」だったんじゃなかったのか」(『彼氏彼女の事情』1巻から引用)
養父母の為に完璧な自分になる道を自然と選んでいた有馬。しかし、雪野と出会ったことで心の奥底に沈めていた自分に気づいてしまうことになります。
- 著者
- 津田 雅美
- 出版日
雪野と有馬は、努力でつくりあげた自分が本当の自分であると振る舞うことで、本来の自分の姿から目を背けていました。しかし、二人が出会いお互いを知っていったことにより、ニセモノの自分から本当の自分になることを誓い合います。
この出会いをきっかけに、雪野と有馬はやがて彼氏彼女となり、多くの友人達に囲まれ充実した高校生活を送ることになるのですが、ある時期を境に二人の歩む道が分かれていくことに。
そんな中、有馬は恐れていた本当の自分に脅かされ始めます。そこには有馬自身が忘れていた、自分の出生と過去の忌々しい出来事に纏わる記憶が絡んでいました。
高校を卒業するまでの濃密な3年間を、信頼し合い過ごしてきたはずの雪野と有馬。大切な人の精神的な支えになるのは、相手の傷も同じように受けいれるだけでなく、支えたい相手から信頼を得ないと難しいという事をストーリー全般を通じて痛切に感じます。
雪野の真っ直ぐな有馬への想いと、有馬の義理の両親や友達の支えは、やがて有馬を闇から光の方へ連れ戻し、傷を抱えながらも有馬は立ち直り雪野とともに大人への階段を上り始めたのでした。
本作の最大の見どころは、有馬が過去を乗り越えるエピソードですが、この他にも個性的な友人達の各エピソードも見逃せません。主人公カップルを差し置いて、深く描かれた彼らの過去やそれにまつわる想い。大人になるまでの多感な時期をもがき苦しみ乗り越えいく姿は、時に青春の甘酸っぱささえ感じさせます。
また学生時代だけでなく、各キャラクター達の気になるその後までも描かれているので、最後の最後までたっぷりとお楽しみ下さいね!
作者である津田雅美の、文学的な表現で各キャラクターの魅力が最大限に引き出された作品『彼氏彼女の事情』。結構前の漫画だからとあなどって読み始めると、予想以上の感動に心が震えてしまうかもしれませんよ?
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- 津田 雅美
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見栄のため努力を重ね、できる自分を演じていた主人公の宮沢雪野。そんな雪野は、高校入学で完璧な優等生・有馬総一郎と出会います。有馬の過去を知り、本当の自分になる事を誓い合った二人の関係はやがて彼氏彼女に発展。
個性豊かな友人達にも囲まれ、学園生活を謳歌しているように見えた雪野と有馬。しかしある時を境に有馬は再び本当の自分で隠すように。有馬の嘘を知った時雪野が取った行動とは?そして二人の関係の行方は!?
