世の妙齢の女子たちよ、なかでもとくに妊娠してるひとよ。おめでとうございます、この本たちを誰より楽しめるチャンスタイム到来。足下あったかくして、デカフェなんぞ飲みつつ、ゆっくりまったり読んでいただきたい。そして男は全員読んどけ。
どの本にも、読み手側がもっとも面白く読める状況、いうならば「旬」のようなものがあると思うのですけど。
今回ご紹介したい本は、なかでも、妊娠中のひと、とくに初めての出産をこれから経験するというひとに、もう、だれかれ構わず手渡したい。
「ねえねえアンタッ! アンタたぶん今誰よりも面白く、この本を読めるよッ! おめでとうッ!」
つって。まあ、相手、ぎょっとして受け取ってくれないと思いますが。
『妊娠』『出産』『子育て』って、当事者になるならないは別として、社会で暮らしてたら、周りの誰かしらはその状況にあるもんじゃないですか。
ひどいよ。小学生か。漠然としすぎてファンタジー感はんぱねえわ。
つわり、「うっ!」みたいな、お上品なもんじゃなかったよ。何週間にもわたって、「ううぅぇえええ~~~…」つって、酒も飲まずに毎朝がひどい二日酔い状態。いったい何の罰ゲーム。
ひっひっふー、て、べつに言わされなかったよ。
具体的には書かないが、産まれるとき、裂けないようハサミでばちこーんって切るのよ? そんでまたすぐ縫うのよ?
おっぱい、自然には出てこないのよ? 乳腺を開通させる、激痛をともなうおっぱいマッサージというものがこの世にはあってだな!
赤ちゃんも、自然とおっぱい飲めるわけじゃなくてさ!上手になるまで、母ちゃんらのビーチクは血だらけだ。この擦り傷がまた地味に激痛、永遠の靴ずれ感。
ああ、きゃっきゃうふふの、ほのぼのファンタジーはどこへ。
なんやねんな、なんで女ばっかこんな痛い目ェに合わなあかんねんな!
しかもそのことを男が知らんのも、ほんま腹立つ!
すべての男よ、せめて知識としてこれら知った上で、女に相対するがよい!
- 著者
- 鈴ノ木 ユウ
- 出版日
- 2013-06-21
週刊モーニングで連載中。21巻まで既刊。
医療マンガとして、どなたでも興味深く読めると思いますが、もし自分やパートナー、身の回りの人が妊娠出産に関わっている時であればさらに、シンパシー感じる度合いが高すぎてもう大変。すんごいスリリング。なんか知らんが、やたら泣けてきてしょうがないのよ。
妊娠中に読み始めたときはホルモンバランスのせいかとも思いましたが、産んではや3年半、相変わらず毎巻、かならずどこかで目から汁が出るので、もう、こういう本なのだとしか。
当然、人の生き死にがあり、しかもたいてい赤子か母親が当事者なので、そういう話はとても重いのですが、それでも各所に軽さをさりげなく配置してあるのでありがたい。
登場人物も、産婦人科はもちろん、救急救命、麻酔科、新生児科など、カラフルな人たちがてんこ盛りです。
妊婦あるある、出産あるある、満載。さらに、こんないろんな病気やリスクがあるなんて、ほんと知らないことだらけで、ありきたりすぎてこんなこと言うのも恥ずかしいが、ふつーに生まれるって、実は大変にすげえことなんだなあ~。
とりあえずみんなハタチあたりでこれ読んで、妊娠出産とはどんなものなのか、どんなことが起こりうるのか知っておけば、なんかもうちょい、生きやすい世の中になるんじゃないか。
とりあえず
「え、だって、出産は病気じゃない(んだから、平気)でしょ?」と、知った風に軽ーく言うやつがいたら、そいつをグーで殴ってやろうと思います。
- 著者
- 川上 未映子
- 出版日
- 2017-05-10
35歳で初めて出産した著者の、ニンカツから妊娠、出産、1歳の誕生日までの怒濤の日々を綴ったエッセイ。
ものすごく個人的かつデリケートであるところの己の身体と精神のあれこれを、赤裸々に、事細かに、書いている。
つわり、出生前検査、マタニティ・ブルー、無痛分娩、からまさかの帝王切開、産後クライシス、仕事と育児の両立などなど。
それらのテーマが、語り口と相まって、なんか爆笑。そしてふとしたところで急に涙腺崩壊。
わたしが特にすきなシーンはこちら。
エアロビクス推奨の産院で「とにかく、とにかく踊ること! エアロビを制するものは出産を制す!」みたいな院長に対して本気でビビり、家に帰ってからの夫婦の会話。
「あれは本気やで。エアロビやらんかったら、生ませてもらわれへんような気するわ」
「そうか」
妻に、この子のために死ねるか?と聞かれた夫の一瞬のためらいに対し
「ハーン……そうか。死なれへんねんな。あんたは、この子のためには死なれへん、と。ハッハン……さすが父親やな……さすが、どこまでいってもしょせん社会的存在である父親さまやな・・・・・・(後略)」
本人たちはあくまで真剣だけど、読んでるこちら側はニヤニヤ。そして、ものすごい共感。
結婚や妊娠でオンナの感じる不条理をつきつめると、結局「オンナ」VS「男性性」にならざるを得んのだよなー。自分の中のオンナが、悔し泣きをする。
それはさておいて、『産後クライシス』についてはかなり壮絶ですので、特にこれから父になる予定の男性がた、ほんと、一回読んどいたほうがいいと思いますよ。
- 著者
- コンドウ アキ
- 出版日
- 2009-03-13
- 著者
- コンドウ アキ
- 出版日
- 2011-04-15
この流れで『妊娠』やら『子育て』やらに、恐れや不安をいだいたら、ぜひこちらを読んで、ほわわわ~~んとしていただきたい。
妊娠~出産までを描いた「トリペと」、0才児の1年間を絵日記で描いた「オカアチャン1年生」、どちらも大変おすすめです。
母も父も子も、全員が初めてだらけ。毎日のその混乱ぶり、ドタバタぶりがとてもよく伝わってきて、それがすべてほほえましく、これから自分が体験するかと思うとより楽しくなりますよ。
作者がリラックマ描いてるイラストレーターさんなので、まあなんせ、お子の絵がかわいい。しもぶくれ・点目・髪の毛4本の二頭身で、あう~まう~つって、もごもごもぞもぞ動く、得体の知れない生き物。なんてきゃわわ…。
0歳児のあのかわいさって、一体何なんでしょうね。わたし、べつに子ども好きとかじゃないのですが、なぜか世界中の0歳児は全員、かわいいと思う自信がある。
実際、0歳児って、おばさんおばあさんホイホイ状態で、外出ると必ず誰かしら「あら~~」つって寄ってくるもんなー。わたしも、若輩者ゆえまださすがに声かけるまではできないのですが、「あああ……!」つってその場でこっそりもだえている。ああ、魅惑の0歳児。たまらぬよ。
このあと次女モッチンもうまれ、今のところ「でこぼこステップ トリペと⑦」まで出版されています。
おそらく実際のトリペは、今ごろ小学校卒業するくらいに成長しているはず。ああほんと、よそのお子とゴーヤは成長が早い。©博多華丸大吉
やまゆうのなまぬる子育て
劇団・青年団所属の俳優山本裕子さんがお気に入りの本をご紹介。