もふもふと可愛らしい外見で手触りもよいチンチラ。鳴き声も静かで臭いも少なく、さまざまな住宅事情下で飼育可能な動物です。今回はペットとして市民権を獲得しつつある彼らの生態や種類、販売価格、性格、なつく飼い方などを解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
チリ北部の高山、アンデス山脈の標高3000~6000mの荒れ地などに生息する、齧歯類(げっしるい)の仲間です。
体長は23cm~28cm。雄より雌のほうが大きく、雄の平均体重は500g前後であるのに対し、雌は約800gまで成長します。群居性で、かつては100匹にもおよぶ群れをつくって生活する様子も見られました。
チンチラの魅力といえば、シルクを思わせる毛並みの良さが挙げられますが、この毛皮を狙った狩りによって野生の個体は著しく数を減らしてしまっています。1年間に20万匹以上狩られたこともあり、一時は絶滅寸前にまで追い込まれました。
1923年、アメリカで家畜用の繁殖が始まり、猟のブームは落ち着きましたが、いまだに野生の数はけっして多いとはいえない状況です。
現在チリでは保護政策がとられており、ワシントン条約でも国際取引を禁止されています。そのため日本で野生のチンチラをペットとして飼うことはできません。しかし繁殖自体は比較的容易なうえ、適切に飼育すれば15年~20年は生きるため、国内で繁殖されたものをペットショップなどで購入することが可能です。
今回は、チンチラをペットとして迎える際に知っておきたい種類や価格、性格の特徴、なつくための飼い方などを解説していきます。最後に飼育に役立つ本も紹介するので、参考にしてみてください。
2018年現在、チンチラのカラーは10種類以上に分類され、色によって希少性も価格もさまざまです。ここでは国内でブリーディングされている種類の特徴と、平均価格をご紹介します。
1:スタンダードグレー
ペットショップなどでもっともよく見かけるのが、背中に青みががった濃い灰色で、腹部が白いスタンダードグレーです。野生に生息するチンチラと同じカラーで、高山の岩に擬態できる色だといわれています。
およそ2万円~3万円で販売されています。
2:シナモン、ベージュ
背中がベージュ~薄い茶色で、腹部は白、耳はピンク色です。ワインのような暗い赤色の目をしているとシナモン、黒色の目をしているとベージュ、と目の色で種類を分ける場合があります。
およそ2万5000円~4万円で販売されています。
3:ブラックベルベット
口元からお腹にかけての毛が白く、その他は白い毛の混ざった艶やかな黒い毛を持つチンチラです。
およそ3万5000~4万円で販売されています。
4:ブラックエボニー
全身が真っ黒の毛で覆われています。両親からの遺伝により色が薄く出る個体も多く、濃い黒色でむらがないものほど価格が高くなる傾向があるようです。
5万円~6万円で販売されています。
5:タン
全身が濃いブラウンの毛で、色が薄いものをライトパステル、濃いものをダークパステルと呼び分ける場合があります。
およそ5万円~6万5000円で販売されています。
6:モザイク(パイド)
ベースカラーがホワイトで、ところどころにグレーなどの色が入ったチンチラです。
全体的に他のカラーが混ざったものをシルバーモザイク(シルバーパイド)、体のほとんどが白く、耳など局所的に他のカラーが混ざったものをホワイトモザイク(ホワイトパイド)と呼び、白色の面積が多い個体ほど価格が高くなる傾向があります。
およそ6万円~8万円で販売されています。
7:ピンクホワイト
全身が白く、耳はピンク色、目もピンクみがかかった赤色をしています。
販売価格はおよそ6万5000円~8万円です。
8:バイオレット
全身が美しいすみれ色をしていて、腹部が白色のチンチラです。両親からの遺伝で色の濃淡が出ますが、どれも希少なカラーです。
およそ6万5000円~9万円で販売されています。
9:ホワイト
全身が真っ白で、目は茶色や黒の濃色をしています。
希少種で、販売価格はおよそ8万5000円~10万円です。
10:サファイア
バイオレットよりも青みが強く、暗い青にも似たカラーで、腹部は白。腹部も含めて単一色の個体はチャコールサファイアと呼ばれることがありますが、どちらも希少性が高いです。
およそ10万円~13万円で販売されています。
ここで紹介したもの以外にも、模様の入り方でより細かく分類される場合があります。また海外には、日本にはいないアンゴラやゴールドバーといった種類がおり、今後交配が進むことで、国内でもさらに多用なチンチラを見ることができるでしょう。
小型の草食動物のため、野生の環境下では天敵も多く、新しい環境や大きな音に対して強い警戒心を持っています。しかし元来は明るくて好奇心旺盛な性格なので、人間と一緒に暮らすことにも適応し、飼いやすい動物だといえるでしょう。
