ある意味『ドラえもん』で最も嫌なやつ(!?)なスネ夫。今回は彼にまつわるあまり知られていない一面をご紹介していきたいと思います。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
国民的人気作品『ドラえもん』において、ジャイアンと並んで悪ガキコンビを組んでいるのがスネ夫です。
彼のフルネームは骨川スネ夫ですが、苗字で呼ぶのは担任の先生ぐらいでしょう。仲間達の多くは呼び捨てですが、母親からだけは「スネちゃま」と呼ばれています。
一人称はもっぱら「ボク」で、金持ちを鼻にかける嫌味な少年です。最も特徴的なのは、そのどの角度からでも同じように見える独特な髪型でしょうか。
現在放送されているアニメ版の声優は関智一です。『妖怪ウォッチ』に登場するウィスパーと同じ声なのはご存知でしたか?
今回は皆さんもよく知ってるそんなスネ夫の、意外だったり意外でもなかったりする一面に注目してみたいと思います。
スネ夫は普段、ジャイアンの腰巾着をしているせいか、本人の言動はあまり目立ちません。おべっかを使ったり同調したりするところが多く見られます。
しかしその実、スネ夫は途轍もなく自信過剰で自己肯定力の強いナルシストなのです。
例えば第1巻に収録されてる話で、のび太がスネ夫の日常を覗き見してみると……そこには鏡に映した自分の顔にうっとりしている姿がありました。自分に見惚れて溜息をつき、涎まで垂らしていたのです。
あるいは容姿の良さ以外でも、頭の出来を自画自賛する場面なども見られます。ただ、背丈の低さだけは誤魔化しきれず、自覚がある様子です。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1990-12-18
これはスネ夫に限ったことではありませんが、お金持ちの骨川家はグルメに関しても一家言を持っています。金と時間に物を言わせての贅沢三昧も珍しくありません。
週末には四丈半島を訪れて天然のサザエにアワビを獲って食べ放題。一流レストランで舌鼓を打ち、自宅でそれを再現する食道楽っぷり。
一家揃ってそんな有様なので、42巻では突如食べたくなった北海道ラーメンのために、いきなり旅客機のチケットを抑えて北海道に飛び、ラーメンを堪能してくるという庶民には理解出来ない行動もします。
スネ夫も骨川家の一員。大長編で好きな食事が出来る時でも、彼の食へのこだわりが垣間見えます。あまりのグルメさには心底呆れさせられます。
再三になりますが、骨川家は優雅な家です。一代で財を築いたどうかは不明なために成金と言うのが正確かはわかりませんが、とにかく多方面の趣味に財を注ぎ込んでいます。
そのうちの1つにペットの飼育があります。これがまた数が多いのです。頭数もそうですが、種類が豊富。
まず一番目につくのが猫です。オスのチルチルとメスのアンナ。チルチルは言及されていませんが、アンナは血統書付きのシャムネコなので当然チルチルもそうでしょう。他にもエカテリーナというメス猫や、いずれかのつがいが生んだ仔猫の存在も数匹示唆されています。
他にも名前が不明の犬や、巨大水槽に入った鮮やかな熱帯魚、庭の池ではコイを飼っています。さらに極め付けはイグアナ。ペット自慢のためにわざわざ購入したというのだから呆れるばかりです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1984-03-28
コーラで酒癖とは、ちょっと混乱するかも知れません。正確には30巻で登場したドラえもんの秘密道具「ホンワカキャップ」のせいです。
この道具は名称通りキャップ状になっており、ボトル飲料にキャップをはめて注いで飲めば、ほんわか楽しく酩酊状態になれるというものです。のび太が大人の酔っ払いを羨ましがって出してもらったものですが、本人が試して気を良くした挙げ句、あろうことかジャイアンに譲り渡してしまいました。
ジャイアンはスネ夫を巻き込んでコーラの宴会を開き、2人は大盛り上がり。ところがここでスネ夫が酒癖の悪さを発揮、ジャイアンに食ってかかって歌に文句を付けます。ジャイアンも最後には泣き上戸になり、完全に立場がいつもと逆転しました。
藤子・F・不二雄作品で『ドラえもん』以外に有名なものとして『キテレツ大百科』があります。どちらも非力な主人公にマスコット的ロボットキャラ、ヒロイン、ガキ大将と嫌味な金持ちが登場し、細かな差異はあれど配役はほぼ同じです。
特に『キテレツ大百科』の金持ち役のトンガリはスネ夫と酷似したキャラです。両者はともにマザコンで金持ちを歯牙にかけており、いけ好かない性格をしていて、ガキ大将の腰巾着に収まっています。
外見的違いはスネ夫ヘアーとも呼ばれる特徴的な髪型か否か。仮に髪を隠せば判別は困難でしょう。
ただ、内面性は違います。とんがりがブタゴリラを慕う一方で、スネ夫がジャイアンを疎んでいるという点。ガキ大将への言動に注目すれば見分けることが出来るのです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-12-25
スネ夫は良くも悪くも典型的な成金志向の少年です。自己顕示欲が強いので他人の事情を考えることなく、自慢話を優先することが多々あります。例えば『ドラえもん』6巻の「こいのぼり」というエピソードに、こんな話が出てきます。
