世界三大珍獣、森の貴婦人、森の馬……さまざまな呼び名を持つオカピ。ロバのような体にシマウマのような模様の足をもち、見るからに不思議な動物です。この記事では、そんな彼らの生態や鳴き声、珍獣といわれる理由、日本国内で会える動物園などを解説。最後にはおすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
茶色い身体に、足の部分だけ縞模様のあるオカピ。発見された当初はシマウマの仲間だと考えられていましたが、偶蹄目(ぐうていもく)キリン科オカピ属に分類される、キリンの仲間です。
体長は2~2.5mほど、体重は200~250kg、首はキリンほど長くはなく、体形的には馬やロバに似ています。
キリンと同じように蹄が2つに分かれているのが特徴。また頭部には皮膚に覆われた角が2本あり、舌が約40cmと長いこともキリンと同じです。
寿命は、野生で20~25年、飼育下でも30年ほどといわれています。「よこはま動物園ズーラシア」で飼育下の繁殖に成功していて、妊娠期間は450日前後と人間よりも長く、1度の出産で1頭を産むのが一般的です。
野生のオカピは2018年現在、コンゴ民主共和国にしか生息していません。
世界中合わせても1万頭しかいないといわれているオカピ。野生での絶滅の危険性が高いものとして「絶滅危惧種」に指定され、保護活動が進められています。しかしその美しい毛皮や、肉を狙った密猟があるのも事実のようです。
先に発見されたためキリンの方が有名ですが、キリンの祖先がオカピ。1000万年前からいまの姿を変えずに生きてきたと考えられていて、「生きた化石」と呼ばれるゆえんでしょう。
「世界三大珍獣」のひとつともいわれていて、その理由として生息地が限定されていること、個体数が非常に少なく絶滅危惧種であることがあげられます。また足だけに縞模様があることや、ほとんどの動物と異なり染色体の数が奇数の個体がいることも報告されていて、まさに「珍獣」なのです。
ちなみにオカピ以外の世界三大珍獣は、コビトカバとジャイアントパンダです。野生のコビトカバは2000~3000頭の生存が報告されています。またジャイアントパンダは1800頭あまりの生存が確認されているようです。
当初オカピは鳴かない動物だと考えられていました。しかしアメリカの調査によって、人には聞き取れない低周波音で会話をしていることがわかっています。
よこはま動物園ズーラシアでも、視覚的に低周波音を測定する装置を使って、音の測定実験をしたところ、低周波音を発していることが確認されました。
ちなみにオカピの仲間であるキリンも滅多に鳴くことはありませんが、牛のような声をあげることがあります。
恩賜上野動物園
上野動物園では、世界三大珍獣すべてに会うことが可能です。オカピはキリンの隣に展示されているので、見比べてみてはいかがでしょうか。
よこはま動物園ズーラシア
日本で初めてオカピを飼育した動物園。親子3頭に会うことができます。
横浜市立金沢動物園
日本最年長のオカピに会うことができます。ゆったりとした鑑賞を楽しみたいならここでしょう。
日本国内でオカピに会える動物園は、3ヶ所のみです。首都圏に行く際はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
1901年、アフリカのジャングルの奥地から姿を現したオカピ。それから100年以上が経過した現在でも、彼らについて多くのことが謎のままです。
そんななか、よこはま動物園ズーラシアは日本国内で唯一、飼育下での繁殖に成功しました。飼育員を8年間担当した作者が、写真を交えながら生態を丁寧に解説していきます。
- 著者
- 石和田 研二
- 出版日
- 2007-06-01
著者の石和田研二は、日本で初めてオカピの飼育を担当した人物です。シマウマのような足の模様に、ロバのような大きな耳、そしてサラブレッドのような美しい毛並み……謎に包まれた愛すべきオカピをあふれんばかりの愛情で包んでいたことが伝わってくるでしょう。
前半では、彼らの生態、歴史や進化、野生での様子などが詳しく解説されています。後半は数多くの写真とともにオカピの飼育日記が公開されており、そのなかで出産の様子も触れられているのです。
飼育員の目線で描かれた愛情たっぷりの一冊。動物好きの方はぜひ読んでみてください。
著者の成島悦雄は、動物に関する多くの作品を発表している人物。東京農工大学の獣医学科を卒業し、上野動物園の獣医、井の頭自然文化園の園長、日本獣医生命科学大学で教鞭もとっている動物のエキスパートだといえるでしょう。
イラストを担当した北村直子は、都内の動物園のポスターや動物関係の絵本を多く手掛けており、成島とは何度も一緒に仕事をしています。
- 著者
- 成島 悦雄
- 出版日
- 2014-11-01
本書は「図鑑」とあるように、動物のイラストに解説を付ける形でその生態をわかりやすく説明しています。
紹介される動物のなかには、ゾウやウサギなどの馴染み深いものに加え、なんとヒトまで。しかし地球上には我々ヒトも含めて5000種以上の哺乳類がいるといわれていて、それぞれ生き残るために独自の進化を遂げているので、「珍獣」とされるのも納得かもしれません。
繊細で美しい命の仕組みを、成島のユーモアたっぷりの切り口と北原のかわいらしいイラストで描いており、子供から大人まで楽しむことができるでしょう。