潤んだ黒い瞳に、ふんわりとした毛並みで、まるでぬいぐるみのようなレッサーパンダ。しかしその生態は、可愛いだけではありません。この記事では、一体どんな動物なのか、性格や名前の由来などを解説し、あわせておすすめの関連本も紹介していきます。ぜひチェックしてみてください。
果物などを食べてじゃれあう姿がかわいいレッサーパンダ。動物園などでよく見かけますよね。しかし本来の姿は、少し異なります。
食肉目で雑食に適した歯をもっていて、食べ物は笹の葉や根、果実のほか、昆虫、ネズミやトカゲのような小型脊椎動物、鳥の卵やヒナなども食べてしまうのです。
普段は群れを作らず、1年のほとんどを単独で過ごします。繁殖期を迎え交尾をした後も、パートナーと行動をともにすることはありません。メスは出産直後は赤ちゃんと過ごしますが、半年ほどすると親元を離れるため、再び単独行動に戻ります。
我々が抱いているイメージとは、異なる生態をもっているレッサーパンダについて紹介していきます。
南アジアから東南アジアの、標高2000m前後の高山にある竹林や森林に生息しています。体長は50~65cm前後で、体重は3~6kgほど。平均寿命は野生では約10年、飼育下では約15年です。
とても愛らしい見た目をしていて、真っ黒な瞳と大きな耳、目の上と頬、口の周りの白斑が特徴的です。四肢は黒く、体はきれいな赤褐色。頭胴長の3分の2を超える長い尾には、濃い色と薄い色のリング状の模様が交互に入っています。
美しい毛皮を目的に猟がおこなわれたこと、食肉用や個体売買のために捕獲されたこと、森林伐採などで生息地の消失が進んでいることなどから、このままでは野生の個体が絶滅する危険性がある「絶滅危惧IB類」に指定されています。
日本では「日本動物園水族館協会」が血統を管理し、国内の動物園での繁殖活動が順調におこなわれ、施設での飼育数は増加傾向にあるそうです。
1825年に発見されたレッサーパンダ。現地人に「この動物の名前は?」と訊ねたところ、ネパール語で竹を意味する「ポンヤ」と教えられたことから、「パンダ」と呼ばれるようになりました。もともと「パンダ」という名前はレッサーパンダにつけられたものだったのです。
しかし1800年代後半にジャイアントパンダが発見されると、しだいに「パンダ」という呼び名はジャイアントパンダを指すようになっていきました。
そこで「小さな方」という意味の「レッサー」をつけて「レッサーパンダ」と呼ばれるようになるのです。ただし、レッサーには「劣った」という意味も含まれているため、英名では「レッドパンダ」とも呼ばれています。
フランスの動物学者であるフレデリック・キュビエは、外見がネコに似ていることから、属名をラテン語で「ネコに似た」という意味の「アイルルス」、種名を炎のような色彩を表す「フルゲンス」とし、学名を「Ailurus fulgens」(炎色のネコ)としました。
ふわふわとした可愛い見た目をしていますが、実はとっても臭い分泌物を出してあちこちにマーキングをします。免疫力が極端に弱く、慣れない環境だとすぐに病気になってしまうことや、何よりその匂いの強烈さから、発見当初はまったく人気がなかったそうです。
子どものうちは特に臆病な性格をしていて、家畜などにびっくりして死んでしまうことも多々あります。
また基本的にはおとなしいですが、繁殖期になるとオス同士だけでなくオスメス間でも縄張り争いをするほど、気性が荒くなります。日本では2本足で立つ姿が話題になりましたが、実はこの行動も威嚇のひとつで、自分を大きく見せるために立ち上がり、両手をあげて強さをアピールしているのです。
2本足で立つ行動は、威嚇のほかに天敵がいないか周りの様子を探ったり、配偶者を探したりする際にもおこないます。いずれにしても可愛らしいですね。
日中眠るときや、天敵から身を隠す時など、木の上で過ごすことが多いレッサーパンダ。部分的に出し入れできる爪を使い、長い尾でバランスをとって上手に木登りをします。
また前肢付け根の骨の一部が大きくなった「第6の指」があるのも特徴です。ジャイアントパンダにも存在し、効率よく竹を掴んで笹の葉を食べるために発達したと考えられています。レッサーパンダはこの指を使って、片手で器用に食べ物を口に運ぶことができるのです。
いまだにハッキリとわかっていないのは、何科なのかということ。ジャイアントパンダはクマの仲間とされていますが、レッサーパンダは近縁種を持たないため、レッサーパンダ科とされています。しかしアライグマ科に分類されることもあり、現在も研究がすすめられています。
- 著者
- 加藤 由子
- 出版日
- 2007-10-16
図鑑に載っていない動物の疑問や生態をどうやって調べようかと考えた作者は、自らの目で確認しようと動物園に行きました。
子どもから大人まで読みやすいように、イラストと解説が一緒に載っており、レッサーパンダが2本足で立てる理由もわかります。そのほかの動物の生態や、動物園自体の仕組みに関するさまざまな疑問にも答えており、読後はきっと動物園に行ってみたくなりますよ。
- 著者
- 桜庭 一樹
- 出版日
- 2005-07-01
2本足で立つ姿が可愛らしく、一躍有名になったレッサーパンダの風太くんの、日常生活をおさめた写真集です。動物園では遠くから見ることしかできませんが、本書では間近でその表情や仕草を楽しむことができます。
当時お嫁さん候補だったチィチィとの仲良しショットも掲載されており、まるでぬいぐるみのような姿に癒されること間違いないでしょう。