春先になると聞こえてくるシジュウカラの可愛らしい声。白と黒の模様や、ちょこちょこと動く姿は見ているだけで微笑んでしまいますね。自然のなかだけでなく街でもよく見かけることがありますが、彼らの生態や名前の由来、意外な能力などについて知っている方は少ないのではないでしょうか。今回は観察方法なども含め、シジュウカラの生態についてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、チェックしてみてください。
スズメ目シジュウカラ科に分類される鳥類です。体長はおよそ14.5㎝でスズメとほぼ同じ大きさですが、シジュウカラには胸元に黒い縦線が入っているため、簡単に見分けることができます。
この縦線は「黒ネクタイ」と呼ばれ、太ければオス、細ければメスです。オスの場合は太ければ太いほど優位性が増すため、餌場などではその力の差を顕著に見ることができるでしょう。
基本的には日本全国に分布していて、山地や湿原など自然豊かな場所はもちろんのこと、住宅地などでも見ることができます。沖縄県に生息する亜種である「アマミシジュウカラ」や「オキナワシジュウカラ」は、国内でもめったに見かけることのできない珍鳥として有名です。
性格は人懐こく、穏やかで好奇心旺盛。街にも人にも慣れているので、巣箱を作るとすぐに営巣してくれます。子育てをする姿や餌を食べる姿を観察できるほか、スケッチなど学生の自由研究の参考にもなるのではないでしょうか。
寿命はおよそ1年から2年といわれています。これは、外敵に襲われたり餌が不足したりする環境が要因で、本来は10年から14年と長命です。ほかの動物であれば飼育することで寿命を延ばすこともできますが、シジュウカラは鳥獣保護法で管理されているため、ペットとして飼育することはできません。
名前の由来については諸説ありますが、もっとも有力なものは「鳴き声」です。
「ツピーツピー」や「ツーピピツーピピ」と鳴くほか、「シジュウシジュウ」と鳴くこともあり、ここからシジュウカラと名付けられたと考えられています。
平安時代には「シジウカラメ」、室町時代には「シジウカラ」と呼ばれていたことからも、「年月を経ても変化しないもの=鳴き声」で名付けたのも納得でしょう。
そのほか「シジュウ」という鳴き声を「四十(たくさん)」と考え、「四十(たくさん群れる)雀(小鳥)」という意味から「四十雀(シジュウカラ)」と名付けられた説や、「四十羽の雀に等しい」という意味から名付けられたという説もあります。
名前の由来にも関係していた「鳴き声」ですが、2017年に興味深い研究結果が発表されました。
これまで彼らの鳴き声は「単語」として発せられ、コミュニケーションをとっていると考えられていましたが、実は人間と同じように「単語」を使って「文章」をつくり、コミュニケーションをとっていることがわかったのです。
発見した総合研究大学院大学の鈴木俊貴研究員によると、「警戒」を意味する鳴き声「ピーツピ」と、「集合」を意味する鳴き声「ジジジジ」を別々に聞かせると、周囲を見回したり、音が流れているスピーカー付近に集まったりと、単語の意味に応じた行動がみられました。
そしてこの2つを組み合わせた「警戒+集合」の鳴き声を聞かせると、彼らは周囲を警戒しつつスピーカー付近に近づくという驚きの行動をみせたのです。
また順番を入れ替えて「集合+警戒」を聞かせると、何の反応も示しませんでした。
日本語に置き換えてみると、「警戒しながら集合する」意味はわかりますが、「集合しながら警戒する」はよくわかりませんよね。
このことから、シジュウカラは鳴き声を「単語」として捉えているのではなく、語順も含めた「文章」として認識していると考えられるのです。今後研究が進んでいけば、彼らがどんな会話をしているのかわかる日が来るかもしれません。
日本においてシジュウカラを見つけることは、それほど難しいことではありません。しかし観察する場合は、巣箱や餌箱を作ると、より細かい点にも気づくことができるでしょう。
巣箱を作る場合、使用する木材は杉板がおすすめです。軽くて耐久性があり、値段もお手頃です。屋根へ付ける場合は蝶番を使い、側面を留め金を使って固定します。中に水が溜まらないように、底板の四隅には3~4mmの穴を開けておきましょう。
もっとも重要なのは、入り口の穴の大きさです。シジュウカラが好むのは2.8㎝。この大きさが変わると営巣する鳥も変わってしまうので、きちんと測って作りましょう。
巣箱をかけるタイミングは、12月から3月頃がベストです。木にかける際は、見通しのよい場所に設置しましょう。枝の数が多すぎる木だと見つけられず使われないままになってしまいます。また水場を木の下に設けておくと、営巣する確率が高くなります。
複数の巣箱を設置する場合は、双方の巣箱が近すぎないように注意してください。他の鳥の存在がストレスとなり、子どもをうまく育てられなくなってしまいます。
- 著者
- 得田 之久
- 出版日
- 1999-04-20
身近な野鳥について知ることができる絵本です。1組のシジュウカラを中心に、彼らが過ごす1年間を描いたもので、春の子育て、夏の水浴び、秋の餌とり、冬の巣作りなど生活の様子がわかります。
淡いタッチで繊細に描かれた鳥たちの姿は、写真とはひと味違い、読者の心をホッと癒してくれるでしょう。イラストを手掛けた薮内正幸(やぶうちまさゆき)は動物画家で、生き物の温もりを感じつつも躍動感のあるタッチが特徴です。
小さなお子さんへの読み聞かせにも最適の一冊です。
- 著者
- ["嶋田 忠", "小川 巌"]
- 出版日
- 2009-02-01
シジュウカラの餌を食べる姿や、子育て、雛の成長、巣立ちなど、1年間を追った写真集。なかなか間近で見ることのえきない翼の美しさや、瞳の輝きなどを感じることができます。
本書に掲載されているような写真を実際に撮りたい人のために、簡単な水飲み場の作り方なども書いてあります。本書をきっかけに観察用の巣箱や餌箱を作ってみるのもおすすめです。
シジュウカラは身近な野鳥なので、「調べたい」と思うことは少ないかもしれませんが、実はさまざまな姿形をしていたり、意外な能力を持っていたりと興味深いことが多々あります。巣箱や餌箱をつくってあげれば実際に観察することができるので、ぜひ挑戦してみてください。