弁護士と美容師の中年ゲイカップルの日常に、リーズナブルで美味しいおうちご飯の風景が織り込まれた本作。同性カップルならではの悩みや、登場人物たちが抱えるトラブルなども描かれており、読みごたえ十分です。2019年4月5日からは、テレ東にてドラマ化!ますます注目が集まっています。 今回はそんな話題の本作の魅力と、最新15巻の見所をご紹介していきましょう!
主人公は、ゲイカップルの筧史朗(かけい しろう)と矢吹賢二(やぶき けんじ)。BL漫画によく見られるような性的な描写は一切なく、食事の風景や日々の出来事をとおして、2人のパートナーとしての絆が描かれていきます。
注目なのは、実生活にも役立つレシピの数々。身近な食材と懐に優しい予算で、手軽に再現できるものばかりです。
同性カップルゆえに子供を持つことを諦めている彼らは、実際の夫婦以上にお互いの健康をいたわり、ともに過ごす食事の時間を大切にしています。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2007-11-22
そんな本作は、2019年4月5日からテレビ東京にてドラマ化され、弁護士である史朗を西島秀俊が、美容師である賢二を内野聖陽が演じました。主演2人のビジュアルは、まるで漫画の中から飛び出してきたかのようなクオリティー。
そんな再現度の高さが大好評だったドラマ『きのう何食べた?』。最終回の放送後に、「何食べロス」なった方も多かったのではないでしょうか。
そんな方には嬉しいお知らせです!『きのう何食べた?』が2020年の元日に一夜限りで復活します。史郎がどんな料理を振る舞うかがたのしみですね。
主役2人のコメントやその他の情報は、テレ東のお知らせに掲載されていますので、詳細が気になった方はこちらをご覧ください。
原作者・よしながふみもお墨付きのこの作品は、まさに必見です!原作と合わせてご覧になってみてはいかがでしょうか?
ここからは、ほっこりすること間違いなし!な本作の魅力と見所をご紹介していきましょう。ネタバレを含むので、未読の方はご注意ください。
毎日の料理を担当するのは、弁護士の史朗。低予算で旬の食材をバランスよく取り入れたレシピを考え、手際よく調理をするその腕前は、ベテラン主婦を超えています。
パートナーで美容師をしている賢二との生活は、お互いにアラフィフなこともあり、とても落ち着いたもの。ただゲイであるがゆえに抱える問題や、年老いてゆく家族との付き合い方など、彼らに降りかかってくる諸問題がとてもリアルです。
基本的には1話完結型で、毎回ほっこりできるエピソードばかり。読み始めたらその柔らかな世界観についついハマってしまうはずです。
史朗と賢二はゲイカップルならではの悩みを抱えています。最大の問題は、史朗の両親の理解度ではないでしょうか。
彼の母親は、史朗が高校生の時にゲイであることを知ると、その場で失神して3日間寝込んでしまいました。目が覚めると新興宗教に入信して、現実逃避をしてしまいます。現在は自分の息子が結婚をしないこと、孫の期待はできないことは理解しており、彼自身のこともわかろうと努力をしてくれています。
そんな姿を見た史朗は、ある日意を決して賢二のことを両親に紹介しました。しかし、現実はうまくいきません。「息子の彼氏を受け入れる」ということの難しさを、身をもって感じたのでした。
また自分がゲイであることを広く知られることを嫌がる史朗は、もちろん職場でもカミングアウトはしていません。一方の賢二は自身の職場で全員にゲイであることを話しており、史朗との生活を赤裸々に語ります。そんな彼に史朗が怒りをぶつけることもしばしば……。
常に全力全開で愛情を表現する賢二と、少々ツンデレの史朗のバランスが心地よく、小さな幸せをコツコツと積み上げていくさまは理想的な大人のカップルだといえるでしょう。
この2人なら、この先どんな困難が降り注いでも、支えあって生きていけると思わせてくれます。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2009-10-23
連載が始まったとき、史朗は43歳、賢二は41歳でした。物語のなか歳月が過ぎるごとに彼らも年を重ねていき、時間の経過がリアルに描かれていきます。
当初から頭頂部の毛量を気にしていた賢二は、50歳になるのを前に、長髪パーマスタイルからショートヘアにイメチェンをしました。さらにこれまでは何もしなくても太ることはありませんでしたが、近頃お腹のぜい肉が気になるようになり、ジム通いも開始するのです。
史朗は年老いてきた両親が立て続けに病気になり、自分はもちろん周囲の人々の老いにショックを受けてしまいます。
美味しい料理だけでなく、妙に人間味があふれたエピソードが盛り込まれているのも、本作の大きな魅力でしょう。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2010-10-22
弁護士業のかたわら、史朗は健康と節約のために毎日夕飯を作ります。彼の手際のよさとレパートリーの多さは、もはやレシピ本を出せるレベル。スーパーに寄ってその日の特売品や底値の商品をゲットし、季節やテーマに合った料理を短時間で仕上げるのです。
本作の特徴は、料理のコツや工程のほとんどが、彼のセリフで語られていることではないでしょうか。
グルメ本というと、細かい文字で別コマにレシピが書いてあるものも多いですが、本作は彼が料理をするペースに合わせてセリフで説明がされているので、わかりやすい!また単品ではなく、一食分の献立がわかるのも嬉しいですね。
普段の食事はもちろんですが、イベントごとの日にもご注目。賢二の提案で2人で手作りしたブラウニーを、バレンタインの朝に思い出の食器で食べるシーンでは、圧倒的女子力を誇る中年おじさんが甘酸っぱい雰囲気を醸し出しており、必見です!
