仮想19世紀のヨーロッパを舞台にくり広げられる「エクソシスト」と「AKUMA」の戦いを描いた『D.Gray-man(ディーグレイマン)』。ダークファンタジーの傑作ともいえる本作の世界観を支えているのが、さまざまな覚悟を抱いた登場人物たちです。 この記事では、彼らの魅力に迫りながら作品の見どころをお伝えしていきます。
2004年から「週刊少年ジャンプ」で連載を始めた本作。作者は星野桂です。
幾度の休載や掲載誌の移動をはさみながらも、ファンの人気は衰えず、累計発行部数2000万部を超えているという超人気作になっています。読者の心をつかんで離さないのが、ダークファンタジーな世界観もさることながら、魅力あふれるキャラクターたち。
そこで今回は、本作を知るうえで絶対に抑えておきたい登場人物の魅力をご紹介していきましょう。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
仮想19世紀末のヨーロッパが主な舞台ですが、ストーリーが進むごとに日本、そして世界へと物語は広がっていきます。
親しい者を亡くし悲嘆にくれる者に差し伸べられる、救いの手。それは、亡くなった者を生き返らせるという甘い誘惑です。救い主は自らを「千年伯爵」と名乗る、滑稽な姿をした道化者で、見るからに怪しい姿をしているにもかかわらず人々は彼の手をとってしまいます。
そして生まれるのが「AKUMA(アクマ)」と呼ばれる、悪性兵器。機械、悲劇、魂を材料に作られています。千年伯爵は、彼らを使って世界を破滅させることを目論んでいるのです。
アクマと聞くと、地獄にいて魂と引き換えに召喚に応じるあの悪魔を連想しますが、「ディーグレイマン」のAKUMAは趣がまったく異なります。悲嘆にくれた者に呼び出された魂は、プラモデルのような魔導式ボディに取り込まれ拘束。そして呼び出した者をその場で殺してしまい、その皮をかぶるのです。人間に擬態したAKUMAを見分けることは不可能で、それゆえに知らぬ間に彼らに殺されてしまうのです。
こうして1度魂が取り込まれてしまうと、千年伯爵には絶対服従、己の意思とは関係なく人間を殺し続ける殺戮兵器となってしまいます。しかもRPGのようにどんどんレベルが上がり、媒体にされた魂とは関係なく自我が芽生えはじめ、戦闘力も急上昇してしまうとんでもない兵器なのです。
ただし唯一の弱点があります。それがイノセンスというもので、「神の結晶」とも呼ばれる謎だらけの物質です。イノセンスの秘密はまだ作中では明らかにされていませんが、少なくともこの世の物質ではないことだけは確かで、千年伯爵となにか因縁めいたものがあることだけがわかっています。
イノセンスは物質なので、操る者が必要です。「エクソシスト」と呼ばれる彼らは、イノセンスに選ばれた適合者であり、この世界で唯一AKUMAを破壊し対抗できる存在。イノセンスは彼らにあわせてその形状をかえ、対AKUMAの武器となるのです。
世界滅亡を望む千年伯爵と、それを阻止せんとするエクソシストの人類存亡をかけた戦いがくり広げられます。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
- 2006-11-02
本作の主人公で、エクソシストのひとりです。
孤児だった彼を拾い、育ててくれたマナという恩人を亡くし、現れた千年伯爵によってマナの魂をAKUMAへ変えてしまった過去を持っています。変貌したマナに傷つけられた左目には、「逆さペンタクル」が現れ、AKUMAに内蔵された魂を見ることができるようになりました。
ちなみにエクソシストのなかでもAKUMAの魂を見られるのはアレンのみです。
それゆえにでしょうか、彼は作中でただひとり、AKUMAのためにも力を振るいます。人類を守ることはもちろんですが、AKUMAに内蔵された魂の救済も彼にとっては重要なテーマ。「神の結晶」であるイノセンスもその思いに答え、より使いやすくより強く進化していきます。当初は左腕に変化が現れるだけだったのものが、剣や道化のようなマントと仮面に変わり、技の幅も広がりました。
この道化のような姿や剣は、千年伯爵と深い関係がありそうなのでお見逃しなく。
そして彼はもうひとつ、エクソシストとしては重く厳しい事実を背負っています。それは、「14番目」という存在。
千年伯爵には「ノアの一族」という仲間が何人かいるのですが、そのうちのひとりであり千年伯爵を裏切った者の魂「メモリー」が、アレンの中に存在しているというのです。そしていずれは4番目に浸食され「アレン」としての自我を失うとのこと。
AKUMAのためにも戦うためもともと反感を持たれていたところに、敵勢力そのものを自分の身に宿すという二重苦を背負った彼は、ともに戦ってきた仲間たちのもとを去り、ひとりで決着をつける覚悟を決めるのでした。
国籍、年齢などは一切不明。身長220cm、体重85kgの大巨漢です。とても人間とは思えない見た目をしていて、顎と口が非常に細長く、いかつい歯がむき出しになっており、なぜ誰も怪しまずに彼の手をとってしまうのかと疑いたくなる姿です。
千年伯爵の名前が示すとおり、7000年以上前から存在しているといわれ、いつの時代でも彼の目標は世界終焉。
AKUMAのほかにもうひとつ力を持っていて、アレンの剣とよく似た、というよりも色が違うだけの剣を持っているのです。江戸の町を一瞬で消滅させることができるほどの強力なもので、アレンの剣との関係は謎に包まれたままですが、重要な伏線になっていることは間違いないでしょう。
