太陽系の惑星のなかで、もっとも太陽に近い場所に位置している水星。「鉄の惑星」とも呼ばれています。この記事では、温度や大きさ、重力などの特徴や、生命体がいる可能性などをわかりやすく解説していきます。また宇宙への興味が深まる書籍もあわせて紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
太陽系の惑星は、大きく「地球型惑星」「木星型惑星」「天王型惑星」の3種類に分けられます。
「地球型惑星」は金属や岩石などの重い元素で構成されていて密度が高く、鉄の核をマントルと地殻が覆うかたちで成り立っていて、地球のほか水星、金星、火星がこのタイプです。
「木星型惑星」は水素やヘリウムなどの軽い元素で構成されていて密度が低く、地球型惑星とは違って地表がありません。構造としては小さな岩石の核を液体金属が包むかたちで成り立っていて、太陽系のなかでは木星と土星がこのタイプに分類されます。
そして「天王星型惑星」は、水、アンモニア、メタンの3種類が混合した氷でマントルが構成されていて、木星型惑星とは構造が異なるので分けられました。太陽系では天王星、海王星が当てはまります。
さて、今回解説するのは「地球型惑星」のひとつ、水星です。
直径は4879.4kmと地球の5分の2程度の大きさしかなく、質量は地球の0.055倍と10分の1もありません。太陽系の惑星のなかで、大きさ、質量ともに最小の惑星なのです。
そのほか、核が全体の大部分を占めているという特徴があります。理由は諸説ありますが、原始惑星同士の衝突によって外側のマントルや地殻が弾け飛び、内側の核同士が融合して、核の大きな惑星になったといわれています。
重力とは、物体を引き付ける力のこと。正確にいうと、惑星がもっている万有引力と、惑星の自転によって発生している遠心力の合力を表しています。
つまり大きな惑星になるほど重力も大きくなり、逆に小さな惑星ほど重力も小さくなる傾向にあります。それを裏付けるかのように、太陽系のなかで最小の水星は、地球に比べておよそ0.38倍の重力しかありません。
わかりやすくたとえると、体重が軽くなり、ジャンプをしてみれば地球の約3倍高く飛ぶことができるのです。
太陽にもっとも近いことから、昼間の最高気温は約430度、夜になると-180度と気温差が激しく、地表の温度の平均は180度ほどだといわれています。
地球上で暮らしている我々人間にはとても耐えられない環境ですが、これは水星に大気が無いことが大きく影響しています。昼間は太陽からの放射熱を直に受けて灼熱となり、夜はすべての熱を放出するため極寒となるのです。
この寒暖差は、太陽系の惑星のなかで最大だといわれています。
恒星である太陽の周りをそれぞれ回っているため公転周期によって差はありますが、もっとも近い時で約9300万km、もっとも遠い時で約2億850万kmとなっています。
数値だけ見てもなかなか想像がつきませんが、地球一周がおよそ4万kmなので、最短距離を移動するとしても地球2300周分以上かかるのです。
仮に徒歩で向かうとします。人間が歩く速度を時速5kmとしても、18600000時間、実に2100年以上かかります。
やはりとてつもない彼方に存在しているんですね。
地球での1年は365日です。しかし水星は太陽の周りを非常に速く回っているため、1年はたった88日しかありません。
というのも太陽との距離が近い分、重力の影響を強く受けています。速く回ることで発生する遠心力と相殺しないと、太陽に吸い寄せられてあっという間に飲み込まれてしまうのです。
太陽の重力によって公転が速くなる一方で、自転は遅くなります。自転周期は約59日で、この間に公転もしているため、人間が定義するように1日を太陽が昇ってから次の太陽が昇るまでとすると、地球の176日分もかかってしまうのです。
つまり水星の1日は、水星の2年間と同じということ。地球で暮らす我々にはなかなか理解が難しいですが、自転を1日、公転を1年と定義するとこのような結果になります。
「水星」という名がついているだけあって、豊かな水があるのかと思ったことがある人も多いのではないでしょうか。しかしそもそも英語では「Mercury(マーキュリー)」といい、水とはまったく関係のない名前なのです。
水星の気温は430度から-180度と寒暖差が非常に激しく、そのため仮に水が存在したとしても瞬く間に蒸発、または凍結してしまい、液体として存在する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
しかし水星探査機「メッセンジャー」の探査によると、地下には大量の氷が眠っていると考えられる証拠が発見されました。北極点に当たる部分には太陽光が届かず常に日陰になっており、この場所では氷が溶けることなく残っているそうなのです。
つづいて生命体についてですが、地球上には水が無くても生きていける生物は存在しません。そしてそれは、宇宙においても同様だと考えられています。
先述した地下にある氷が、太陽の放射熱や寒暖差の影響などさまざまな条件を経て液状化することによって水となり、そこに何かしらの生命体が誕生している可能性はゼロとは言い切れません。ただ仮に存在したとしても、厳しい環境に適応できずに絶滅をくり返していると考えられます。
- 著者
- ジョン・マーティヌー
- 出版日
- 2013-02-06
宇宙を幾何学や音楽の旋律にたとえ、別々のものとして認識していた空間と時間、そして生命には、理論的には説明できない繋がりがあるのではないかと追求していく宇宙学の本です。
世界中から多額の投資を受け、凄まじい進歩を遂げる宇宙研究。しかし新しいものが正しいとは限りません。先人たちの残した足跡にもしっかりと着目し、読んでいくうちにみるみる惹きこまれてしまうでしょう。
宇宙について詳しくなくても大丈夫。新たな視点で壮大な宇宙空間の世界を見ることができる一冊です。
- 著者
- 渡辺 勝巳
- 出版日
- 2013-11-28
もしも宇宙旅行ができたら……?
子供たちが宇宙人を探す旅に出かける様子を描きながら、今はまだ空想の範疇にすぎない出来事を一緒に体験できる一冊。宇宙エレベーターや火星の改造などを、科学的根拠にもとづいて検証していきます。
もしも600度の寒暖差に耐えられる宇宙船があったら……水星で2年間の1日を体験できるかもしれませんね。
太陽系惑星のなかでもよく耳にする水星ですが、まだまだわからないことはたくさんあります。将来、太陽の膨張によってなくなってしまうかもしれませんし、はたまた生命体が存在し地球にやってくるかもしれません。未知で広大な宇宙を知る第一歩として、ご紹介した本をぜひお手にとっていただければと思います。