島田荘司のおすすめ文庫小説10選!「御手洗」シリーズから隠れた名作まで

更新:2021.11.25

島田荘司は、代表作でもある「御手洗」シリーズを筆頭に、幅広いジャンルの作品で多くのファンを魅了し続けるミステリー界の巨匠です。トラベルミステリーから社会派ミステリーまで多彩な物語を手がける島田荘司のおすすめ小説を10作品、ご紹介します。

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島田荘司とは

 

広島県福山市に生まれた島田荘司の経歴は、実に多彩。武蔵野美術大学を卒業後、ライターやミュージシャンなどの経験を経て、江戸川乱歩賞候補にもなった『占星術殺人事件』でデビューしました。

同作を第1弾とした「御手洗」シリーズは、時系列がしっかり描かれているので順番通りに読むことをおすすめします。でないと、話のつじつまがぐちゃぐちゃなことになってしまいますよ。

その他にも、警視庁三係・吉敷竹史を主人公にすえた「吉敷竹史」シリーズ、さらに死刑や冤罪、文明論など幅広いジャンルを取り扱ってた作品を生み出していて、多くのファンを獲得しています。

2015年3月には、「御手洗」シリーズの『傘を折る女』が初の映像作品としてテレビドラマ化されると、翌2016年には映画化され話題を集めました。

島田はこの映画化のために、故郷の福山市を舞台に『星籠の海』を書き下ろすなど、バイタリティ溢れる作品づくりで還暦を過ぎてからも活躍し続けるミステリー界を代表する重鎮作家です。

 

後世に影響を及ぼすほどの驚愕トリック『占星術殺人事件』

『占星術殺人事件』は、1981年に発表され話題を呼んだ島田荘司のデビュー作であり、主人公・御手洗潔(みたらいきよし)を探偵役に、その相棒・石岡をワトソン役に位置づけ、以降、長く続く「御手洗」シリーズの第1弾として人気が高い作品です。

猟奇的な殺人が起きる事件と大胆なトリック、事件関係者の手記からスタートする構成など、斬新な演出と練られた本格ミステリーとしてのストーリーの面白さに、多くのファンから支持を得ています。

物語は、1936年の「二・二六事件」が発生した日と時を同じく、画家の梅沢平吉が自宅のアトリエで殺害されているのが発見される場面から徐々に動き出していきます。

著者
島田 荘司
出版日
2013-08-09

梅沢が残した遺書には、6人の処女から体の一部を切り取り、それを結合させて完璧な肉体の女性「アゾート」を作り上げる、というショッキングな内容が書かれていました。

その後、体の一部を切り取られた6人の若い女性たちの無残な死体が発見されましたが、事件の真相にはたどりつけずに、結局迷宮入りとなってしまっていたのです。

それから40年後、その不可解な事件について、ある女性が持ち込んだ1通の手記から、すでに迷宮入りとなっていた事件が動き出します!

実際に殺され、各地に埋められていた梅沢の6人の娘たち。

しかし、「アゾート」を目指していた当の梅沢はすでに死んでしまっていたのです。では、どうして娘たちは殺されなければならなかったのか?犯人は一体誰なのか?

圧倒的なスケールの謎に挑む御手洗と石岡君コンビは、果たして真相にたどり着くことができるのでしょうか?

さらに、2人の息の合った掛け合いも見どころの1つです。

思わず「そうきたか!」と唸ってしまう驚愕のトリック、壮大な謎のすべてが解き明かされた時、何とも言えない爽快感に包まれます。

真実が姿を現す瞬間の快感を、御手洗とともに堪能しましょう!

