小型犬のような見た目と、キツネのような大きな耳とフサフサの尻尾が特徴のフェネック。愛らしいその姿からペット愛好家のなかでも人気が高まっています。この記事では、彼らの生態の特徴や性格、飼育の方法や臭い対策などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
哺乳綱ネコ目イヌ科キツネ属に分類されるフェネック。ネコなのか、イヌなのか、キツネなのか……ちょっとわかりづらいですが、なんといってもその特徴は大きな耳です。
8.5~15cmもあり、主にアフリカの砂漠地帯に生息している彼らを熱風から守り、体内の熱を解放する役割を果たしています。また不毛地帯で獲物の数が少ないので、わずかな動きから発せられる音も聞き逃さないのです。
耳の大きさに対し、体長は30~40cm、尾長は15~30cm、体高は約15cm、体重は1~2kgでイヌ科のなかで最小サイズになっています。チワワよりも小さい可愛らしいサイズです。
全身はやわらかな体毛で覆われていて、寒暖差の激しい砂漠で暮らすのに適応しているのだそう。夜行性で、砂地に数メートルの巣穴を掘り、家族単位の群れで暮らしています。
雑食で、サソリや小型の哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫などのほか、植物の葉や果物も食べます。獲物を捕えたり敵から逃げたりするために、優れた跳躍力をもっていて、垂直方向に60~70cm、水平方向に120cmも飛ぶことができるのです。
寿命は野生下では約10年、飼育下では約12年に達します。
アメリカのニューヨーク州など飼育することが禁止されている国や地域もありますが、日本では規制がなくペットとして飼うことが可能です。ただしワシントン条約の規制がかかっているので、輸入するには輸出国の許可証や原産地証明書が必要です。
飼うにあたり、いくつか注意点があります。
彼らは穴掘りが得意なので、屋外で飼うのであれば逃げ出さないために地下数メートルの深さがある囲いを用意する必要があります。
地上のケージはイヌやネコ用のものでよいですが、ケージの底で足を痛める可能性があるため、金網ではなくベニヤ板などを敷くのがおすすめです。ペットシーツや新聞紙は、穴掘りでボロボロにされてしまうので適しません。
またフェネックは元々アフリカの砂漠地帯に生息している動物のため、日本の寒さや湿気に弱いです。室内で飼育する場合もエアコンやヒーター、除湿器などを使った小まめな調整をしてあげましょう。
運動をさせてあげることも大切です。ケージの中にずっといるとストレスが溜まってしまうので、時おり外に出して運動をさせてあげる必要があります。夜行性のため、集合住宅であれば騒音への配慮が必要です。
雑食のためなんでもかじってしまう可能性があるので、電気器具のケーブルなどを保護したり、誤飲を防ぐために小さな物は目の届かない場所にしまったりしてください。デリケートな彼らのために、家をリフォームする飼い主さんも少なくないようです。
臆病で非常に警戒心が強い動物です。
うれしい時には尻尾を振ったり、甘えるとお腹を見せてきたりすることもありますが、自己中心的で気ままな一面もあり、イヌとネコを足して2で割ったような性格だといわれています。
慣れてくると抱っこをすることもできますが、触られるのを嫌がって噛みつくこともあるので注意が必要です。小動物とはいえ牙はそれなりに鋭く、怪我をしてしまいます。
思うようにはなついてくれないかもしれませんが、だからこそ余計にかわいく思えるのかもしれませんね。
飼育をするうえで飼い主の多くが困っているのが、臭い対策です。
1番の原因は排泄物で、刺激臭がします。トイレの場所をしつけで覚えさせることはできないので、あちこちで用を足してしまいます。すぐに処理し、彼らの肛門付近もふいてあげるとよいでしょう。
消臭スプレーでゲージ自体の臭いを抑えるのも効果的です。
購入はペットショップかブリーダーからするのが一般的です。
ペットショップの場合、オスが55~95万円、メスが80~120万円。ブリーダーから購入する場合、オスが60~80万円、メスが70~100万円が目安になります。メスのほうが高い傾向があり、子どもでも大人でもほぼ同額です。
ここまで高額になっている理由には、近年のペットブームによる乱獲や人間の生息域が拡大したことによって、原産地での個体数が急速に現象していることがあげられます。先述したとおりワシントン条約の規制対象にもなっているので、輸入の際に複雑な手続きが必要になり、それらの諸経費も上乗せされているのです。
現在は日本国内で繁殖させた個体が取引の主体になりつつありますが、繁殖させるのが簡単ではないことも高額になっている要因です。
- 著者
- ["永田 典子", "井の頭自然文化園", "東京都井の頭自然文化園="]
- 出版日
東京・吉祥寺にある井の頭自然文化園で、2008年に生まれたフェネックの3兄弟。地域のニュースで取り上げられるとそのかわいらしさが瞬く間に話題になり、TVや雑誌の取材も殺到して一気に全国区へと広がりました。
本作は、3兄弟のいききとした姿を飼育スタッフの撮影した写真で紹介したもの。癒されるとの声が続出している、おすすめの一冊です。
近年のペットブームで急速に人気が高まりつつあるフェネック。とてもかわいいですが、その飼育は決して簡単なものではありません。気になっている方は彼らの生態をよく知ったうえで、チャレンジしてみてください。