5分でわかるアザラシ!生態、性格、種類やアシカ、オットセイとの見分け方も

更新:2021.12.10

丸い体と大きい瞳が愛くるしい水族館の人気者、アザラシ。おっとりした印象が強いですが、なかには過酷な環境を生き抜くためにアグレッシブな性質をもつ種もいるんです。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、性格などとともに、アシカやオットセイとの見分け方も解説。最後にはおすすめの関連本もご紹介します。

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アザラシの生態 分類や生息地、寿命など

 

ネコ目アザラシ科に分類され、犬や猫と同じくミアキスという哺乳類を祖先に持つと考えられています。ミアキスは体長30cmほどの小さな肉食獣で、犬や猫のほかにもアシカ、ラッコ、イタチとさまざまな動物へ枝分かれして進化していったといわれています。

アザラシは一般的に北極や南極といった流氷域に生息しているイメージですが、実は地中海やアフリカ北西部の沿岸に生息している種もいて、幅広い海域でその姿を見ることができるのです。

寿命は、野生下だと25~30年程度。飼育下だと北海道の「おたる水族館」にいたゼニガタアザラシが46歳まで生きて、日本国内で最長の記録として残っています。

陸上の移動が得意ではなく、出産時などを除いてほとんどの時間を海の中で過ごすため、生態についてはまだまだ解明されていないことも多いのが現状です。

今回はそんな彼らの種類ごとの特徴や、性格、食性などをご紹介していきます。

アザラシの種類と大きさ 体の特徴は?

 

19種類が存在し、生息区域別にそれぞれ亜種が存在しています。ここからは代表的な4種の生態をご紹介しましょう。

ゼニガタアザラシ

雄雌ともに体長は200cm前後、体重は50~170kgです。太平洋から大西洋北部の広い海域に生息していて、日本で繁殖する唯一の種類でもあります。

体の色や模様は1頭ずつ異なり、黒や濃い灰色、濃い茶色などのベースに、黒い斑点やリング状の模様が入っているのが特徴。このリング状の模様が穴が開いた硬貨に見えることから、「ゼニガタ」という名がついたといわれています。

ゴマフアザラシ

雌は体長140~170cmで体重が65~115kg、雄は体長150~210cmで体重は85~150kgです。ベーリング海やオホーツク海などに生息し、北海道近海でも姿を見ることができます。日本国内の水族館でもっとも多く飼育されている種類です。

英名は「spotted seal」、斑点のあるアザラシという意味で、体の模様にちなんでいます。真っ白な毛を持つ赤ちゃんの姿が印象的ですが、実は毛が白いのは生後2~3週間程度まで。その後は徐々に灰色の毛に生え変わっていきます。

ミナミゾウアザラシ

雌は体長260~280cmで平均体重が400~900kg、雄は体長420~450cm、平均体重は3~4tにもなる世界最大級の種類です。雄は象のように垂れ下がった鼻を持ちます。

種を守るための生存戦略である、ハーレムを作ることで有名です。

繁殖期を迎えた彼らは、まず雄が陸にあがり、より多くの雌と交尾できる場所を陣取ります。この段階で弱い雄は場所を確保することができず、子孫を残す道が断たれてしまうのです。

ハーレムキングとして領土を確保した雄のもとに、雌たちが次々とやってきて、身籠った子を生みます。この時キングとなった雄は、雌たちが無事出産し、授乳できるように外敵の侵入を防ぎ続けるのです。ハーレム内の安全を守ることができる強い雄のみが子孫を残していくことで、彼らは種として過酷な環境を生き延びてきました。

ヒョウアザラシ

雌は体長340cm前後で平均体重が590kgほど、雄は体長320cm前後で平均体重が460kgほどと、雌のほうが大きい傾向。南極周辺の海や、オーストラリア沿岸部に生息しています。

すらりとした細長い体と、体長の4分の1ほどある前肢が特徴。顔も大型の爬虫類のような独特の風貌をしています。

獰猛な性格で、浅瀬で岩のフリをして待ち伏せし、ペンギンや他種のアザラシの子どもを襲って食べます。また捕獲した獲物をいたぶって遊ぶような残忍な行動も確認されていて、異色の存在です。

アザラシの性格は?