本巻に登場する主なメニューはこちらです。
- 著者
- よしながふみ
- 出版日
- 2017-09-22
夫の残業代がカットされたため、史朗の法律事務所で事務員として働くことになった山田さん。ほんわかした雰囲気ですが機転が利き、初日に史朗がゲイであることを見抜いた眼力も持ち合わせています。
フルタイムで働きはじめることをきっかけに、夫と育児や家事の分担をすることになったらしく、実は自分よりも夫のほうが健康的で繊細な料理を作れることを目の当たりにし、自信をなくしていました。
なかでも万能ゴマだれが絶品だそうで、何にかけても美味しいとのこと。その言葉に反応した史朗は、さっそくそのレシピをゲットし、夕飯で賢二に披露します。
ゴマだれをたっぷりかけた茹で豚の味は格別で、2人でとても満足の夕ご飯を楽しむのでした。
一方の山田さんも、この万能ゴマだれのおかげで、新しい何かを発見することができたらしく……。
「美味しい」と言いながら食卓を囲むのが大切なことだと、あらためてわかるエピソードです。
本巻に登場する主なメニューはこちらです。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2018-07-23
スーパーで顔を合わせる仲間であり料理の先生のような存在・佳代子から、佃煮をもらった史朗。佃煮は味が濃いので、シンプルにおかゆと合わせて食べることにしました。土鍋に作ったおかゆ、お皿をにちょこんと乗せた佃煮の組み合わせは、なんだかオシャレです。
賢二も鍋を覗き込み、ステキ〜!とテンションを上げている様子。鍋を囲みながらニコニコしている2人の姿は、非常に微笑ましいです。
本巻で注目は、史朗の職場仲間で洋食屋「小山軒」の娘・志乃の話。彼女の夫・周平は「小山軒」で働く一番弟子です。結婚して2年が経過したということもあり、周りからは子供について聞かれることも多くなりました。
店の後継の関係や、周りの声、さまざまなプレッシャーのなかで、志乃は、お店の味がちゃんと受け継がれるのであれば、それを担うのは自分達の子供である必要はないと言い切るのです。そして、続けてこのように言うのでした。
あたしね 子供ができてもうれしいだろうけど
周平さんとずっと二人だけでも すごく幸せなの
どっちでもいいの
(『きのう何食べた?』14巻より引用)
彼女の強さ、そして優しさが感じられる名言。同性愛者の史朗と賢二をはじめ、本作にはさまざまな生き方・そして考え方が出てきます。
志乃達には、これから子供ができるかどうか、まだわかりません。しかし仮にできなかったとしても、そういう生き方もある、と肯定してくれる力強さが本作にはあります。そうした点も、本作の大きな魅力の1つでしょう。
また本巻のラストでは、賢二の勤め先の店長が、妻・玲子から離婚届を突きつけられる、まさかの展開に!これまで浮気をくり返してきたツケが、ついに回ってきたのでした。次巻がますます気になる展開です。
本巻に登場する主なメニューはこちらです。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2019-03-22
15巻で大きく描かれたのは、親と子の気持ちの疎通でした。
年老いた史朗の親は、かつてはゲイである息子のことを受け入れがたく感じていました。孫を持つことは叶わなかったけれども、しかし、とある「次に伝わる」ものがあったというエピソードに、心温まること間違いなしです。
その頃の賢二は、離婚届を突きつけられた勤め先の店長の件でてんやわんや。ショックで逃避行した店長に代わり、雇われ店長になってしまいました……今までにない忙しさと責任感の中、やはり支えてくれたのは史朗のつくる料理だったのです。
連載開始時から10年もの月日が流れる『きのう何食べた?』。緩やかに流れる人間関係から、やはり目が離せません。
実際に再現したくなるようなレシピが数多く紹介されている『きのう何食べた?』。身近な食材で手軽に作れるものばかりなので、興味がある方はぜひお試しあれ。