時期は端午の節句で、スネ夫はいつも通りに見事な鯉のぼりを揚げて自慢していました。いつもと違ったのは、そこにのび太、ジャイアン、しずかちゃん以外に近所の小さい男の子がいたということです。
その子は母子家庭のため自宅で鯉のぼりを飾ることが出来ず、泣き出してしまいます。するとスネ夫はのび太達から思いやりを知れと非難囂々。いつもの調子が思いがけない悲劇を招くのでした。自業自得とはいえちょっとかわいそうですね。
口を開けば自慢話をし、日常的にマウンティングを繰り返しているのがスネ夫という少年です。
ですがそういった顔を見せるのは、仲間内だけのことなのです。スネ夫は見知らぬ相手や目上の人間に対してはとても礼儀正しく振る舞います。裏表のある人間、と言ってしまえばそれまでですが、しっかりとした処世術を心得ていると捉えることも出来ます。
女の子や女性相手には甲斐甲斐しくお世辞を述べ、多彩な趣味の場ではやや下手に出つつ相手を上手く持ち上げて、大人と対等に渡り合っているのです。
子供としては不気味なほど世渡り上手ですが、成長すれば大成しそうな予感があります。
豪邸に住んで贅沢三昧のお坊ちゃんスネ夫。骨川家は非常に裕福な家庭で、財力は相当なものと思われます。
彼の両親の名前は明かされていませんが、父親の職業は会社社長であるようです。一体何の会社かまでは不明ですが、スネ夫が度々デザイナー志望であることを語っていることから、ファッション関係の社長かも知れません。
先述したようにスネ夫は世渡りが上手いので、父親の業界に影響されたと考えれば、そうおかしくありません。骨川家は芸能人とも親交があるので、その面でも辻褄が合います。
また未来のスネ夫が貿易会社を営んでいることから、後を継いだ可能性もあるでしょう。
それに対し母親は教育ママで厳しい一面もあるようですが、基本的には息子を溺愛している印象の方が強いですね。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1989-12-18
ほとんどそんな印象はありませんが、スネ夫はひとりっ子ではありません。わがまま放題なのでいかにもそれっぽいのですが、
実は骨川家は2人兄弟なのです。スネ夫が長男で、弟の名前はスネツグと言います。連載初期のころにはまれに登場することがありました。ですがもともと少なかったスネツグの出番は徐々に減り、いつの間にか姿を消して、スネ夫はひとりっ子ということになってしまいました。
それがひょっこり帰ってきたのが原作漫画40巻のこと。彼がいなくなった理由が、実子のいないニューヨークの叔父の下へ養子に出されていたからだと判明します。
……養子の本当の真相は、キャラ設定が曖昧だった弟の存在を藤子・F・不二雄が忘れており、整合性を合わせるために付け加えたとのことです。
『ドラえもん』には脇役であるにも関わらず、その濃い存在感で一度登場すれば主要キャラを食ってしまうゲストキャラが何人かいます。スネ夫の従兄弟のスネ吉もその1人です。
スネ吉は大学生で、スネ夫達のような子供でもなければ、責任感のある大人でもありません。ちょうど両者の中間点に当たるせいか、物語の中で異様な存在感があります。
高級スポーツカーを乗り回し、大人げない財力をラジコンに注ぎ込み、プラモとジオラマに情熱を傾ける姿はオタクそのもの。現在では一般化されつつあるオタク像の元祖とも言えるかもしれません。情熱の全てを賭けて趣味に生きることを実践しています。
スネ吉が登場すると、その趣味のディテールが異様に細かく説明されるため、藤子・F・不二雄の潜在的欲求を発散させるためのキャラであることが窺えます。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1979-12-20
それでは最後にスネ夫の名言……というかほとんど自慢しかしてない台詞をご紹介して締めに替えたいと思います。
第5位:
「うちのパパ、えらいんだぞ。社長だぞ」(『ドラえもん』4巻より引用)
虎の威を借るなんとやら。
第4位:
「アハハハ、きみにはわからないだろうな、こういう高級なしゅみは。
ぼくのうちにみたいにさ、(中略)なにもかもそろっちゃうとさ、古くさいのもが、
すごおくなつかしく感じられるんだ」(『ドラえもん』1巻より引用)
記念すべきスネ夫の自慢第1号です。
第3位:
「おばさんて、会うたびに若くなられますね」(『ドラえもん』12巻より引用)
女性は褒め殺しがスネ夫の哲学なのです。
第2位:
「ぼくなんかさ、ハンサムで頭がよくて金持で、
きみらにくらべればめぐまれてると思うなぁ」
(『ドラえもん』22巻より引用)
ここまでナルシストで嫌味だと怒りも湧きません。
第1位:
「大人になってからじゃ手おくれだ。
人生にはそれくらいの計画性がないとだめなんだよ」
(『ドラえもん』18巻より引用)
計画性が重要という流れなのですが、言葉はともかくやろうとしてることが、人に頼んで自分の評判を上げさせようというゲスな行為でした。
いかがでしたか? スネ夫というキャラへの理解が深まったことと思います。あなたのスネ夫の印象や見方、変わりましたか?