世界最古の国として長い歴史を持つ日本。飛鳥時代は、日本が国家としての体制を整えはじめた時代です。概要と主な出来事、聖徳太子について、服装などの文化をわかりやすく解説し、あわせておすすめの関連本もご紹介していきます。
「日本」という言葉が使われたのは、飛鳥時代が最初だといわれています。それ以前は「倭」と呼ばれていました。
古代の人々は主に狩猟で生活をしており、家族単位のコミュニティしかなかったと考えられています。ところが弥生時代に入ると稲作技術が伝来し、土地という概念が生まれました。するとそれを管理するために「社会」という大きなコミュニティができます。
社会の誕生は、争いを生む原因にもなりました。弱者は淘汰され、人々の間に優劣がついてしまうわけです。そこで、より強大な力でその地を治める王が必要となりました。
古墳時代までは豪族たちの王という位置づけでしたが、権力による支配がある程度の効果を挙げたのをきっかけに、王の地位はさらに高みへと引き上げられます。
飛鳥時代はこの王権を巡って、貴族たちの争いが激しくなった時代です。同時に、仏教の伝来など文化面の動きも目立つようになりました。
人間の欲望と貴族たちの思惑が錯綜し、学べば学ぶほど面白い時代だといえるでしょう。
歴史にくわしくない人でも、聖徳太子の名前は聞いたことがあるはずです。古代史に登場する人物のなかでもかなり高い知名度を誇っていますが、なぜ彼の存在はこれほどまでに受け継がれてきたのでしょうか。
それは、聖徳太子がおこなった政治が、画期的なものだったからです。
彼は日本初の女帝である推古天皇の下で、政治に参画します。まず特筆すべきは、603年に「冠位十二階」を定めた点でしょう。それまで氏姓制度で進められていた政治ですが、聖徳太子は能力のある人がより活躍できるように、役人のレベルを「色」と「濃さ」で12段階に分けました。
出世欲を高め、ひとりひとりがよい仕事をするようにした実力主義の導入で、このシステムは現代にも通ずるところがあります。
また翌604年には、「憲法十七条」を制定します。憲法と名がついていますが、国民に強いた法というよりは役人たちの心得を説いたものと捉えるとよいでしょう。
聖徳太子がここで述べた「和の精神」は、今の日本があらゆる宗教に対して寛大である精神にも繋がっています。日本史上で初めて明確な社会のルールや理念を作りあげたのが彼の政治だったのです。
いつの世も、時代の最先端をいくのはやはり政治を動かしている「中央」。そこで定着した文化が徐々に庶民に伝わっていく流れになります。
飛鳥時代は、彼ら国民間の差が大きく生じ始めた時代だといえるでしょう。
まず服装ですが、身分によってかなりの違いが見受けられます。庶民は弥生時代からあまり変わりのない天然素材のもので、男女においてもそれほど差異はありません。
一方で貴族たちの服装は豪華で、派手な色の布が導入され、男性はズボン、女性はスカートというような個性の違いもこの時代から始まったと考えられています。また男性は、冠を被るのに適した「髻(もとどり)」という髪型をする人が多かったようです。
食事について、庶民は日々生きていくために、稲作や狩猟に忙しくしていました。おかずも味噌やきゅうりなどの粗食。一方で貴族は、鯛やアワビ、チーズのようなものも食べていたそうです。
庶民が働いている間に、貴族は蹴鞠や小弓などで遊び、「娯楽」という概念が生まれたのも飛鳥時代だといわれています。
- 著者
- 吉川 真司
- 出版日
- 2011-04-21
現存する史料の数が少なく、まだまだ謎に包まれていることも多い飛鳥時代。しかし国家というものが形成され、権力争いなどの人間ドラマがあったことも事実です。
歴史を辿る作業のうえで大切なのは、定説と仮説のバランスの取り方ではないでしょうか。仮説をたてるにしても説得力が必要ですし、それぞれの人物の行動に矛盾があってもいけません。
本書は残されている史料をもとに、各出来事を詳細に分析しています。また文章は簡潔で読みやすく、文献としても読み物としても楽しむことのできる一冊です。
- 著者
- あおむら 純
- 出版日
- 1998-02-01
多くの人を歴史好きにさせた大人気シリーズ。漫画による親しみやすいキャラクターが当時を語ってくれるので、遠い昔の出来事も現実味をもって学ぶことができるでしょう。
子供にとっては「勉強」という意識を取り除き、想像力をもって読むことができるはずです。
また漫画だからといって情報量が少ないわけではなく、資料として役立つカテゴリも設けられているので、実用性とエンターテイメント性を兼ね備えた一冊になっています。
- 著者
- 田中 英道
- 出版日
- 2017-07-02
さまざまな伝説や逸話が残されている聖徳太子。学者の間でも意見が分かれていて、その存在自体を否定する人もいれば、歴史の根底を覆しかねない説を唱える人もいます。
本書では、なるべく論理的に聖徳太子の存在を証明することに挑戦。また彼がおおなった功績をひとつひとつ丁寧に掘り下げ、何が画期的だったのか解説しているのです。
聖徳太子は国家を形成するためのルールを定め、さらに泥沼の権力争いの中で人の心が乱れないよう、「和の精神」も広めました。理想と現実のバランスは、どちらかに傾きすぎると社会が崩壊してしまいます。実例が少ないなかで、双方を定めることが大切だと知っていたその感性は、天才的だったといえるでしょう。
そんな彼の魅力やカリスマ性を、史実にもとづいて堪能できる一冊です。
私たち人間は、長い命のバトンを受け継いで存在しています。その始まりやルーツを知ることは、時に自分が何者かというのを見失わないための材料になるかもしれません。飛鳥時代を知ることは、時代を超えて自分のあり方を考えるきっかけになるでしょう。