漫画『もしもし、てるみです。』の見所ネタバレ紹介!「ズボラ飯」作者の新作

更新:2021.11.13

高度情報化社会に警鐘を鳴らし、あえて昔からの古めかしいスタイルをつらぬく。電話1つで社会が見える……!? そんな社会風刺的な側面も持った『もしもし、てるみです。』。とはいえ、まったく難しい内容の漫画ではありません。現実と似ているようで、ちょっと違う世界を覗いてみてはいかがでしょうか?

ブックカルテ リンク

漫画『もしもし、てるみです。』の見所をネタバレ紹介!「ズボラ飯」作者の新作が現代人の疲れに効く!

著者
出版日
2017-10-12

高性能携帯電話「ミライフォン」が普及して、人々はもっぱらネットでつながり、実際の人間関係が希薄になった時代。これはそんな時流にさからって、あえて通話機能しかない「もしメカ」を販売する「もしもし堂」にあつまる人々を中心とした物語です。

劇中の社会設定は現実世界そっくり。『もしもし、てるみです。』はなにげないやりとりの中に、現代人が忘れたあたたかみや、チクリと現実への警鐘を鳴らすショートコメディとなっています。

とっつきにくい内容かというとそんなことはまるでなくて、いい意味でくだらない脱力系ギャグがメイン。場合によってオチすらない独特な世界観をえがくのは、単身赴任の夫を待ちつつ気ままに暮らす主婦を描いた『花のズボラ飯』の作画を担当していた水沢悦子です。

本作は「ビッグコミックスピリッツ」誌上で2016年3月から連載され、2018年2月に惜しまれながら完結しました。それと同時にアニメ化がサプライズ発表され、終了してからますます注目されている作品です。

漫画『もしもし、てるみです。』の優しいけどスパイスの効いた世界観【あらすじ】

漫画『もしもし、てるみです。』の優しいけどスパイスの効いた世界観【あらすじ】
出店:『もしもし、てるみです。』1巻

社会にミライフォンが普及して、世の中はとても便利になり、人はいつでもどこからでもネット上でつながるようになっていました。

そんな流れに逆らって通話機能のみをつらぬく携帯電話会社「もしもし堂」で働くネット嫌いなてるみさんと、客として訪れる鈴太郎らとのちょっとおかしなショートストーリーです。

やさしい雰囲気のなかに隠された毒にハマる!

やさしい雰囲気のなかに隠された毒にハマる!
出店:『もしもし、てるみです。』1巻

『もしもし、てるみです。』でまず目につくのは、その愛らしい絵柄でしょう。全編淡い色調のフルカラーで、まるで絵本のようでもあります。登場キャラはみんなかわいらしく描かれていて、特に女の子はとてもキュートです。1話完結のショートショート形式の話も、話題の中心が毎回ほのぼのとしていて、非常に読みやすいです。

しかし、それに終始しないのが本作の本作たる理由。

主な登場人物であるてるみは大のネット嫌いの女性です。そのためネット関連の話題に敏感で、非常にきびしい言動をします。またそれがいちいち正論であるため、ネットやスマホに依存する現代人には耳が痛いところではありますが、前述した愛らしい絵柄がオブラートになって素直に受け入れることができます。

一般ウケする可愛らしいキャラと、相対するような毒気がこの漫画の魅力ともなっているのです。

かわいい画風なのに、エロい!?

かわいい画風なのに、エロい!?
出店:『もしもし、てるみです。』1巻

キャッチーさで包んだネット風刺が『もしもし、てるみです。』のすべてかというと、そんなことはありません。ちょっとしたお色気要素も魅力のひとつです。

主人公の1人である鈴太郎はお盛んな年ごろの中学生。憧れのてるみとの嬉し恥ずかしな関係を妄想することもしばしばあります。鈴太郎の学校の教師もなかなか妄想力たくましい中年で、学生が持つスマホ批判の間に具体的な妄想イメージがしょっちゅう入ります。

さらに、もしもし堂カスタマーサービスのお姉さんたちもそっち方面の話題が多いです。

より過激なのは女子学生による、拡散のための過激(に見える)写真でしょうか。性的なことはないのにやたらと扇情的で、見る者をドキドキさせてきます。そのうちの1人は自撮りにはまっていて、こちらは若年層がポルノ被害にあっている現実の風刺にもなっていそうです。

このように、『もしもし、てるみです。』にはちょっぴりエッチなところも魅力的。こちらも可愛らしい雰囲気とのギャップで引き込んできます。

余談ですが『花のズボラ飯』のころから絵柄がそっくりと話題になった、うさくんという成人向け漫画家がいます。直球の成年漫画以外に箸休め的ギャグ漫画も手がけているのですが、そちらは今作の作風にそっくり。

あまりにもよく似ているので水沢悦子とうさくんの間になんらかの関係が疑われていますが、はたして本当のところはどうなのでしょうか……。

『もしもし、てるみです。』には、現代人が学ぶべき名言がたくさん!

『もしもし、てるみです。』には、現代人が学ぶべき名言がたくさん!
出店:『もしもし、てるみです。』1巻

『もしもし、てるみです。』は絆の物語であり、実社会における人と人のつながりをテーマにした作品でもあります。

たとえばスマホからもしメカに乗りかえたばかりの鈴太郎が、てるみの見ていたレストランのチラシに反応した場面。SNSからの伝聞で、鈴太郎がそこは評判が悪いと告げるのですが……。

「ネットの情報を鵜呑みにしたね?」
(『もしもし、てるみです。』1巻より引用)

と、おっとりマイペースなてるみが急変します。SNS疲れでスマホに嫌気がさしていたはずの鈴太郎が、まだあやふやな情報にどっぷり浸かっていることに釘を刺すのです。こういった経験、あなたもありませんか? 自分で経験したことのない、不たしかな情報に左右されてませんか?

「怖い人は上手に近づいてくるからね。
いつの間にか取り返しのつかないところまで入りこんで……
大切なものを奪っていったりするから……気をつけるんだよ」
(『もしもし、てるみです。』1巻より引用)

ネットは便利で、どんな世代のどんな人ともつながれますが、何も考えずにつきあうと手ひどい目にあうこともあります。このようにてるみは、ふとした瞬間に考えさせられることをいうのです。

「人を信頼できなくなるっていうのは……怖いね、鈴太郎」
(『もしもし、てるみです。』1巻より引用)

人とのつながりが希薄になった現代だからこそ、ズシンとくるひとことです。

『もしもし、てるみです。』【1巻ネタバレ注意】

著者
出版日
2017-10-12

 

いつもつながりが求められるSNSに疲れた少年・鈴太郎はもしもし堂のレトロ風携帯「もしメカ6号」を買いもとめます。彼にとってはその新しい携帯電話より、もしもし堂の販売員てるみとおちかづきになるのが目当てでもありました。

「トモッター」や「ニャイン」と異なり、事前情報を知ることができないので、お互いの現状をすりあわせなければいけない、新しい人間関係です。

一方、ミライフォンを使い続ける鈴太郎の同級生とのつきあいも当然続いていて、不便なもしメカユーザーではない視点も彼らから語られます。もしメカを商品としてあつかう、もしもし堂の中の人ことカスタマーセンターの担当員にもさまざまな思いや相談が送られてきます。

こうして鈴太郎やてるみの当たり前の日常が今日も続いていくのです。あなたは様々な人の言葉から、何を感じ取るでしょうか?

 

いかがでしたか? 物語を通してネットから遠ざかることで、初めてわかることもあるのではないでしょうか。ネットとのつながりを考えるためにも、ぜひ一度読んでみてください!

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る