いつか人類が火星に移住する日が来たら……そんな想像に胸を膨らませたことはありませんか?今回は、火星の特徴や気温、重力、生き物がいる可能性などをわかりやすく解説していきます。あわせて関連のおすすめ本も紹介するのでぜひご覧ください。
太陽系の、太陽に近い方から4番目の惑星である火星。地球との距離は約7500万kmで、宇宙船で半年ほど、車で30年、徒歩の場合は1000年かかるといわれています。
火星の直径は6792kmです。地球の直径は12742kmなので、およそ2分の1です。重力は地球の3分の1ほどの強さで、四季の変化があり、1日の長さは24時間39分で地球と似ています。
また天体写真では赤く見えますが、これは地表に酸化鉄と呼ばれる赤さびが大量に含まれているためです。かつては火星にも海があったと考えられていますが、重力が弱いために大気が宇宙空間に消え、それにともない海も消滅したと考えられています。
平均気温はマイナス43度、平均表面温度はマイナス63度です。最低気温はマイナス140度、最高気温は20度にまでのぼり、温度差が非常に大きいことがわかるでしょう。
平均気温が低い理由として、大気が薄いことが挙げられます。大気が薄いと太陽からの熱を保つことができず、必然的に気温が低くなるのです。
また大気の成分も地球とは大きく異なります。地球は窒素が70パーセント、酸素が20パーセントほどを占めていますが、火星の大気は90パーセント以上が二酸化炭素で酸素は0.1パーセントもありません。
二酸化炭素は本来熱を吸収しやすい物質なので、大気のほとんどが二酸化炭素で構成されている火星は平均温度も高くなるように思われますが、大気があまりにも薄いため、温度を上げるに至らないのです。
火星の重力は地球の3分の1ほどの強さです。約6分の1の強さである月を歩く際は、フワフワと浮いているような歩き方になりますが、同様に火星でも人が歩く際は浮力が働くことになります。
もしも人類が火星に移住した場合、筋力が著しく低下すると考えられ、骨密度の低下も免れないでしょう。NASAはこの問題に関して比較的楽観的で、移住の際は運動と薬物で解決できるとしています。
火星には生命体がいるのか、もしくはかつて存在していたのか……この疑問はいまだに深い謎に包まれています。
NASAの火星探査の結果、38億年前の火星は、現在の地球のように厚い大気で覆われ、水が存在していたことがわかりました。現在は水が無いため生物がいる可能性はきわめて低いですが、38億年前に存在した命がどこかで生き延びている可能性も残されています。
温暖化や爆発的な人口増加が起こり、地球に住めなくなった時、火星に移住する可能性はあるのでしょうか。結論として、可能性はゼロではありません。ただし、さまざまな困難に耐える必要がありそうです。
たとえば気圧の関係で胆のうと盲腸が破裂してしまう可能性があります。また重力が3分の1になるため、視力が低下したり胃の消化スピードが遅くなったりと、体調を崩す可能性もあります。
これらの困難を解決する技術を開発したときが、移住するときなのかもしれません。
- 著者
- 竹内 薫
- 出版日
- 2011-02-25
本書は、火星の基本的な情報から未来の移住計画のシナリオを綴ったサイエンスフィクションです。著者はテレビ番組「サイエンスZERO」のナビゲーターとしても有名な竹内薫です。
太陽系のなかでももっとも高い山「オリンポス山」や、日本とアメリカの宇宙探査にかける予算の違い、移住の際の倫理観の問題などを、サイエンスライターとして長年活躍している著者ならではの視点でわかりやすく解説しています。
「できれば生きているうちに、人類が宇宙に恒久的に進出する場面を目撃したい」(『2035年 火星地球化計画』より引用)
探求心とロマンが伝わる1冊です。
- 著者
- ジム・ベル
- 出版日
- 2007-05-24
本書は、世界ではじめてくられた火星のパノラマ写真集です。作者はNASAの火星探査車のパノラマカメラ画像システムにおいて主任を務めた人物で、地表の様子や、探査計画が実行された際のエピソードなどを、およそ150枚のカラー写真とともに紹介しています。
ページを開くと、まず黄土色の大地が強烈な存在感とともに目に飛び込んできます。パラパラとめくっていくと、エメラルドブルーに光り輝くクレーターと出会うことができ、地球ではなかなか見かけない幻想的な配色に、心うばわれるでしょう。
その一方で、火星探査プロジェクトに8億5千万円以上の税金がつぎ込まれた事実や、よりよい写真を撮るためにおこなった工夫など、プロジェクトの裏側を文章でも楽しめます。写真集としても読み物としてもおすすめ1冊です。
- 著者
- アンディ・ウィアー
- 出版日
- 2015-12-08
本書は、映画「オデッセイ」の原作となった宇宙開発新時代のサバイバルSF小説です。
有人探査のミッションで火星にやってきた主人公マークと仲間たちですが、トラブルが起き、なんとマークがひとり取り残されることになってしまいます。そして、次の探査機がやってくる4年後まで、なんとか生き延びようと奮闘するのです。
本書の魅力は、あくまで現実の宇宙科学の技術や物理の法則にのっとってストーリーが進んでいくところです。彼が火星で過ごす日々の様子は日誌の文章で語られ、淡々とした視点が物語をさらに現実味を帯びたものにしています。
「生命は驚くほど強靭だ。ぼくが死にたくないように、彼らも死にたくないのだ」(『火星の人』より引用)
これは、火星でバクテリアが生きていることに気づいたマークが、日誌に残した言葉です。専門的な知識をカバーしつつもドラマチックな物語です。ぜひ読んでみてください。