また学習能力も高いためしつけもできるほか、甘えん坊でひとなつこい性格の個体も多いので、慣れれば抱っこをしたり膝に乗せたりすることも可能です。
難点を挙げるとすれば、いつも陽気なためストレスが溜まったり病気にかかったりしていても様子に変化がほとんど表れないこと。突然倒れてしまうこともあるため、日ごろから細かい仕草もしっかり観察しておく必要があります。
野生の環境では、岩から岩へ飛んで生活をしているチンチラ。可愛い外見に似合わず、非常にタフな動物です。
自分の体長の4~5倍程度の距離を1度のジャンプで移動することができ、走るのも得意ですばしこいため、本気で逃げられると人間の足で捕まえることは困難です。壁面を走ることもできます。
運動能力が高いということは、発散させてあげないとストレスにつながるということでもあるので、飼育する場合はケージの中だけでなく、時間を決めて部屋一面を使ったダイナミックな運動ができるように環境を整えてあげる必要があります。
また彼らは夜行性なので、夜中も運動ができるようケージの中に回し車を設置したり、上下運動ができるよう足場をつくってあげたりすると、ストレスが溜まらないでしょう。
思いやりをもって可愛がれば、必ずといっていいほどなつくチンチラ。
家に迎え入れたばかりの時は、無理に触ろうとしたり、ケージから強引に出そうとしたりはしないでください。また運動が好きだからといって、隠れ場所にもなるケージを用意せずに部屋に放つのもよくありません。
まずは名前を呼ぶ、あいさつをするなどの簡単な声掛けから始めて、ケージに近づいても逃げなくなったら手からおやつをあげてみましょう。動物は相手のにおいを嗅いで挨拶をするので、その人自身のにおいが出るといわれる手の甲を嗅がせることで覚えてもらうことができます。
チンチラが自分から歩み寄ってくるまではケージの中に手だけ入れて、無理のないコミュニケーションを図ってください。なつく早さには個体差もあるので、とにかく焦らないことが大切です。
新しい環境になれてきてケージから出す際には、電子機器のケーブルや観葉植物など、彼らが齧りそうなものを片付けてください。特に観葉植物のなかには動物に有害なものも多いので、注意が必要です。
またチンチラは、自分の前肢で持ち上げられるものであれば運んで隠してしまう習性があるため、アクセサリーや尖ったピンなどもしまっておきましょう。
餌についてですが、彼らは草食なので、主食は牧草で副食として専用のペレットを与えます。多めに餌箱に入れてあげて、食べ残して湿気たものや糞尿で汚れたものは早めに捨てるようにしましょう。おやつはドライフルーツなどを好みます。
高温多湿な環境に弱いので、夏場はクーラーを使うなどして室温を25℃前後に保つようにしてください。
- 著者
- ["鈴木 理恵", "田向 健一", "井川 俊彦"]
- 出版日
- 2017-01-06
生態や歴史、飼育についての注意点や海外での事情などが載っている、チンチラのガイドブックです。「完全飼育」という名にふさわしい情報量で、ペットにしたいけど何から始めたらよいかわからない方にまず手にとってほしい一冊です。
飼い主同士での情報交換が容易にできる犬や猫と違い、周りに相談できる人がいない状態でチンチラを飼う方も多いと思います。本作は飼育を始めるにあたって準備するものなども具体的に写真つきで紹介してくれていて、とにかく親切でわかりやすい内容です。
さらに、チンチラがなついてくれるコミュニケーションのとりかたも段階別に解説。また体の仕組みや健康チェック、病気について紹介してある章は、万一の時の手引きとして役立つでしょう。
これから飼おうとしている方にも、もうすでに一緒に暮らしている方にもおすすめの一冊です。
- 著者
- 鈴木理恵
- 出版日
- 2015-11-05
めくってもめくっても、愛くるしい姿だらけの写真集。チンチラオンリーのフルカラーです。いたずらをしてみたり、食事をしてみたりとさまざまな表情を見せてくれ、魅力をこれでもかと堪能できます。
総勢16匹にもおよぶモデルたちのプロフィールも載っていて、こういう性格だからこんなシーンが撮れるのかと楽しむことができますよ。いろいろな性格やカラーの子がいるので、すでにペットとして飼っている方は、共通点や違いなども発見できるでしょう。
作者の鈴木理恵は、1級愛玩動物飼育管理士の資格を持っていて、飼育する際のアドバイスも載っているので、写真集としてだけではなく飼育ガイドとしても役立ちます。
そのほかチンチラあるあるの4コマ漫画もあり、読みごたえも十分な一冊です。
同じ齧歯類のハムスターやうさぎに比べると、まだまだ馴染みのないチンチラですが、人気のペットになる魅力を十二分に秘めています。犬や猫は飼えない環境だけど動物と暮らしたい、という方は候補に入れてみてはいかがでしょうか。