白い体に、青い目をもつ「ホワイトタイガー」。その美しい姿から、中国や日本では「白虎」と呼ばれ神聖な生き物として捉えられてきました。この記事では、そんな彼らの生態や性格、体の特徴、白い色の秘密などをわかりやすく解説していきます。
食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されるベンガルトラの白変種です。
体長はオスが230~300cm、メスが180~230cmほど。体重はオスが180~230kg、メスが90~180kgほどとなっています。
インドの森林に生息していて、通常のベンガルトラと同じように魚や鳥、トカゲ、カメ、カエルなどの小型の動物や、イノシシやシカ、ウシなどの大型哺乳類を食べる肉食獣です。
夜行性で、日中に行動することはほとんどありません。自分の縄張りの範囲内で獲物を探し、見つけると茂みに隠れながら射程範囲まで近づき、タイミングを見計らって襲い掛かり仕留めます。泳ぎが非常に得意で、水の中で涼むこともあるそう。
子育て中以外は基本的には単独で行動をしていて、野生での目撃情報は1951年のインドで捕獲された個体が最後です。その子孫が全世界で約250頭ほど飼育されており、日本にはそのうちの約30頭が暮らしています。ホワイトタイガーを含むベンガルトラ自体が絶滅危惧種に指定されていることからも、その希少性がわかるでしょう。
ベンガルトラは一般的に、オレンジや黄色の体色に黒の縞模様があるのが特徴です。一方のホワイトタイガーは、その名のとおり全身が白かクリーム色で覆われていて、通常は黒い縞が残っていますが、茶色になっていたりほとんど見えないほど薄くなっている個体もいます。
また目が青く、肉球や鼻が肌色をしているのも特徴です。
「アルビノ」とは、先天的にメラニンが不足している遺伝子疾患をもつ個体のこと。アルビノの個体は赤い目をしているのが特徴ですが、ホワイトタイガーは青いのでアルビノではなく「白変種」だと考えられています。
では、「白変種」とはなんでしょうか。話は氷河時代に移ります。地球は氷期と間氷期をくり返していて、最後の氷期が終わったのが約1万1700年前のこと。当時はジャングルのような環境はなく、周りは白い景色が多かったのでしょう。
そのなかで天敵から身を守り、獲物を捕食するためには、体の色を「白」にすることが必要でした。
そのため時代が移った現代にも、遺伝子情報には白変種に関わるものが刻まれているのです。生存競争をしていくうえで優位ではないため、自然と淘汰されていきますが、何かきっかけがあると突然「白」の遺伝子が表出し、「白変種」となる個体が誕生することになります。
ベンガルトラの白変種なので、その性格はベンガルトラと同じだと考えてよいでしょう。基本的に群れをつくることはなく、子育ての時以外は単独で行動をしています。
ただ子育ては丁寧で、1年半ほど一緒に暮らしながら狩りの仕方を教えるのです。ちなみにオスは子育てに参加しません。
また毎日のように自分の縄張りを見まわり、目立つ場所にマーキングをするので、神経質な一面もあるといえるでしょう。
ホワイトタイガーの姿を見ることができる施設をエリアごとにご紹介しましょう。
・岩手サファリパーク(岩手県)
・東武動物公園(埼玉県)
・宇都宮動物園(栃木県)
・群馬サファリパーク(群馬県)
・いしかわ動物園(石川県)
・伊豆アニマルキングダム(静岡県)
2019年現在、いしかわ動物園では大食漢なオスのクラウンが飼育されています。そのほかアムールトラのマドラスとジャムが飼育されており、トラは合計で3頭。展示は屋外と屋内で1頭ずつ日替わりとのことです。
・姫路セントラルパーク(兵庫県)
・アドベンチャーワールド(和歌山県)
姫路セントラルパークには17才とお年寄りのハルカ、6才で人好きのコユキ、3才でマイペースのマリンという3頭のホワイトタイガーと会うことができます。
・秋吉台自然動物公園サファリランド(山口県)
・しろとり動物園(香川県)
・とべ動物園(愛媛県)
しろとり動物園には、6才の兄弟ダイヤとパール、5才のルーク、同じく5才のナンシー、2才のアンジュ、そして2018年1月24日に生まれたポールの6頭のホワイトタイガーが飼育されています。
・大牟田市動物園(福岡県)
・平川動物園(鹿児島県)
- 著者
- ["フィオナ・サンクイスト", "メル・サンクイスト"]
- 出版日
- 2016-07-30
著者のフィオナ・サンクイストは、サイエンスライターであり写真家。もうひとりの著者であるメル・サンクイストは、フロリダ大学野生生物生態・保全学科の名誉教授です。
表紙を飾るのは雪の中にいるユーラシアオオヤマネコ。本書では、ネコ科に分類される動物を美しい写真とともに系統別に紹介しています。世界にはこんなにたくさんのネコがいたのかと、思わず驚いてしまうでしょう。ホワイトタイガーを含むトラは、ヒョウ系統でしっかりと解説されています。
それぞれの名称や分布、保護状況、はたまた体調や出産数などの生態がひと目でわかるようになっているので、図鑑としても十分に活用できるでしょう。
白い体に青い瞳と、なんだか神聖なイメージのあるホワイトタイガー。その実態は、進化の歴史のなかで身に着けた生き残るための手段でした。現在は野生下で目撃されることはありませんが、日本には世界で生息しているうちのおよそ10%がいるので、気になった方はぜひ実際に見に行ってみてください。