主人公の宮沢雪野は、幼い時から人に褒められたい欲求が尋常なまでに強く、より良い自分を見せるために血を吐くような努力を重ねる超見栄っ張りな性格の持ち主。しかし高校に入学して有馬と出会い、見せかけの自分と決別し、本当の自分になることを決意します。
それがきっかけでクラスの女子から無視される事態に陥った雪野でしたが、持前の負けん気と根性でその状況も好転させる事に成功。さらに上辺だけの付き合いでない、本当の友人も増えていきます。
しかし、雪野が自分の世界を広げ始めた事で、有馬は自分と雪野の間に横たわる大きな隔たりを強く感じ始める事に。遂には雪野にさえも心を閉ざした有馬でしたが、生みの母親と再会した事を境に雪野は有馬の変化を強烈に感じ取ります。
一度は見逃してしまった有馬のSOS。ギリギリのラインで立っていた有馬に雪野は必死に手を差し伸べますが、醜い感情を隠そうとしなくなった有馬は雪野さえも追い詰めようとするのでした。
有馬を助けられるのなら、傷つけられる事さえも厭わない雪野の芯の強さ、そして有馬への深い愛情はやがて有馬の頑なな心を溶かしていきます。
「有馬はさ あなたはずっと 人を、愛したかったんじゃないの」(『彼氏彼女の事情』15巻より引用)
雪野のこの一言が有馬を過去の呪縛から解き放ち、有馬本来の心を取り戻させるのです。
- 著者
- 津田 雅美
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有馬の心や自分の感情を冷静に分析し、問題を解決する処理能力はもはやスーパー高校生レベル。そんな自分の頭のキレの良さ、そして腹黒さで世の中を狡猾に生きていこうとする雪野の姿はたくましささえ感じられます。
そしてそんな雪野のたくましさは、高校時代の終わりでも大発揮され、有馬だけでなく周りの人々までも幸せに導きます。ここまで大胆な女子高生はなかなかいないでしょうが、雪野の心の強さが有馬の将来の選択を後押しする大きな力となった事は間違いありません。特に最終回の雪野の一言は、彼女の性格が凝縮されているのでお見逃しなく!
また雪野と有馬が『ちょっと江戸まで』(同著)の世界観で描かれた「ちょっとカレカノ」特別編が、『ちょっと江戸まで』最終6巻に収録されています。気になる方はこちらもぜひチェックしてみてくださいね!
頭脳明晰、眉目秀麗、文武両道なうえに性格が良いというまさに完璧な人物が、『彼氏彼女の事情』のもう一人の主人公・有馬総一郎。大病院を経営する医者の養父母の元で育てられ、一見何不自由なく暮らしているように見えた有馬でしたが、彼は誰にも話したくない過去とそれにまつわる複雑な想いを抱えていました。
しかし高校で雪野に出会ったことで、優等生であり続ける自分に疑問を持つようになり、雪野と一緒に本当の自分になる事を約束します。
最初の頃は二人の関係が濃密になる事で、幸せになれると思っていた有馬。しかし雪野の世界が広がり自分と二人だけの世界では満足できないように感じ始めた時、有馬は遂に雪野に対しても心を閉じてしまったのでした。
- 著者
- 津田 雅美
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そして雪野をあざむきながらも関係を続けていた有馬でしたが、生みの母親が自分に会いに来たことで心のバランスが崩れてしまい、遂には自分が雪野を騙していた事を彼女に悟られてしまいます。
一時は自暴自棄になり、雪野を精神的にも肉体的にも追い詰め、ますます自分自身を傷つける有馬。しかし雪野の不屈の精神と大きな愛情を受けたことで、有馬は雪野と本当の意味でわかりあえるようになります。
「好きなんだ 雪野のことが好きなんだ でも ぼくでは幸せにできないと思って言えなかっ……」(『彼氏彼女の事情』16巻より引用)
幼い頃の心の傷が原因で、人を本気で愛する事を恐れていた有馬は、初めて本気で雪野に自分の想いを伝えます。二人の心が本当の意味で初めて通じ合ったこのシーンは、『彼氏彼女の事情』のシーンの中でも1、2位を競う名シーンであると言っても過言ではありません。
何もかも上手くやれると思っていた有馬ですが、本来の部分では意外と不器用。完璧な有馬がみせる不器用さだからこそ、その意外性に魅力を感じるのでしょうね。
自分と同じくらいルックスの良い有馬と一緒にいることで、より女の子にモテたいという野望を持ち有馬に近づいてきた、根っからのチャラ男・浅葉秀明。
しかし物語が進むに従い有馬の心の闇にいち早く気付き、時には雪野以上に陰で支え続け、雪野とは性別を超えた友情を育んでいき、有馬と雪野にとって無くてはならない存在へとなっていきます。
マメな性格でどんな女の子にも優しくしますが、特定の彼女を作ることは最終回までありませんでした。
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- 津田 雅美
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両親が揃っていたにもかかわらず愛された記憶の無い浅葉は、やりきれない淋しい心を抱えたまま成長し、その心を埋める特別な誰かを探し続けていたのです。
「たったひとりを探したい どこかにいる気がするんだ」(『 彼氏彼女の事情』8巻より引用)
最終回では、浅葉のぽっかりと空いていた心を埋めてくれる存在が登場します。浅葉が淋しさを抱えたまま、エンディングを迎えなかったことに喜んだファンも多かったはず!
