【最終回】鬼だのみ。~新・"やまゆう"のなまぬる子育て相談処~

鬼だのみ。

子育て中の皆様ならびにそうでない皆様アンドおとっつあんおっかさん、おつかれさまです、やまゆうです。

野菜がほんと、ずっとお高くて。わたしは途方に暮れています。

あのね、冬の晩ごはんなんてね、こちとら毎日鍋でお茶を濁したいんですよ。

なんとなーく野菜切って、なんとなーく魚介か肉ぶちこんで、その場で白湯だ、みそだ、豆乳だっつって、適度にぐつぐつと。

それでもぶわっと土鍋のフタあけりゃ、白く立ちのぼる香しい湯気。寒い時期にはこれに限りますなあ。みんなニコニコ。母もニコニコ。

そこに立ちはだかるのが、価格の壁だ。

ひと玉さんびゃくごじゅうえんのキャベツ、とか。半玉よんひゃくえんの白菜、とか。ニラひと束にひゃくえん、とか。

価格高騰の理由は重々承知した上で、農家さんたちがんばってと心からのエールを送りつつ、それでも感情が追いつかないというか。

ちょっとアンタ、1本さんびゃくえんて一体どういう了見?え、なに、高級野菜さま気取り?

じゃあこの際言わせてもらいますけどね、アンタなんていつもなら余っちゃって、保存のために仕方ねえなっつって細かく刻まれて、天日で干されてんだからね!

野菜売り場に立ちつくし、ただじっと大根を睨みつけるわたしはいったい周りからどう見えているのか。

今日の献立に大根は欠かせない。しかしもしこれを買ったなら、わたしは何かに負けた気がする。

だけど、大根が入っていない豚汁なんて、豚汁なんて…

ただの、肉の脂浮いたみそ汁じゃねえか。

では、今週のお悩みを。

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子どもがどうしても言うことをきかないとき、ついつい

「○○しないと、鬼が来るよ!」

と、鬼やおばけに頼ってしまいます。

そういう、恐怖で子どもを脅すしつけは、すぐ効果がなくなってしまったり、あとでトラウマになってしまったりで、あまりよくないとも聞くのですが…。(P.N.すりこぎ仮面)

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「早く寝ないと、おばけが来るよ!」

というのは、誰しも幼い頃にさんざん言われた、もはや殿堂入りセリフでは。わたしも初めてお子に言ったとき、あー、これほんとに使うもんなんだなあ、へええ~、となんだか感慨深かったですよ。

昨今だとほら、おそろしい顔をした赤鬼から電話かかってくるアプリとかね。プロの声優さんによる、臨場感たっぷりの恫喝。あれだ、普段使いの、なまはげだ。

すりこぎさんの言うように、こういった手段としての鬼については、賛否両論あるようですが、うちはあのー、あれです、だいたい夕方以降は鬼に頼りっきりです。鬼まかせです。アプリは使ってないけど、自前で鬼を演出。

今年の節分はまだこの程度のオニでも通用した。

「いやー!おふろはいらないの!あそぶの!おふろ、おやすみなの!」

「入るのよ!入らないと、鬼がくるのよ!ほらっ、もうそろそろ来るよ!」

「こないの!」

「(窓から外を見て)・・・ん?(何かを発見し恐怖の表情)あッ!あああ!!」

「!! なに? なに?!」

「ほら・・・見てごらん、そこの角に、もう・・・来ている・・・」

「・・・なにいろがきてる?」

「えっと・・・(カーテンの隙間からのぞく)あー、今日は赤が来てるねー」

「・・・いたいいたいぼう、もってる?」

「持ってるねー、あー今日のはだいぶとげとげしてるなあ」

毎日飽きもせず、繰り返されるこの会話。夕方以降って、たいていお子も親も疲れて、ただでさえお互いわけわかんなくなってんのに、やれ風呂だごはんだ、歯磨きだ就寝だと、予定が目白押しなのでね。業務完遂のためにはもう、手段は選んじゃいられないの。

鬼だろうがおばけだろうが立ってる親だろうが、使えるものはこの際何でも使いたい。

ちなみに、いたいいたいぼうはあれ、オニがよくもってる棍棒みたいなやつ。痛い痛い棒。

さて、この時点で、まだなんやかんや理由をつけて風呂入ろうとしないので、次の手GO。

父か母、その時手の空いてる方がそっと玄関から出て、外から窓もしくは壁をがっつんがっつん、殴る揺するの大暴れ。道行く人に見られたら、通報必至だ。

ドンドンドンッ ガタガタッガタッ!

