西洋のおじさん騎士が現代に生まれ変わったら、ヘタレの中学生になっていた……フェンシングの選手を志し、かつてのライバルと時代と場所を変えて戦っていきます。ぜひチェックしてみてください。
2017年から「裏サンデー」で連載をしている、武富智の作品です。
中世ヨーロッパの戦場で本物の甲冑をまとい戦っていた騎士が、現代の中学生に生まれ変わった……⁉というとんでもない出来事からはじまり、スポ根とファンタジーがうまく融合しているところが魅力でしょう。
人を殺したことのある騎士は、冴えない中学生に転生し、フェンシングの選手として活躍することができるのでしょうか。
この記事ではそんな『ロマンスの騎士』の魅力と各巻の見どころをご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 武富 智
- 出版日
- 2018-01-19
本作の魅力のひとつとして、フェンシングという競技を本格的に描いている点は欠かせません。
そもそも漫画の作品としてだけでなく、フェンシング自体がマイナーなスポーツです。くわしいルールを知っている人も多くはないのではないでしょうか。本作ではそんなフェンシングについて、初心者にとってもわかりやすく興味をもって読めるような工夫がされています。
使用する剣の種類、突くと得点になる身体の部位、競技をするコートについてなどを、物語の進行上で不自然にならないように随所で解説しています。読者は物語を読みながら自然とルールを把握することができるのです。
またフェンシングにはいくつかの剣の種類があり、登場するキャラクターたちはそれぞれ自分の専門とする剣に強い想いを抱えています。それぞれの剣の持つ意味や、彼らがなぜその種類を志すことにしたのかが語られることで、中世ヨーロッパの騎士たちから脈々と受け継がれている競技の魅力を深く知ることができるでしょう。
突飛な世界観やキャラクターの個性だけでなく、競技自体も本気で描かれているので、これまでフェンシングについてほとんど知らなかった読者のことも、物語にぐいぐいと引き込んでくれます。
本作の主人公は、中学生の木葉野巡(このはじゅん)。何事にも熱意がなく、どんくさくて、まったく魅力的ではありません。物語は、そんな彼が、前世の人格であるおじさん騎士の「ジャック」と同調してから動き出します。
彼は友人に誘われて見に行ったフェンシングの大会で、展示してある剣を手にしたことから、ジャックの人格と統合。現代の記憶を持ちつつも、中身はジャックになってしまいました。それまでおとなしかった性格は一変し、人前でも平気で大声を出すようになります。
同級生から見てもその変化はとんでもないものらしく、一躍学校中の有名人となってしまいました。ベースが中世の騎士でしかもおじさんなので、何事にもまっすぐすぎて現代基準で見るとかなりずれているのです。
また、かつて本物の戦場で殺し合いをしていたジャックにとって、巡の肉体は貧弱そのもの。彼が抱えている情熱についてくることができません。はたから見ると過剰な無理をしているように映り、笑いを誘ってくれるでしょう。 ただ彼の姿勢自体は真剣なので、つい愛おしくもなってしまいます。
さらに注目したいのは、かつてジャックの仇であった人物の生まれ変わりで、現代ではフェンシングのライバルとなる遊佐との関係性です。
遊佐はジャックを殺した張本人で、前世ではスマートな騎士だったのですが、なんと転生したら腑抜けたぽっちゃり系男子になっていました。その衝撃の事実を知った時のジャックの反応も見どころですが、その後愚直に再戦を求め挑戦しようとする彼の姿は読者の胸を熱くさせるでしょう。
ギャグ寄りの描写も交えつつ、男としての強い想いを描いた本作は、紛れもなくスポ根漫画。ぜひお楽しみください。
- 著者
- 武富 智
- 出版日
- 2018-01-19
自身の命を奪った仇と再戦するために、巡としてフェンシングでトップ選手を目指す姿が描かれる1巻です。
かつて西洋の騎士として、本物の戦場で自らの剣を使い、殺し合いをしていたジャック。前世の様子が描かれている場面では、騎士としての誇りを持ち、命を懸けて戦う情熱が感じられます。
また推定20~30キロもある鉄の甲冑を纏いながら、軽やかに、それでいて力強く敵を突いていくジャックの実力の高さもわかるでしょう。
現代に転生し、魔女の力によってその場にいる者全員の前世の姿が見えるようになると、宿敵であるランツクネヒトを探します。そして見つけたのが、もぐもぐとワッフルをほおばっている遊佐……。戦意のかけらも感じられません。
あまりの変わりように戸惑いますが、実は彼、フェンシングのトップ選手でした。ここから、なんとか遊佐と決着をつけようと、ジャックは巡としてフェンシングの腕を磨いていきます。
- 著者
- 武富 智
- 出版日
- 2018-03-19
2巻では、高校に入学した巡がフェンシング部に入部し、本格的に競技を始めることになります。
また、トップ選手だった遊佐がフェンシングを辞めた理由など、過去について掘り下げらるシーンも。ケンという新たな人物も登場し、今後ジャックにとってもキーマンとなることがうかがえるでしょう。
また、どうにも煮え切らない遊佐に対し、ジャックが啖呵を切って熱い思いをぶつける展開も。果たして彼が因縁の相手と戦える日は来るのでしょうか。