 

好奇心が強いのが特徴です。水族館などでも、人の正面にやってきて顔を覗き込む姿を見ることができますが、これは人間に飼育されることで後天的についた性格ではありません。野生でも物怖じせずにダイバーに近寄る個体が多く確認されています。

子どもを産んだ後は、母親同士で助け合って生活する仲間想いな一面もあります。授乳でエネルギーを著しく消費するので、お互いの子どもの面倒をみながら、交代で食事をする姿も確認されているのです。

ときには海に潜ったまま戻ってこない母親の子どもを、他のアザラシが保護して育てることもあり、高い社会性をもった生物であることがうかがえるでしょう。

アザラシの好きな食べ物は?

 

肉食で、主にオキアミなどの魚やイカ、エビなどを食べています。

例外としては、「カニクイアザラシ」という種類が蟹を食べること、上述した「ヒョウアザラシ」がペンギンやそのほか大型哺乳類の死体を食べることが確認されています。

水族館では、サバやカタクチイワシ、シシャモなどの魚を、1日に1頭あたり5~8kgほど与えるのが一般的です。

アザラシ、アシカ、オットセイの見分け方

アザラシ、アシカ、オットセイはすべて鰭脚類(ききゃくるい)という海生哺乳類のグループに分類されています。

鰭脚類はアシカ科、アザラシ科、セイウチ科に分類され、アシカ科のなかでアシカ亜科とオットセイ亜科に枝分かれしているのです。

それぞれの違いは以下のとおりです。

アシカとオットセイの頭の側面には、耳たぶの役割を果たしている小さな突起がありますが、アザラシにはなく、小さな穴が開いているだけです。

アザラシは一部の種類を除いて前肢が短く、陸上を移動する際には地面をかきながら少しずつ這うように前進します。前肢の先に鋭い鉤爪をもっているのも特徴です。

一方でアシカとオットセイは前肢と後肢の4本を使って、しっかりと体を支えながら歩くことができるのです。

潜水

アザラシは潜水能力が高く1500m近く潜ることができますが、アシカとオットセイは200m程度しか潜ることができません。

また泳ぎ方に関しても、アザラシは後肢を左右に動かすことで推進するのに対し、アシカとオットセイは前肢で推進しながら後肢で舵をとります。
 

アザラシの保護と共存を考える

著者
["廣崎 芳次", "原 志利"]
出版日
2012-11-01

本書は、北海道紋別市にあるアザラシの保護施設の活動内容を紹介したもの。物資が不足していた時代には狩りをして毛皮や肉をとり、豊かになると漁場を荒らす害獣として駆除した……そんな人間のエゴで彼らを苦しめてしまった反省から、この施設は設立されました。
 

陸上で暮らす哺乳類用のミルクではお腹を壊してしまうため、専用のものを乳業会社に依頼したり、海に還した後に人間に依存しないように、ある程度の時間が経つと人間の姿を見せないようにしたりと、細やかなケアをしている様子がわかります。

巻末には彼らの生態を脅かす環境汚染などについて問題提起がなされており、私たちができることは何か、するべきことは何か、考えさせられる一冊です。
 

かわいいアザラシの魅力!オススメ本をご紹介

アザラシの赤ちゃんのかわいすぎる写真集

著者
小原 玲
出版日
2011-07-08

赤ちゃんアザラシに魅せられて、報道カメラマンから動物専門の写真家に転身したという、異色の経歴を持つ小原玲の写真集です。

本書の主人公は、彼が1990年から追ってきたカナダの海で暮らすタテゴトアザラシの赤ちゃん。可愛すぎるさまざまな表情をみせてくれています。

あとがきで小原は、20年もの間アザラシを追うなかで、流氷が溶けてなくなっていくさまを肌で感じたと語っています。人間の悲しみや愚かさを撮るのに疲れて報道カメラマンを辞めたのに、ここでも人間の愚かさに対面してしまった、と……。

赤ちゃんアザラシの可愛い姿に癒される一方で、彼らがいつまでもこの写真のように穏やかに過ごせるような地球にしなければと思わせてくれる一冊です。
 

可愛らしい姿が印象的なアザラシですが、なかには2008年に絶滅した種類もいて、地球温暖化や海水汚染の影響をもっとも受けている生物でもあります。彼らに対する知識を深めることで、我々が海洋生物に対してできることが見えてくるかもしれません。

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