珍しすぎるクリオネの生態を紹介!透明な理由、食べ物や飼育のコツなどを解説

更新:2021.11.13

「流氷の天使」として知られるクリオネ。可憐な見た目と、餌を捕る際に見せる姿のギャップが有名ですよね。今回は彼らの生態、透明な体の秘密、餌、飼育方法や寿命などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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クリオネの生態を紹介。実は貝の仲間?

 

ハダカカメガイ科クリオネ属に分類される生物で、見た目からは想像し難いですが実は巻貝の一種です。「ハダカカメガイ」という名のとおり、貝の中身だけの状態だと考えればよいでしょう。

平均的な大きさは1cm~3cm、南極や北極の寒流域や流氷域に多く生息します。姿を見ることができるのは水面より200m~1000mの深海の中層部で、「ダイオウイカ」や「リュウグウノツカイ」とほぼ同じ深度です。

日本では北海道沿岸部に生息しています。2016年にはオホーツク海でおよそ100年ぶりに新種が発見され、「クリオネオホーテンシス」と名付けられました。

また2017年には富山湾でも新種と思われる個体が発見されており、これは日本海のみに生息する固有種であることが判明しています。ちなみに富山湾は、それまでクリオネの生息が確認されていた北半球のなかで最南端にあたり、この発見は極寒の海でしか生きられないと思われていた生態を覆すこととなりました。

このようなことからもわかるとおり、未知の部分が多い生物です。ここからは彼らの体に隠されたさまざまな機能や、飼育方法などについて解説していきましょう。

体が透明な理由は?

 

「クリオネ」という名前は、ギリシャ神話に登場する女神、クレイオに由来しています。それほど美しい外見をしていますが、彼らの体はなぜ透き通っているのでしょうか。

貝などの軟体動物は、体のほとんどがタンパク質で構成されています。タンパク質は純度が高いほど透度を増す性質を持っているのです。流氷の海に生きるクリオネは、体内のエネルギーを温存するために良質なタンパク質を体に蓄えておく必要があり、体が透き通って見えるということです。

そのほかユメナマコやデメギニスなど、水温の低い深海で暮らす生物のなかには体が透けている種類が多く見られます。

クリオネは何を食べる?バッカルコーンをのばして食事

 

体の側面にある「翼足(よくそく)」と呼ばれる、ヒレのようなものを動かして水中を漂う姿が印象的なクリオネ。実は食事をする際は、頭部が割れて「バッカルコーン」という6本の触手を剥き出しにして、素早く獲物を捕らえるのです。

彼らは8mmほどの小さな巻貝を主な餌としており、バッカルコーンで捕えた後は殻から身を引きずり出して食べます。「天使から悪魔の姿に変わる」と揶揄されるほど衝撃的なシーンです。

ただクリオネの餌である「ミジンウキマイマイ」は、生息数が減少傾向にあります。環境汚染によって空気中に二酸化炭素が増え、海水の質が酸性に変化してしまい、その結果ミジンウキマイマイのような小さな貝が殻を作りにくくなってしまっているのです。

クリオネは半年~1年に1匹、ミジンウキマイマイを捕食すれば生きていくことができるため、現状は餌の絶滅に直結するほど深刻な問題とはされていませんが、上述した富山湾は海水の酸化が進んでいるうえ水の入れ替わりも少ないため、湾内でのクリオネの絶滅が危惧されています。

富山湾で起きていることは、やがて世界各地で起きる可能性あると考えられており、対策が検討されています。

クリオネの飼育と寿命

 

特別な環境下でしか生きていけない印象がありますが、実はペットショップなどで飼育キットが販売されており、自宅で飼うことができるんです。

海水、もしくは専用の飼育水を水槽に入れて冷蔵庫で飼うのが一般的。冷蔵庫であれば彼らが生きられる10℃前後の水温を保つことも可能なうえ、光も入らないため、生態にあった環境が作れるのです。

ただ水替えを頻繁におこなう必要がありますし、餌となるミジンウキマイマイの入手が困難なため、餌を与えずに餓死するのを見守るだけといった飼い方になってしまいます。水温が上がってしまうことは死活問題なので、冷蔵庫から出して観察する時間も制限され、一般的な水生生物を飼う感覚で飼育するのは困難でしょう。

餌を与えることができないため、家庭で飼育した場合の寿命は長くても1年ほどとなります。ちなみに自然環境下では2~3年ほどです。

クリオネの天敵はクラゲですが、クラゲとともに行動する「ヒペリイド」という甲殻網に寄生するため、捕食されることはほとんどありません。一方のヒペリイドも、クリオネが発する「プテロエノン」という物質を一定の魚が忌避するため、積極的に彼らをキャッチする動きをみせます。

この共存関係のおかげで、多くのクリオネは外敵に襲われることなく天寿をまっとうしているのです。

クリオネなど海洋生物を大迫力で楽しめる

著者
小宮 輝之
出版日
2010-03-09

 

さまざまな生物を原寸大スケールの写真で楽しめる「ほんとのおおきさ」シリーズ。細部までじっくりと眺めることができます。写真とともにイラストつきの解説文も添えられており、平易な文章のため就学前のお子さんでも楽しめるでしょう。

クリオネ以外にも、セイウチの顎髭の太さやタカアシガニの腹部のつくり、メガネモチノウオの鱗の模様の美しさなどもじっくりと堪能できます。

水族館の情報も添えられているので、今度会いにいってみようかなと親しみを持ちながら読むことができますよ。

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