不思議だらけのハチドリの生態!後ろ向きに飛べる⁉ナスカの地上絵との関係は

更新:2021.11.13

「世界最小の鳥」として有名なハチドリ。鳥類の中でもっとも小さいですが、その生態には魅力がたくさんあります。この記事では、名前の由来、種類、飛び方の秘密、ナスカの地上絵との関係などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ハチドリは世界最小の鳥!その生態は?

 

南北アメリカ大陸に分布する、体長10cm前後の小型な鳥です。およそ340種が確認されていますが、どの種も非常に軽く、もっとも軽い「マメハチドリ」の体重はなんとたったの2~3gに過ぎません。ほとんどがカラフルな羽毛をもち、「空飛ぶ宝石」と形容されることもあります。

サイズが小さいのでひ弱なイメージがありますが、意外にも厳しい環境での生存が可能で、アリゾナの砂漠地帯から標高4000mを超えるアンデス山脈まで、多種多様な地域に生息しています。なかには越冬のために数百km以上飛行して南北アメリカ大陸を縦断する種も存在するのです。

飛行中は毎秒50回から80回も羽ばたいており、酸素消費量は人間の約10倍にも達します。止まっている時も代謝が激しいため、睡眠も命がけ。眠るたびに10%も体重が減ってしまうので、エネルギー消費を少しでも抑えようと、眠る時は冬眠のように体温を低下させて心拍数も抑えています。

このように日々過酷な生活をしているハチドリですが、寿命はそれなりにあり、野生のものでも5年前後。動物園などで飼育される場合は10年以上長生きすることもあるようです。

ハミングバードとも呼ばれるハチドリの名前の意味

 

英語圏では「ハミングバード(Hummingbird)」と呼ばれているハチドリ。羽音が蜂のようにブンブン(英語ではhum)という音をたてることに由来しています。

そのほか花々の間を飛び回る姿や、主食が花の蜜なところなど、さまざまな点で蜂そっくりの生態をしています。彼らのくちばしは細長く進化しており、花に差し込んで蜜を舐めとることができるようになっているのです。

また他の鳥類と異なり、羽を上下ではなく前後に動かすのも特徴。これも蜂の羽ばたき方と同じで、鳥類で唯一、空中で静止することができる「ホバリング」ができることで有名です。

ハチドリの種類

 

約340種存在するハチドリのなかで、特に有名なものをご紹介しましょう。

・マメハチドリ

主にキューバに生息していて、鳥類のなかでもっとも小さく、軽い品種です。全長は細長いくちばしを含めても5~6cm、体重は成鳥でも2~3gに過ぎません。卵は長さが6mm程度しかないのだとか。

主食は花の蜜ですが、蚊などの小さな昆虫を捕食することもあります。

・オオハチドリ

ハチドリのなかでもっとも大きい種類です。南米のアンデス山脈一帯に生息し、成鳥の全長は20cmにも達します。しかし体重はやはり軽めで、成鳥でも20g程度です。羽毛は茶色一色で、比較的地味な見た目をしています。

・アンナハチドリ

北米大陸からメキシコ付近に生息し、アメリカやカナダでは、日本における雀や鳩のように身近な鳥の一種です。

独特の求愛行動をおこなうことで知られていて、オスがメスの気を引くために尾羽を広げ、口笛のような音を立てて急降下します。その時の速度はなんと時速65km以上になるそうです。

ハチドリは後ろ向きにも飛べる⁉

 

先述したように、蜂のように羽を前後に動かしながら飛ぶハチドリ。研究の結果、彼らはこの羽ばたき方で翼の下に上昇気流のような空気の渦をつくり出していることが明らかになりました。多くの鳥類は翼で空気を切り、揚力を発生させていますが、ハチドリは空気の渦から発生する揚力で空を飛んでいるのです。

そのため彼らは、他の鳥類と異なり、空中で静止するホバリング飛行をすることができます。その能力はかなり高く、羽の角度を変えればわずかに後ろ向きに飛ぶこともできるそう。

また羽を動かす際に、その動作に合わせて体内の器官を前後させていることがわかっていて、羽の反作用を軽減させながら静止し、空中で花の蜜などを吸い続けることが可能となりました。

ハチドリとナスカの地上絵

 

古来より南北アメリカ大陸に生息してきたハチドリは、紀元前2世紀から9世紀頃に栄えたナスカ文化の有名な作品である「ナスカの地上絵」にも描かれています。

「ナスカの地上絵」は、ペルーのナスカ川近郊の土地に描かれた幾何学図形や動植物の模様。そのサイズは小さいものでも20m程度、巨大なものは数百mに達します。1939年に発見され、1994年には世界遺産に登録されました。

人間、猿、クモ、魚などさまざまな動物が描かれていますが、そのなかにハチドリを描いたと思われる地上絵も存在します。全長96mで、特徴的な長いくちばしや尾羽がくっきりと描かれているのです。

描かれた理由は、雨乞いのためや、権力者の葬儀など儀式のため、果ては宇宙人との交信のためなどいくつかの説が提唱されており、定かにはなっていません。しかし作品のモチーフとなるほど、当時の人々にとってハチドリが身近な存在だったことがわかるでしょう。

秀麗な写真とともに実寸大で見る図鑑

著者
["マリアン・テイラー", "マイケル・フォグデン", "シェル・ウィリアムスン"]
出版日
2015-02-06

現在確認されている338種のすべてを採録した図鑑。そのうちの約260種については、実寸大の切り抜き写真とともに紹介している充実っぷりです。

それぞれのハチドリについて、分布、生息環境、習性などがまとめてあるので、この一冊で基本的な情報をおさえることができるでしょう。

「空飛ぶ宝石」とも形容される彼らの姿は、眺めているだけで美しく、図鑑としてだけでなく写真集としても楽しむことができます。

ハチドリが教えてくれる「私にできること」

著者
出版日
2005-11-22

アンデス地方に暮らす先住民のあいだで伝えられてきた昔話が収録されています。森が火事になった際、多くの動物たちが逃げ出すなか、ハチドリは「私にできることをしているだけ」と一滴ずつ水を運んでいたそう。

本書ではこの話に地球温暖化をなぞらえて、読者に対し「私にできること」を問いかけているのです。

大きな規模の問題を考える際、この物語が発しているメッセージは、ひとりひとりの行動の大切さを教えてくれるでしょう。話自体は短いですが、小学生の子どもでも十分に理解できる内容で、小さな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。
 

残念ながら日本には生息していませんが、その生態はとても興味深く、知れば知るほど生命の不思議さに魅了されます。またアメリカ大陸の人々にとっては古来より身近な鳥であったこともわかりました。ぜひ関連本を手にとって、小さくても迫力のあるその魅力に迫ってみてください。

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