驚愕のトリックに度肝を抜かれる『斜め屋敷の犯罪』

「御手洗」シリーズ第2弾となる『斜め屋敷の犯罪』は、本格ミステリーのうちでも、「館」を舞台に繰り広げられる事件や推理を描く「館モノ」として絶大な支持を集めています。
 

また、作中に登場する驚愕のトリックに、つい「そんなバカな!」と叫びたくなるミステリー作品、通称:バカミスとしても人気です。

舞台は、北海道・宗谷岬のはずれに佇む「流氷館」。オホーツク海を見下ろす高台に建てられた館は、「北から南に向かって5度ほど傾いて」いるという奇妙なつくりをしています。

それゆえ、地元の人からは「斜め屋敷」と呼ばれているのでした。

著者
島田 荘司
出版日
1992-07-03

「斜め屋敷」では、館の主である浜本幸三郎をはじめ、様々な関係者が訪れてクリスマスパーティが行われていました。

その夜、みんなが寝静まった頃に起きる密室殺人事件。

すぐに警察が呼ばれて現場検証と関係者への事情聴取が行われますが、犯人の目星は付かず、さらに動機や密室の謎も分からないまま時間が過ぎていくのでした。

そうして、それ以降、悲劇は繰り返されていくことになります。

と、この不可思議な密室殺人をスラリと解決するのが我らが御手洗! なのですが、彼は物語の3分の2が過ぎたあたりまでまったくと言っていいほど、気配すら現しません。でも謎だけはてんこ盛りなのです。

しかし、そこは我らが御手洗。登場するやいなや、あっという間に事件の真相を暴いてしまうのです。さすが!

このトリックが、読んでいても全然分からない! 良い意味で、予想外すぎて思いつきもしないのです。まさに「そんなバカな」と叫びたくもなります。

山盛りの謎を、登場わずか数シーンでスラスラと解明してしまう御手洗の推理力と怒濤のラストシーンに注目してください。
 

奇人探偵の日常が垣間見える『御手洗潔の挨拶』

『御手洗潔の挨拶』は御手洗潔を探偵に、4つの異なる事件の謎を解き明かす短編集です。
 

4編とも本格ミステリーとしての読み応えも抜群。「御手洗」シリーズ初心者にも読み進めやすいと評判の1冊となっています。

4編を通じて、犬好きなところや、コーヒーを飲まなくなった理由、プロ級のギターの腕前など様々な御手洗の一面を垣間見ることができ、本作読了後にはさらに御手洗潔の虜になること間違いなしの傑作短編集です。

著者
島田 荘司
出版日
1991-07-04

御手洗と石岡君のもとに、以前『占星術殺人事件』で知り合った竹越刑事が訪れるところから短編「数字錠」の物語はスタートします。

吹田電飾の社長・吹田久朗が何者かに殺害され、その死体を若手社員4人が発見。

しかし、社長の吹田を殺すには、工場の表のシャッターを開けるか、裏にある数字錠の付いた扉を開けて侵入するかの2つしかありません。数字錠の数字は被害者である吹田しか知りません。

つまり、殺害現場は密室だったのです。さらに、若手社員4人にはアリバイも成立するという……。果たして密室殺人を行った犯人とは?

と、ストーリーが進んでいく「数字錠」をはじめ、嵐の夜に姿を消した男が、13分後に走る電車に飛び込んで死んでしまう……という「疾走する死者」など、御手洗の人間味を存分に楽しめる珠玉の物語が目白押しです。

ある日、突然の記憶喪失『異邦の騎士』

『異邦の騎士』は、「御手洗」シリーズにおいて、御手洗潔の最初の事件を描き、「エピソード0」との位置づけが強い作品です。

公園のベンチで目を覚ました男が、自分が記憶喪失であることに気づき、戸惑うシーンから物語は展開していきます。

ふとしたきっかけから、男は若い女と出会い、新しい人生をスタートさせます。その後、断片的に浮かび上がる、かつての記憶のかけら。自分が、妻子を殺した……?

 

男が手に入れた幸せに忍び寄る魔の手とは? 記憶喪失の男を襲う不可解な出来事の裏には一体何が潜んでいるのか?