アレンの魂を浸食しつつある14番目については、自分を裏切ったことを憎んでいる言動があるものの、彼のそばにいたいと涙する場面もあり、どういった関係だったのか非常に気になります。
解明のカギとなりそうなのが、7000年の間に1度だけ、千年伯爵が消えたという歴史です。作中では彼の服とトレードマークのシルクハットが野原に残されており、その下からは2人の赤ん坊が出てきました。この赤ん坊の名前がマナとネア。アレンを拾って育てたマナと同じ名前なのです。
また千年伯爵は実在した人物をモデルにしているとのことで、それが誰なのかつきとめることも謎を解明するヒントになりそうです。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
- 2011-06-03
本作のヒロイン。エクソシスト兼「黒の教団」室長の助手をしています。
黒の教団というのは、ヴァチカンが創設した対AKUMA軍事機関です。エクソシストはみんなこの教団に所属します。室長はコムイ・リーで、リナリーの兄です。
リナリーは、普段は穏やかな性格ですが自己犠牲の精神を異様に嫌っており、仲間がそのような行動をとることに対して激しい怒りと悲しみをのぞかせます。
両親がAKUMAに殺されたうえに、幼いころに適合者であることが判明し強制的に黒の教団へ入団させられた過去をもっていて、監禁同然の生活を続けるなかで精神的にも肉体的にも限界を迎えていました。
そこへ唯一の家族であるコムイが現れ、リナリーのために教団へ入団してきたのです。リナリーは兄のためにもエクソシストになる決意を固め、戦力になるよう成長をとげます。
彼女の戦う理由はただひとつで、家族を守ること。家族とは兄コムイだけではなく、ともに戦うエクソシストたちであり、教団にいるすべての人々を指します。彼らを守ることができるのなら、命が燃え尽きることも、進化するイノセンスに適合するため命を懸けることもいとわない、芯の強さをもつ女の子です。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
- 2008-03-04
AKUMA化してしまったマナを破壊し、放心状態に陥っていたアレンを救ったのが、クロス・マリアンです。以後アレンの師匠となり、エクソシストとしての戦い方を教えていきます。
教団内では元帥というトップクラスの地位にありながら、変人かつ極悪人。世界中に愛人や友人がいて、しょっちゅうお金を借りています。しかもその借金を、弟子であるアレンや、敵にまで押し付けるという鬼畜っぷりです。
ただ凄まじい戦闘力を有していて、本来の対AKUMA武器に加え、エクソシストの女性の遺体を禁術で操り、音波のような攻撃で敵の肉体を操作する術を使います。
千年伯爵や14番目とも顔見知りのようで、アレンの師匠という立場でありながら謎の多い人物。教団側の人間でありながら、誰よりも世界の真相を知っていそうな雰囲気を持っています。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
- 2010-06-04
アレンのライバル的立ち位置にる、美形キャラクターです。クールに見えますが短気でキレやすい性格。他人との接触を嫌い、単独行動を好む一匹狼です。
異常なまでの肉体回復力と身体能力があり、さらに他の誰にもない特殊能力としてAKUMAの血のウイルスに対する耐性をもっています。AKUMAの血は1度体内に入ると除去することはできず、死が確定しますが、彼には効きません。ウイルスを含め大きなダメージを肉体に負ったとしても、胸に描かれた呪符の効力により回復することができるのです。
この能力を得たのは、第二(セカンド)エクソシスト計画の被験体となった時。もうひとりの被験体だったアルマとは、最良の友として辛い実験生活を乗り切りますが、後にアルマが暴走。神田は彼を破壊し、その事実は後々まで彼の心に重くのしかかることとなります。
- 著者
- 星野 桂
- 出版日
- 2005-05-02
「ブックマン」という、世界の裏側の歴史を記録する役目を担う一族がいます。AKUMAの存在やエクソシストの戦いは、表の歴史では語られない裏歴史。ラビはそれらを記録するために派遣されました。
右目が黒い眼帯におおわれていて、どうやらこの右目がブックマンになることを決定づけたらしいのですが、詳細は不明です。
記録のために組織や人と関わりますが、長居はせず一時的な付き合いとなることから、ドライかつシビアな思考をもっています。
教団に居座ったのも、AKUMAとエクソシストの戦いを記録するため。ただこれまでの記録の旅とは異なり、教団生活は何年にもわたって続き、エクソシストとしても頼られる存在となりました。そのため、ブックマンであることと、ラビであることに乖離のような違和感を覚えはじめます。
記録者でありながら深入りしすぎている危うさがラビの魅力を高めています。
「ディーグレイマン」の世界はかなり奥深く、千年伯爵の過去やアレンと14番目の関係、イノセンスの正体など謎がまだまだたくさんあります。鍵を握るであろう人物たちをご紹介しましたが謎は深まるばかり……。これを推理していくのも本作の魅力のひとりかもしれませんね。