長野で農家の嫁をやりつつ、息子を育てつつ、俳優をしている山本裕子(やまゆう)のなまぬるい子育て連載第10回。毎週水曜更新です。今回のお悩み相談は何かと話題の「ワンオペ育児」家庭について。山本裕子はどう答える?
子育て中の皆様ならびにそうでない皆様、アンドおとっつあんおっかさん、おつかれさまです、やまゆうです。
相変わらずインフルエンザが猛威をふるっていますが、みなさまご無事ですか。
うちは、なんせ世間さまとのふれあいのないぼっち家族なので、ただただぽかーんと暮らしています。お子、パジャマを脱ぎもせず。ニートか。
では、今週のご相談を。
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我が家はいま何かと話題の「ワンオペ育児」家庭です。
主人は仕事が多忙でなかなか休みがとれず、遠方に住む高齢の両親に孫の世話を頼むのは難しく…。
ひとりでも育児に行き詰まらないコツや気分転換のアイデアがあれば、ぜひアドバイスをいただきたいです。(P.N.お豆戦隊ビビンビーン)
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♪ビンビン ビビビン ビビンビ~ン!♪
ハイお待ち、すき家のワンオペ牛丼でございますー。
行き詰まらないコツ?気分転換のアイデア?
わ た し が 知 り た い 。
「ぅぅ~~あああ、もぉぉおおおお~~~!!!(怒)」
と、鬼のような咆哮を上げているわたしに。ぜひとも教えてプリーズ。
おたくを牛丼屋さんだとしましょう。
うちもそうですけど、まだ保育園とか入ってない0~3才児をお持ちで、昼間ひとりでお子を見ているご家庭なら、みんなどうしたって最低9時間以上ワンオペ店長だ。それに加えて土日も変わらず営業、なんつったら、ほんとマジで転職を考えたい。
朝からずっと牛丼作って、接客して、隙を見て店内の掃除して、まとまった休憩時間もとれず、お客(お子)はやりたい放題ぶちかまし、まかないは毎日牛丼。そんなの飽きるじゃない!たまにはパンとか食べたいじゃない!
よしんばバイト(夫)が来たとしても、店長(母)も引き続き勤務だからね。お子が寝るまでエンドレス就業。お、なんだ、実働時間とんでもねえな、ブラックにもほどがある。
週休二日制はどこ行った。働き方改革、とか言ってる場合じゃないのよ。
「ああ~~、なんかもう今日、これ以上ムリ!」
店長だって、店閉めて逃げ出したい。そんな日もありますよ。
でもね、逃げても逃げても、このお客はどこまでも追ってくるのよ。
なぜかって?だって彼は、おいかけっこしてると思っているから!ポジティブ!
もおおー!ちょっと!今ムリムリムリ。ほんと、まじで、ムリ!母ちゃん今日は、閉店ガラガラ!!
…つって家の中で唯一カギのかかるトイレに逃げ込んで鍵かけたら、お子の渾身の体当たりで、外に引くドアが内にめり込みました。「シャイニング」のジャック・ニコルソンの、すげ愛くるしい男の子版、を想像していただきたい。
きーーがーーくーーるーいーそーーうーーー
らーらーらーらーらーら-らーー
さて、わたしの逃避手段はこちら。どん。
『精神的に、お子と離れる』
つまり、物理的にお子は変わらずそこにいながら、己の心持ちひとつでお子と距離をむりやり作るのだ!むりやりすぎる!
あほか、と思ったでしょ。逆に何だかさわやかでしょ。実際はあれだ、唸り声、の延長とお考えいただきたい。でもさ、唸るより、歌うほうがなんとなく精神衛生上いいかと思って。
ご近所だって、
「となりの奥さんが大声で唸っている」
よりは、
「となりの奥さんが大声で歌っている」
のほうがまだ、落ち着いて暮らせるというものだ。
ちなみにわたしは車で。ちょっとそこまでのお買い物でも、行きに2曲・帰りに2曲で、アタイ新品同様です。腹から声出すって、思った以上に気持ちいいぞ。
べつに家の中で歌ったっていいんだけど、数部屋離れたとこでテレビ見てる義父84才がおそらく飛び上がる。
お天気のいい日には2階のベランダで。ヘッドホンして、洗濯物を干しながらざっと20分。いいですよー屋外。
すぺーでぃん おー すぺーでぃん すぺーでぃーんおーまいたーい
そーらーび ゆーらーび らーびーゆーふぉえーば
後ろのチキチキ音がないと、それもうぜんぜんPerfumeには聞こえない。下歩いてる人はぎょっとするかもしらんが、それ~が、どうし~た、文句があるか~~。
こっちはストレスためてんだ、自分ちで発散するくらい、大目にみ~て~よ~~。
お子忘れるくらい何かに一極集中、がポイントなので、ゲームでも読書でも料理でもパッチワークでも、何だっていいんですけど、ただ、実際にお子はその場にいるのでね。道具使うものだと、お子の介入で余計イライラが増すので、手ぶらで・その場で・すぐ、できることがより好ましいのではないか。
なんだろな、ヨガ、とか、禅、とか、マントラ唱える、とか?お子すらちょっとひくぐらい、本気で踊る、とか?
今度、暗黒舞踏を試してみます。
理不尽なお子の仕打ちに、うあああ、もおお~~~!と瞬間的に怒りがわき上がったその時、あらためてお子の姿をよく見てみよう。
「ちっさいマタギが何か言っている…!」
(←茶色いへんな皮みたいなチョッキを着ている)
「ちっさいヒロシがさわいでいる…」
(←ど根性ガエルのピョン吉トレーナーを着ている)
それに気づいた瞬間、ちょっとだけ怒りの度合いが減りはしないか。
ほら、よそさまのお子のイヤイヤは、あらあら、かわいいわね~つってニコニコ見てられるじゃないですか。その客観視する距離を、自ら無理やり作るのですよ。
「(イヤイヤ爆発中)もっかい!もっかいあの、てびりみるの!あのー、おめめの!おめめおやじの!」
ぷっ、と思えれば怒りも半減。おめめおやじ、かわいいじゃねえか。
お子が正しい言葉に辿り着くまで、あともう少し。母の癒やしツールとして言い間違いを手厚く保護したい。
そのほか、
・早朝、お子が起きる前にジョギングし、疲労で頭をアホにする。
・1パック20個入りの卵を買って悦に入る。
・メラミンスポンジで湯飲みの茶渋をとる。
・晩ごはんをドライブスルーのマックで購入してやる。
などありますが、これは逃避手段としてあまりに個人的にすぎでお役に立つかどうか。
ところで、お豆戦隊ビビンビーンさんのおかげで、うちの今夜の献立は牛丼に決まりました、ありがとうございます!牛肉高いので、豚の切り落としで。もうそれ牛丼じゃないし。
へば!また来週。ビビンビ~ン!
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次回:2月21日水曜更新予定
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