著者
島田 荘司
出版日
1998-03-13

推理小説とは違うミステリアスな雰囲気を醸し出す本作には、壮大なトリックや奇想天外な出来事が起こるわけでもない、「異質」な状態がずっと続いているもやもやした不穏な感じが全編に漂っています。

ストーリーテラーが記憶喪失になった男ですから、男自身も読者も何も分からない! 男の身辺以外の情報がほとんど出てこないのです。

一体男は誰で、何をしていたのか、今後の男の行方など、すべてが手探りで進んでいく物語に、グイグイ引き込まれていきます。

そして、やはり外せないのは、序盤で出会った若い女・良子との愛の物語です。

共同生活を続けるうちに、男にとって良子はかけがえのない存在へと昇華し、これからも幸せな日々が続くかと思いきや、そうは問屋がおろしません。

終盤で御手洗が解き明かす男の正体、物語の全貌に驚愕し、感嘆し、そしてひどく悲しくなる御手洗潔の最初の事件、一読の価値ありですよ。

時間の壁を乗り越えろ『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』

島田のもう一つの代表作である「吉敷竹史」シリーズの第1弾となる本作では、寝台特急「はやぶさ」を使った大胆なトリックが見どころとなります。
 

警視庁三係・吉敷竹史を主人公に、二転三転する真相を究明していくた本作は、本格ミステリーとしてはもちろん、旅情あふれるトラベルミステリーとしても評判です。

自分の足を使って事件の真実を探る、実直な刑事、吉敷は、ある不可能犯罪に出くわし図らずも探偵役としてその真相を暴くこととなっていきます。

事件は、ある男が望遠鏡でとあるマンションの一室を覗き見しているところからスタートします。

著者
島田 荘司
出版日

女性の浴室を覗いているうちに、男が気付く妙な違和感。長時間の間、まったく女性の体が動いていないのです。

やがて、その女性が刺殺体として発見され、さらには女性の顔の皮膚や目玉を剥がされた凄惨な姿になっていることが判明します。

しかし、ここで一つの疑問点が浮かんできます。殺害された女性は、その時間帯には遠く離れた寝台特急「はやぶさ」の車内で目撃されていたというのです!

果たして吉敷は、この不可能犯罪の壁を打破することはできるのか……?

本作の見どころは、やはり寝台特急に乗っていたという女性の謎でしょう。なぜ顔を剥がれていたのか、乗車中のアリバイについて、目撃証言や彼女を撮影した写真まで登場するのだから、謎は深まるばかりです。

そして、終盤にぐるんとひっくり返る事件の真相も見逃せません。

読者も吉敷と一緒に各地を訪れているような感覚を覚え、またともに推理ができるエンタメ性に富んだ1冊なので、ぜひ手に取ってみて下さい。きっと吉敷竹史の実直さにハマってしまうはずですよ。

思い出だけがきらめいている『透明人間の納屋』

「かつて子供だったあなたと少年少女のための」と銘打ったミステリーランドシリーズにて刊行されたのが『透明人間の納屋』です。

いわゆるジュブナイル小説と侮るなかれ、最初はSF小説かと思いつつ、なかなかに重いテーマを根底に宿して物語はスタートします。

F市に住む小学生・浦上ヨウイチは、母子家庭で育ち、隣の印刷所で働いている「真壁さん」という大人の友人と一緒に遊ぶのが大好きです。

真壁さんは博識で、ヨウイチにとっては宇宙についても星の動きについても、ウイルスについてだって何でも知っている「神様」のような存在です。

そんなある日、真壁さんの家の納屋にある印刷機に興味を惹かれたヨウイチが尋ねると、「透明人間をつくる機械」と答える真壁さん。自分は以前に機械に触ってしまったから透明になれるとも。

