「翡翠」という漢字をあてられるほど美しい姿が特徴のカワセミ。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、生息地などを解説していきます。あわせておすすめの写真集もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ブッポウソウ目カワセミ科に属し、海岸や池などの水辺に生息している小鳥です。水質が良いところであれば都市部でも見ることができ、「チッチー」「チーッ」と甲高い鳴き声をあげながら水面近くを飛ぶ姿が印象的です。
世界的にはヨーロッパから東南アジアにかけて幅広く分布しています。暖かい地域では留鳥(渡りをしない鳥)ですが、緯度が高く涼しい地域では、冬になると暖かい地域へ移動します。
餌は小魚や水生昆虫、エビ、ザリガニ、カエルなど。岩や枝などの足場から水中に飛び込んで獲物を捕まえ、くわえたまま足場に戻ってきます。個体ごとにお気に入りの場所があるようで、たびたび同じ場所で目にすることができるそうです。
全長は20cm弱と、日本にいるのカワセミ科のなかでもっとも小さい体をしています。
何より特徴的なのは、その体色です。「渓流の宝石」と称されるほど美しく、頭から背中にかけて鮮やかな青色、喉と耳は白、腹と目元はオレンジ色をしています。
この青い色は「構造色」と呼ばれるもので、羽毛にある細かな凹凸によって光の反射の仕方が変わります。つまり色素によって色づいているわけではないので、光の強さや角度によっては緑色に見えることも。
カワセミという名前に「翡翠」という文字があてられているのも、この体色に由来しています。
日本産のカワセミ科は、全6種が確認されています。鮮やかな体色をもつものが多く、バードウォッチングの対象として幅広い人々に愛されています。
【カワセミ科ショウビン亜科】
・アカショウビン
体はオレンジがかった赤い色をし、なかでも鮮やかな発色をしている大きなくちばしが特徴。水辺から離れた森林にも生息しています。餌は水生生物のほか、地上の昆虫、カタツムリやトカゲなども捕食します。
日本で見られるカワセミの仲間としては珍しい「渡り鳥」です。夏は全国で見かけることができますが、寒くなると東南アジアへ移動して越冬。また沖縄の南西諸島には、アカショウビンの亜種で体色の少し異なるリュウキュウアカショウビンが夏鳥として飛来します。
・ヤマショウビン
黒い頭に赤くて大きなくちばし、白い腹、青い背中をした、コントラストが鮮やかな種類です。森林に生息しますが、捕食のために水辺にも姿を現します。全長は約30cmで、餌は昆虫や小動物などです。
基本的に日本で繁殖はしていないと考えられていますが、中国などから東南アジアへ渡る際に、中継地として対馬や南西諸島で観察されます。
・ナンヨウショウビン
頭と背中が青く、首と腹は白、黒いくちばしをもつ種類です。全長は25cmほどで、水辺近くの林などに生息しています。
日本は生息域に入っていませんが、迷鳥(群れからはぐれたり、悪天候で移動してきたりし、本来の生息地とは別の場所に飛来した鳥)として南西諸島で観察できるそうです。
・ミヤコショウビン(絶滅種)
頭から腹にかけて赤く、後頭部と背中は暗い緑、翼と尾が藍色をしています。全長は約20cmで、沖縄の宮古島に生息していましたが、絶滅したとされています。
標本が一体しか確認されていないことや、採集された年や場所が不明確であること、さらにはグアムに生息するアカハラショウビンと非常に似ていることから、そもそもミヤコショウビンという種自体の存在を疑う説もあります。
【カワセミ科ヤマセミ亜科】
・ヤマセミ
腹は白く、頭、背中、首元は白黒のまだら模様をしている種類です。頭部には「冠羽」というトサカのように生えている羽をもっているのが特徴。山地の水辺に生息しています。全長は約40cmで、日本にいるカワセミ科の鳥のなかで最大です。
沖縄を除いた日本全国に生息する留鳥で、他の種類と同じように水中に飛び込み、水生生物や小動物、昆虫を捕食します。
古くは「ソニドリ」と呼ばれていたようで、「ソニ」が転じて「セミ」となり「川のセミ」という名前を付けられたという説があります。
しかし「ソニ」の意味がはっきりとはわかっておらず、「青土」や「翠」などの節はあるものの、謎が多いのが現状です。
また背中の色が美しいことから、「川背美」という名前が付いたという説や、「セミクジラ」というクジラの仲間が関係しているなどの説もあります。
ちなみに上述した「ショウビン」にもカワセミと同じ「翡翠」という漢字があてられているのです。どちらも昔から美しい鳥として親しまれていたことがわかりますね。
カワセミは、北海道以外では留鳥として1年中その姿を見ることができます。ただ基本的には単独行動をしていることや、そもそもの体が小さいため、慣れるまでは見つけるのが難しいかもしれません。
彼らがお気に入りにしている木の枝や岩場を特定できれば、その場所で定点観測などをするとよいでしょう。
繁殖期は3月から8月頃で、この時期はオスがメスに小魚などをプレゼントし、求愛する姿を見ることができます。巣の場所がわかれば、餌を運び込む親鳥の姿も見れるかもしれません。なおオスはメスよりも体色が鮮やかで、メスは下のくちばしに赤みがかかっています。
- 著者
- 出版日
- 2015-08-13
世界中のカワセミの、可愛くも美しい姿が収められた写真集です。彼らが過ごしている林や水辺などの風景も素晴らしいですが、そのなかで輝きを放つ小さな体に目を奪われるでしょう。
A5サイズほどのコンパクトなつくりなので、持ち運びにも最適です。
後半にはそれぞれの種類の詳しい生態が解説されていて、図鑑として活用することもできます。
- 著者
- 福田 啓人
- 出版日
- 2009-10-01
力強く狩りをする姿が印象的な表紙が印象的な本作。厳しい自然界を力強く生きる様子が収められた写真集です。
作者の福田啓人は、カワセミと出会ったことがきっかけで写真家を志した人物で、タイトルからも何か物語がはじまる雰囲気を感じることができるでしょう。
美しい写真が載っているだけでなく、撮り方や機材などについても説明されているので、バードウォッチングをするだけでなく撮影にチャレンジしてみたい方にもおすすめの一冊です。