鬱グロ漫画として知られる『なるたる』ですが、奥深いストーリー性も兼ね備えていて人気を博しました。今回は、そんなショッキング展開と極上の面白さが同居したユニークな漫画を紹介していきます。
主人公の姫川若葉は、家族と友人に恵まれ平穏に過ごしている少女でしたが、同級生よりも発育が遅いことにコンプレックスを感じていました。
初潮を迎えたある日、幼馴染みの貴也から告白されます。すると、彼女の日常を壊す「つぼみ法」が施行されました。
うさぎの着ぐるみを着た集団が子供たちを襲い、貴也も犠牲になってしまいます。若葉はなんとか逃げ延びるのですが、優しかった実の母親から殺されかける事態に。
「つぼみ」という名の不思議な少女が現れ、窮地を救われますが、それは悲惨な運命のはじまりでしかありませんでした……。
- 著者
- 茂木清香
- 出版日
- 2014-08-20
2014年から「ヤングチャンピオン」で連載されていた茂木清香の作品。普通に暮らし、大人への階段を1歩のぼろうとしていた少女が、一転して残虐な目に遭う衝撃の展開です。
物語の鍵となるのは、「つぼみ法」の目的。実はかつて起こった戦争によって生体兵器が投入されていて、なんと若葉を含む子供たちはみな生体兵器から生まれた第2世代と呼ばれる存在だったのです。彼らは等しく危険な超常能力を有しており、「芽のうちに摘む」という狙いがありました。
作者の茂木は、食人と兄弟愛をテーマにした『pupa』も手掛けています。センセーショナルでグロテスクでありつつも惹き込まれる物語で、本作も同様にショッキングな展開がただ続くのではなく、人々の葛藤やそのすえの行動がリアルに描かれたものになっています。
犯罪と暴力が蔓延る未来の東京に、赤い頭巾を被った出自不明の少女がいました。彼女は不死身の肉体を持っており、「狼に食べられたい」という願望から夜な夜な街を徘徊しています。
狼を探すために身売りをし、買い手の男が狼でないと知ると無惨にも殺してしまいます。
彼女は一体何者で、なぜ狼を探しているのでしょうか……。
- 著者
- 玉置 勉強
- 出版日
- 2004-06-24
2003年から「エース特濃」「月刊コミックバーズ」などで連載されていた玉置勉強の作品。謎に満ちた幼い少女、赤ずきんの背徳的で冒涜的な物語です。
玉置はもともと成人漫画で活動しており、随所にエロティックな表現が見られます。また、食人や陵辱、放尿とグロ要素も満載。登場するのは悪人ばかりですが、何よりも驚くべきは、主人公の赤ずきんが1番まともでないということでしょう。
彼女はどんなに切り刻まれても再生する不死身を有していて、狼に対して異常な執着を持っています。用のない人間はさっさと殺して人体販売業者に卸してしまう始末で、特殊性癖をピンポイントに刺激してくるでしょう。
螢光町の外れ、廃墟と化した工場の片隅で、少年たちはひっそりと秘密基地「光クラブ」の活動をしていました。「廃墟の帝王」と呼ばれる常川寛之を頂点とした集まりで、ある目的のために人造人間「ライチ」を作っていたのです。
彼らは、完成したライチに「美しいもの」を集めてくるよう命じます。するとライチは美少女「カノン」と数人の少女を連れてきました。
やがてカノンを女神として崇めるようになり、それをきっかけにして秘密基地の崩壊が始まりました……。
- 著者
- ["古屋 兎丸", "東京グランギニョル「ライチ光クラブ」"]
- 出版日
- 2006-06-01
2005年から「マンガ・エロティクス・エフ」で連載されていた古屋兎丸の作品。アニメや映画、舞台化もされたのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。
元になったのは、劇団「東京グランギニョル」が1985、86年に公演した「ライチ光クラブ」という演劇です。当時もかなり尖った内容で話題になり、これに刺激を受けた古屋が再度発表しました。
内容は、ひと言でいうと「狂気の連鎖と集束」。独裁体制で安定していた秘密基地が、女神の出現によって狂気に染まり、暴走を始めます。少年ゆえの純粋さと残酷さが加速し、傷付け合ってしまうのです。
美少女をめぐる複雑な感情の渦は、醜い臓物で彩られます。かなりの比率でグロ描写があるのでご注意ください。
人造人間の「ふらん」は天才・斑木博士に作られた少女です。彼女自身もまた、博士に負けない頭脳の持ち主でした。
天才的な外科技術を持っていて、依頼者の身体的問題を解決に導いていきます……。
- 著者
- 木々津 克久
- 出版日
- 2007-11-01
2006年から「チャンピオンRED」で連載されていた木々津克久の作品。基本的には1話完結型になっていて、表現規制に挑戦するかのようなエログロが満載されています。
ふらんは、つぎはぎ跡や電極が目立つ以外は、容姿端麗な美少女。凄まじい頭脳も持っているのですが常識がないため、目的達成のために選ぶ手段が荒唐無稽で、予想外の展開がくり広げられます。
依頼者の問題を解決するために、もっと厄介な問題を引き起こすことは当たり前。部位欠損や内蔵が飛び散るのも日常的な光景です。
ふらん以外の登場人物もほとんどが人造生物で、全員常識というネジを付け忘れたのではと疑うようなクセの強い者ばかり。エログロ好きにおすすめしたい萌えブラックコメディとなっています。
孤児院で清貧に過ごす少女たちには、ある心の支えがありました。年に1度だけ観劇の許される「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」の公演です。内容が素晴らしいのはもちろんですが、胸を焦がすもうひとつの理由があります。
それは、歌劇団の劇団員が、ブラッドハーレー公爵が引き取った孤児ばかりだという噂。公爵は年に1度、各地の孤児院からひとりを選んで養子に迎え入れていたのです。もしも選ばれたら、貴族の身分を得て、さらに華やかな舞台に立つことができる……。
晴れて養女となったある少女は、小さな胸に夢と希望を抱いてブラッドハーレー家の馬車に揺られます。その先で待つのが貴族の邸宅ではなく、石造りの高くて冷たい壁であることも知らずに……。
- 著者
- 沙村 広明
- 出版日
- 2007-12-18
2005年から「マンガ・エロティクス・エフ」で連載されていた沙村広明の作品。物語の舞台となるのは、近代ヨーロッパのどことも知れない国です。物語は淡々と近視眼的に、各話で登場する少女の姿を映し出していきます。
実はブラッドハーレー家への養子というのはまやかしで、少女たちは全員、この国で定められたとある制度のために捧げられる供物でした。
かつて刑務所で、待遇に不満を覚えた囚人たちの暴動が起こり、多くの死傷者が出る事件が起こりました。そのような事態を未然に防ぐため、年に1度のガス抜きが立案されたのです。提案したのが、ほかでもないブラッドハーレー公爵。
身よりのない孤児たちは、凶悪囚人の慰みものとして召し上げられていました……。
夢のような理想と、地獄のような現実の対比。少女たちが身も心もボロボロになっていく様子が、残酷なまでに描かれています。あまりの惨さに目を覆いたくなるほどですが、内容とは正反対の沙村広明の美しく繊細な筆致が目を逸らすことを許しません。
救いのない絶望の物語ですが、読者の心を掴んで離さない妖艶な作品となっています。
グロテスクな描写はどうしても表面的な部分が先行しがちですが、その裏にはきっと秘められた意味があるのではないでしょうか。今回ご紹介した作品をあなたが読んだ時、そこに何を感じるでしょうか?