学校のアイドルスーパー美少女・芝姫つばさは、かなり激しい人見知りな性格で、なかなか人に懐かないというクセの強い人物。
登場時は有馬に恋する美少女で、雪野と有馬の関係を壊そうと画策していましたが、有馬が自分に振り向く事はないと悟り諦めます。ちょうどその頃父親の再婚話が持ち上がり、反抗するあまり家出までしますが、結局自分の周りにいる男の人は自分を選ぶことはないと諦め、父の再婚を賛成することに。
そんな中、父の再婚により姉弟(キョウダイ)となった息子・一馬との出会いが、それまで孤独を抱えていたつばさの心を「姉弟」という形で癒してくれます。
しかし一馬は、次第につばさの魅力に惹かれていきその気持ちを自覚。姉弟ではいられなくなり、つばさの元から去って行きます。そのことに傷付いたつばさは、結局自分を選ぶ人間は誰もいないと何もかも諦めてしまったのでした。
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- 津田 雅美
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このつばさサイドのエピソードで注目したいのが、つばさが大人へと成長するシーンです。どんな状況でもつばさを想う一馬の大きな心、そしてそれに気付いたつばさ。このふたつのピースが重なりあった時、つばさの心が大人への扉を開くのです。
「すべての痛みも苦しみも もう恐くない それごと一馬ちゃんは包み込んでくれるから」(『彼氏彼女の事情」12巻より引用)
有馬に彼女ができた事、父親の再婚により男の人を受け入れる事ができなくなっていたつばさでしたが、一馬の真っ直ぐな愛を知った事で、それまでの心の寂しさが一瞬で埋められます。
優しさ溢れるこのシーンは必見!本当の恋を知ったことで成長するつばさと、それ以前の子どもっぽいつばさの対比を楽しみながら、つばさと一馬のエピソードをお楽しみ下さい!
母親の再婚でつばさと姉弟となる芝姫一馬は、インディーズバンド「陰陽」でボーカルを務める男子高校生。お互いの寂しさを共有できたつばさと、まるで本当の姉弟のように幸せな日々を過ごしていました。
純粋培養されたような優しい少年でしたが、音楽への想いとつばさへの愛に気付き始めたことで、彼の少年としての日々の終わりがある日突然訪れます。
音楽を選ぶか、つばさを選ぶか選択の間でもがき苦しむ一馬。さらにつばさへの恋慕が強くなった事で、自分を抑えられる自信が無くなった一馬は家を出る決心をします。
遂には自分のつばさへの感情を押し殺し、一馬はつばさと「姉弟」に戻ることを考え始めていました。しかし、音楽に救われることでつばさへの想いと音楽への想いの答えに出会います。
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「何年先でもいい どれだけでも待つから ぼくを好きになってくれないか それほどぼくを大事だと思うなら」(『彼氏彼女の事情」12巻より引用)
一馬の言葉と音楽に乗せたつばさへの想いは、遂につばさへと届きます。そして愛に目覚めた一馬のボーカルとしての才能は目覚ましい勢いで開花し、インディーズバンドだった陰陽を全国区、やがて世界的バンドへと押し上げたのでした。
少年が男へと成長していく心の葛藤がとても詩的に描かれた一馬のエピソード。読んでみたいと心動かされた方は、ハンカチを片手にお楽しみ下さい!
