お腹の上で貝を割る姿が何とも愛らしいラッコ。実は絶滅危惧種に指定されていて、日本で見られる水族館は減ってしまっています。今回はそんな彼らの生態や、水に浮くワケ、食べ物や性格などを解説していきます。またあわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
食肉目・イタチ科・カワウソ亜科・ラッコ属に分類されています。イタチが水中に適応した進化を遂げた姿がカワウソで、そのなかでも海洋に進出したのがラッコだと考えられています。
漢字で書くと「海獺」で、「獺」は「カワウソ」と読むこと、英語名ではカワウソを意味する「otter」を使い「Sea otter」と呼ばれることからもわかるでしょう。
体長は55~130cm、体重は21~28kg、尾の長さは13~33cmです。生息地は、北太平洋の沿岸から10km圏内に限られています。水温が4~10度ほどの寒さの厳しい海に生息しており、寿命は10~20年程度です。
手には体毛がないですが、それ以外の部分の体毛密度が哺乳類のなかでも特に多いのが特徴です。1個体あたりおよそ8億本も生えています。ちなみに人間の一般的な頭髪の本数は10万本といわれているので、いかに濃密かがわかるでしょう。
水の上で動き回っても沈まないラッコ。その理由も、ずばり体毛にあります。
彼らは海水温が低いところに生息しているため、体温が奪われるのを防ぐ目的もありますが、体毛がぎっしりと生えていることで、毛と毛の間に空気が入り込む層ができています。つまり全身に浮袋をつけているようなもので、浮くのは当然なのです。
また彼らの生活は、主に「寝る」「食べる」「毛づくろいをする」の3つで構成されています。水に浮くためには「毛づくろい」が非常に重要で、汚れを落として清潔に保つことで空気が毛の間に入りこむのです。そのためラッコはキレイ好きともいわれています。
一日中海の上で生活をしているラッコ。食べ物ももちろん海のものを食べます。
主食はカニ、エビ、アワビ、二枚貝、ウニ、イカ、海藻、魚……まるで寿司屋のお品書きのようなグルメっぷりですね。
実はラッコは、イルカやアザラシなどほかの海に住む哺乳類に比べて泳ぎが得意ではないため、動きの速い魚などを捕えるのは苦手です。そのためあまり動かないカニやエビ、貝類などの甲殻類を主食としています。
また彼らは大食漢としても有名で、自分の体重の15%ほどの重さを1日に食べるといわれています。20kgであれば1日に3kg。人間にたとえると、60kgの人が1日に9kgもの食事をとることになるのです。
眠る時は、食料でもあるワカメなどの海藻を体に巻き付けることがあります。これは潮で流されるのを防ぐためです。またワカメが多く生えている地域は、ラッコが好む甲殻類や貝類も多く生息しているので、住処として好まれています。
石などの道具を使ってエサを食べることからも、とても賢いといわれているラッコ。動物園の飼育員とアイコンタクトをとることもあるそうです。
こだわりが強いことでも知られていて、お気に入りの石を見つけると、それを決まった場所に隠したり、体についているポケットに入れて持ったりもします。
また主食は甲殻類、貝類、魚類など幅広く30種類以上あるものの、個体によって好き嫌いがはっきりしています。好きなものばかり食べる傾向があり、偏食家な一面があるようです。
日本動物園水族館協会によると、2021年現在、日本で飼育しているラッコは5頭です。はじめてやってきたのは1982年で、1994年のピーク時には120頭以上いましたが、大きく数を減らしてしまいました。
実はラッコは絶滅危惧種に指定されています。毛皮を目的とした乱獲や、オイルタンカー事故などで海水が汚れたこと、生態系が変化してシャチから狙われるようになったことなどが理由としてあげられるでしょう。
そのため輸入が厳しく制限され、日本の水族館でも減少の一途をたどっているのです。
- 著者
- 文・井上こみち
- 出版日
- 2013-07-20
福岡県にある「マリンワールド海の中道」で生まれた「マナちゃん」の、誕生から1歳までの成長を綴ったノンフィクションです。 作者の井上こみちは埼玉県生まれの作家で、人と動物のつながりを描いた作品を多く手掛けており、日本動物児童文学賞など多数の賞を受賞しています。
「マナちゃん」は生後間もなく、母親からの授乳ができなくなってしまいます。このままでは死んでしまうと、飼育員たちは生後10日目から人口授乳をすることを決断しました。
母親代わりとなった16人の飼育員たち の苦悩と奮闘の日々がはじまります。ラッコは愛情深く赤ちゃんを育てる動物だそうで、母親から引き離す時の胸の痛みもありありと伝わってくるでしょう。
大人から子どもまで楽しめるおすすめの1冊です。
- 著者
- まりさ
- 出版日
- 2013-12-24
ラッコが出てくる古文書を読むのが趣味という、まりさの作品。愛くるしい姿をあますことなく載せた写真集です。 お腹の上で貝を割るイメージはあると思いますが、それ以外の様子もたくさん見ることができますよ。
本書の魅力は、そのテーマ設定にあります。「ばんざ~い!ラッコ」、「昆布巻きラッコ」、「目隠しラッコ」など12のテーマに沿った写真が載っていて、それぞれのポーズにきちんと意味があるのです。
また生態や人間との歴史的関係などの情報も満載で、写真に癒されるだけでなく、ラッコについての知識もつく1冊です。