「・・・!来た!!」

「わあ~~ん!」

「(外に向かって)入りますっ!もう入りますから!ね、入るよね?」

「おふろっ!はいるぅぅ!」

お子、ぱんつ脱ぎながら風呂場へダッシュ。はいよ、ありがとうございます。これルーティーンです。

風呂に入ったら入ったで、今度は遊びたおして出ようとしないお子に

「じゃ、かあちゃん先に出るね。たぶんオニが代わりに入って来ると思うけど、がんばってね!」

風呂上がり、ずっと素っ裸で遊びたおすお子に

「ぱんつはかないと、オニがおへそ取りにくるよ!(やはりカーテンの隙間から外をチラリと)あ、ほら、まだそこに」

遊びたおして、全然寝ようとしないお子に

「(カーテンの隙間から 以下略)あれ、オニ来てる、もうそんな時間か。ほらお布団入って、電気消すよー」

オニよ、今夜も、ありがとう。

毎日18時から22時まで、オニ、うちにつきっきり。時給発生する勢いだ。

とはいえ、これだけオニ多用すると、さすがにマンネリ化するというか、だんだんオニを軽んじて、効果が薄れてくるのでね。

なので、オニの怖さをより強化するため、オニが母に憑依する、というのと、母と見せかけて実は中身はオニ、というのをそれぞれ試してみたこともある。

・『オニ、憑依。』急に1点を見つめ、ゆっくり白目をむいたのち、ガタガタふるえて「ぅおおおおおおおォ~~~~」と低い声で唸り始める。

・『中身、オニ。』ルパンみたく、アゴの下から顔の皮を徐々に持ち上げて顔をめくる(ふり)。犬神家の一族を意識し、あくまでおどろおどろしく。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「うわ~~~ん!!」

「あ、ごめん、うそうそうそ!母ちゃんでした~~!てへへ~~!!」

「うわああああん!!」」

結果、どちらの回も、お子号泣。あかんか。やっぱり、あかんわな。

お子のトラウマ作り出してどうするのか。もはや正解を見失っている。

そういえば小学生の時、同様の手口で『姉が急に宇宙人になる』というのを3つ下の弟に仕掛けて、やはりおびえ泣きさせたのを思い出しました。あれから30年。人って、やること変わらんです。

なので、すりこぎさんにも、怖さの限界に挑戦するのは、あまりオススメせず!

目的のためには手段を問わない、けども、まあ、ほどほどに!

怖さで目先を変えるのはどうやら禁じ手のようなので、あとは、バリエーション増やして、なんとなく勢いでお子を煙に巻いてくしか。

先日お子と夫の会話をそれとなく聞いていたら

「ほらごはん食べないと、カタカタ怪人が来るよ・・・!」

と新たな怪人が登場していた。だれなのかそれ。お子も勢いにおされて「お、おう・・・」つって食べてましたが、カタカタ怪人ってたぶん来てもそんな大したことなさそう。

新たな怪人案が尽きるのが先か、道理を説いて言うこときけるほどお子の前頭葉が発達するのが先か。今後の展開に期待したい。

さて、3ヶ月おつきあいいただいた子育てなまぬる相談も、おおかたの予想通り何ひとつ問題を解決しないまま、今回で終了の運びとなりました。ありがとうございます。

どうかこの世のすべてのおとっつあんおっかさんが、お子たちとともにすくすく元気に、なんとか、あれしていけますように。

わたしも、棚上げできることはすべて棚上げしつつ、うまいことあれできるようがんばりますので。ではまた。

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