子どもの頃、外で遊ぶと必ずといっていいほど遭遇していたダンゴムシ。実はさまざまな種類があり、意外な特徴をもっているんです。この記事では、彼らがもつ生態やワラジムシとの見分け方、駆除方法などを解説し、あわせておすすめの関連本もご紹介していきます。ぜひチェックしてみてください。
陸上で生活し、枯れ葉を食べたり触覚を持っていたり……ダンゴムシはいかにも「昆虫」の仲間のように思えますよね。しかし実は、「甲殻類」というカニやエビの仲間になります。
では、ダンゴムシも水中で呼吸が出来るのでしょうか。彼らはエラ呼吸ではなく皮膚呼吸をする生物のため、水中では生きることができません。元々は水中に生息していたので湿気の多い場所を好んで生活しますが、あくまで「地上」でなくてはならず、水中に入れると死んでしまいます。
湿気を多く含んだ薄暗い場所を好み、生息地は石の下や木の根下、コンクリートの端など、常に適度に湿っている場所。産卵期も湿気の多い5月~6月なので、この時期に該当する場所を観察すると、小さな子供の姿を見ることができるかもしれません。
寿命はおよそ3~4年といわれています。飼育をするともっと長生きし、6年間生きた個体もいるようです。飼育方法も比較的簡単で、生命力も強いため、お子様と一緒に育ててみるのもおすすめです。
彼らが属する「等脚目」の生き物は、地球上におよそ5000種(9000種とも)存在するといわれています。私たち人間が属する霊長類と比較すると、約40倍という桁違いの数です。
日本だけでも約300種類が生息しているといわれていて、大きく3つの種類に分けることができます。
まずは我々がもっとも目にしているであろう黒色の種類、「オカダンゴムシ科」。こちらは「外来種」とあるように、国外から日本へやってきたもので、「オカダンゴムシ」と「ハナダカダンゴムシ」の2種に分けられます。
2種の違いは、丸まった際に「きれいな丸型になっているか」という点。オカダンゴムシは丸まると綺麗な球体になりますが、ハナダカダンゴムシは少し頭の部分が飛び出していて、綺麗な球体になりません。一生懸命丸くなっているので、「ヘタだなあ」と思っても、指で押して綺麗な球体に近づけようとしないでください。
次に「コシビロダンゴムシ科」。こちらは「在来種」で昔から日本に生息していました。20種類以上が生息していますが、オカダンゴムシ科より乾燥や日光に弱いので、市街地ではめったに見ることができず、山奥にいることが多いようです。
オカダンゴムシ科との見分け方は、「おしりの形(節の形)」です。丸まった時に逆三角形の形をしていればオカダンゴムシ科、名前のとおり下にいくにつれて広がっていればコシビロダンゴムシ科、と区別することができます。
最後に「ハマダンゴムシ科」。彼らは名前のように「土」ではなく「浜」を好んで生息しています。大きさはオカダンゴムシよりもやや大きめ、背甲に砂のような模様が入っているのが特徴です。昼間は砂からほぼ出てくることはなく、探すのがとても難しいレアな種類になっています。
種類の多さにも好奇心がくすぐられますが、いざ捕まえて判別するとなるとなかなか難しそう。さらに私たちを混乱させるのは、「ダンゴムシに似た姿をした仲間が多くいる」ことではないでしょうか。
同じ等脚目に属する「ワラジムシ」は、外見だけでは区別がつきません。「丸くなるか、ならないか」の点でしか見分けることができないので、捕まえたらまずは丸くなるのか確認しましょう。
この世界に生きるすべての生物は、大きく分けると「卵生」か「胎生」で生まれてきます。では、ダンゴムシは一体どちらなのでしょうか。
正解は、「両方」です!ひっかけ問題になってしまいましたが、彼らは「卵胎生」という少し変わった産卵方法をします。
本来、卵を産む生物は体外で子育てをしますが、ダンゴムシは体内にある保育嚢に卵を産み、子育てをするのです。赤ちゃんは孵化すると保育嚢の膜を破り、外へ出てきます。お腹の中にあるのは卵ですが、子供を抱えながら生活する姿はどこか哺乳類に似ていますね。
ちなみにメスの年齢にもよりますが、彼らは1度の産卵でおよそ100個前後の卵を産むといわれています。小さい体にたくさんの卵を抱えながら移動するお母さん、恐るべしです。
産卵方法も変わっていますが、彼らは「交替性転向反応(こうたいせいてんこうはんのう)」という変わった習性をもっています。
迷路に入れてみるとよくわかりますが、壁にぶつかると最初に曲がった方向とは逆方向に進むのです。右→左→右と必ずジグザグに動き、何度試しても必ず同じ出口から出てくることになります。
なぜこんな動きをするのでしょうか。
ダンゴムシが生活している地面の上には、たくさんの障害物があります。それらを避けながらの移動というのは、なかなか遠くに行くことができません。気付けば同じ場所をグルグル回っていた、ということにもなりかねず、そんな地上で効率よく移動するために「ジグザグに動く習性」が身についたのです。
興味深い生態をもつ彼らですが、残念なことにわずかですが害もあります。花壇に咲く花の花弁や新芽、根っこを食べてしまうのです。
直接人間に被害がおよぶわけではありませんが、ガーデニングを趣味にしている方にとっては少々やっかい者でしょう。
駆除方法としては、ホームセンターなどで販売されている駆除剤を使うのが最適です。1匹1匹を取り除くこともできなくはありませんが、彼らは夜行性なので、たとえ昼間に捕まえたとしてもそれは氷山の一角。薬を使って一気に片を付けましょう。
しかし彼らも命ある生き物ですし、少量であれば殺さないであげてください。よい土を作る「益虫」でもあるので、自家製の腐葉土を作ってみたい方にとっては役立ってくれますよ。
- 著者
- ["奥山 風太郎", "みのじ"]
- 出版日
- 2013-08-01
ダンゴムシ好きのためにつくられた、といっても過言ではない専門の図鑑です。薄めですが情報はぎっしり詰まっていて、種類はもちろん、生息地や個体の丸まりやすさ、すばしっこさなどが詳しく載っています。
掲載されている写真も大きく、背中からお腹、足の本数、触覚の毛まで見て取れる細かさに驚きです。「海外のダンゴムシ特集」も興味深く、背中にトゲのある種類やゴルフボール並みに大きい種類など、見ているだけで楽しめるでしょう。
また飼育方法や餌のやり方なども解説されているので、ペットとして飼ってみたい方にもおすすめです。
- 著者
- 森山 徹
- 出版日
- 2011-03-19
ダンゴムシを用いておこなったユニークな実験の数々を収めた一冊です。
「ダンゴムシに心はあるのか」というぶっ飛んだ疑問を解決するために、作者がさまざまな研究をおこないました。「交替性転向反応」だけでなく、壁登り、網引きなど、彼らに「未知の状況」を与えて予想外の行動を発現させることで、「心」があるのかどうかを確かめています。
さてその結果は、どのようなものになったのでしょうか。作者の想像力やアイディアにも注目です。
幼い頃に手のひらに乗せて遊んだことがある方も多いと思いますが、大人になるとなぜか目にする機会が減っているような気もします。意外と奥深い生態をもったダンゴムシの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。