そういうと、自分の腕を見せてくれました。

そこには、手首から先が透明になってしまった真壁さんの姿があったのです。

著者
島田 荘司
出版日
2012-08-10

真壁さんの突然の告白に混乱するヨウイチ。

さらに時を同じく、ある1人の女性がホテルの一室から忽然と姿を消し、数日後に遺体となって発見されるという不思議な事件が起こります。

ホテルのドアから出入りした人物を見た人間は誰もおらず、まるで「透明人間」のようだと考えたヨウイチは、透明人間になる薬を使った真壁が犯人だと推理するのです。

しかし、別の人物が犯人として捕まり、真壁さんはかねてより所望していた「地上の楽園」へと旅立っていきます。

そして26年後、真壁さんからの手紙を受け取ったヨウイチは、事件の真相と真壁さんの真実を知ることになるのです。

ミステリーが主題というよりもむしろ、少年期の思い出や大切な人との出会いと別れのストーリーに主題を置いているので読みやすく、少しSFテイストな物語の仕立ても絶妙です。

透明人間の正体が明らかになった時、哀しく切ない物語は終焉を迎えることになるのですが、その結末はぜひ読んで確かめてみてください。

生きづらいかもしれない世界を生きて『火刑都市』

都市論とミステリーの掛け合わせによって紡ぎ出される『火刑都市』は、「吉敷竹史」シリーズの主人公・吉敷の先輩であり、シリーズ内にも何度か登場した中村刑事を探偵役として進んでいきます。

壮大なトリックも時刻表を使ったアリバイ工作も、猟奇的な遺体も登場せず、1人の刑事の愚直なまでの地道な捜査でだんだんと事実に近づき、犯人へと肉薄していく様子が淡々と描かれています。

とあるビル火災から発見された焼死体が、物語のキーとなって動き始めます。

事件を追う中村は、捜査線上に浮かびあがった重要参考人の女を見つけることに成功し、事件は解決か、と思いきや彼女には鉄壁のアリバイがあったのです。

著者
島田 荘司
出版日
1989-07-07

中村が女を探しはじめ、女が見つかるまでを描く前半部分では、女の故郷の寂れた風景描写が印象的です。トラベルミステリーもお手のものな島田らしい、臨場感ある描写となっています。

さらに後半では、連続不審火を起こした犯人と中村の手に汗握る対立が見どころです。

全編において「静」の物語である本作において、犯人との知恵比べのシーンは緊張感に満ちた「動」の物語を活き活きと描き出しています。

登場人物たちはみんな「東京」に住み、そこで孤独を抱え、出会い、そうして「東京」での生活がやがて悲劇へと繋がっていくことになるのです。

みんなが揃って「個」であるということが、本作においての重要なポイントとなっていくことも、現実世界を生きる我々の心に深く訴えかける内容となっています。

中村刑事のアツい想いや、地方出身東京人の苦悩や葛藤、「東京」に住む様々な人たちの人間模様を情感豊かにまとめた1冊です。

社会性のあるテーマを題材にしているだけに、重苦しいイメージを持つかもしれませんが、ぜひ読んで、考えてみてください。

自分は一体、誰なのか?『エデンの命題』

島田荘司が考える「脳」というものをテーマに、最新生物科学とミステリーの融合を楽しめる本作には、表題作の「エデンの命題」と、「ヘルター・スケルター」の中編が2編収録されています。

「エデンの命題」の主人公は、アスペルガー症候群の少年・ザッカリ。

彼は他の多くの自閉症スペクトラムの子ども達とともに、「アスピー・エデン」という全寮制の学園に在籍しています。

他者とうまく馴染めない自閉症スペクトラムの子供たちにとって、理想の環境を提供している「アスピー・エデン」を舞台に、次第に禁断の事実が明るみにでることになるのです。

