BURNOUT SYNDROMES熊谷和海が選んだ「鳥」がテーマの3冊

3月のワンマンライブツアー「孔雀〜いざ真剣勝負〜」が無事終わりました。我々にとっても初めての演出やライブ構成で、大変楽しかった。参加して頂いた方々、ありがとうございました。危惧していた風邪・インフルエンザにも運良く罹ることもありませんでした。

ホッとするのも束の間、すぐに来年のツアー日程が発表されました。来年も3月ですって。

今回分かったのですが3月はインフルエンザ・季節の変わり目・花粉という体調崩しの三重苦。来年もこのタイミングか、と戦々恐々であります。しかし決まっているものは仕方ない。早速体力作りに励もうかと思います。今年は忘れてて冷や汗をかいた、インフルエンザの予防接種も必須。来年は誰か俺に「受診しろ」と言ってくれ……。

何はともあれツアー完走を祝して、アルバム&ツアータイトル「孔雀」から、今回は「鳥」をテーマに3冊ご紹介したいと思います。未知なる世界へアナタを連れて行く名作揃いです。

かもめのジョナサン

著者
リチャード バック
出版日
2015-06-26
その他のどんなことよりも、彼は飛ぶことが好きだった

重要なのは食べることではなくて、飛ぶこと。いかに早く飛ぶかということ――飛行の歓びを味わうために、光り輝く蒼穹の果てまで飛んでいく一羽のかもめ・ジョナサン。

生活の中で最も重要なことは、自分が一番やって見たいことを追求し、その完成の域に達することだ

てらいなき名文が競争社会に疲れた我々の胸を打つ。人生のバイブルとなり得る現代寓話。

好みの話です。

これは好みの話ですが、僕は邦書より洋書の方が好きです。音楽の歌詞などにおいてもそうです。理由は、メッセージが明確であるからです。

それは日本語と英語の違いに起因しています。日本語はその響き、フォントの美しさゆえ無駄な比喩、遠回しな表現が賞賛される傾向にあります。しかし英語はそこに価値を見出さず、いかに純粋に伝えたいことを伝えられるか、いかにそれで受け手の人生観を変えるか、に重きを置いているためです。

“われらすべての心に棲む かもめのジョナサンに”という前書きから始まるこの小説も、婉曲表現は「向上心=ジョナサン」という比喩のみであり、それ以降は全てストレートなメッセージ。そのどれもが読者の背を押すエネルギーに満ちています。

小説って小難しくてキラーイ、というアナタ、それは邦書のネガティブな側面から来る苦手意識かもしれません。『かもめのジョナサン』はその暗いイメージを薙ぎ払う明朗快活な傑作です。

火の鳥

著者
手塚 治虫
出版日
人間は何万年もあした生きるためにきょうを生きてきた

人知を超えた超生命体・火の鳥。それは炎を纏った鳥の姿をしており、百年に一度自らを火で焼き再生する。人語を解し、未来を見通す。またその生き血を飲めば永遠の命を得られる。古代から超未来まで、人々はいつの時代も火の鳥の血を求め、憂い、悩み、戦い、残酷な運命に翻弄され続ける。「黎明編」から「ギリシャ・ローマ編」までの全13巻。

この作品を読んだ後はいつも心洗われた様な爽快感に包まれます。誰しも心の奥に抱えている疑問――なぜ苦しみながらも生きねばならぬのか、その問いに漠然ながら一つの答えをくれる気がするからです。

自分の前には連綿と続いてきた生命の繋がりがあり、それを後ろへ繋いで行く。その営み自体が奇跡。意味を見出すまでもなく、生きるということは美しい。そんな魂のメッセージが籠った一大スペクタクルがここにあります。

この『火の鳥』は手塚治虫の長い活動歴の初期から晩年まで手がけられており、本人によりライフワークと位置付けられた作品。手塚本人が死亡した瞬間を「現代編」とし、死の間際に一コマ書くことを公言していた程(実際に手塚治虫は死の間際に何か描こうとするも、それは叶わなかった)。壮大であることも頷けます。

漫画の神様が生涯をかけて世に遺した大傑作。受け取り方は人それぞれでも、これを読めば生まれ変わった心持ちで今日を始められるハズ。

角刈りすずめ

著者
KICHIJO
出版日
2010-11-17
え…ここで麻雀するの?

麻雀一筋の男「角刈り」。自分の死に場所に相応しい一局を求め雀荘を彷徨うが、なぜか入る店はことごとく変則ルールを嗜むクセの強い店ばかり。一局どころか配牌もままならぬトリッキーな麻雀の数々に角刈りは今日も叫ぶ。「麻雀させろよ!!」。ハードボイルドと思いきや爆笑必至の麻雀ギャグ漫画。

麻雀はルール知らないし……と敬遠するなかれ。まずは当作の見所である「奇想天外なルール集」をご覧頂きたい。

  • 一個100kgの超巨大牌を運ぶ体力勝負の「デカ牌麻雀」
  • スカイダイビング中に対局する「大空麻雀」
  • 牌が球で出来ている「丸麻雀」
  • 廃車を牌にして遊ぶ「牌車麻雀」
  • 釣った魚の種類を牌として扱う「漁船麻雀」

詳しい内容はぜひ読んで笑ってほしいのですが、これらは最早麻雀でも何でも無いので、細かいルールを知らずとも楽しめます。ここが素晴らしい。巻数も全2巻と集めやすい。

「角刈りすずめ」が連載されていた「近代麻雀コミックス」は、名作揃いとして漫画界では有名。たとえば「アカギ」「ムダヅモ無き改革」「むこうぶち」「哭きの竜」「咲」「兎」などなど。多くの作品が麻雀漫画ながらメディアミックスしており、ご存知のタイトルもあるのではないでしょうか。

このように「麻雀」は、一寸かじるだけで楽しめる作品の幅が一気に広がる、非常に漫画と相性がいい競技。万人が楽しめる当作は「麻雀」と「漫画」の橋渡しになる名作です。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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