大きな体で優雅に泳ぐ姿が人気のマンタ。ダイバーだけでなく見る人すべてを虜にしてしまう魅力を持っていますが、まだまだ謎な部分も多い生き物です。この記事では、そんな彼らの生態や性格、空を飛ぶといわれている秘密、エイとの見分け方などを解説していきます。あわせてマンタを展示している「沖縄美ら海水族館」の写真集もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
「マンタ」と呼ばれている生物は、「ナンヨウマンタ」もしくは「オニイトマキエイ」という和名をもつ2種類います。
ナンヨウマンタは日本近海で見ることができ、主に沿岸域に生息。大きさは5メートルほどです。一方のオニイトマキエイは外洋で回遊し、体の横幅が最大8メートルにも達する世界最大のエイの仲間です。
マンタという名称の由来は、その非常に大きな体がマントのようであることからきています。生まれたばかりの子どもですら横幅が1メートル以上あり、10年ほどかけてさらに成長。寿命は20年以上といわれていますが、まだ詳しいことはわかっていません。
主に熱帯や亜熱帯の海の表層で暮らしており、日本では石垣島の近海などで見ることができます。餌はプランクトンで、口を開けながら泳いで海水とともに吸い込み、エラで濾して捕食。頭に付いている「頭鰭(とうき)」と呼ばれるヘラのような器官が特徴で、これを広げたり丸めたりすることで餌を取りやすくしているそうです。
一般的に腹部には、白地に黒い斑紋が入っていて、この模様で個体を識別することができます。黒地に白い斑紋が入っている種類は「ブラックマンタ」と呼ばれ、ダイバーからも非常に人気があり、ウォッチングの目玉として愛されています。
一方でマンタは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいて、絶滅の危険性が高い「危急種」に指定されています。天敵は大型のサメ以外にいないものの、ゆったりと海面を泳ぐ性質から人間に漁獲され、数を減らしている地域が多いのです。
また子どもを1度に1~2枚(マンタを数える単位は「枚」です)しか産まないことも、数を減らしている原因のひとつと考えられています。
海中を飛ぶように泳ぐ姿が印象的なマンタですが、実は実際に空を飛ぶ姿も見ることができるんです。海面からジャンプをし、時には2メートルほど飛び跳ねることもあり、その姿はまるで空を飛んでいるかのよう。
重く大きな体をジャンプさせるためには多大なエネルギーを使うであろうことが想像できますが、その理由はまだ解明されていません。
時には集団でジャンプすることもあり、何か意味のある行動であることは間違いないとして、さまざまな仮説をもとに研究がおこなわれています。着水する衝撃で体に付いた寄生虫を落とすため、仲間とコミュニケーションを取るため、求愛行動のためなどが現段階では有力だそうです。
実は魚類のなかでもっとも大きな脳をもっているマンタ。体自体も大きいですが、それに対し脳の割合も多く、知能が高いといわれています。
個々のダイバーを識別してなついてくる個体もいて、釣り糸が体に絡みついて身動きがとりづらくなった際、助けを求めてダイバーに近づいてきた例もあるほどです。
またその知能の高さから、海面から飛ぶようにジャンプするのは遊びの一環なのではないかという説もあります。
迫力のある体をしているマンタですが、その見た目とは裏腹に、おだやかでのんびりとした温和な性格をしています。
好奇心も旺盛で、人懐こく、うまくいけば初めて出会った野生の個体もダイバーと遊んでくれることがあるそうです。
ただ不用意に近づきすぎたり、彼らの行動を邪魔したりすると逃げてしまうこともあるため、少し臆病な面もあるのかもしれません。
マンタはエイの仲間に分類されていますが、他の種類のエイとは大きく異なっています。
彼らの多くは海の表層を泳ぎながらプランクトンを捕食するのに対して、エイの多くは海底に張り付くようにして過ごしており、魚や貝を捕食します。この食性の違いから、マンタの目・口・鼻は前方に向かって付いている一方で、エイの目は背面に上向きに、口と鼻は腹部で下向きに付いているのです。
またマンタのエラの穴は、プランクトンを濾すために大きいのも特徴。頭部についている頭鰭もプランクトンを食べる彼ら特有の器官であるといわれています。
泳ぎ方にも違いがあり、マンタは遊泳能力を重視しているため大きな胸びれを羽ばたかせるように優雅に泳ぎます。一方のエイは海底で目立たないよう静かに移動するため、ヒレの縁だけを動かして泳ぐことが可能です。
またエイの多くは尻尾に毒針を持っていますが、天敵の少ないマンタは毒針を持っていません。
- 著者
- 出版日
- 2010-09-27
世界最大規模の水槽を誇る「沖縄美ら海水族館」。ジンベエザメやマンタの迫力ある展示で人気を博しています。ナンヨウマンタの複数飼育と繁殖に世界で初めて成功したことでも有名です。
本書は、そんな沖縄美ら海水族館で暮らしている生き物たちの写真集。深海生物や珍しい魚の写真など、貴重な写真が数多く掲載されているほか、解説はすべて水族館の研究員が書いているという充実っぷり。図鑑としても活用することができます。
より楽しく水族館を回るコツなども載っているので、これから訪れたいと思っている方にもおすすめの一冊です。