登場時は、努力の末、上位の学業を修めていた自分のさらに上をいく雪野を妬み、狡猾にいじめの主犯となっていた井沢真秀。しかし、それを雪野に見破られてからは、雪野の仲良しメンバーのひとりとなります。
12歳年上の歯科医師の男性が恋人なだけあって、考え方が非常に大人。時には雪野に素敵なアドバイスを送り、最終回ではそれまでの努力が実り医者になった描写も。幼い頃からの夢を叶える、とても頑張りやなキャラクターです。
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転校するまで有馬やつばさ、佐倉椿(キャラ8で解説)と同じ中学に通っていた十波健史。高校になり北英高校に戻りますが、誰も彼が元同級生の十波健史であることには気づきませんでした。
それもそのはず。中学生の頃太っていて性格の悪かった十波は、椿の下僕として扱われており、椿を何とか見返そうと外見改革と学力アップのため努力を重ね別人のように変わっていたのです。
しかし十波は椿を見返したいという考えの裏に、「椿が好きだから自分を認めて欲しかった」という気持ちがあったことに気付き、紆余曲折の末、十波と椿は生涯のパートナーとなります。
「オレはこの女に愛されて幸せだ」(『彼氏彼女の事情』9巻より引用)
高校生になり溺愛されるだけの家族に違和感を感じていた十波は、椿との再会により家族の元を去り、椿との未来を選択します。
そんな彼らの未来の姿は、最終回でご覧ください!
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- 津田 雅美
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十波とは中学からの同級生で、ボーイッシュな性格をしたバレー部所属の佐倉椿。面倒見の良い所もありますが、中学の頃は十波を下僕としてこき使うようなオレ様な女子高生です。
十波との再会の時は、相手が中学の同級生だった十波とは気づきませんでしたが、魂が惹かれあうかのように自然と十波と付き合うことになります。
しかし、気ままな性格の椿についていけなくなった十波が、一度別れを切り出します。
「他の人とはきっとムリだけど お前となら肩を並べて同じ方を見ていけると思った 遠い地平の向こうまで」(『彼氏彼女の事情』9巻より引用)
椿が求めていたのは甘いセリフを囁く彼氏ではなく、自分と肩を並べて腹を割って話せるパートナー。そんな二人の行く末とは!?
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- 津田 雅美
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亜弥の幼馴染で、面倒見の良い控えめな性格の瀬名りか。目立つことで緊張したくないため、目立たない方が自分らしくいられると思っている、世の多くの男性がお嫁さんにしたくなるような女の子です。
「わたし目立たなくていいの」(『彼氏彼女の事情』12巻より引用)
しかしそんなりかの特技は、他の追随を許さないほどクオリティ高い裁縫技術。その腕前は高校生でありながら、売れっ子デザイナーであるつばさの父に認められるほど。
普段は穏やかですが、怒らせたらとっても怖いところもあるりか。最終回では特技を生かした天職に就いています。これから読む方は、どんな職業なのか想像しながらお楽しみ下さいね!
- 著者
- 津田 雅美
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幼い頃からたちの悪い遊びにりかを巻き込んでいたにもかかわらず、りかにお世話されっぱなしの沢田亜弥。飄々としていて掴み所のない性格ですが、そんな彼女にも文才という才能が備わっています。
高校生でありながらすでに小説家としてデビューし、着々と自分のキャリアを伸ばしていました。その特別な才能は、優秀な雪野にも羨ましがられるほど。
「五年後十年後はわからないよ みんなだって才能あっためてるじゃん」(『彼氏彼女の事情』5巻より引用)
もちろん最終回の亜弥の職業は大方の予想通り。学生の頃、自分の才能が開花するなんて何とも羨ましい話です。
- 著者
- 津田 雅美
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『彼氏彼女の事情』は、個性豊かなキャラクターと数々の名言、そして著者である津田雅美の文学的表現がとても魅力的な漫画作品です。まだ読んだことがないという方は、無料で読めるスマホアプリをご利用下さいね!