著者
島田 荘司
出版日
2008-11-11

ある日、ザッカリの友人であるティアが突然姿を消してしまうところから、このミステリアスな物語は進行していきます。

失踪したティアが残した事実は、ザッカリにとってとても衝撃的なものでした。

「アスピー・エデン」は表向きは全寮制の高校とされていますが、実はクローンとして生まれた子ども達を養う「農場」だったというのです。

幸せに暮らしてきた自分自身もまた、誰かのクローンであると気づいたザッカリは深くショックを受けます。

そんなザッカリに、ルービンと名乗る男がある提案をするのですが……。

自分が一体何のために生まれ、何者であるのか? 最新の脳科学を軸に、島田なりの旧約聖書の解釈も織り交ぜて進む衝撃の物語から目が離せません。

同時収録の「ヘルター・スケルター」は、記憶喪失の主人公が病院のベッドの上で意識を取り戻す場面からスタートします。

さらに、残り5時間以内に記憶を取り戻さないと一生社会復帰はできない、と宣告されてしまうのです。そのため、必死に記憶を取り戻そうとする主人公の姿が描かれています。

物語の終盤で明かされるトリックにも注目です。

どちらも、「脳」と精神について深く考察された良作ですので、1度読んでみて損はありませんよ。

妻の突然の失踪の謎を追え『帝都衛星軌道』

東京・山手線を舞台にした、不可解な誘拐事件の謎を追う『帝都衛星軌道』。

しがない銀行マンであった紺野は、ダメ元で声を掛けた美砂子と交際、結婚し、子どもも生まれ、幸せで順調な生活を送っていました。

そんなある日、中学3年生の息子が誘拐されてしまいます。

心配する美砂子は、無事に保護された息子の身元引受人として、警察へ赴くために自宅を出ると、そのまま戻ってはこなかったのです。

著者
島田 荘司
出版日
2009-08-12

誘拐の身代金の受け渡しには、トランシーバーが使われ、通信距離が4~5キロというトランシーバーにも関わらず犯人は警察の包囲網に引っかかりません。

なぜ、犯人は包囲網に引っかからないのか? なぜ、身代金が少額なのか? なぜ、母親は事件後に失踪してしまったのか?

謎が謎を呼ぶ不可思議な事件です。中でも、美砂子の失踪の真実と、なぜ息子が誘拐されたのか、という最大の謎は後半に明らかにされますので、絶対に注目ですよ。

また、物語が後半に入る前に、「ジャングルの虫たち」という小編が挿入されています。

老ホームレスの視点から描かれるチンピラと詐欺師の回想の物語で、物語の大筋に関連はほとんど関連しておらず、閑話休題とでもいうべき位置づけで挟みこまれています。

ただ、この小編も秀逸なんです。小さな世界のちょっとした小話がたくさん集まって、大きな流れになっているのだと気付かされるので、本編に関係ないと読み飛ばさずに、しっかり読んでみることをおすすめします。

最終的に、東京=帝都の表と裏がよくわかるように仕上げられた物語構成が見事です。

めくるめく島田荘司の世界へ誘ってくれる希有な短編集『毒を売る女』

短編集『毒を売る女』は、本格ミステリーとしては当然ながら、サスペンスタッチの作品から社会派、青春小説、ショート・ショートまで粒揃いの島田ワールドを満喫することができます。

著者
島田 荘司
出版日

巻頭に収録されている「毒を売る女」では、ママ友達の「靖子」が、夫に梅毒を移されてから徐々に常軌を逸したようになっていく様子が描かれています。

狂ったように、手作りの食品を持って遊びに来る靖子。どうやら、靖子が梅毒に感染したことを知ってしまった主人公の「私」にも梅毒を移そうとしているようで……?

その鬼気迫る姿にだんだんと追い詰められ「梅毒ノイローゼ」になってしまった「私」と「靖子」との戦いは必見ですよ。

ぞわりと冷気が背筋を這うようなスリリングで、恐ろしさを感じるリアルな筆致も見事です。  

また、他の収録作も良作揃いで、中でも特に人気の高い「糸ノコとジグザグ」は、謎解き要素を含んだ本格ミステリーのエスプリを感じつつ、ラジオ番組のスタッフとリスナーが起こす奇跡のストーリーが抜群です。

ミステリーだけじゃない、めくるめく島田荘司の世界へと誘ってくれる必読の1冊をぜひ。

多くの傑作ミステリーを世に送り出してきた島田荘司のおすすめ小説10選、いかがでしたか? 有名な「御手洗」シリーズはもちろん、紹介した作品の中で興味を持ったものがあれば、ぜひ手に取ってみてください。読了後は、きっと島田ワールドにどっぷりハマってしまうこと請け合いですよ。

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