聞いたことはあるけれど、名前の由来など詳しいことはなかなか知らない「みどりの日」。実は「昭和の日」と深い関係があるんです。今回は、概要や誕生した経緯、名前の由来などをわかりやすく解説していきます。
ゴールデンウィークを構成する休日のひとつである「みどりの日」。2019年現在は5月4日ですが、実は以前は違う日程だったのをご存知でしょうか。
1989年から2006年までは4月29日で、2006年以降5月4日になったのです。ちなみに2019年のゴールデンウイークは、一般的に4月27日の土曜日から5月6日の月曜日までとされ、「みどりの日」は後半にあたります。
「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」日とされています。
2006年まで「みどりの日」とされていた4月29日。その前は「天皇誕生日」という祝日でした。
昭和天皇の誕生日である4月29日が祝日になったのは1948年のこと。その後今上天皇が1989年1月7日に即位されると、「天皇誕生日」は今上天皇の誕生日である12月23日にあらためられます。
その際に、昭和天皇の誕生日である4月29日は祝日として存続されることが決定し、「みどりの日」として制定したのです。
さらに2005年の祝日改正法により、「みどりの日」を2007年から5月4日に移動することが決まります。その代わり4月29日は、昭和天皇への敬意と「激動の日々を経て復興を遂げた昭和への時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日である「昭和の日」となりました。
ちなみに今上天皇は2019年4月30日に生前退位されることとなり、皇太子皇太子徳仁親王が天皇に即位する関係で、現在12月23日に制定されている「天皇誕生日」は2020年以降2月23日に変更される予定になっています。
もともと4月29日が「天皇誕生日」だったことは先述しましたが、ではなぜその日が「みどりの日」と名付けられたのでしょうか。ここには、昭和天皇のもうひとつのお顔が関係しています。
昭和天皇は、生物学者として海洋生物や植物の研究にも力を注がれていました。1925年には変形菌類とヒドロ虫類の分類学的研究も始められます。1928年は皇居内に生物学御研究所も設立されました。戦後は多くの研究成果を発表し、およそ20冊もの生物学御研究所編図書を発表されています。
このように自然をこよなく愛し生物学者として活躍していた昭和天皇のお姿から、「緑」にちなんだ名前として「みどりの日」と名付けられました。
1989年に「天皇誕生日」が4月29日から12月23日に移る際、本来ですと4月29日は平日に戻るはずでした。しかしこの日はゴールデンウィークを構成する祝日となっていたため、「みどりの日」として新たな祝日が生まれたのです。
1901年4月29日にお生まれになった昭和天皇。本の第124代天皇であり、歴代天皇のなかで在位期間が62年ともっとも長い天皇です。
愛とユーモアに溢れた方だったと伝えられいて、それを表すエピソードをいくつかご紹介しましょう。
生物学者としても知られていた昭和天皇は、自然をこよなく愛し、とくに武蔵野の自然を愛していました。1937年、ゴルフ場として整備されていた武蔵野の吹上御苑の使用を停止し、自然に一切手を加えることをやめました。これにより武蔵野には、現在のような森が復元されたといいます。
また「雑草という植物はない」というお言葉も、昭和天皇を表す名言として受け継がれています。
かつての戦争で宮殿が焼失した際も、宮殿の再建よりも国の復興を優先されました。新しい御所が完成したのは1961年のことだったそうです。
- 著者
- 所 功
- 出版日
- 2003-08-01
歴史学の観点から国民の祝日を解き明かした一冊。日本で長年育まれてきた自然や、先祖に感謝する心など、日本の豊かな精神に触れることのできる国民の祝日小事典です。
歴史学者である作者が勤務している京都産業大学でおこなっていた「日本の年中行事」という講義の内容を一冊の本にまとめた『日本の祝祭日』というものがあります。本書はそちらに加筆し、現代仕様にしたものです。だそうです。
国家にちなむ祝日や、人生にともなう祝日に分類されているので、非常にわかりやすいでしょう。また祝日として制定されるまでの経緯や背景を多方面からカバーしているので、まるで物語を読むような感覚で楽しく学ぶことができます。
子どもに祝日の意味を聞かれて困った経験のある方や、今一度祝日についておさらいして見たい人におすすめの一冊です。
- 著者
- 日本テレビ報道局天皇取材班
- 出版日
- 2015-07-29
「NNNきょうの出来事」は1954年から2006年まで52年間にわたり放送されていたニュース番組です。本書はそのテレビ番組が、昭和天皇崩御のスクープを追ったドキュメンタリーを文庫化したもの。吐血のスクープが流れてから昼夜を問わずくり広げられた記者たちの情報戦が、疾走感をもって伝えられています。
「とうとうその日が来たのだろうか。自分たちが生きてきたこの昭和が終わる日が」(『昭和最後の日: テレビ報道は何を伝えたか』より引用)
あまりの現場の混乱ぶりに、クルーの手が震え、ポケベルの暗証番号を何回も打ち間違えるエピソードなども紹介されています。当時の様子がわかる写真も豊富に掲載されており、昭和を知る人は懐かしく、知らない人は新鮮な印象を受けるでしょう。
今回は「みどりの日」の概要や名前の由来、昭和天皇について解説し、あわせておすすめの関連本もご紹介しました。気になる方はぜひ実際に書籍も読んで、日本の祝日について学んでみましょう。